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森の鈴蘭 5月2日〜365日の香水

muguet des bois/coty/1941~時代背景
昨日に続いて、muguetミュゲ~スズランの香水。
1941年のリリースということはパリはナチスドイツの占領下にあった。
一般市民が屈辱と物資の不足に耐える一方で、いわゆるセレブたちはナチスの司令部が置かれたホテル・リッツのラウンジに出入りが許され、シャンパン片手に談笑もできたいたという。
(この中には、シャネルやコクトーもいた。)

muguet des bois/coty/1941~調香師
そのような時代に”森を歩けば出会う春の幸福の花スズラン”の香水が名門コティからデビューした。
当時のコティ社は数年前に創業者が亡くなり、元妻が1963年に米国企業に事業売却するまでの過渡期にあった。
調香師はアンリ・ロベール(henri robert)で、後にエルネスト・ボー亡き後のシャネル社を支えた人物。
グラースの調香師一家に生まれたアンリは、コティの主任調香師になると、少し前に急逝した創業者フランソワ・コティへのトリビュートとして彼の愛したスズランをテーマにした香水を手掛けたという。
ミュゲのシングルフローラルでありながら、ホワイトフローラルとグリーンフローラルの絶妙なアコードとスズランのすがすがしさを描き切っていて、見事としかいいようがないのは、さすがアンリ・ロベールのなせる技。

muguet des bois/coty/1941~森で出会う幸運
昨日も書いたけれど5月1日はフランスではスズラン祭りの日、パリの街角でもあちこちにブースが出てスズランの花が売られている。街ゆく人はそこで「大切な人に贈る」花を買う。
この光景とは別に、森に咲くスズランに出会う喜びを想像してみた。
スズランの群生する光景、まず香りが届く。瑞々しくすがすがしいグリーン感のある香り。そして、その香りの通りの緑の葉と垂れ下がる繊細で小さな純白の花。こう書いただけで、少し気持ちが柔らかくなる。
自然の恩恵、自然の力・・・今日もどこかで咲いてくれている森のスズランにありがとうを言いたくなった。

muguet des bois/coty/1941
森”のスズランではあるけれど、ウッディノートの主張はなく、終始グリーンノートが心地良く続く。インターン時代の先輩から譲り受けたコレクションを気に入って、頻繁に使っていた時期がある。今はもう、もったいなくて、使えない。
果たして香水は資料として保管されることが大事なのだろうか。
使ってこそ、香水なのではないだろうか。それで気持ちが満たされるのだから。
私が一吹きして幸せになった分、ボトルの中身は減る。
それでもいいのかもしれない。
好きな漢詩にこうある。
「嚢中自ずから銭あり」

香り、思い、幸せ
5月2日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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