朝起きると、知らないラッパーが家にいた。 ネックレス、キャップ、ジーパン、大きな口、高そうな時計、黒い肌。 椅子に収まりきらない大きな体を立ち上がらせ、バスケットボールを片手で掴めそうな手を僕に伸ばす。恐る恐るその手を握ると、彼は笑顔でしっかりと握り返した。 旅行に行った両親の話は本当だった。 外国人のラッパーが、我が家にやって来た。 彼はクラスメイトとなった。制服に身を包んでも彼はラッパーで、自己紹介はサムズアップひとつで拍手が湧き上がった。当然、常に人
地面に突き刺した三脚杖にガラス玉を載せ、手を添える。露光魔法によって風景をガラス玉に刻む。焦点や光量を自在に操り、描き変えた世界をガラス玉に刻みつける快感は何ものにも代えがたい。 今から私は、嵐を刻む。 『嵐が来る!』今朝に道すがら出会った占い婆が私の顔を見るなり叫んで一目散に逃げ出した。嵐とは何か?決まりきっている。雨風でも、魔法でも、騎馬隊でもない。たった今戦場をなぎ倒し、大地を引き裂いて降り立ったもの。 竜である。 パシッ、ガラス玉に景色が刻まれる音がした。
攻略ではなく感想記事です。主観100%で裏付けとかしてません。序盤さえ抜ければ楽しいpv通りのゲームになりますので、そこまでの過程を記してみました。 罵詈雑言入り乱れるsteamレビューの影からoutpostくんを慎重に観察する賢明な方々の参考になれば幸いです。(25時間プレイ時点) 序盤の流れ解説 〜いくらなんでもチュートリアルが長すぎる〜Q. このゲームを一言で表すなら? A. レジギガス ロボットみたいな伝説ポケモンたち(レジスチルとかレジアイスとかレジロックと
絡繰三十年、西暦にして一八八八年。孤島の片隅で二人の男が相見える。 細身の青年が握るは筆のごとき棒。その先端からは、絹糸が如く引き絞られた青き焔が竹竿ほどに伸びていた。陽炎が揺らぎ、大太刀を錯覚させる。 対する男が持つは小舟の櫂ほどの巨きな木刀。発条や歯車、鋼線が随所から垣間見え、男の腕を屋久杉の様に隆起させていた。 ひときわ大きな潮騒が岩を打ち、彼らの間にひとつぶの水玉が落ちた。 男が砂を蹴り上げて青年の視界を封じる。青い焔が振り払われ、砂塵を蒸発させる。だがそこに
白い息を吐いて、1杯では値段もつかない安酒をあおる。とうてい酔えないこれは地下墳墓の探索のお供に相応しい。石造りの不潔で不気味な通路をひとり歩く。ときたま同業者か化け物の物音が彼方から聞こえてくる。骸骨はカチャリ、ゾンビはベチャリ。ただし、レイス……救い難き悪意に満ちた魂の怪物からは、何も聞こえない。寒気だけが奴を感じる唯一の手掛かり。だから安酒で暖まり感覚を研ぎ澄まさなければならない。 長い通路の最後に行き当たり、腐った木の扉を静かに開ける。蝶番の軋む音が響くが、化け物ど
脇に草木が生い茂る荒廃したハイウェイは、むせ返る腐敗臭と血潮の匂いで満ちていた。打ち捨てられたクルマには近寄りたくない。 「なあジョッシュ、人間は死んだらゾンビになるのにロボットはゾンビにならないんだ?」 日本刀を振り回してゾンビを蹴散らす大きなバックパックを背負った長身の黒人が、憂鬱な顔で俺に問いかけた。 「ボブ!俺が悪かったって何度も言ってるだろ⁉︎こんなちっこい弓もどきに鉄の塊を吹き飛ばす力があるなんて想像できるか⁉︎」 バックパックの口から腕の形をした鉄の塊が
ジップロックを震える手で開ける。コバルトブルーに淡く光る5つの豆粒。これを探す旅で6人死んだ。 『AMMO』と刻まれた球状のフタを開け、豆粒を流し込む。 矢が頬を掠め、隣のボブの首に突き刺さった。急いで地面に伏せて物陰に隠れる。 ケータイの画面を見る。次の手順だ。 『7.ハンドルを展開して矢印の方向に回してください』 レーザー・ガンの表面の突起を探し当てて引っ張ると、オモチャのようにハンドルが飛び出した。 ハンドルのために14人死んだ。 矢印の方向に
僕は天使に遭遇した。 昨夜、僕は全高も値段も高いこのホテルの屋上から飛び降りた。が、あと少しのところで唐突な謎の力でふんわりと着地してしまった。 ふと見上げると、そこには絵に描いたような天使が無表情で僕を見下ろしていた。彼女には羽が生えていて、光る輪っかがあって、白いヒラヒラした服を着ていて、そして何より…… 「美人だったなぁ……」 「私もそう思うネ」 インド人が窓に!僕が悲鳴を上げた瞬間、彼は窓を金槌で割って部屋に侵入し、僕を布団から引ッこ抜いて瞬く間に縛り上げ
