短編小説「私→あなたへ」

「うわ、この漫画めちゃくちゃ面白い」

 毎週金曜17時、Web投稿サイト「mote」に上げられている「何も取り柄のないオレが異世界行って趣味で無双する」

　通称「オレシュミ」

　普段、漫画やアニメを見ない私は、友達の勧めとちょっとした世間の流行りで見てみたけど、思っている以上に面白い。
　思わず読みいってしまったよ。
　ネットで「オレシュミ」について調べてみると、結構オタク？の中では話題らしい。
　単行本化もされるらしくて、動画配信サイト「Net　Phoenix」でも実写ドラマ化されるらしい。
　私はもうオレシュミの虜だよ！
　早く金曜日来てくれないかな。

　オレはWeb漫画「何も取り柄のないオレが異世界行って趣味で無双する」の作者だ。
　大学行って何となく卒業して、何となく就職したけれど、周りに馴染めずすぐ退社した。そこで一発逆転を狙って書き始めたのが漫画だ。
　オレの趣味全開漫画がまさかのネットでバズった。そして、今は漫画家として食べていけている。
　だが、最近の「オレシュミ」のコメント欄が荒れている。
「どっかで見た展開だな」「まじでおもんない。」「ヲタクの妄想劇はもういいよ」など多くの批判意見を目にすることが多くなった。
　確かに動機は不純だが、今では各々のキャラクターに愛着もあるし、お金が絡んでいる以上責任を持って漫画を書いている。
　しかし、勉強もできず、友達も少ない。ましてや恋人なんかもできたことないオレが、人間関係や知識を学べるのはネットやアニメしかない。その為どったに似ている展開になっても仕方がないでしょ。
　それでもオレは漫画を書き続けなければならない。
　もう金曜日なんて来てほしくない。

　最近「オレシュミ」が熱い！
　前までの主人公の冒険譚と違って今は、推しカプの恋愛模様が愛おしくてたまらない。
　やっぱり「オレシュミ」は最高の漫画だ！
　でも、残念なことに今週をもってしばらく休載予定だって。
　私の金曜日の楽しみが無くなって本当にショック！
　きっとメディア化とかで作者も忙しいのだろう。
　私はただじっと待つただそれだけ！
　私は休載にあたってオレシュミのコメント欄にコメントしようと思った。
「いつも応援してます。先生もお忙しいと思いますけど、体調気をつけてください。また連載待ってます」
　この文面だけ書いたけど、私は恥ずかしくなって消した。
　だってこんなコメントしたら周りから痛い子なんて思われたり、なんだが好きって言うのは恥ずかしいもの。
　私はそっと心のなかで連載を応援する。

もう限界だ。
　批判コメントは多くなる一方だし、これから打開する案も全く思いつかない。
　もうオレの作品のファンなんて存在しないんじゃないか？
　コメントも日に日に過激さを増していくし。
　それにもう辞めるなんて言えないし。
　もう限界だ。。。

　「オレシュミ」の作者が自殺した。
　ネットによると原因は心労や誹謗中傷など多くの憶測が言われていたが、一番の原因は昨今のコメント欄での批判ではないかと。
　これに対し、ネット上では様々な賛否の声が上がっていた。
　「作品を批判するのは読者の権利である」や「面白いと思わなければ、わざわざコメントする必要もないだろうし、見る必要もないのでは」など意見が意見を呼び、連日嫌な投稿だけが目に写った。
　一方私はただ後悔だけしている。
　私たちファンがもっと応援していれば結果は変わっていたのかもしれないと。
　好きと言うのは恥ずかしいから中々言えないし、ましてや作品を見に来ている以上好きは当たり前だと思っていた。しかし、好きと伝えられなければ後悔ばかり残ってしまう。
　応援はわざわざするものではないと思っていたが、口に出さなきゃ誰にも伝わらないと私は思った。