おばた りょうすけ

プロの中国伝統武術家です。都内などで形意拳や八卦掌という伝統武術や武器術を教えています…

おばた りょうすけ

プロの中国伝統武術家です。都内などで形意拳や八卦掌という伝統武術や武器術を教えています。以前は18年間、茨城県警察科学捜査研究所・法医研究室で鑑定をやっていました。武術修行や科捜研勤務などで得た経験をもとに感じたことなどを書きます。京都出身。茨城大学農学部卒。旺龍堂代表。

最近の記事

『龍になる』Become A Dragon

今日の旺龍堂・八卦刀練習会。 受講者は1名の旺龍堂会員の男性。 八卦掌教室に古くから通っている方。 - 基本練習は勿論のこと、 八つある套路(武術の型・それぞれに八つの技がある)も全て覚えておられます。 - そんな彼の突破すべき壁は『心を自由にする』こと。 - 技の正確性には問題はありません。 つまり、八卦掌で最初に求める段階 【定架子(ていかし)】 は十二分に定着しています。 - しかし、 「意」を使って技と技とを途切れなく連動させ、 「心」

    • 練武知真 第16話『全身全霊を知る為の武術』

      心と頭と体を一つの事に集中させる・・・ これはなかなかに難しいことのように感じます。 特に何もかもにおいて、スピードと手軽さが重視される近年では。 そしてその反面、 何かをしながら別の事をする「ながら」の行動が日常の大半を占め、 何かをしながら別の事を考えているこの現代では、 心と頭と体がバラバラになる傾向が強い気がします。 たしかに同時に複数の事柄をおこなうことによって、効率的な作業が可能になります。 しかし、全てが効率重視で良いのでしょうか?

      • 【受講者募集中】中国伝統武術《形意拳》京都講習会(7/21)

        7月21日(日)の午後、京都市内にて、 中国伝統武術『山西派・車毅斉系 形意拳』 の4時間講習会を開催します。 - 内容は、形意拳の基本姿勢である【三体式站樁功】から始まり、 5種類の基本技である「五行拳」のうち、【劈拳と崩拳】の2拳をレクチャーします。 趙玉祥老師より伝承された古伝の形意拳の技を、術理から実戦用法まで丁寧に指導します。 - 会場は京都駅から地下鉄烏丸線1本。鞍馬口駅下車徒歩5分。 - 武術未経験の方でも参加OKです。 ご興味のおありの方

        • 練武知真 第15話『自分を知る為の武術』

          以前にもお話ししたとおり、 私が旺龍堂で教える中国伝統武術「形意拳」・「八卦掌」では 『自由になること』 を最終目的としています。 (練武知真 第1話参照) 形に縛られず、 自分の個性を活かして、 自分にマッチしたスタイルで闘うことが その人にとっての「最強」だと思うからです。 では・・・ 「元々、何もしなくても良いのではないか?」 「少しヒントだけ貰えは、後は自己流でやればOKなのでは?」 と考える方がいるかも知れません。 私の考

        『龍になる』Become A Dragon

          練武知真 第14話『大切なものは見えないところにある事を学ぶ武術』

          中国伝統武術の形意拳や八卦掌。 それを深く修行した人は一見それほど強く見えないことが多いです。 肩は「なで肩」で、腕はだらりとしている。 胸は筋肉が隆起するどころか、むしろ少し窪んだ感じになっています。 脚も含め、全体的に緩んだ印象を受けます。 徒手系の様々な武術・武道・格闘技をよくする方々の 肩や胸の発達した筋肉、 引き締まった腹筋、 野性的な魅力あふれる肉体とは、ある意味、正反対とも言えます。 想定環境が異なるとはいえ、 同じ「格闘」を根本

          練武知真 第14話『大切なものは見えないところにある事を学ぶ武術』

          練武知真 第13話『引いて見ることの大切さを知る為の武術』

          伝統武術「形意拳」は、体幹を後ろ寄りに配置した 「三体式(さんたいしき)」 と呼ばれる姿勢を基本とします。 まずは特定の姿勢を維持しながら身体各部を調整する 「站樁功(たんとうこう)」という訓練方法で、 この三体式を身体のベースとなるようトレーニングします。 そのあと形意拳の特徴である「前進しつつ技を打つ」練習をしてゆく訳ですが、この時も三体式の基本姿勢は崩しません。 つまり、体幹後方配置のまま進み、打撃を放つのです。 通常格闘において、 攻撃時には体幹

          練武知真 第13話『引いて見ることの大切さを知る為の武術』

          練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

          格闘において「歩法」すなわちフットワークが大切なことは誰もが知るところです。 自分の本体を安全な場所へ移動し、 自分に有利で、相手に不利な位置取りをすることは、 個人間の戦闘でも、集団間の戦闘でも勝敗を左右する重要な要素となります。 武術において、いつまでも同じポジションにいる事は、自らを危険にさらす事になるのです。 特定の場所に固執せず、状況に応じて、常に自分にとって有利な場所へと「身の置き場所」を変えることは、武術にとっては至極当然なことなのです。 それ

          練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

          練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

          武術において、相手から目を離すことは大きなリスクとなります。 どんなに怖かろうが、目をそらさず、相手をちゃんと見て、 相手の動向を把握して、防御し、攻撃しなければなりません。 「相手を見る」という事は武術にとって必要不可欠な要素なのです。 中国武術の身体要領の一つに 【二目平視(にもくへいし)】 と呼ばれる要領があります。 「両の目線を水平にして前へ向ける」ということです。 仰向かず、うつむかず、真っ直ぐに前を見る・・・。 これには、

