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一途な男子高校生の短編恋愛小説「彼女が僕に冷たい理由」前編

いつからだろうか。
僕が彼女を目で追うようになったのは。
スラっとした身長に、大きな目。
長い黒髪を束ねたポニーテール姿が良く似合う彼女は、誰にでも人当たりが良くクラスでも人気の存在だ。

しかし、なぜか僕にだけ冷たい。
なぜなのだろうか。
僕に対してなぜか態度が素っ気ない。

そこで僕の心に火が付いた。
彼女を振り向かせようと。
そして、彼女から告白してくるように頑張ろうと。

これは、僕が彼女を振り向かせるための物語だ。

作戦1
僕は彼女を振り向かせる為の作戦をいくつか立てた。
まず、挨拶だ。
彼女が、きちんと挨拶を返してくれる。これが目標だ。
僕が挨拶をして、彼女から元気な「おはよう」を聞いたら、僕の作戦は成功する。
作戦は、いたってシンプルだ。

朝、下駄箱でばったり出会ったフリをして彼女に下駄箱で挨拶をする。

ある日、月曜日の朝。
僕は、念のため8時前には学校の下駄箱で彼女を待っていた。
今か今か、と下駄箱で待っていた僕。
8時15分ごろ、彼女が下駄箱に現れた。
僕はすかさず、彼女のもとへ駆け寄って彼女に向かって言った。
「やぁ、おはよう」
彼女は僕の姿を見ると少し驚いたように目を見開いた。
「あぁ、おはよう」
あぁ、いつもの僕に対する対応だ。
きっと僕以外の人間ならもっと元気よく挨拶しているだろう。
僕は少し彼女の反応に戸惑いを感じながらも負けじと彼女に話しかけた。
「いつもこの時間に来ているんだね。偶然だね、僕も大体この時間に来ているんだ」
「そうなのね」
「今日の授業、僕すごく楽しみなんだ」
「。。。」
結局これ以降会話ができなかった。
そして彼女は、仲の良いクラスメイトを見つけてそそくさと走り去ってしまった。
結果的に僕の作戦は失敗に終わった。

しかし、これで諦める訳にはいかない。
これはまだ予想できた。
次頑張れば良い話。
僕は次の作戦を立てた。

◇1
今日彼から初めて声を掛けられた。
初めて声を掛けられたこともあって、私はあまり受け答えが出来なかかった。
次、会った時はきちんと話せるだろうか。

作戦2
高校一年生の春。
僕は彼女に一目ぼれした。
彼女の誰に対しても優しく、底抜けに明るい性格。
初めは何気なく彼女を目で追うようになっていき、いつの間にか彼女のことが気になっていた。
僕は彼女に振り向いてもらいたかった。でも、彼女が僕に対する態度は明らかに冷たかった。

僕はそこで、彼女が僕に振り向いてもらうようにいくつか作戦を立てて実行した。
そしていつか彼女から告白してれるその日まで。

前回の「あいさつ作戦」は結果から言うと失敗に終わってしまった。だが、諦める訳にはいかない。
次の作戦は、「落とし物拾う作戦」だ。
作戦内容は、これもいたってシンプルなものだ。

休み時間に彼女へわざとぶつかる。そして彼女が落とした物を拾い上げる。

人間は、相手にいくら非があるとしてもなぜか自分の物を拾ってもらった時、感謝の言葉を発してしまう。今回はその心理に漬けこむ。

学校の昼休み。
50分しかないこの休み時間に作戦を実行しようと思う。
この作戦は一見簡単そうに見えるがそういう訳ではない。
まず、50分全ての時間を使える訳ではない。授業が始まる10分前がこの作戦の大きな鍵になる。彼女が次の授業の準備を始めないと、この作戦は決行できない。
それに、万が一僕が彼女にぶつかった時に怪我でもしたら僕への評価が爆下がりだ。上手い感じに彼女にぶつかり、彼女が物を落とさないと意味がない。

12時10分に四限の授業が終わり、僕は急いで弁当平らげ、彼女を探した。
僕がご飯を食べ終わって時計を確認すると、12時半を少し過ぎていた。昼休みが終わる残りの時間は約30分。僕は焦りながら校舎を駆け回った。
そして彼女を見つけた。彼女は、学校の中庭で友達と話をしながらご飯を食べていた。
彼女がご飯を食べ終わり教室へ戻って、授業の準備を始めた時に僕がぶつかり、物を拾う予定だ。
彼女は、友達と過ごしている時間はすごく楽しそうに見えた。頻繁に友達へ見せる彼女の笑顔を僕に向けてくれれば。

