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一途な男子高校生の短編恋愛小説「彼女が僕に冷たい理由〜僕が彼女を振り向かせる大作戦〜」後編

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後編本編

作戦5
最近、遠藤カオルとの関係性は良い感じだ。
彼女との距離は、前回の「彼女を助ける作戦」から縮まった。
授業中は良く彼女と目が合い、英語の時間は僕が彼女に英語を教える。
こんな日がしばらく続いた。
もう次の段階へ言っても良い。僕は確信していた。そこで今回も作戦を立てた。
今回の作戦は少しハードルが高いと思ったが、今のぼくなら成功する。
新たに立てた作戦それはこれだ。

「彼女と一緒に帰ろう」作戦

まず、どのようにして彼女に帰ろうと誘うのが問題だ。
作戦1「あいさつ」作戦同様に彼女を下駄箱で待っていても彼女が一人で来るとは限らない。彼女が一人できたとしても僕と一緒に帰る保証がない。
ここは素直に彼女に帰ろうと誘おうと思う。

6月、第三金曜日
毎月、月末に委員会がある。僕はこの日に作戦を決行しようと思った。幸い僕たちは委員会が一緒だ。委員会の帰り際、教室がごちゃごちゃしている間、彼女に話しかけに行き、「一緒に帰ろう」って誘えば僕の勝ちだ。今の僕たちの関係なら彼女はきっと僕の提案を受けてくれる。そう確信している。
僕は朝からソワソワしていた。
登校したばっかりなのに、帰りのことをいつまでも考えている。この日は1日が長く感じた。頭の中も上の空で、今日の放課後のことで頭がいっぱいだった。

やっと思いでやってきた放課後。
委員会が始まろうとしていた。しかし、彼女の姿は一向に現れなかった。さっきまで教室にいたのを僕は確認していた。それなのになぜ?
委員長と副委員長が教壇に立ち、委員会を始めようとしていた。僕は、今すぐにでも教室を出て彼女の姿を見に行きたい一心だった。しかし、もし彼女と入れ違いなんてことが起こったら。
「では、始めますか」
そんな事考えていた矢先、委員長の一言で委員会が始まった。委員長が各々クラスで起こった出来事や今後の活動内容を発表しているが、僕には話の内容が入ってこなかった。僕の心はそれどころではなかった。今までの準備が無駄になってしまう。
しびれを切らした僕はついに立ち上がった。
教室内にいた人たちは急に立ち上がった僕の姿を見ていたが僕にとってはあまり関係のないことだった。
「どうしたんだい」
委員長が、僕を不思議そうに見つめていた。
「すみません。少し予定があることに気が付いて。なので早退させてください」
僕は一方的に言葉を言い残し、教室を出た。教室を出るときに、彼女と仲の良いクラスメイトと目が合ったが、僕は急いで彼女を探しに行った。

作戦6
僕は、学校内を駆け回った。「落とし物拾う作戦」同様、彼女を探すために。まず、僕は彼女の下駄箱を確認した。彼女のローファーは置いてあった。まだ学校にいる。そう確認した僕は、次に彼女の教室へ向かった。教室内を確認した時、カバンが二つ置いてあった。その一つが彼女の物だとすぐにわかった。しかし、肝心の彼女の姿が教室に見えなかった。教室に残って彼女を待っていても問題はなかったが、今の僕には落ち着きがなかった。夕日で赤く染まった教室内で、ただ立っている僕。僕は、焦る気持ちから教室を出ようとしたとき、タッタタッタと廊下を走ってくる足音が聞こえた。足取りの軽さから女性の足音だろうと思っていた。すると、ガラッと教室の扉が開く音がした。
そこには、息を切らした彼女の姿があった。
教室に入ってきた彼女と目が合った。
「ど、どうして」
彼女の驚いた表情で僕を見つめていた。
「いや、たまたまで。」
委員会をサボってカオルを探していたなんて、僕は言えなかった。
「あ、そう。たまたま会ったことだし、一緒に帰らない」
わざとらしすぎたかなと思ったが、散々待たされた。
「あ、あ、うん」
僕の提案にカオルは乗ってくれた。
僕は、忘れかけていた心臓の高鳴りを思い出した。
一方彼女の姿は、夕日のように赤く染まっているように思えた。