==0== 延明エイジは生き残りである。 何の、と問われるとバスの事故である。 孤児院の幼い子供らを乗せたバスは高所から転落、僅か2名の生存者を残して多くの孤児が亡くなった。しかもその2名の内片方は意識不明の重体であり、回復の見込みは無かった。 つまるところ、1人だけが生き残ったようなものだった。それでも事故の規模からすれば不幸中の幸いと言っても良かった。 だが、奇跡はあったらしい。意識不明の重体であったもう1人の生き残りが数年間の昏睡状態の末に回復したのだ。 それ
「すみません、隣いいですか?」 「嫌って言ってもお前座るだろ」 「誰がいつもお金払ってあげてると思ってるんですか」 とある街のとあるラーメン店。平日とはいえ帰宅ラッシュの時間帯のため、人はそこそこ多い。そのため白髪の全体的に色素が薄い女と青髪の凶悪そうな女が2人並んで座っていてもあまり目立ちはしない。 凶悪そうな青髪の女、サラは隣に座ってきた白髪の女を一瞥もせずにズボンのポケットをまさぐる。 「いくら私でも金ぐらいは持ってるぞ、夜」 サラはポケットからシワくちゃになっ
オレはチウネン・ポンチョ!ハーバード卒の交通整理員だ!この道10年ちょいのベテランだ!Googleの面接は2秒で落ちた! よろしくなガキども! さて今日の昼メシはここ!メイド喫茶!そういうものらしい!メイドも喫茶も知らないぜ! 来た理由はクーポンの為だ。 どれぐらい前かは忘れたけど海辺に旅行行って散々な目に遭った時の帰り際に、この店の店員を名乗るヤバそうな電波女からクーポンを貰ったのを昨日まで忘れてたんだ。期限が今日までなので危なかったぜ。 (ちなみに電波○○ってもう
「大変です!大変です!」 「ジェシーやい、そんなに慌ててどうしんだい?」 ジェシーは息絶え絶えになりながら、呼んだ男の肩をガシッと掴む。 「落ち着いて聞いてくださいCE……親分!」 「ワシは親分だ。で、どうしたんだい?」 「ウチの、ウチのゼラチン模造桜がサマラ恒星系で取引禁止となりました!」 「なぁ〜〜にぃ〜〜ッ!」 ジェシーに思いっきり怒声を散らすこの親分の名は井戸直粥(いどなおかゆ)。押しも押されもしないが、あまり推されぬゼラチン桜製作会社『桜畑門内』のCE
彼は、罪を背負って死んだ。 罪を負った人間は地獄に堕ちる。 地獄には悪魔がいる。 悪魔は全ての罪の根源である。 彼は全ての罪を滅ぼすと決めた。 だから彼は十字剣を振り下ろす。 全力で振り下ろされた十字剣は悪魔を縦に両断する。悪魔はドチャドチャと臓器を撒き散らし右半身と左半身はそれぞれ倒れた。 地平線が見える。彼の足元の山は地獄全ての山より高いからだ。その山は悪魔の死体で出来ている。 地平線の内側に悪魔は居なくなった。しかし向こう側にはまだいる。地獄は無限である
人類は7日で滅んだ。 銀河連盟使節によるスタァ砲により、3割が蒸発した。これが1日目である。 地底皇帝の無頼絶殺刀により、3割が粉微塵となった。これが2日目である。 マザーコンピュータのハード・ストライキにより、3割が渇き死んだ。これが3日目である。 残りの1割は互いに殺し合い、滅んだ。これが4、5、6、7日目である。 この詩は、この星に住まう者なら誰でも知っている ……のだが、その、うん、問題点が多い。 ・『地底皇帝』は差別用語である。正しくは『地球皇帝』である
『ザビー選手、垂直ドロップキックの姿勢!トドメを刺すつもりだァ!』 筋肉ダルマの体当たりをマトモに受けて朦朧としているオレは、この隕石を喰らうと死ぬ! バネ系グラップ特有の発射音がなる。飛び立ったデーモンタコ吸盤は109ビルのテッペンの0に張り付く。左手の人差し指はトリガーを押し込み、超密炭糸を巻き取る。 空へ飛び立ったオレは右手を振りかぶり、ザビーへと迫る。 「オー・マイ・ガッド!垂直ブン殴りに変更デス!」 ザビーは眼前に迫るオレを鉄拳で殴りつけ、咄嗟に放ったとは思えない