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5年以内にブックカフェを作りたいと思っています。その日のために、まずは、ブックレビュー…

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5年以内にブックカフェを作りたいと思っています。その日のために、まずは、ブックレビューを書きためようと思いnoteを始めました。みなさんの心にも、本を通して、素敵な「言葉」との出会いが訪れますように。(2021年1月)[Twitter:@kotonoha_tp]

最近の記事

【本117】『晴れたらいいね』

著者:藤岡陽子 出版社:光文社文庫 現代の看護師・沙穂が、終戦間近のフィリピンにタイムスリップ。従軍看護婦・雪野となり、命を救うために奮闘するお話しです。国のために...よりも、生きること、命をつなげることに懸命になる強さが眩しかった。 「自分は命が産まれる手伝いをする看護師だ。だから、命を簡単に懸ける戦争を決して許さない。命を生み出し、そして育むのに、女たちがどれほどの時間と力を費やすのかを、男は知らない。」 1944年。命の重さはどのぐらいだったんだろうと思う。治療

    • 【本116】『満天のゴール』

      著者:藤岡陽子 出版社:小学館 夫に浮気された主人公の奈緒は、小学生の息子涼介をつれて、丹後半島の実家に戻ります。ペーパーナースだった奈緒は、生活のために海生病院で看護師として働き始め、三上医師や過疎地に住む高齢患者たちとの関わりの中で、さまざまなことを学んでいきます。 どこか孤独をかかえた三上医師。彼は、在宅医療を施す患者に頑張った分の星シールをわたしています。300もの星々の煌めきのなかで、穏やかでどこか誇らしげな死をむかえたトクさん。死は終わりではなく「ゴール」。ト

      • 【本115】『傷を愛せるか』

        著者:宮地尚子 出版社:ちくま文庫 トラウマ研究の精神科医・宮地尚子さんのエッセイ集。旅先や留学先での出来事、アートや日常の風景や経験を切り取り、優しい言葉で綴っています。 きっとこのエッセイを読むと、じんわりと心に響く風景が、どなたにもあるはずです。今の私には「張りつく薄い寂しさ」がずんと心に残りました。 「剥がしても剥がしても張りついてくる薄い寂しさのようなものを、わたしたちは今抱えている気がする。人の価値が下がっている。」 社会人も学生も、そして、子どもたちも、

        • 【本114】『この世界で君に逢いたい』

          著者:藤岡陽子 出版社:光文社 主人公・周二と夏美が訪れた与那国島は、生と死の境界線があいまいな不思議な島。そこで出会った少女・花は、何かを探しているという。花が人生をかけて探しているものは何か。花の周りにいる人たちは、花の想いに手を貸し、過去を紐解いていきます。 この物語のテーマは転生。私たちは、前世でやり残したことをするために、生まれ変わるといいます。この世に強い想いを残したまま去った魂と、現世に姿を変えて戻ってきた魂。温かなつながりのなか、前世の想いを見つけていきま

        【本117】『晴れたらいいね』

          【本113】『手のひらの音符』

          著者:藤岡陽子 出版社:新潮社 この物語は、主人公・水樹が、恩師のお見舞いで帰省することを機に、幼少期を思い出すことで話が展開していきます。現在と過去を行き来しながら、服飾デザイナー(リストラ予定)として働く自分を振り返ります。苦しいなかでも諦めなかった力、支え合った友人・信也、背中をおしてくれた恩師、いろんな記憶が甦るなかで、自分の姿が浮き彫りになっていきます。 「諦めない心の先に、何かがあるかもしれない」 同じ団地で家族のように育った水樹も信也もその兄弟も、みな、貧

          【本113】『手のひらの音符』

          【本112】『キラキラ共和国』

          著者:小川糸 出版社:幻冬舎 大好きな『ツバキ文具店』の続編。主人公の鳩子がミツローさんと結婚して、ミツローの娘QPちゃんとの日々が中心になっていきます。ミツローさんの亡くなった元妻・美幸さんとどう向き合ったら良いか悩む鳩子。そんな姿も、なんだか、鳩子らしく一生懸命で、微笑ましくも思えます。 あと、鳩子の仕事のひとつである手紙の代筆。今回もたくさんのお客さんが代筆を頼みにきます。私だったらどう書くんだろう。鳩子と一緒になって考えながら読み進めました。言葉は生き物だから、人

          【本112】『キラキラ共和国』

          【本111】『さみしい夜にはペンを持て』

          著者:古賀史健 出版社:ポプラ社 学校でいじめにあったタコジローにヤドカリのおじさんは、日記を書くことの大切さや日記の書き方を丁寧に教えていきます。この本はそんな2人の心の通った会話で物語が進んでいきます。 初めは泡のようにモヤモヤした気持ちも「今の自分」を文章にすることで、かたちを持った「考え」に変えることができます。「思ったこと」と「考えたこと」は違うことだとおじさんは言います。思ったことは「感じたこと」、たとえば、感情のままに吐き出された憎しみや悲しみなど。でも、考

          【本111】『さみしい夜にはペンを持て』

          【本110】『みかづき』

          著者:森絵都 出版社:集英社文庫 あまりにも面白くて606ページある長編をいっきに読んでしまいました。この本を読みながら、私は教育が心から好きで、子どもたちに教えることに人生をかけているんだと、改めて思いました。 この物語は、昭和36年、学校の用務員室で子どもたちに勉強を教えている吾郎が、保護者である千明と出会い、学習塾を開くところから始まります。公教育を「太陽」とするなら、塾は「月」。塾は、公教育を助ける存在であったり、はたまた脅かす存在であったり、常に明るい表舞台にあ

