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#ネタバレ TV「日本沈没ー希望のひとー」

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

(2021.11.17)

TVの「日本沈没ー希望のひとー」では、主人公の青年官僚が総理と対立してチームを外され、その後、いろいろあって山中の避難所にたどり着きました。

そこで避難所の管理をしている地元の役場職員に協力を申し出るのです。役場職員にとっては霞が関の官僚は上司も同然、すぐに有り難く指導を仰ぐことになります。

官僚は、「ホテルが何室か取れたから、一部の住民を異動させたいが、誰を選んだらよいでしょう」と役場職員から相談を受け、「体調の悪そうな人を優先したらどうですか」と、(かんたんなことじゃないか的)に即答しました。そうすると、役場職員から「多分あの人たち(たぶん高齢者のグループ)から不満が出ます」と返され、初めて現場仕事の難しさを知り、「自分は国民の為とか言っていたが、実は何もわかっていなかった」とつぶやくシーンがありました。

高級官僚からあのような言葉をいただけると、役場職員は泣いて喜ぶと思います。

追記

主人公・天海啓示(小栗旬さん)は国の日本未来推進会議で働いていましたが、総理を含めた政治家や、同僚にいる反対勢力のために、とうとう追い出されてしまいました。

傷つき、失意の中、流れ着いた山中の無名の避難所で、彼は役場職員の手伝いをすることになったのです。たぶん本音では「避難所ぐらい簡単だ」と思っていたのでしょう。しかし、そこにいる100人単位の避難民たちにも主義・主張があり、いや、彼等こそが公僕が奉仕する相手、机上ではなく、生身の存在だったのです。彼は未来推進会議の抵抗勢力とおなじように簡単にはいかないことを悟り、今までの無知を恥じました。どうやら、「未来推進会議等と避難所は、相似形に置かれていた」ようです。

そして日本が沈没すると、100人単位どころか、1億3千万人の避難民が発生するのです。いったい彼らをどこに、どうやって避難させるのか、誰をホテルに入れ、誰を広場で寝かせるのか。食事は、物資は … 「避難所の話は、日本沈没の問題と相似形」でもあります。

普通の公務員から見て政治家先生は上司のような存在です。選挙で勝ち上がるなど凄いこと。だから敬意を表しています。その上で申し上げるのですが、そんな先生も、選挙で勝たなければ失職しかねませんので、住民の人気を取ることも仕事の一つだと思います。

対して公務員はというと、採用時から「公務員バッシング」という世界を泳いでいます。仕事のためなら住民に嫌われることも致し方ないと思っています。徴税職員などは特に。さらに、TVドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」では、ヒロインたちに「私たちは住民のサンドバッグよ」とさえ言わせていました。諦念すら漂わせて。現在放映中の「日本沈没ー希望のひとー」を観ても、やはり「政治家と官僚の、微妙な思惑のずれ」が描かれていました。

誤解の無いよう申し添えますが、だから政治家はいけないなどと軽率かつ失礼な事を言うつもりはありません。どちらの視点も必要です。ただ、同じ公の仕事でも、住民の人気が必要な仕事と、嫌われ仕事があるということを改めて思ったのです。

(2021.12.13)

リアルでも地震が続いている島から本土への避難者が出ているようです。昔は、伊豆大島の火山の時も全島避難がありました。このような時、公務員は最後になるはずです。いや、一部の公務員は先に本土へ渡り、島民受け入れのための事務という重要な仕事をしなければなりません。いずれにせよ、公務員の自由は制約されるわけです。「日本沈没」というドラマが放映されていた現在、スケールは違いますが、とてもリアルに感じられます。公務員は管轄に憑くのが使命なのでしょう。そうでなければ無政府状態になりかねません。

そして、米国を襲った大竜巻。まるで津波が襲ったかのように建物が全壊しています。自宅や家族が被害を受けても、住民のために出動する公務員が、あの被害者の中にもいるはずです。

(2021.12.15)