ぼんやりそんなことを思っていると、昼休みが終わる5分前になっていた。しかし、彼女達は話に夢中になっていて、中庭から動こうとしない。
僕の気持ちは焦っていくばかりだ。
僕がスマートフォンで時計を確認したその時、彼女の姿が消えていた。
一瞬の隙をつかれた。
急いで彼女が向かったであろう教室へ走っていった。しかし、彼女の姿は教室には見えなかった。次の授業は教室移動ではないのに、それに彼女とご飯を一緒に食べていた友人は教室にいるのに。僕は、もう一度校舎内を探し回ろうと廊下に出て、校舎内を走った。時計を見ると、もうすぐで次の授業が始まる。
焦る気持ちで心臓が鳴りやまない。
僕が、閑散としつつある廊下の曲がり角を曲がろうとしたとき、誰かとぶつかった。
僕は衝撃で尻もちをついてしまった。
「いったぁぁ」
聞き覚えのある声。声の主の方を見ると、そこには彼女の姿があった。
僕はやらかしてしまった。
彼女に怪我をさせかけた。
きっと彼女は僕に対していやな気持ちを抱いたに違いない。
「ご、ごめん」
僕は咄嗟に彼女に謝っていた。
彼女は僕の姿を見た。
「あ、いや、うん、わたし、大丈夫だから」
そう言い残し、彼女は僕をおいて教室へ駆け出して行った。

今までに見たことのない反応だった。
これは、結果的に作戦は成功したのか・・・?
いつもと違う彼女の反応が見れて僕は、少し嬉しい気持ちになった。
この結果を踏まえて、僕は次の作戦を立てた。

◇2
今日は、彼と廊下でぶつかってしまった。
昼休み、中庭で友達のアイとお弁当を食べて話し込んでしまっていた。
私は、先生に呼び出されてアイとは別々に教室へ戻った。
授業が始まる時間が近づいていたから、私は廊下を走っていた。
そしたら彼とぶつかってしまった。
私は、焦りと驚きであまり彼とは話せず、一言だけ残して走り去った。

作戦3
彼女の名は、遠藤カオル。
僕が初めてカオルを見たとき、これまでにないくらい胸が高鳴ったのを今でも覚えている。
それから僕にとって彼女は、心の支えになっていった。
そして毎日の学校が楽しく感じられるようになっていった。

次の作戦は、「授業中に彼女を助ける作戦」
決行日は、英語の時間。
今回の作戦もいたってシンプルだ。

英語の授業中、カオルに勉強を教える。

英語は他のクラスと混じって少人数クラスになるということもあって、カオルと話せる機会は多くある。それに、僕たちの英語を担当している先生は、自習が多い。先生曰く「英語は自力で問いて答えを見出した時に快感を得る」らしい。そんな訳で、この時間はカオルに接触できる機会が存分にある。

まず、先生が教室に入ってきた。そして、文法やら新出単語等の説明を始めた。
僕は、この日のために普段はやらないが、昨日の晩予習をみっちりやってきた。その為、先生が言っていることを聞かなくても大体は内容を把握している。
僕は窓際の一番後ろの席に座っており、カオルは廊下側の一番前の席に座っている。
席が離れているのが少し痛いところだが、心置きなく彼女を見ていられる
授業中、先生の言っていることを一生懸命ノートを取っている姿は凄く愛おしかった。

気が付けば、先生は説明を終え、「では、各自本文を和訳するように、分からないことがあれば先生や周りの友達と相談しろ」と告げ本を読み始めてしまった。
この自習の合図によって、今まで静かだった教室が騒がしくなる。みんな各々仲の良い友達と和訳を始めていた。
一方カオルは、仲の良いクラスメイトと机を向かい合わせにして、作業を始めてしまった。
まぁ人気者の彼女ならこうなってもおかしくない状況だ。
僕は彼女が一人になるのを待ちながら、教科書を読んでいた。いつ、彼女から助けをもらっても良いように。
僕は教科書を見ながら彼女を観察していた。
カオルは友達と何やら話しているようだが僕の席からは何も聞こえない。でも彼女が楽しそうで何よりだ。
そうこうしている内に、刻々と授業が終わる時間が近づいていた。
前回の「落とし物拾う作戦」同様、僕の内心は焦り始めてきていた。
今回の作戦は失敗に終わるのか。
せっかく、色々準備をしてきたのに、失敗に終わってしまうのか。
僕は何とかしなきゃの思いで、追加の作戦を考えた。
焦る気持ちで頭があまり回らず、そのせいで余計に焦ってしまって。
その時ふと、目についた物があった。
先生の読んでいる本だ。
先生も僕たちと同じように問題を説いているのだとすると、この後に先生がすることと言えば、そう「発表」だ。
先生はたまに、自分のブログに読んだ本の感想文を書くと言っていた。
その時は「ふーん」と流していたが、これは使えるぞと思った。
時間がない、すぐ行動しないと。

