頭痛が消えた!(脳腫瘍 10)
手術の後、回復室に運ばれて目が覚めてから、ずっとお腹が空いていた。朝も昼も食べていないのだから、お腹が空くのは当然だ。
看護師さんに聞いたら、「食事は明日まで出ない」と言われた。
全身麻酔の後なので胃が動かないからということだったが、自分ではお腹が鳴っている音が聞こえた(ような気がした)。
しばらくして、水なら飲んでもいいというので水をもらって飲んだ。
何も口に入れないよりマシだったが、水は胃で吸収されないから、胃で吸収されるものを飲みたかった。
夜になって、ジュースが飲みたいと言うと、
「じゃあ、先生に聞いてみるね」
と、看護師さんが先生に電話してくれた。
先生からはジュースの許可が出たので、買い置きのグレープフルーツジュースを、看護師さんに吸い飲みに移してもらって飲んだ。
それでようやく気が済んだ。
翌朝、看護師さんには昼から食事が出ると聞かされていたが、臼井先生が回診に見えたとき、朝食を出してくれるように頼んだ。
食いしん坊の患者だと呆れられたかもしれないが、朝食は出してもらえた。
メニューは、全粥、鯵の干物、小松菜のお浸し、さやえんどうの味噌汁。
食欲があるのでおいしく感じられ、残さずほとんど全部食べた。
それなのに、食事の後で洗面所に連れていってもらい、うがいをした拍子に食べたものを全部吐いてしまった。
ああ、勿体ない。せっかく食べたのに。
胃のせいではなく、全身麻酔の影響で、喉に痰がからまっていたせいだ(と、自分では思った)。
その後は1日中なんとなく気持ち悪くて、空腹感がなく、昼食は食べられなかった。
また吐くかもしれないと思うと、夕食も半分しか食べられなかった。
自分では食欲があると思っていたが、本当は胃が動いていなかったのだろうか?
体重を増やしたいというのが強迫観念になって、食べることに執着していたのかもしれない。
回復室がうるさくてろくに眠れなかったので、自分の病室に戻ってからゆっくり眠った。
ここは4人部屋のせいもあるが、静かで落ち着ける。病室はこうでなければ。
この日は採血とMRI検査があった。
気が付くと、あの脈打つような頭痛が消えていた。
私自身は頭痛が脳腫瘍のせいだと確信していたが、先生には取ってみなければわからないと言われていた。
これではっきり証明できた。
手術で切ったところから出てくる余分な血を体外に出すため、傷口には管が入れてあった。
これはドレインといって、管の先は丸い容器につながっている。
容器はポリエチレンのような半透明の素材でできており、持ったり吊るしたりしやすいようにバンダナで包んであった。
血が逆流しないように、ドレインの容器は常に頭より低くしておかなければならない。
容器を床に置くほど管が長くないので、ベッドに寝ているときはベッドの柵に容器を吊しておく。
起きるときは看護師さんを呼んで、吊してあるドレイン(の容器)をベッドの上に乗せてもらう。
またすぐに起きるつもりで、ほんのちょっと横になりたいだけのときは、ドレインをベッドの柵に吊さずに枕の脇に置いておく。
その場合はクリップで管を挟んで血が逆流しないようにする。
寝るときは、頭の後ろから出ている管を体の下に敷かないように注意する。
トイレや検査に行くときは車椅子で連れていってもらうので、ドレインをひざに乗せて持っていき、車椅子から降りるたび、乗るたび、戻ってベッドに上がるたびに、看護師さんとドレインの受け渡しをしていた。
ドレインは体内から出てきた血が入っているので、抱えていると生暖かい。
バンダナで包んではあるが、隙間から中の血が見えるから、抱えているのはあまり気持ちの良いものではなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?