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【Destination】第47話 少年の選択
危険を承知でルカを助けに戻るべきか、身の安全を優先して村へ帰るべきか。サトシとマモルの意見は別れ口論となる。
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「村に帰るべき」
「人の厚意を踏みにじり、感謝の気持ちを伝えても笑顔のひとつもなく冷徹。そのうえ異常なまでの強さ。助けに行けば反対に殺されるのではないか」。マモルの意見は絶対反対。
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「助けに戻るべき」
「冷たい態度、人間離れした強さ、確かに感じた殺意と狂気に満ちた恐ろしい目。マモルの言うとおり村へ帰ったほうが得策かもしれない。だが、彼女がいなければ命を落としていた。今度はこちらが助ける番」とサトシは譲らない。
互いに意見をぶつけ合うふたりだったが、マモルの放った言葉でサトシの心に迷いが生じた。
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「命をかけてまで彼女を信じ助けたい」その理由を聞かれたサトシは困惑、返答につまってしまう。
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「血の通っていない人の姿をした冷たい人形」。
理不尽なあつかいを受け、納得できない気持ちでいっぱいのマモルは、不信感を募らせ、心のフタを固く閉ざし、彼女のもとに行こうとするサトシを断固として引き止める。
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人間、誰しも、良い部分と悪い部分をもっている。本来ならよい部分を見つけ、互いに褒め合い伸ばすよう心がけたほうがいい。
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しかし、潜在的に人は相手の足りない部分、悪い部分を意識しやすい。その人物に「良い部分がある」とわかっていたとしても。
10あるうち9が良い部分、悪い部分は残り1のみだったとしても、悪い部分の印象が強くなる。
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また、恨みつらみは不快な出来事からすぐには生まれず、ある程度時間が経過してから湧いてくる感情。
嫌いな気持ちが強ければ強いほど、相手に対して苦手意識が生まれ、その相手がいないときでも尾をひき、イヤな部分だけを考える時間が長くなる。
それは、主に他人に騙され痛い目に合い、損をしたくない「自己防衛」からくる心理。
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人間同士には相性がある。「顔すら合わせたくない」、「同じ空気を吸うのもイヤ」、「同じ空間にいるだけで身震いする」、そのくらい心底嫌いな人がいて当然。
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平気であおり運転する人、SNSで特定の人物を誹謗中傷、自殺まで追い込む人、窃盗、放火、傷害、殺人を犯す犯罪者もこの世には存在する。
日常生活で出会うなかにも、考えられない行動をとる者がいる。職場で出会うこともあれば、今まで普通に付き合っていた親しい人が、ときにそのように変化する場合もある。
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高圧的に理不尽なことを言い、日常的にパワハラ発言を繰り返し、信じられないような差別発言をする上司。マウントを取りたいがために、こちらの心を傷つける発言を平気で投げつける上司。
こういった人に一度も出会ったことがない人は、おそらく存在しない。
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そのキライな人が困っている、困難な状況に陥っているとき、それでも助けたいと考える理由。
サトシは自分の中で引っかかっているものを懸命に探していた。
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「ボクがおねえちゃんを助けたい理由……。なんだろう……。なにか大事なことを忘れてるような……」
「命以外にも、おねえちゃんに救われたものがあったはず。なんだっけ……。なにか大事なことがボクの中で……」
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「他人の夢を鼻で笑うようなバカの言うことに耳を貸すな。真に受けなくていい」
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「こんなつまらないヤツらに言われたぐらいで、あきらめるな。その程度のものなら、最初からやらないほうがいい。絶対に折れない心をもて!」
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「どれだけ笑われる夢であろうと、なにもしていない人間より、挑戦している者のほうが圧倒的にカッコいい。人としても成長できる」
「本当にやりたいことなら、誰になにを言われたって、あきらめなくていい!口で言い返すより、結果を出して見せつけてやれ。そのほうが早いし確実」
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「みんなが恐怖で動けないなか、勇気をもって村を出たんだ。アタシは、あんたたちから大きな可能性を感じてる」
「これからどんな壁にブチ当たっても、その度胸があれば必ずブチ破れるよ」
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「そうだ……。心を救われた」
「ヒュドラのヤツらにバカにされたボクの夢を、おねえちゃんは笑わなかった!ボクの可能性を信じてくれた!自信と勇気を与えてくれたんだ」
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「だからボクも信じてる。それが、おねえちゃんを助けたい理由!」
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「やっぱりダメだよ、マモルくんッ!!」
「このまま村に帰るのはまちがってる!ボクたちの夢は人を助ける仕事に就くこと!」
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「それなのに、苦しんでいるおねえちゃんを見捨てていいはずがない!めざしているものとは違う!今逃げたら一生後悔する!自分を許せなくなる!」
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「それは将来の話!大人になってからのね!」
「後悔を後悔で終わらせなければ、それでいいんだ!残念だけど、今のボクたちに人を救う力なんてない。この悔しさをバネにして、胸をはって前に進もう」
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「しつこいようだけど、おねえちゃんは助けてくれなんて言ってなかったでしょ?ありがた迷惑でしかないんだよ。この世には常識が通用しない、おかしな人もいるんだ」
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「あの人はボクたちが子どもだからってバカにしてる。どうせなにもできないんだって!」
「だから怒鳴って追い払った!目障りだったんだよ!」
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「違う!!おねえちゃんはそんな人じゃない!」
「きっとなにか事情があったんだ!それを確かめるためにも、もう一度、おねえちゃんに会いに行く!」
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「だから、やめなって!」
「もしかしたら、ヒュドラ軍の誰かが来てるかもしれない!助けに戻るのは自殺行為でしか……」
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「だったら、なおさらじゃないか!」
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「これ以上、マモルくんと話してもムダだ!キミがなんと言おうと、ボクは助けに行くからッ!!」
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「……サトシ……くん……」
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サトシはマモルの制止を振り切り、ルカのもとに向かって走っていった。
マモルの予想どおり、ルカはヒュドラ軍No2ナオキと戦闘中。行けば巻きこまれ命を落とす危険性がある。そうなってしまえば本末転倒。
彼の選択は正しいのか。サトシを待ち受ける運命は。
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