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30年前の対談から温故知新を解する「こころの臨床を語る」 こころの科学編集部 臨床心理士への随録 心理学

学会誌「こころの科学」に掲載された8本の珠玉の対談が集録されています。その中の一編である1984年の対談を、現代社会の様相に照らし合わせながら読んだのですが、何の違和感もなくて驚きました。時代が移ろいでも本質というのは変わらないのですね。古きを訪ねて新しきを知りました。

「こころの臨床を語る」こころの科学編集部編

若いころは病気の診断はつくけれども、人間がまだ見えていない。だんだん熟してくると、患者は見えてくるけれども、今度は病気がみえなくなってくる。年をとってくると、病気も人間もなんだかわからなくなるけれども、しかしなんとなく治る笑。
疲労感とか余裕感とかいうような漠然とした感じ、あるいは、今日は気が進まないとか、今日はちょっとやる気があるとか、そういう感じがわかる患者さんは治っていく。
精神医学の治療の目的は必ずしも現状に戻すことではなくて、成熟というか、よりふさわしいところへもっていく。
従来の家族の病理、家族の問題というかたちで見てしまうと、どうしても家族に対するネガティブが生まれてしまう。ご家族をポジティブに見るという見方が出てきますと、自然とご家族の中に患者さんを支え、患者さんを、回復させる力が必ずあるはずだということが会得されます。
その頃になって少し発達障害が目立ってきている人たちというのは、何かぐーっとストレスが加わると発達障害の傾向がわーっとみえるのですが、落ち着いてくるとまた普通の真面目な素朴な人に戻っていく。動くのです。
胸を張れるかどうかは、そこの育ちで何を得たかということがいちばん問われるのではないかと思います。