僕は席を立って先生の方に近づいていった。
僕の行動をチラチラ見ているクラスメイトがいたが、そんなのお構いなしだ。
途中カオルの方を見ると、カオルもチラッと僕の方を見たが、友達に話しかけられ、すぐ目をそらしてしまった。
僕が先生の前に立つと、先生は読んでいる本から目を離し僕と目がった。
「おうおう、どうした。わからない所でもあったか」
「いや、そんなことではないです」
「じゃあどうしたんだ。トイレか」
先生は、いつもと変わらない調子で目の前の僕に話しかけてきた。
「いや、それでもないです」
前の席に座っている生徒は、僕と先生とのやり取りを聞いて不思議そうにしていた。
「先生、少し提案があります」
「ほう、何かね」
「僕は毎回の授業前日に予習をしてきているので、和訳には自信があります。しかし、それをどこの場でも発表出来ないなんて正直寂しいです。僕以外にもそういった生徒たちはいるでしょう。そこで毎回授業終わりにノートを集めるのはどうでしょうか。」
僕の提案に先生は顎に手を置き少し考えている素振りを見せた。今日、予習してきた甲斐があった。教室で話していた生徒も僕の提案を聞いて、黙り始めていた。
「うーん、そうだな、それもアリだな、みんながちゃんとやっているのも確認できるしな」
そう先生が言うとクラスは少しざわつき始めた。この先生ならやってくれる。僕はそう確信していた。そして僕の思惑通りのことが起きた。
「じゃあ、今日から集めることにしよう」

作戦4
「授業中に彼女を助ける」作戦は失敗に終わりそうだった。しかし、「先生にノートの提出を促す」作戦という追加の作戦を加えたことで、この危機を打破できそうだ。
この先生はやってくれると思っていた。僕が提案をしたら、即採用し、そして授業最後にノートを集めるだろう。先生はそう言う性格だ。

授業後にノートを集めると知ってから、教室の空気は少し変わった。さっきまでサボって話し込んでいた生徒は、ノートに和訳をしはじめた。中には、友達とやっている人もいるが多くはない。
カオルも、友達と話すのをやめて課題に取り組んでいた。
彼女は、周りから頭が良いように思われているだけで、実際そんなに頭が良くない。だからいつも英語の時間は友達と話して誤魔化していたけど、きっと今は困っているに違いない。
そこで僕の登場だ。
今日の僕は、この日のために予習をしてきた。
だから彼女に教えることだってできる。

僕は、先生に提案し終えてそのままカオルの席へ向かった。
彼女のノートをチラッと見たが、彼女のノートは何も書かれていなかった。
明らかに他の生徒と進み具合が遅かった。
僕はそんなカオルのノートを見て、「ここの和訳は、」と説明を始めた。彼女は初めは驚いた顔で僕に何か言いたそうな顔をしていたが、僕がお構いなく説明を続けたら、彼女は黙ってノートを取り始めた。
カオルの顔は見えてなかったが、彼女の耳は赤く染まっていた。
「ありがと。」
一通り説明をし終えたとき、カオルは小さな声で恥ずかしそうにノートに目を向けたままお礼の言葉を言っていた。
僕は彼女の言葉を聞けて喜ばしい気持ちになった。
初めて彼女から話しかけられて。
初めて彼女からお礼の言葉を聞けて。
僕は、そして席へ戻った。
授業が終わろうとしていた時、彼女は僕の方を一瞬見た。そして僕と目が合うとすぐ目をそらしてしまった。しかし、確実に僕の方を見た。

今回の作戦はとても大成功に終わった。
前回からと言い、良い感じに彼女に近づけているではないか。
僕は今回の作戦に大満足し、次の作戦を立てた。

◇3
最近私には気になる人がいる。
彼は毎朝、私にあいさつをしてきたり、授業中には何やら私に色々話しかけてくる。
しかし、彼を目の前にすると、私は、緊張して声があまり出なくなってしまう。
話したいことは色々あるのに。。。
私は彼が気になる

つづく。。。


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