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音楽の感想記録 東京→バンコク

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Blur キャリアを振り返る

The Beatles, The Kinks, David Bowie, Julian Cope, XTC, The Police。連綿と続くブリティッシュロック、そしてUKアートロックの歴史を、90年代において唯一継承したのがBlurだ。 Summer Sonic 2023へのヘッドライナー参加が決まった今、そんなBlurのアルバムを、その時々のDamonの心情を象徴する歌詞と共に振り返っていきたい。 1st 『Leisure』 (1991)マッドチェスター、シューゲイ

    • Kings Of Leon 『Can We Please Have Fun』(2024)

      4/10 ★★★★☆☆☆☆☆☆ 全体的には前々作『Walls』(2016)、前作『When You See Yourself』(2021)と似たような作品だと思う。BPM遅めのまったりした曲とアップテンポな曲で構成されたシンプルな作品。音に大きな特徴は無いしガラッと変わったところも無い。ピークを過ぎたバンドは大体こういう包括的な方向性になってくる。 前二作と比べた場合、ややラフで生な演奏および録り方になっていることに気付く。それは先行シングル2曲(“Mustang”, “N

      • Loyle Carner 『hugo: reimagined (live from The Royal Albert Hall)』(2024)

        10/10 ★★★★★★★★★★ 2022年の3rdフル『hugo』は、kwes.とのタッグを軸に、サウスロンドンシーンを代表するミュージシャンを多数招いて作り上げた、オルタナティヴヒップホップ・ジャズラップの傑作であった。自身のルーツや父親への複雑な思い、不条理な社会構造についての歌詞もいちいち表現が芯を食っており、アーティストとして一皮も二皮も向けた力作にして、全てのピースがはまった大傑作であった。 本作は2023年10月6日(彼の29歳の誕生日でもある)に行われたRo

        • Wojtek The Bear 『Shaking Hands With The NME』(2024)

          7/10 ★★★★★★★☆☆☆ 2016年に結成されたグラスゴーのソフトポップバンド、3枚目のアルバム。 晴れた日曜日に木立の中を自転車で駆け抜けるような、その後シャワーを浴びてソファーで休んでいる時にレコードで流したくるような、とても爽快で心地よい音楽。 プリセットまんまっぽいシンプルなリヴァーヴをかけたクリーンなギターとアコギの刻み、メジャー7thの洒脱な響き、ヴァイオリンの上品な雰囲気、主張の無いリズム隊、そしてクセが一切無いジェントルなボーカル。プロデュースはSt

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          One Step Closer 『All You Embrace』(2024)

          8/10 ★★★★★★★★☆☆ やっとリリースされたセカンドアルバム。メロディックハードコア、エモコアに分類されるペンシルヴァニアのバンドで、Have Heart (中心人物Patrick FlynnはFiddleheadの結成者)やTurnstileのサポートを務めたところから私は知った。 2021年のデビュー作『This Place You Know』は10曲28分のいかにもなメロディックハードコアといった感じで、Title Fightに影響を受けたであろうメランコリッ

          One Step Closer 『All You Embrace』(2024)

          最近聴いているアルバム2024.05

          今月はオルタナ気分。来月も多分オルタナ気分。 The Jesus Lizard 『Goat』(1991)Steve Albiniの音と聴いて自分が一番に思い出すのは『Surfer Rosa』でもなく『In Utero』でもなく、本作のスネアの鮮烈な響きだ。特に1曲目。何回聴いても脳天を衝かれる感覚がある。天井や壁にマイクを設置して部屋の中で反響する音も録ろうとした結果こういう音になったらしい。ギターも、ジャズギターやクラシックギターをやってきた人間によるものだけあって他のハ

          最近聴いているアルバム2024.05

          Jordan Rakei 『The Loop』(2024)

          8/10 ★★★★★★★★☆☆ これまでの彼の作品には、直接的な気持ちよさの前に一枚カーテン/フィルターがかけられているような、頭でっかちで今一つ肉体性に訴えてこない感覚があった。特に前作『What We Call Life』(2021)はそれが強く、細かいシンセを積み重ねたサウンドは技巧的ではあったが、せっかくのスムースなボーカルが阻害されているような感じがあった。何が彼の良さなんだっけ。よく分からなくなっていた。 本作は、そんなモヤモヤが一掃された作品になっている。明ら

          Jordan Rakei 『The Loop』(2024)

          最近聴いているアルバム2024.04

          Biffy Clyro 『Blackened Sky』(2002)MineralやSunny Day Real Estateといったオリジナルエモからの影響と、Karate, Braid, The Dillinger Escape Plan, ひいてはJesus Lizardみたいな奇怪なコアバンドからの影響をごちゃ混ぜにしている。しかし何より良いのはアンセミックなメロディ。この界隈ではどのバンドも持ち得なかったビッグなメロディ、彼らの後の大躍進を容易に想像できるようなメロデ

