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わたしの文化芸術、みんなの文化芸術。

地獄のような日々が続いている。

ギュウギュウになってみんなで熱唱したり、知らない人ともハグしたり、肌で、画面を通さないで"リアル"を感じてきた"あの場所"は、「あの頃は」と言いたくなるくらい遠い昔のことのように思う。


コロナによって文化芸術も大きな大きな被害を受けた。ぴあ総研による調査では2020年のライブ・エンタメの市場規模は前年比較で3割未満(▲4,462億円)ということもわかり、その深刻さが改めて浮き彫りとなった。

新型コロナウイルス感染症拡大により、今年2月以降、数多くの公演が開催中止や延期となり、ライブ・エンタテインメント市場は大幅な縮小を余儀なくされました。非常事態宣言解除後も、収容人数や収容率の制限など自粛緩和は段階的であることなどから、市場の回復は緩慢なものとなることが想定されます。現時点でこれらの影響を複合的に考慮すると、2020年のライブ・エンタテインメント市場規模は1,836億円と試算され、過去最高を更新した2019年から一転、3割にも満たない水準になるとみられます。(ぴあHPより引用)

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これを受けて『#文化芸術は生きるために必要だ』と題し、Choose Life ProjectとWeNeedCultureが事業者・演者の声を届ける緊急の配信を行うなど、声をあげる活動が広がってきている。


では、アーティスト・事業者・観客(わたしたち)にとって「文化芸術」とは何なのだろうか?



文化芸術とは何か?

まず、そもそも「文化芸術」とは何なんだろう?

音楽,演劇,舞踊,映画,アニメーション,マンガ等を主に指すが、広義ではそれに関わる人々や技術、歴史なども含まれる。

そして、文化庁は「文化芸術の振興の必要性」に関して、こう述べている。

(1)人間が人間らしく生きるための糧
文化は,人々に楽しさや感動,精神的な安らぎや生きる喜びをもたらし,人生を豊かにするとともに,豊かな人間性を涵かん養し,創造力をはぐくむものである。豊かで美しい自然の中ではぐくまれてきた文化は,人間の感性を育てるものである。(2)共に生きる社会の基盤の形成
文化は,他者に共感する心を通じて,人と人とを結び付け,相互に理解し,尊重し合う土壌を提供するものであり,人間が協働し,共生する社会の基盤となるものである。
(3)質の高い経済活動の実現
文化の在り方は,経済活動に多大な影響を与えるとともに,文化そのものが新たな需要や高い付加価値を生み出し,多くの産業の発展に寄与し得るものである。
(4)人類の真の発展への貢献
科学技術や情報通信技術が急速に発展する中で,倫理観や人間の価値観にかかわる問題が生じており,人間尊重の価値観に基づく文化の側からの積極的な働き掛けにより,人類の真の発展がもたらされる。
(5)世界平和の礎
文化の交流を通じて,各国,各民族が互いの文化を理解し,尊重し,多様な文化を認め合うことにより,国境や言語,民族を超えて,人々の心が結び付けられ,世界平和の礎が築かれる。(文化庁HPより引用)

この意味は文化芸術に関わる者なら痛いほどわかるだろう。しかし、世間一般の認識として「お遊び」だと思われることもある。

はたして、文化芸術は「お遊び」なのだろうか?


わたしたちにとっての文化芸術

映画や音楽ライブ、演劇、個展など、なぜ私たちは文化芸術を求めるのだろう?

確かに文化芸術が今日、明日ないからといって死ぬことはないかもしれない。

しかし、文化芸術は人々に多くの笑顔や感動を与え、人が人らしく生きるために必要なものであると言える。

「文化芸術」を概念で捉えると"エンタメ"と"アート"に分けられるが、その違いを説明する時にこんな言葉が使われることがある。

「エンタメは今日を生きる意味を人々に与え、アートは明日を生きる意味を人々に与える」

これはコロナ禍においても言えることがあるのではないだろうか?多くの人が文化芸術(音楽,演劇,舞踊,映画,アニメーション,マンガ等)に触れて「頑張ろう、生きよう」と励まされたのではないだろうか?