ニュース映像など観ていると、国会議事堂内でしょうか、政治家先生方の会議室に、これに似たラジオが置かれていることを、複数回見たことがあります。なぜ覚えているかというと、私も姉妹品を持っているからです。ホームセンターで買った安価な物のせいか、ラジオの感度はそれなりですが、わりと口径の大きなスピーカーが付いていて、音色もソフトで心安らぐものです。

あの会議室の製品とそっくりなものが、TVドラマ「日本沈没―希望のひとー」の田所博士の研究室に、(最終話の後半に)これ見よがしに置かれていて、アップにもなりました。リアルです。

(2021.12.16)

TVの「日本沈没」ロスになったので最終話を再度観ています。そうしたら、主人公・天海(小栗旬さん)が、新聞記者・椎名(杏さん)に「一緒に移民しないか」と誘うシーンで、天海がワインレッドのネクタイをしていることに気がつきました。政治家先生が時々やっている赤系の勝負ネクタイのようです。その後の日本未来推進会議ではグレー系のネクタイをしていましたが、再度、椎名と合うシーンでは再び勝負ネクタイになっていました。もしかしたら、「天海にとっての(秘めたる)勝負とは、会議ではなく椎名だった」のでしょうか。

ラスト近く、日本の一部(北海道)が沈没せずに残ってしまったので、椎名は「日本の復興のために天海は北海道に残る必要がある」と考え、さみし気に「私一人で移民します」と言います。しかし、天海は「移民先でも仕事があるから、いっしょに行こう」と明るく答えるのです。それを聞いて、思わず涙ぐむ椎名。女は男に「私と仕事と、どっちが大事なの?」と言うらしいですが、このシーンでは「私より仕事が大切だからしかたありません」という女に対して、「仕事よりおまえの方が大切だ」と答えたようにも見えました。

そのとき陰で聞いていた官僚仲間の常盤(松山ケンイチさん)が出てきて、「(そういう事なら)俺が北海道に残る」と言いました。天海は事実上、同僚への根回しなしで、独断人事をしたに等しいのです。椎名という女のために。「天海は、国家の危機にも女を追いかけることを忘れない、007のような官僚」でした。

(2022.3.5)

ウクライナでは避難のための「人道回廊」を作るそうですが、島国日本がウクライナ状態になったときには、陸路では逃げるところがありません。「日本沈没」のように非効率極まりない船を使うしかないのです。その船に自衛隊を用いれば、敵から撃沈される心配も出て来ます。さらに、どこに逃げるのでしょう。隣国に仮想敵国はあっても友好国は少ない。友好国である台湾に逃げようにも、小さな国ですし、台湾有事にともなう日本有事の場合には、台湾には逃げられません。やはり専守防衛(本土決戦)以外の防衛を考えるべきだと思います。

(2023.1.31)

TVドラマ「日本沈没ー希望のひとー」では、政府は国民の国外避難を計画しますが、国民の中には一目散に逃げだす人もいれば、日本沈没を信じない人、信じていても愛する日本と運命を共にしようとする人がいました。そして、最後の最後、(記憶が確かなら)北海道に200万人の国民を残したまま、政府は国民の国外避難計画を終了し、政治家や公務員は全員日本から出て行くのです。政治家や公務員には新天地での避難民への膨大な業務があります。

「最後の一人まで説得して連れ出す」などと政府が美談を実行していたら、自分たちが海にのまれるだけでなく、新天地の多くの避難民にとってマイナスになります。戦争ではありませんが、日本沈没は有事であり、コロナ過もまた有事なのだと思いました。

コロナ過からの出口戦略が話題になっています。そこで思い出すのは「医学的終息」と「社会的終息」です。世界も日本もやはり「社会的終息」になるのでしょう。そして、コロナ過の後に「核」がチラつくのはウクライナとロシアの戦争です。よろしければ映画「復活の日」のレビューをご覧ください。

(これは2021.11.17~2023.1.31のパレット記事に加筆再掲したものです。)

追記 2024.5.21 ( 映画「日本沈没」〈1973年〉の追記Ⅲ以降にも、こちらのレビューが書いてあります )

#ネタバレ 映画「日本沈没」〈1973年〉|sakuranboのパレット (note.com)


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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