一緒に帰る約束をしたのは良かったが、中々会話が続かなかった。
気がついたら二人して、電車に乗っていた。
僕たちは、電車のドア近くに向かい合うようにして、立っていた。僕が彼女の方を見ると、彼女は窓に顔を向けたままこちらの方を見ようとはしていなかった。窓の外を見ている彼女の顔は、綺麗だった。
「もうこの辺で大丈夫だから。本当に大丈夫」
彼女の降りる駅が近づいてきた時、彼女から話しかけてきた。
「いや、家まで送るよ」
僕は、彼女をしっかり送ろうと心に決めていた。こんな機会滅多にないのだから。
そして、しばらく無言が続いた後、彼女の最寄り駅が近づいてきた。
二人で電車を降り、彼女の家まで歩いて帰った。
「今日、委員会だったと思うんだけど、どうして出てこなかったの」
僕は、彼女と歩いている気恥ずかしさから彼女の方を向けずに聞いた。だから彼女がどんな表情をしているかがわからんかったが、彼女は僕の問いに静かに答えた。
「今日は出ないつもりだった。少し色々あって」
彼女の少し気落ちしたような声を聞いて僕は不安で仕方がなかった。
「何かあったら相談乗るよ。もしかしたら僕じゃ頼りないかもしれないけど」
今度は彼女の方を向いてしっかり伝えた。
彼女は、唇を震わせながら何か言いたそうな顔をしていた。
「あ、そうだ。これ、もうすぐ誕生日でしょ。これあげるよ」
僕は今回一緒に帰る目的のほかに、これを渡そうとしていた。
クマのキーホルダー。
彼女が喜ぶと思って、誕生日プレゼントを買ってきていたのだ。
「あ、う、うん。ありがとう」
カオルは僕からもらったクマのキーホルダーをまじまじ見ていた。
そろそろ彼女の家が近づいて来ていた。
「もう本当にここで大丈夫だから」
「うん、またね」
彼女は一言言い残して、家の方角へ走って帰った。
僕は彼女の姿が見えなくなるまで、後ろ姿を見送った。
そして僕も来た道へ帰った。

今回の作戦は、少しドタバタしてしまったが、結果的に上手くいった。
今日の会話から、僕と彼女の距離は確実に縮まっている。
最初の時は、一言二言の会話だけだったが、最近では話せるようになってきている。
僕は今回の出来事を参考にまた次の作戦を立てた。

◇4
今日彼と一緒に帰った。
彼から、帰ろうと誘ってきた。
私は委員会をサボって、アイを待っていたが教室に彼がいることを聞き急いで教室に戻った。
私は今日こそ彼にあることを伝えられると思っていたが、やっぱり彼を目の前にすると緊張で上手く話せない。
いつしっかり伝えられるのだろうか。
私は今日のことを伝えるためにアイに電話した。

作戦7
その出来事は突然起こった。
季節はセミが忙しく泣き始めた7月下旬。夏休み突入する直前の出来事だった。
僕が恋をする相手、遠藤カオルが突然言い始めた。
「今日から家、誰もいないんだよね」
僕は、自分の耳を疑った。
「そう、今日から少し出かけてて。でもそんな遠出じゃないからすぐ帰ってくると思うけど」
それはつまり、つまりそういうことなのか。
「うん、だから家に来ても誰もいない」
僕はこれは良い機会だと思った。

次の日の午前中。
僕は、大きな荷物を持って彼女の家に行った。
本当は昨日行きたかった所だったが、夜遅かったから辞めた。
彼女の家に着いて、ドキドキしながらもインターホンを鳴らした。そして彼女の家にあがった。
彼女の家は、今日僕が訪れるためか綺麗に片づけてあった。
二階の彼女の部屋は、思っていたより普通だったが、どこからか良い匂いがした。
ここで彼女がいつも過ごしていると考えたら、なんだかドキドキしてしまった。
適当に、彼女のベッドに腰を掛け、部屋を見渡した。
友人からもらったであろうぬいぐるみ類のプレゼントなどはあったものの、やはり綺麗に片づけられているなというのが印象的だった。
僕があげたキーホルダーも机の上に置いてあった。
彼女の家では、心が落ち着かなく時間もあっという間に流れていった。
夕方近くになり、家族が帰ってくるからと僕は家を後にした。