また、文化芸術を失ってから気付くことも多い。いつしか"それら"が生きがいになっていたり、自分の居場所になっていたり。心の中にぽっかり空いた穴を埋めきることができないまま、かくいう筆者自体もこの長い長い1年間を過ごしてきた。

アーティストたちによるオンラインライブの開催も本当にありがたかった。映画もたくさん見たし、いろんな作品がネットで見れるようになって文化芸術と触れる機会はより多くなった。

けど、文化芸術はアナログありきで、やはり物足りなさと言うかどこか寂しさも感じてしまった。日常は1年間、戻ってこなかった。

誰が悪いわけではないが、そう感じている人も多いはずだ。

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演者たちにとっての文化芸術

よく文化芸術の世界では「現場主義」という言葉が使われるが、やはり現場でしかつくれない、わからない、"何か"がそこにはある。

例えば、アーティストの中には「ライブバンド」と呼ばれるCD音源以上の"何か"をライブで発揮するアーティストがいる。アーティストたちのバイブス、技術者たちとのコンビネーション、そして観客とのグルーヴなどで生み出される"それ"は多くの人たちの心を動かすとともに、そのアーティストたちを進化させる。

そうした現場がいま、つくれなくなっている。その影響は作品にも大いに影響する。

パンパンのライブハウスだから、ダイブやモッシュがあるから"それ"を作れると言うわけではない。50%であろうが、固定席だろうがライブバンドはライブバンドだ。

しかし、アーティストだけでライブができるわけではない。施設や、技術者、スポンサーなど、多くの人たちと協力しなければ現場はつくれない。

だが、ライブハウスに50%しかお客さんを入れられないとなると当然、そのハードルは高まる。それは単に収益性だけの話だけではない。冒頭にも書いたように世間から文化芸術は「お遊び」や「不要不急」だという声があがることで周りの目を気にするようになり、集客自体もしにくくなる。

現場をつくりたいが、つくりづらく、集めにくい。こうしたアーティストたちの抱える生きづらさが彼ら彼女らの首をじわじわと締めていっている。

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事業者たちにとっての文化芸術

アーティストと同じく事業者たちも厳しい岐路に立たされている。

アナログで人が交わる場を提供してきたからこそ、コロナ禍においては為す術がなく、途方に暮れている者も多い。

いま、たくさんの事業者が文化芸術の世界から離れざるを得なくなっている。

お金を貸してくれようとも、定員の半分で行え、感染対策を強めろ、外出するな、先行きは見えないでは当然のことだと思える。これは決して甘えではない。文化芸術に関わる者としての「生きづらさ」がそこにはある。


2021年1月12日にライブイベント公演開催に関わる音楽事業者4団体、一般社団法人日本音楽事業者協会、一般社団法人日本音楽制作者連盟、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会、一般社団法人日本音楽出版社協会が、緊急事態宣言下におけるイベント開催についての見解表明として共同声明を発表した。

同4団体の会員社による開催イベントでは、会場における感染拡大防止策の徹底により昨年5月の有観客公演再開以来、現在まで全国で約230万人動員があったが、一人の感染者の発生例もないと示している。

また、ドイツでの実証実験やスーパーコンピューター『富岳』の計算などにより、感染対策の取れたイベントでの感染拡大のリスクは小さいという結論も出ている。

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文化芸術を守るために

文化芸術は今までにも多くの社会貢献をしてきた。

例えば、有名なアニメキャラやアーティストなどが行政の啓発活動に起用されたり、イベントで自衛隊や自治体などがブースを出展していたり。

そして何よりも多くの人たちに元気と生きる意味を与え続けてきた。世界とわたし、過去〜現在〜未来をつなぐものとしても、人類の生きた証とも言える。文化庁HPでもそれらが明記されているように。

「さんざん利用してきたのに冷たいもんだな」とも感じる。


では、具体的にどのような支援が必要なのか?

まず政府の対応の現状として、施設には飲食店などと同様に時短営業協力金や、事業者としての持続給付金などを受け取ることができる。(文化庁のまとめたページが見やすい)

しかし、多くのライブハウスや制作会社などが休業に追い込まれている現状にあり、文化芸術の業界からどんどん人が離れていっている

この「人が離れていくこと」が決定的に文化芸術を後退させる原因となるのだ。

その中で政府はオリパラの開催を(最大の支援として)検討しているが、先行きは極めて不透明であり、それこそ中止となればまた多くの事業者が廃業してしまう可能性は高い。(そもそもオリ・パラですべての事業者が救われると言うことでないということも大事)


案を出すとするならば現行の施策に追加し、

・動員数50%に制限をする代わりにその損失分に対しての補填

・活動自粛にあたっての従業員人件費の上乗せ補填

などが挙げられる。オリ・パラに頼らないイベントの開催環境を整えると同時に人材・技術の消失を防ぐことが最大の目的だ。


もちろん文化芸術以外にも支援が必要な場所があるのは重々わかるが、文化芸術に関わるものとして声をあげていくことはとても重要だと考える。


最後に、この1分30秒の動画を見てほしい。これが、わたしたちの想いだ。

#文化芸術は生きるために必要だ

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