          練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

          練武知真 第10話『地に足をつける為の武術』

          中国武術の修行は【站樁功(たんとうこう)】と呼ばれる 特定の姿勢を維持して立つ訓練から始まることが多いです。 車派形意拳では、 「馬歩站樁功(まほ)」や 「三体式站樁功(さんたいしき)」を。 九宮八卦掌では、 「馬歩站樁功」、「八卦站樁功(はっけ)」や 「虎座式站樁功(こざしき)」を。 それぞれ最初に学びます。 その目的は、各武術に必要とされる基本的な身体の要領を身に付けるため。 「勁(けい)」と呼ばれる繊細な運動ができるようにする

          練武知真 第10話『地に足をつける為の武術』

          練武知真 第9話『周囲に流されない為の武術』

          「時代の流れに取り残されないように」 「流行りに乗り遅れないように」 「今はこういう時代だから」 そういう言葉をよく耳にします。 時代の流れをよく読み、 流行に目を向けることは、 自分を効率よくアップデートし、 目標をよりスムーズに達成するのに重要なことだと思います。 武術においても、 基本の技を学んだら、その応用変化を学び、 様々な状況に対応できるように自分を高めてゆきます。 時代とともに変化する様々な戦闘スタイルを観察し、他の

          練武知真 第9話『周囲に流されない為の武術』

          生まれてこのかた57年

          去る3月31日に57歳となりました。 たくさんのお祝いのメッセージ、ありがとうございます。 - 毎年この日になると思うのが、 「イロイロあったなぁ」 という感慨。 誕生日というのは、自分の人生を振り返る良い機会になっているのかも知れません。 - 良いこと、悪いこと。 良い悪いでは計れない沢山の出来事や経験。 様々な人達との出会いと別れ。 住む場所や仕事も幾度か変わりました。 自分の身を置く環境が次々と移り変わってゆく・・・。 安定を望みつつ、決してそ

          生まれてこのかた57年

          練武知真 第8話『信じる事の大切さを学ぶ為の武術』

          武術の修行は「自己の変革」の連続です。 以前にできなかった動きが、今はできるようになっている。 自分にはそこまでのレベルは無理だと決めてかかっていたものも、いつの間にか修得し、さらにその先を見据えている。 初めて見た時は神秘的で不思議に思えた技も、今は他の人に教えられ程に理解できている・・・など。 身体の使い方に留まらず、 物事に対する捉え方や考え方、 感性や人間性にも変化が生じます。 修行を続けているかぎりは、必ず『向上』という変革がその心身

          練武知真 第8話『信じる事の大切さを学ぶ為の武術』

          練武知真 第7話『他者を受け入れる事を学ぶ為の武術』

          武術というと何やら テンション高く相手を攻撃する・・・ あるいは ガッチリと防御して相手の隙をうかがう・・・ そのようなイメージがあると思います。 確かに世の中には色々な武術や格闘技があり、そのようなファイトスタイルをとるものが数多くあります。 このようなスタイルでは、自分と相手との間に 「境界線(ボーダーライン)」 が作られ、「そこをどのように攻略してゆくか」が攻防の主たるテーマになります。 シッカリと自分をガードしつつ、 ジャブやロー

          練武知真 第7話『他者を受け入れる事を学ぶ為の武術』

          練武知真 第6話『自分の弱さを知る為の武術』

          いきなりですが質問です。 「武術や武道を学びたい」と思うほとんどの人に共通する想いは何でしょう? 答えは「強くなりたい」という想い。 そう。簡単でしょう? では、 その「強くなりたいという想いの裏側」 にある思いは何でしょう? 分かりますか? それは「自分は弱い」という思いなのです。 弱いと思うから、強くなりたい。 自分一人では強くなれないから、 鍛えてもらい、 技を教えてもらい、 切磋琢磨する仲間を求める。 た

          練武知真 第6話『自分の弱さを知る為の武術』

          練武知真 第5話『目的と手段を履き違えない為の武術』

          ある日、僕の武術の師が言いました。 「無目的の練習は意味がない」と。 今自分がおこなっている修行が何の為であるか、 よく考えながら鍛錬に励め・・・ という事であると僕は解釈しました。 それからというもの、練習する時は、 「これは、つまるところ、何をできるようになる為のものなのか?」 と折に触れて考えるようになりました。 与えられた訓練法に全集中して汗水を垂らしつつ、 その先の目的について考えをめぐらす・・・。 今、 流している汗、

          練武知真 第5話『目的と手段を履き違えない為の武術』

          練武知真 第4話『和する心を学ぶ為の武術』

          武術というのは、ややもすると、他者を傷つけ、排除する為のものと思われがちです。 いえ、確かに、そのとおり。 元々は、危害を加えてくる者を撃退する技術として武術は発生しました。 あるいは、自らの矜持や欲望の為に、戦闘において相手を死傷させる術として磨かれてきた側面が少なからずあります。 しかし、時代は変わりました。 国家間の紛争においては、銃火器が発達し、戦闘機や戦艦、戦車、そして、ミサイルなど一度に大量の人間を死傷させる兵器が今なお開発されています。 また一

          練武知真 第4話『和する心を学ぶ為の武術』