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『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』【レビュー】【本】【#読書の秋2020】

・一人暮らしが向いていない。
・共用費で『鬼滅の刃』を全巻購入したい。
・いつでも友人を招いて、流しそうめんをふるまいたい。
・いつでもたこ焼きパーティがしたい。
・生活費を月5万円以上安くしたい。

この辺りに、少しでも興味がある人は本書を読んでみる価値があると思う。そしてもちろん「シェアハウス」自体に興味がある人もだ。必ずしもオタクであることは必須要素ではない。家族ではない、様々な人が集まって、シェアハウスをするための経験談と、そのノウハウを堪能することができる。

本書は、そんな新しい知見のための1冊である。



この本は『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』というタイトルの通り、オタク女子4人によるシェアハウスをめぐる実録エッセイだ。

ゲームや観劇、V系バンドとオタク要素はそれぞれ。年齢は35歳から39歳。時期は2018年から、コロナでの自粛期間に差し掛かったあたりまで。人を探し、家を探し、一緒に生活する様が描かれる。

皆さんの中にも、「シェアハウス」という言葉に魅力を感じたことがある人はいるだろう。家族ではない他人であり、生活サイクルや、趣味、年齢も違う中で、はたしてやっていけるのだろうか。そんな不安に駆られた人もいるだろう。そんなときに読みたくなるのが、先人の知恵と経験であり、そういった知識としての需要に、本書は十分に答えてくれる。

そして、本書はそういった「知識」以上に、新しい生き方を示してくれているという点で優れている。


『生活コストが下がるのはどう考えても健康に良い』

冒頭に書いたように、筆者の生活費は前年同月とくらべて5万円以上安くなっている。もちろん引っ越しに伴う資金などはあるだろうし、永続的に続くものでもないだろう。それでも月に5万減というのはかなり大きな数字だ。

毎月の支出が減ることは単に数字が減ったという事実だけではなく、未来を生きるための心の余裕が増えた指標でもある。しかし現実には、大幅に給料が増えたりしない限り、なかなか捻出できるものではない。そんな部分を能動的に作り出せるのは、人生にとって大きな意義を持つ行動だ。

もちろん生活の質が下がったら意味がないけれど、月21万の一軒家に4人で暮らす(本書の場合は家賃は、家にいる時間や、住環境によってそれぞれ差がある)という方法であれば、生活の質が向上することも同時に考えられる前向きな方策だ。


『「家族だからこうしなきゃ!」といった、思い込みの重力からは解放されているように感じている』

そしてこの観点も大切だ。

家族ではない存在、言ってしまえば赤の他人と同居するのは、不安も付きまとう。だが『家族』であるがゆえに、そこに歪んだ重力が発生していることも多々あるものだ。他人なら必ずしもうまくいくわけではないだろう。だが、リスクは家族であっても存在するのだ。

本書では、「衛生観念・経済観念・貞操観念」のすり合わせができれば、他人でもうまくいくと書いてある。なるほど納得の3要件。もちろん長いこと同じ場所で生活することになれば、よりその差は顕在化するだろう。そうやって破綻した結婚生活の話はよく聞く。
しかし他人であればこそ、そこにルールを整備し、是正を求めることに正当性が生まれる。家族であったら、なあなあになってしまい、「察してほしい」という勝手な欲求にもとづいて、面と向かって言えないようなことも言うこともできる。

長期的なシェアハウスを考えたときに、不安要素として考えられそうだが、他人であることはどちらかと言えば美点なのである。



個人的に一番テンションがあがったのは「ツインシグナル」のクラウドファンディングに4人中3人参加していたくだり。

『月刊少年ガンガン』ならびに『月刊Gファンタジー』にて1992年12月号から2001年12月号まで連載されていた漫画だ。私も大好きで単行本もドラマCDもうちにあった。

AIものというかロボットものというか……とにかくファイーバードとか時代の流行りだったのかもしれない。もはや実家にも残っていないので、続編が形になったタイミングで、どこかで古いものもまとめて読みたい。

そういえば、本書には随所にオタクな単語が沢山出てくるので、予備知識なしで読むとなんのことやらわからないということはあるとは思う。そこは注意が必要だろう。



なんにしろ、本自体は、お手軽で読みやすく2時間程度で読める。

実体験であることの説得力。各種のハードルや数字が出ていることも大きい。シェアハウスを考えている人は読む価値があるし、人生に迷っている場面でも、こうやっていろんな生き方があることを知ることは救いになるだろう。



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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)