          最近聴いているアルバム2024.04

          Adrianne Lenker 『Bright Future』(2024)

          8/10 ★★★★★★★★☆☆ またしても完璧な作品。2020年のソロ『songs』『instrumentals』、2022年のバンド作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』、そして本作と、完全にゾーンに入った圧巻の作品が続く。 『songs』は悲しみと絶望のコレクションだったが、本作は逆に「リラックスした雰囲気の中で何も追求しないことを追求したかった」と、自然体を強調するコンセプトの下で制作が進められた。いつものように、新

          Adrianne Lenker 『Bright Future』(2024)

          Lo Moon 『I Wish You Way More Than Luck』(2024)

          7/10 ★★★★★★★☆☆☆ Talk TalkやPeter Gabrielに影響を受けた丁寧で上品なインディアートロック。この手のバンドは2024年も一定数いてどのバンドも知的なサウンドを作っているが、その中でもこのバンドの完成度の高さはデビュー作の時点から圧倒的に抜きん出ている。 音は1st, 2ndとほとんど変わらない。主張は強くないが多彩な音色を使い分けるドラム/打ち込みと基本に忠実なベース、その上でシンセ、ピアノ、コーラス、サックスが柔らかく夢のような叙情を繰り

          Lo Moon 『I Wish You Way More Than Luck』(2024)

          最近聴いているアルバム2024.03

          今月も学生時代に聴いていた懐かしいアルバムを再訪。もう完全に懐古オジサンになってしまった。温泉に入りたい。 The Pale Fountains 『...From Across The Kitchen Table』(1985)元から持っていた独特なポップセンスと歌唱力を、より明るく軽快な方向に推し進めた2ndアルバム。「中途半端に成長した結果かつての良さまで消える」というのはインディロックによくあるパターンだけど、これは違う。翳のある文学青年が翳を保ったまま、世間のしがらみ

          最近聴いているアルバム2024.03

          MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

          6/10 ★★★★★★☆☆☆☆ 5th。普通なら使わない変なエフェクトや脈略のない音や奇抜なミックスバランスを駆使して独特のサイケデリアを産むのはThe Flaming Lipsなどから受け継いだUSインディロックのアイデンティティ。それは1stからずっと続いているので今更変わりようもない。彼らに取ってはこれが当たり前で、変える変えないの話ではないんだと思う。 それでもさすがに大人になったというべきか、ただはしゃぎ回るような無邪気な曲はほぼ無い。どの曲にも少しずつノスタル

          MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

          Twenty One Pilots 『Clancy』発売前にコンセプトをおさらい

          Twenty One Pilotsの『Trench』(2018)、『Scaled And Icy』(2021)、そして『Clancy』(2024年5月17日発売 ※24日に変更)は、一連の物語を描いたコンセプトアルバムの連作になっている。『Clancy』発売の前に、物語をおさらいしておきたい。 (1) 前提Twenty One Pilotsのボーカル、Tyler Josephは長年メンタルイルネスを患っている。良化と悪化を繰り返す彼の苦悩と苦闘をテーマにした物語がここ三作

          Twenty One Pilots 『Clancy』発売前にコンセプトをおさらい

          Real Estate 『Daniel』 (2024)

          9/10 ★★★★★★★★★☆ 春の風は迎える者への駆け足ではないし、拒む者への面当てでもない。自ら来て、自ら往く、自然の意だ。物憂げに俯く者の心うちなど遠慮無しに通り過ぎ、春の街へと吹き込む。草原を走る春の水は幅を変えながら春の海へと流れ込む。私たちがいてもいなくても、春の風は変わらず海を越え世界を意のままに吹き渡る。いつまでも。 本作が珠玉のギターポップであることは論を待たないが、何より歌詞が私の理想に近いものであったので、私の中のイメージと合わせながら以下に意訳して

          Real Estate 『Daniel』 (2024)

          最近聴いているアルバム2024.02

          今月も学生時代によく聴いていたアルバムを再訪していた。思い出が蘇る懐かしいアルバムと、新鮮な驚きがあるアルバムの2タイプに分かれる。 The Pale Fountains 『Pacific Ocean』(1984)青春の音。トランペットが青空の下で切なく響く。モリッシーのアクがどうしても好きになれない私にとっては、「The Smiths的なバンド」の方がThe Smithsより好きだったりする。これはまさにそういうバンド。自分が社会の中でどのくらいの力を持っているのかとか、

          最近聴いているアルバム2024.02

          The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)

          7/10 ★★★★★★★☆☆☆ Porcupine Treeと並びイギリスのネオ・プログレッシヴロックを20年以上リードしてきたThe Pineapple Thiefの14枚目のアルバム。 プログレの枠に括られてはいるが、8作目の『Someone Here Is Missing』(2010)以降はどれも10曲前後で約45分とタイトかつシンプルに仕上げられている。高度な演奏技術と高いメロディセンスを持っているが決して誇示することなく、奥深く薄暗い、言ってみればUKロックの原

          The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)