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ガールズ&パンツァーとぼく

模型誌に唐突に載っていた新しいアニメの広告を見て大多数の戦車模型ファンは首を傾げたと思う。Ⅳ号戦車D型に女子高生が乗っているピンナップ。タイトルは「Grils & Panzer」。後ろになんか分からんけどデカイ構造物が…空母っぽいな?そんな広告ページを見て不安というか期待値は正直高くなかった。今更隠す事でもない。どうせ戦車を出してミリタリーファンがガッカリするアニメになるんじゃろうなーでもせっかくだし見ておくか。それくらいの気持ちだったのを覚えている。

それでも一話はリアタイ視聴をしたと思う。今なら脳内再生を余裕で出来るオープニングアニメーションはさすがにワクワクしちゃうカットの連続。おおーあの戦車が出てくるのかーふむふむー。本編が始まると猛スピードで走るチャーチルとマチルダ。おいおいおい、歩兵戦車ですよ?もう少し重量感というか、ドロドロドロと走る姿が見たいぞ…そして主人公たちの乗るⅣ号戦車D型の足回りが映り…履帯の重みのある動きを見てちょっと姿勢を正した。これ、真面目に戦車を描こうとしてないか…?

一話が終わりカメラがパンして学園艦が映し出された段階で「これは…気になる展開じゃないか!」となるわけだ。2話を観終わった頃にはすでに「ガルパン」の虜になっていた。モデラー諸氏は早々に登場する戦車のプラモを探し出す。主役級のⅣ号D型はタミヤの古いキットかドラゴンのD型、旧トライスターのD型など選択肢は色々ある。あの頃どうしたらいいのか困ったのは38(t)B型ぐらいかな?旧トライスターのキットは入手難だったし。当時Twitter上でリアタイ視聴をしてわいわいしていたのは楽しい記憶だ。T-34のすごい人やシャーマンのすごい人がTL上で登場したばかりの戦車に関して盛り上がっている状況はほんまに凄いことだった。

そんな中でファインモールドからバレー部仕様の八九式の商品化や放映直前の東京でのホビーショーで発表済みだったプラッツからもキット化が色々決まる。当時アーマーモデリング誌を中心に作例を担当してたのだが、編集氏から「ガルパン見てますか?」との質問が。勿論見てますよーというとファインモールドの八九式やらない?とのお誘いが。
当時はガチガチの戦車モデラーはガルパンの事は興味がないか、あからさまに美少女×戦車という構造に拒否反応を示していた。ミリタリー好きでアニメも見てるミリタリーモデラー(まあ、ぼくの事だが)なんかは楽しんでいたし、恐らくガルパン作例は来るなと思ってたので二つ返事で了解した。
依頼自体はキット素組でいいので、派手なバレー部復活で宜しくお願いしますとの事だった。キットは問答無用でよく出来ている為、一週間もかからず完成してしまう。それならオマケを付けるかとエポパテでヒネったのがキャプテンのフィギュアだった。「オマケつけといたので自由に使ってくださいね」と編集氏にも黙って送り付けたのだ。

実はこの作例のみ現物が手元にない。

アーマーモデリング誌2013年1月号(出たのは2012年12月13日)掲載。模型誌でフィギュア込みのガルパン作例が載ったのがこれが初だったと思う(戦車模型単体自体は申し訳ないがちょっと把握出来てない)。あとあとイメージスケールなんて名前を付けられちゃった敢えてちょっと大きめに造形していたフィギュア、今でもバランスはいいんじゃないかと思う。造形自体はちょっと恥ずかしいんだが。これが編集部でも好評だったようで早々と次回の作例の依頼が入る。アニメは盛り上がっていたが例の総集編などを挟んでおり不穏な空気が流れもしていたな。Ⅳ号戦車はH型になるよと事前に教えて頂いて資料も届く。さてやるかと気合を入れ、タミヤのH型とJ型のニコイチをしたのがこの作例だった。

久しぶりに引っ張り出して撮影した。

これが掲載された時にはすでにTV放映も終わり、延期されてた最後の2話も放映されたあとだったと思う。実はシュルツェン架の構造を把握出来ておらず、G型仕様と思い込んでたので恥ずかしい(設定では外側はコの字フックの初期型、シュルツェン架は三角が付いた後期型のハイブリッド)。
そしてフィギュアは自分で販売するかもと念のため複製しておいた。その結果モデルカステンからキット化されたのは嬉しい誤算だった。2014年の静岡ホビーショーが初出だったかな?ここらはウロオボエである。平行して趣味で作っていたあけびさんと合わせて3種。公式のフィギュアとしては初めて世に出た製品だった。

こうしてAM誌にてガルパン作例担当になり、色々作った。モデルグラフィックス誌でも特集があり、そちらにもお邪魔させてもらうようになる。特に記憶に強いのはT28重戦車。劇場版公開前に「実はこんなの出るんだよ…作る?」って言われてたやつで、なんかこう先に知る優越感的な楽しみと劇場でネタバレをしたかったなという複雑な感情でもあった。設定とキットの相違点を洗い出して手を加えるだけではなく複雑怪奇な足回りや強度不足の主砲基部、側面履帯ユニットの取り外しなど色々テンコモリだった。塗装はデカくて大変そうだったのでクレオスのマホガニー色のサーフェイサーを使うという荒業を取ったところ、のちに出たプラッツ製キットの塗装指示に採用されていてニヤニヤしてしまった。