思わぬ出来事だったが、今日は彼女と距離を近づける良い機会だった。
彼女の家での出来事は、緊張しすぎてあまり覚えていなかったが。
そして、僕は今日のことを含めて新たな作戦を立てた。

◇5
今日は家に誰もいなかった。
最近、悩みが多く、疲れていたから凄く気分転換になった。
そしてなにより。。。
兎に角楽しい日になった。
もうすぐで夏休みだから、その分頑張ろうと思えた。
こんな日がずっと続けばいいのに。

作戦8
夏休みに入った。
僕はしばらく、彼女「遠藤カオル」に会えていなかった。
彼女は友達とプールへ行ったり、家族旅行へ行ったりと人気者らしい充実した毎日を過ごしていた。
一方、僕は宿題やら、おじいちゃんの家に行ったりと僕も僕らしく忙しい毎日を過ごしていた。
やっと落ち着いてきたのが八月中旬。
彼女は、夏祭りへ行くと言っていた。
そこで、僕は作戦を立てた。

「彼女と夏祭りをまわろう」作戦だ

彼女は浴衣を着て行こうと嬉しそうに話していた。
そこで僕も浴衣を着て、彼女と夏祭りを回る。それが今回の作戦だ。
僕は彼女と夏祭りへ行く日をカレンダーに印をつけ、貯金をはたいて浴衣を借りに行った。
彼女は夏っぽいスカイブルーの花柄模様の浴衣を選んでいた。
一方、僕はカオルの好みに合わせた物にした。
着慣れないせいか、少しぎこちなかったが一度きり。後悔はなかった。
彼女は浴衣を決めている時は凄く楽しそうだなと見ていた。
この夏祭りが彼女にとって特別な夏祭りになることは間違いないと思っていた。

来る夏祭りの日。
五時ごろに待ち合わせをしていたから、僕は、四時半すぎから彼女、遠藤カオルを待っていた。神社の入り口には僕と同じように彼女を待っている男性が何人かいた。僕が入り口で待っていると、カオルと仲の良い友達と会った。カオルの友人は、僕に何も言わず、神社の中へ入っていった。
早く来ないかと待っていた時、カラッカラッと下駄の足音が聞こえた。
彼女は入り口近くまで来て、僕のことを探していた。
そこで、僕は彼女に歩み寄っていった。
「よっ!遅かったね。少し待ったよ」
半分冗談混じりに彼女へ言った。
「え、あ、う、うん」
カオルは、そんなに遅れてないでしょと言わんばかりの顔をしていた。
何か言いたそうな顔をしてる彼女を気にすることなく僕は彼女の手を握った。
それから僕たちは、神社の中へ入っていった。
射的で僕が景品を当てたり、ベビーカステラをサービスしてもらったりと、今日は何かと付いている気がした。
途中、お店の人に「アツアツの若いカップルだね」と茶化された時、彼女が顔を真っ赤にして必死で否定していた時は、可愛かった。お店の人も少し困ったような顔をして、それに気が付いたカオルは、また焦った様子でいて。いつもの彼女に戻ったような気がして。

僕たちは一通りお祭りを楽しんだ。終始彼女は友達に会わないかと周りをキョロキョロしていたが、僕にとってはそれは何も問題ではなかった。彼女は、普段僕に冷たいが、なんだかんだ今日は僕に良くついてきてくれた。だから僕は、強く彼女の手を握っていた。
あっという間に時間は過ぎて、気が付けばもう八時を過ぎていた。
僕は、もう少しだけ彼女といたい気持ちでいっぱいだったが、彼女は「私はもう疲れたから帰りたい」と行ってきたので僕たちは少し早めだが解散した。
「ここで大丈夫。本当に、今日は」
彼女と駅まで着いた時彼女は、少し強めに言ってきたから僕は名残惜しいけど、彼女を見送った。楽しかったのか、本当に疲れてそうだった。
僕は来た道を戻って、少し寂しいが一人でお祭りを楽しむことにした。
本当はカオルとこの後、近くの公園で花火でもしたかったけど、まぁ今日は仕方がなかった。なんせ、人混みが多く、普段とは着なれない浴衣で移動していたのだから、疲れて当然だろう。僕ももう少しだけお祭りの雰囲気を楽しんだら帰ることにしようと思った。僕が一人でお祭りを散策している途中、行きにあった彼女の友人とすれ違った。彼女は僕のことを気に思っていないのか、少しにらんだような顔でこちらを見てきた。話せばわかると思うのにな。

