『小説の題材探し』
カアカア。
烏が鳴いている。気がつくと、既に空は朱色に染まっていた。
「あと10分で図書室を閉めますよ~!」
と、司書の先生が奥まで聞こえるように声をかける。その声かけに図書室内に居た人たちは支度をし、帰り始めた。もうそんな時間か、と思いつつ、私―安倍川遥(あべがわはるか)も、支度を始める。その時、後ろからバシッと肩を叩かれた。じんじん痛む肩を手で押さえつつ、振り向く。そこには、私の幼なじみであり、親友の赤城凛(あかぎりん)が立っていた。
「凛……、痛いよ。凛はバレー部で腕が