亀井惺司

恐怖のカイジン一族と虫、魚、鳥、花の強化服を纏った戦士たちの戦いを描いた王道ヒーロー小…

亀井惺司

恐怖のカイジン一族と虫、魚、鳥、花の強化服を纏った戦士たちの戦いを描いた王道ヒーロー小説「バタフライマン」を連載しています。

最近の記事

バタフライマン 第17話 大鴉、堕ちる。

レイブンはついにブルーシャーク以外の部下を全て失った。もはや玉座にふんぞり返っている場合ではなかった。 「吾輩は行くぞ。」 レイブンは立ち上がった。 「ご武運を祈っております。レイブン様。」 ブルーシャークは一言そう言った。彼女はレイブンの勝利を確信していた。彼を神格化していたからだ。彼の絶対的な強さの前には「繭」の戦士もかなうはずがない。それが彼女の揺らぐことのない確信だった。 (まずは貴様からだ‥カラスマ・ミドリ!) 街のはずれの国防軍基地にはいくつもの戦車や戦闘機が

    • バタフライマン 第16話 銀の海豚と化け鯨

      港に一組の男女が佇んでいた。女の方は隣の男を憧れの目で見つめていた。彼女は数か月前にこの男と交際し始め良好な関係を築いていた。女は近いうちにこの男と結婚したいと思っていた。彼女の両親もそれを快く歓迎してくれた。男は女の耳元で愛の言葉をささやき、急に女の体を抱き寄せた。大柄な男はそのまま堤防の上に上がると、女を抱きかかえたまま ―海に飛び込んだ。 そのころ、女の両親は彼女が男と共に出かけて行ったきり、一向に帰ってこないことを不思議に思っていた。彼女は夜遊びをするような人間ではな

      • バタフライマン 第15話 野生児

         夜のメタモル・シティの通りで、酔っぱらった男がフラフラとした足取りで帰路についていた。彼は呑気に鼻歌を歌いながらマンホールの蓋の上を通りすぎた。すろと、足が動かなくなった。 「ん?」 男は腑抜けた声でそう言いながら足元を見た。そして恐ろしいものを目にする。先程のマンホールの蓋が開き、その隙間から毛むくじゃらの細い腕が出て、男の足首を掴んでいたのだ。 「な、何だこりゃ!」 男は抵抗も空しくそのままその手にずるずると引きずられて行き、マンホールの下へと消えていくのだった。 下水

        • バタフライマン 第14話 鉄血の老戦士

          ミドリカワ樹海の真ん中を通る山道を二人のハイカーの男が歩いていた。かなりの距離を歩いたところで、一人が疲れを感じて立ち止まった。そしてふと樹海の方を見た。そしてそこにあり得ないものを見た。青白いドレスを着た貴婦人が樹海の奥に立っていたのだ。こんな場所で、行方不明者も時折出るこのミドリカワ樹海にそんな服装の人物がいるはずがない。彼は自分が夢か幻覚でも見ているのではないかと思った。彼はその貴婦人の顔に強い恐怖感を覚えていた。その目は人間の物ではなかったのだ。まん丸でどこを見ている

        バタフライマン 第17話 大鴉、堕ちる。

          バタフライマン 第13話 茜さす弓矢

           レイブンとその側近ブルーシャークの前に、白いパナマハットを被り、銃を持った長身の男が立っていた。 「それで、俺に何をして欲しいと?」 男は銃を手でくるくると回しながら言った。 「スパグナムよ。お前を見込んでの頼みだ。ユウカゲ村にかつて『繭』の戦士を輩出したアキツ家がある。そこの一人息子、アキツ・リュウジを殺してこい。お前の力を使って村でひと暴れしてみたいと思わないか?」 「お安い御用さ。ちゃちゃっと片付けてくるぜ。」  スパグナムと呼ばれた男はそう言うと、またも銃を手で回し