こないだ発掘したら履帯が大惨事だった。まあ、仕方がない。

この辺りでモデルカステンから原型を担当したフィギュアが発売されたりファインモールドからもインジェクションキットの原型を担当させてもらったりもした。有難い事にこれらの仕事で「原型師」として名乗れる事になった。余談だが最初のカステンの時のあけびちゃんは「おっぱいはもっと盛ってください」という監修が入り、ファインモールドの時は(インジェクションの都合上)横乳が引っかかるのでもう少し減らしてください」という監修が入ったのは面白いものである。ワンフェスでは1/20で原型をこさえ、販売もしている。12体ぐらいだったかな?秋山殿やみぽりんは二種類ずつ作ったなー。今は版元の都合でイベントでの販売はNGだが、また降りるようになれば作りたいなあとは思う。

対プラウダ戦のみぽりんは未だに好きな作品。ただ手元に現物がないんだ…

ガルパン関係のフィギュアの仕事として一番印象深いのはやはりPLAMAXのダー様だ。話を頂いた時「まじすか」ってなったのだが、そりゃ嬉しい話だったのでありがたくお受けした。インジェクションキット化だった為、色々制限もありつつ打ち合わせを密にして原型を作ったのはとても勉強になった。

まだ手に入るぞ!

雑誌作例のほうに話を戻そう。アーマーモデリング誌で「コレが本当の戦車模型道」の連載の話があったのは2017年。最終章前の話だから基本は劇場版合わせで揃える内容とし、月一で一輌毎に素組状態から改造し完成まで持ってくるという連載を2年ぐらい続けた。最後のほうは誌面の都合で月一ではなくなっていたが、さっき数えたら23作作り起こしていた。まじかー。元々単行本化するという話で始めた連載だったが、諸々都合もあり「MG&AM誌のガルパン作例まとめ本」として世の中に出る事になる。まだまだ作りたい車輛もあったがとりあえず連載は休載中である。ガードレールの話はNGだぞ。

勿論これもまだ手に入るぞ。

勿論この連載外でもMG誌でもAM誌でも作例はやっており、ぶっちゃけ自分でも把握出来ていないのが現状である。今度ちゃんとリストアップしてみよう。
これ以外だとMG誌のサメさんチームの菱型戦車は強烈な記憶だ。これ、実は色味を完全に勘違いしており、茶色ではなくどちらかというと鶯色っぽい。いつか塗り直したいなあと思っていたら3話以降の海賊旗を降ろしたバージョンで作ればいいかとなってるのでこの色のままにしてあるのだ。いただいた資料が古かったのか、印刷の都合か、まあともかくやっちまったのだ。悔しい。勿論色以前にマストをスクラッチしたり海賊旗やロープを自然に見えるように工夫したりと試行錯誤したのをよく覚えている。

輸送に難があり、過去に二回ぐらい東京まで手持ちで運んでいる。

とはいえここしばらくガルパン作例は担当していない。最後に作例で作ったのはMG誌の最終章第二話特集号のT-26軽戦車かな。これ2021年だからもう一年前か…AM誌での吉岡さんとのコラボのほうが後じゃんって気付いた…
でもこの画像好きだからこっち載せちゃおう。

T-26は切った貼ったの大改造。楽しかった。

そんな感じで僕とガルパンというと雑誌作例とワンフェスがメインな感じもするが、劇場版の最速上映を深夜に観に行ったり大洗に遊びに行ったりとそれなりの「ガルパンおじさん」としての楽しみ方もしている。いうても大洗は3回足を運んだだけか。もう少し近所なら何度も足を運んでると思う。

初めて大洗に行った時。撮影データ見てみたら2013年4月ですって…

ここでぼちぼち白状してしまうが実はあんまりガルパン関連のグッズは購入していない。勿論プラモはいくつか買っているが、基本は作例で使用するプラモは編集部から届くし、そもそも公式キットとして発売される前の「通常版」のキットを使って作る事のほうが断然多い。デカールだけはモデルカステンのガルパンデカールがあるので助かるが。
僕自身それなりの「ガルパンおじさん」だとは思っているが、前述通りお布施としてグッズなどの購入をしているわけではなく、どちらかというとおこがましくも「ガルパンという戦車模型の一大ムーブメントを少しでも牽引する立ち位置」として活動している気持ちのほうが強い。それを表に出してドヤァ感を出すつもりはないが、そもそもここ一年ぐらいガルパン模型を作っていないのも目を逸らせぬ事実。勿論作例しか作っていないわけじゃなく、以前も趣味でこさえたガルパン模型はある。MG誌の模型戦車道選手権にも乱入しているぞ(迷惑だな)。

まだ語り足りないが、作品一つずつの思い出を語っているとキリがないし、文字数を見るとすでに充分語っている。改めてガルパン10周年を祝いたい。ガルパン繋がりで多くの方々と知り合う事が出来、本当にこのコンテンツには感謝しかない。今後も長く続いてほしいものである。というかせっかくの10周年だから何か作りたいなあとぼんやりしていたら10年目が来てしまった。イカンなーと思うので何か作ろう。とりあえずMG誌の第三回模型戦車道選手権に何か出すぞ。迷惑なやつだがお祭りにはなるべく参加したいのである。僕はガルパンおじさんの中でも戦車模型道担当なのだ。ああ、またやってんなアイツめぐらいな気持ちで見てくれたら有難い。■

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