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『ゴジラxコング 新たなる帝国』と、「カワイイ」の記録更新

コングがかわいいの

2014年の『GODZILLA ゴジラ』から始まる、映画制作会社レジェンダリー・エンターテインメントのシリーズ最新作が『ゴジラxコング 新たなる帝国』です。あの「渡辺謙ゴジラ」から10年経ったと思うと、あっという間という気がしますね。モンスター・ヴァースとしてこれまでに5作が製作されていますが、過去作を見直す必要性はまったくないと思います。事前に予習をして臨むタイプの作品ではないです。なにも知らない状態で映画館へ出かけて、コングのかわいらしさを楽しむだけでよいのではないでしょうか。怪獣の擬人化は緊張感をなくす傾向がありますが、コングは表情や立ちふるまいに感情を乗せやすいので、今回のように「かわいらしさ」を全面に押し出した作風はほっこりとして実にいいと感じました。

冒頭からコングのキュートさが炸裂します。謎の巨大のら犬みたいな生物に追いかけられたコングは、仕方なくのら犬を撃退し、「もう〜落ち着いて暮らしたいのに、朝から大騒ぎだよ〜」とでも言いたげな表情で水浴びをします。この時点で完全に私の心は奪われています。コングが驚く顔、あきれた顔、どれもが過剰にキュートで観客の心をつかむのです。さらには、コングは虫歯になっており、人間に治療してもらうのですが、「歯が痛くて元気出ない……」の顔もたまりません。コングが差し歯を入れてもらうという展開に、なぜこのくだりを入れたのかなとふしぎに思いつつ、カワイイからまあいいか、と納得してしまうのが本作の魅力です。歯が痛いの治ってよかったね。

コングの気遣いリアクション

一方、今回ゴジラはそこまでフィーチャーされていません。ゴジラは、大暴れして疲れているとき、イタリアの観光スポット「コロッセオ」を寝床にして休むのですが、遺跡を破壊しないように行儀よく睡眠をとるシーンの微笑ましさはみごとです。とはいえ、あくまでもストーリー的には補佐役であり、見せ場は少ない状態でした。今回はあくまでコングのかわいらしさを楽しむ映画として振り切ったところが、成功の秘訣ではないでしょうか。いや、映画として成功しているかと言われると微妙ではあるのですが、なにしろコングはいきいきとしているし、最後まで思わずエンジョイしてしまう、からっとした陽性のエネルギーが感じられることは事実です。

コングは仲間がおらず、孤独に生きているのですが、実はとある場所に同じ仲間がたくさん残っていたことを知ります。しかしこの仲間は独裁者(独裁猿)の圧政に苦しんでおり、コングはそこに民主主義と博愛を持ち込むという展開になっていきます。この描写も実によかったですね。せりふなしで、強制労働に苦しむ猿と、自由をもたらすコングの姿がよく伝わってきます。まるでサイレント映画のような躍動性。また、けがをした腕に強化パーツをつけてもらったコングが、「うおーっ!」と右手をかかげて咆哮する場面も、「せっかく人間にこんな親切してもらったんだし、なんのリアクションもないと失礼だよな。一応嬉しそうな感じ出しとくか……」みたいな気遣いが感じられてすてきでした。おすすめですね。

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