          バタフライマン 第13話 茜さす弓矢

          バタフライマン 第12話 足長屋敷の怪

           メタモル・シティ大学では前期の講義が終わり学生たちが憑き物が落ちたような顔で門の外に出て行く。カラスマ・ミドリの教え子の一人であるヒイラギ・ルミは大学が休みの間、収入を得ようと思っていたため、アルバイトを探していた。そして電柱に張られたこんな張り紙を見つけた。 「女中求ム 高給 経験不問 ○○番地ノ西洋館ニテ   足長」  ルミは怪しさの漂うこの張り紙を一瞬訝しんだが、その給料は今まで見てきたどの仕事よりも高給だった。そして意を決してその家に行ってみることにした。そのあくる

          バタフライマン 第12話 足長屋敷の怪

          バタフライマン 第11話 悲しみの海の闘士

           南の海に浮かぶマルテルーズ島にジョゼという漁村があった。藁でできた家が立ち並び、島民のほとんどが漁業に従事している。ここにヒアワサ・ペズという青年がいた。ヒアワサは村でも評判の銛の名手で、その腕前は百発百中であった。今日も彼は魚籠の中にどっさりと入ったブダイやハタを得意げに持って海から帰って来た。桟橋に上がると、筋肉質な坊主頭の男が笑顔でヒアワサに話しかけた。 「今日も大漁だな。ヒアワサ。」 「お前こそ結構な量を捕ったじゃないか。」  この男はアントンと言って、ヒアワサの子

          バタフライマン 第11話 悲しみの海の闘士

          バタフライマン 第10話 先代蝶戦士の初陣

          メタモル・シティが新都市計画によって開発される何十年も前、この地はアケビという農村であった。畑と農家が点在する何の変哲もない穏やかな村で、店と言えば個人経営の商店のみ。その中心の一際立派な西洋風の屋敷が、カラスマ家であった。そこで暮らしていたのが。若き日のカラスマ・キイチである。彼の父にしてミドリの祖父、カラスマ・カヅキは大変尊敬を集めていた人格者であり、地主にして莫大な資産を持ちながらそれを私利私欲のために濫用せず、慎ましやかな生活を送っていた。その息子であるキイチもまた、

          バタフライマン 第10話 先代蝶戦士の初陣

          バタフライマン 第9話 死の砂嵐

          果てしなく続く砂の大地―ナティフ砂漠にある小さな街、アトラク。ここに不気味な影が忍び寄っていた。カンドゥーラを纏い、手には錫杖を持った色黒で長身の男。分厚い唇の間からは整った大きな歯が見えており、葉巻の端をくちゃくちゃと噛んでいた。男はアトラクの街を見据えると、錫杖で地面を突いた。すると地面の砂がごうごうと音を立てて巻き上がった。砂は空に向かって高く舞い、巨大な砂の竜巻となった。 「行け。」  砂の竜巻はまるで生きているかのようにアトラクの街へと向かい、猛威を振るった。建物が

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          バタフライマン 第8話 殻を打ち破れ!

          ある昼下がり、メタモル・シティ銀行にはいつも通りの光景が広がっていた。しかし、その日常は突如として崩壊する。銀行のドアが開き、貝殻のような肌の質感を持つ巨漢の人型の怪物が現れたのだ。その姿を見て、人々は唖然としていた。待合室の椅子に座っていた男が呟く。 「何かの撮影か?」  すると貝の怪物は男のそばに行き、そのこめかみに両手を添える。 「え?」  次の瞬間、男の頭部が果実が潰れるかのように破裂した。血と脳漿が飛び散り、人々はしばらく呆然とする。怪物は男の頭部をまるで蚊を潰すか

          バタフライマン 第8話 殻を打ち破れ!