          【本110】『みかづき』

          【本109】『君を守ろうとする猫の話』

          著者:夏川草介 出版社:小学館 『本を守ろうとする猫の話』のシリーズ本になります。『本を守ろう〜』がとても良かったので続編が出てとても嬉しかったです。今回は、喘息もちの中学生ナナミが図書館で見かけた本を盗む灰色のスーツ男を追って、異世界で立ち向かう話。前作と同様、猫が案内役として登場します。 『三銃士』『ルパン』など、昔から読み継がれる本を「有害」とする王。現代は、人を蹴落とし無能な者を踏み台にできる人が勝者となる、だから他人を思いやる「想像力」を生み出す本は有害なんだと

          【本109】『君を守ろうとする猫の話』

          【本108】『ただいま神様当番』

          著者:青山美智子 出版社:宝島社文庫 通勤通学で使うとあるバス停。そこに、ぽつんと落とし物が置かれています。それは、まさに主人公たちが「欲しい」と思っていたもの。イヤホン、腕時計、折りたたみ傘、周りに誰もいないのを確認し手にとると....その人は「神様当番」になってしまいます。 ここで登場する神様はとてもおちゃめな神様。ジャージ姿で「願いを叶えて〜」といって、すり寄ってきます(笑)最初は警戒している主人公たちもだんだんと打ち解けていき、神様の願いを叶えるために奮闘を始めま

          【本108】『ただいま神様当番』

          【本107】『スピノザの診察室』

          著者:夏川草介 出版社:水鈴社 大学病院で凄腕内視鏡医だったマチ先生は、甥っ子を育てるため、大学病院を辞し、市中病院に勤務することになります。外来、往診、看取り...大学病院とは異なり、ここで向き合うのは患者の顔でした。様々な事情や人生のこだわりを抱えた人たちを診療していきます。 タイトルにある哲学者・スピノザは、「人間は、世界という決められた枠組みの中で、ただ流木のように流されていく無力な存在」としながらも、「だからこそ努力が必要」と説きます。一見矛盾した考えですが、自

          【本107】『スピノザの診察室』

          【本106】『処方箋のないクリニック』

          著者:仙川環 出版社:小学館文庫 総合病院のすみっこに作られた総合診療内科。青山倫太郎が患者やその家族の話をじっくりと聞きながら、治療しています。そんな倫太郎のモットーは、「誰もが不安になっているこんなご時世だからこそ、よろず相談所が必要なんだよ。」。 検査する→病名をつける→薬を処方する→手術する、だけでは、全てが治療できないのが今の世の中。寿命が伸び、生き方が複雑になり、心配ごとがたくさんあり、守るべきものも多く、ただでさえ、病気になると不安がつきないのに、完治に至る

          【本106】『処方箋のないクリニック』

          【本105】『エンド・オブ・ライフ』

          著者:佐々涼子 出版社:集英社 在宅医療を選択した患者の最期とその家族を取材したノンフィクション。そのなかには、200人を超える患者を看取った友人の看護師も含まれています。人は死をどのように受け入れていくのか、友人を通して、渡辺西賀茂診療所の患者を通して、描かれています。 「死」は突如として現れるのもではなく「生」の先にあり、その人が大切にしてきたもの、守ってきたもの、信じてきたものが色濃く現れるんだなと思いました。死の直前に家族で潮干狩りに行ったお母さん、ディズニーラン

          【本105】『エンド・オブ・ライフ』

          【本104】『台湾漫遊鉄道のふたり』

          著者:楊双子 出版社:中央公論新社 台湾が日本統治下にあった昭和13年。台湾で出会った作家の青山千鶴子と台湾人通訳の王千鶴の交流が描かれています。とにかく千鶴子は食べる食べる食べる...市場や屋台に並ぶ家庭料理から、一流ホテルのコース料理まで美味しい食べ物が次から次に登場し、とても幸せな気持ちになります。野菜、肉、魚介類、香辛料...様々な調理法が施されていて、終始、台湾の豊かな食文化に興味津々でした。 主人公の千鶴子は、いつもハイテンションで妖怪のような大食。あれを食べ

          【本104】『台湾漫遊鉄道のふたり』

          【本103】『銀座「四宝堂」文房具店』

          著者:上田健次 出版社:小学館 帯に「涙が止まらない」とあったけど、泣ける感じではなかったです(笑)でも、人と人をつなぐ文房具や道具の愛おしさがじんわりと伝わる優しい小説でした。 主人公は銀座の老舗の文房具店「四宝堂」の店主 宝田硯。宝田は、さまざまな事情で訪れるお客さまの相談にのりながら便箋などをすすめていく。祖母への感謝の気持ちを伝えたい青年、退職届をなかなか書けない女性、亡くなった元妻の弔辞を書く男性など。「どんな文章を書いたら良いか?」という相談にのりながら、彼ら

          【本103】『銀座「四宝堂」文房具店』

          【本102】『今日、誰のために生きる?』

          著者:SHOGEN 出版社:廣済堂出版 帯に書かれた「効率よく生きたいなら、生まれてすぐ死ねばいい」があまりにも衝撃的で、どんな内容なのか読む前からドキドキしていました。 この本は、アフリカのペンキアート「ティンガティンガ」を学びにいった著者が、ブンジュ村で学んだことを綴ったものです。 「今日も自分の人生を生きられた?」 そんな挨拶が毎日交わされる村。そう、ここは「自分」を何よりも大切にする村なのです。人々は、笑顔と自信に満ちた顔をしています。自分を置いてきぼりにしな

          【本102】『今日、誰のために生きる?』