今日の作戦は大成功に終わった。
彼女と一緒に行った夏祭りはこの先忘れることはないだろう。
そして何より今日の出来事で彼女に近づけたに違いない。
僕は、今日のことを踏まえてまた新たな作戦を立てることにした。

◇6
今日彼と夏祭りを一緒にまわった。
彼が手をつないできた。
私は手汗が止まらなかった。
私は彼に対しての想いで胸が張り裂けそうな気持ちだ。
私はもう限界に近かった。

作戦9
今日から二学期が始まろうとしていた。
あれから、カオルとは会っていなかった。
何だか彼女は体調が悪そうで。
今日の始業式にもきっと来ていないだろう。
カオルは家で休むと言っていた。
そこで今回の作戦は「彼女の家へお見舞いをしよう」作戦だ。
彼女と僕の仲だ。
きっと僕が行くことで、彼女は元気になってくれるだろう。
始業式はお昼ごろ終わる。
お昼ご飯を彼女の家へ行く途中に買って、彼女と一緒に食べようという計画だ。そうすれば少しは彼女も元気になってくれる。そしてまた彼女と楽しい学校生活を過ごせる。
僕は、学校が終わると急いで身支度をして彼女の家へ急いだ。
「ちょっと。あんた。」
廊下を歩いていたとき、彼女の友人が僕に話しかけてきた。
「なに。今急いでんだけど」
「あら、ごめんなさいね。でも用事があって、あなたに話しかけたの」
「用事って?」
「そうね。あんたのクラスの担任があんたを探してたよ。何かものすごい剣幕で。緊急だって」
僕はそんな担任のことなんて無視して行こうとしていたが次の彼女の一言で担任に会おうと思った。
「多分、カオルのことなんじゃないかな」

急いで担任がいるであろう、職員室へ向かった。
職員室へ入ると、例の担任の先生が事務作業をしていた。
「おぉなんだ。何か用か」
先生はおかしな反応だった
「いえ、先生が呼んでいると聞いたので」
「いや、俺は特に何も呼んでいないが」
くそ、騙された。あの女、僕のことを邪魔してきたな。いくら気に思っていないからってついて良い嘘といけない嘘ってあるだろ。なんせ、僕は帰り道を急いでいたんだ。
僕は、職員室を急いで彼女の家へ急いで向かった。

彼女の家は電車で30分程でそこから歩いて10分といったところだろう。
今日の電車が凄く遅く感じた。
駅から出て、僕はなんだか胸騒ぎがしたので彼女の家まで一生懸命走った。あの女何かするに違いない。
彼女の家まで走っている時、ふとあの時一緒に帰った日がものすごく懐かしく感じた。
そしていよいよ、彼女の家へ着いた時、唖然とした。

彼女の家の前には救急車とパトカーが並んでいた。
そして、家の玄関から担架に乗せられた彼女らしい人と、泣き叫ぶ彼女のお母さんが出てきていた。その担架は、救急車に乗せられ家を後にした。
ふと玄関先を見るとさっきの友人がそこにはいた。
ヤツは僕の姿を見ると、蔑んだ目でこちらを見ていた。

僕の世界が暗くなった気がした。
何も考えられずにいた。
周りの音が聞こえず、僕だけ違う世界にいるような感覚だ。
後々聞いた話だが、彼女は自分の部屋で首を吊っていたらしい。命に別状はないが、意識が戻っていない。
何が原因か今調査中らしい。
きっとあの女に違いない。
ヤツは、人気者のカオルを目の敵にしていて、嫌がらせをしていたに違いない。
そして、僕は、新たな作戦を立ててヤツへ復讐しよう
僕はヤツへ復讐を誓った。