          バタフライマン 第7話 密林の殺人鬼

          「ウチらもう抜けるわ。アンタみたいなクソ無能カラスに付き合ってらんないから。」 「あとは俺たちの好きにさせてもらうぜ。」  レイブンの巣では、度重なる同僚の敗北に嫌気がさしたフィドラーとグラスホッパーが群れを出ようとしていた。 「愚か者どもめ。吾輩の傘下から抜けて後悔しても知らぬぞ。」 「じゃあな!もうてめぇの世話になんかならねぇぞ。」 「せいぜいそのカマボコババアとでもいちゃついてれば?」 「なんと無礼な…」  ブルーシャークが呟き、手に持った大鎌を振ろうとする。 「よせ、

          バタフライマン 第7話 密林の殺人鬼

          バタフライマン 第6話 三戦士集結

          メタモル・シティ各地の男性のもとに手紙が届いた。蛇革模様の封筒に包まれた手紙の内容はこのようなものだった。 「あなたをずっとお慕いしていた者です。今夜7時、この手紙を持って〇〇ビルの屋上に来てください。待っています♡。」   これを見た男たちは全員なぜかこのいかがわしい手紙を信用してしまった。その手紙には男たちを魅了するものがあったのだ。そして彼らは手紙の文面通りビルの屋上に集まった。彼らは皆困惑した。呼ばれたのは自分一人だと思ったからだ。しばらくすると、まだら模様のワンピー

          バタフライマン 第6話 三戦士集結

          バタフライマン 第5話 七つ星の男

           地下にあるカイジンの住処で、黒い軍服の男、レイブンはタペストリーの蜥蜴の紋章を爪で引裂いた。そして彼は、自分の眼下に集まっているカイジンたちの方を向いた。 「おい、キャメルとオイスターはどうした?」 「あの2人はあなたのことなど眼中にないようです。自室で作戦の準備をしています。」  レイブンの側近の女カイジン、ブルーシャークが言う。 「不届き者どもめ。まぁよい。好きに暴れさせておけ。」  レイブンが吐き捨てるように言う。 「イグアナが戦士どもに倒されたのは知っているな。さら

          バタフライマン 第5話 七つ星の男

          バタフライマン 第4話 蝶と蛍と邪竜

          カイジン一族のアジトの地下の一室。その壁にはあらゆる生物の紋章が描かれたタペストリーが掛けられていた。その内、蛸、蚊、虹鱒の紋章に引き裂かれた跡があった。。 「これは一体どういうことだ!吾輩の優秀なる配下たちが、短期間に3名も倒されるとは!」 真っ黒な軍服を纏った男が怒鳴った。 「レイブン様、どうか気を静めてくださいませ。」 群青色のドレスを纏い、口元を布で隠した女が男を宥める。 「黙れブルーシャーク!お前が何を言った所で、吾輩の怒りがおさまるものか!」 軍服の男は背中から真

          バタフライマン 第4話 蝶と蛍と邪竜

          バタフライマン 第3話 蛍の剣士、参る

          メタモル・シティから離れたアツモリ山の麓にあるキャンプ場で、何組か家族が遊びに来ていた。親たちが準備をしていると、子供の一人が 「ママ。ちょっとみんなでその辺見てきちゃだめ?」 と尋ねた。 「いいよ。でもあまり遠くには行かないようにね。」  三人の子供たちは元気よく返事をすると、川の方に駆けて行った。子供たちは小川を目の前にすると、澄んだ水に顔を写したり、魚を見たりとはしゃぎまわっていた。すると、一人の少年が 「あっ!見て!」  と言いながら対岸を指さす。見るとそこには少女が

          バタフライマン 第3話 蛍の剣士、参る

          バタフライマン 第2話 吸血魔

           メタモル・シティの高層ビルの屋上で、望遠鏡で階下の道行く人を見ている怪しい男がいた。男は長身痩躯で顔面蒼白、白黒の縞のタキシードを纏っていた。 「私の目にかなう者は中々いませんねぇ。この私が血を頂くに相応しい、美しい容姿を持つ者は‥」  ふと、男の目に、会社の屋上で一人くつろいでいる整った顔の男性が入った。 「おやおや、これはこれは・・」  男の目が複眼に変わる。 「では、頂くとしましょう。」  男はそう言うと、背中から昆虫の翅を生やした。そして体が変化し、完全な蚊の怪物に

          バタフライマン 第2話 吸血魔