◇7
いつからだろうか。
彼が私に目をつけるようになったのは。
私、遠藤カオルは最近ストーカー被害にあっている。
彼は、いつのころか私をつけるようになってきて、彼が私にコンタクトを取り始めたのは、あいさつだった。話したこと顔も知らなかったのに、あいさつをしてきて。急に馴れ馴れしく話しかけてきて。それが毎日続いて。
彼は、クラスが一緒ではないものの、他クラス合併になる英語のクラスで頼んでもいないのにいつも私のところへ来て、英語を解説してくる。授業中も彼からの視線に耐えきれなかった。彼は、授業中いつもいつも私のことを見ていて。
先生に相談したけど、「仲良くなりたいんじゃない」の一言で終わらせられて。私は、先生にも取り合ってもらえなかったから、彼に直接関わらないで欲しいと伝えようとした。でも、毎日私をつけている彼にそんなことを言ったら何をされるか怖くて言えなかった。
委員会の時も、唯一相談にのってもらっていたアイに私の代わりに出てもらったけど、アイから「あいつ、委員会抜け出した」と連絡が来て急いで教室に戻ったが、私の方が少し遅く、彼は教室にいた。私は何度も決着をつけようとした。でも、彼を目の前にするたび怖くて何も言えなかった。
彼からもらったキーホルダー。
中身が固くて、怖かったから家に置いていた。しかしそれが重大なミスになった。
私が目覚めた時に聞いた話だけど、そのキーホルダーの中から盗聴器が発見されて、私の部屋やお風呂、トイレまで家中に無数の隠しカメラなどが見つかった。警察の話では、家族で留守中に家に入りこまれたかもしれないとのことだった。誰もの物かは原因不明らしいけど、きっと彼に違いない。
夏休み、やっと彼から解放されたと思っていた矢先、アイと行くはずだった夏祭りに彼がいて。彼は、私の手を無理やり引っ張って放そうとしなかった。彼の浴衣姿を見て、私は確信した。彼に監視されていると。私が、アイと浴衣を決めに行ったときに私が「この柄の浴衣を着ている男の人にキュンとしちゃうわ」と話していた浴衣を彼は着ていた。
私は、夏祭りから彼への恐怖が強くなって、引きこもっていた。しかし、始業式の日にアイから「彼が向かうかもしれない」と連絡が来て、私はパニックに陥ってしまった。そして。。。
アイは「彼はもういないから安心して」と言っていたが私が彼の呪縛から解放される時があるのだろうか。私はいつまでも彼に監視されているような気がしてアイの言うことを素直に受け止められなかった。私はしばらくアイの支えなしでは生きていけなかった。

エピローグ
アイは、花束を持って病室に入ろうとしていた。病室の表札には「遠藤カオル」と書いてあった。
アイはカオルがストーカー被害に遭っているのを間近で見ていた。カオルが不安と恐怖に駆られた様子で部屋からアイに電話をかけてきているのを知っていた。そのためカオルのことが心配で、何かあったらどうしようってずっと不安に駆られていた。
病室へ入ると、カオルの母親が娘の容態を見にきていた。
「あっ、アイちゃん。いつもありがとね」
疲れきっているカオルの母親の姿が悲しさを感じざるおえなかった。
「いえ、私、カオルがいないともう何も手をつけられくて」
「ところで、アイちゃん。カオルがストーカー被害に遭ってるって本当?」
母親の心配そうな眼差しを向けてきたが、アイは躊躇うことなく答えた。
「はい。でももう大丈夫です」
「心配ないって?犯人捕まってないんでしょ」
「はい、でももう心配ないです」
「あら、そう?」
母親が不安そうしていたが、アイは不安を感じていなかった。

「私、少しお腹が空いたから病室お願いしてもいい?」
カオルの母親はそう言い残して、病室を後にした。
病室に一人残ったアイ。
アイは持ってきた花を花瓶に移そうとした。
「痛っ」
アイの右手は昨日ノコギリで誤って自分の手を切ってしまった為、血の滲んだ包帯が巻かれていた。
アイは力の入らない右手で何とか花瓶に花を入れた。そして、アイはベッドで寝ているカオルの姿を見た。
可愛らしく寝ているカオルは、今でも起き上がりそうな雰囲気だった。
アイは、カオルの姿を見てベッドに腰を下ろしそのままカオルと一緒に倒れ込んだ。そして、アイはカオルの服の中を弄った。
「カオル、不安だったと思うけどもう大丈夫だから、ね。全部彼が悪いの。起きてきたら全部彼のせいにすればいい。でも、もう、全部終わったから、ね。私が何とかしたから安心して起きてきてね。大好きだよ、カオル」
アイはカオルにそっと口づけをした。

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