コンビニで店員に脅された話

コンビニで勤務中、苦情の電話の声が細切れで聞き取れない旨を伝えようとしたが
「申し訳ありません、お客様は細切れです」
と、突然の死刑宣告の様になってしまった。

怖すぎる店員になってしまった。
お客様は「え…」と声を発し黙った。
電話を代わりにきた店長も伸ばした手を引っ込めた。
「店長に代わります」
と、そのまま店長に託そうとしたところ、店長は物騒な店員の存在がツボに入り、それどころではなさそうであった。

私が引き続き対応する事となった。
保留から通話に戻すと、客は既に店長に切り替わったと思ったのか、改めて先程と同じクレームを一から話し始めた。
割り込むのも申し訳ないと思い、一通り終わった後
「すみません。まだ私です」
と申すと、再び客に沈黙が訪れた。

「コイツまた出てきやがった」という雰囲気が沈黙からも読み取れた。

「なんでお前…。店長じゃないんだよ…」
と、苦情の対象が、折れた箸から私へと徐々に移行してきている。
これ以上刺激せぬよう、私の身分が店員である事を謝罪したが
「すみません、店員の分際で…」
と、偉く卑屈な感じとなり、横で店長が奇声をあげた。

客もそこまでは責めていないと思った事だろう。
会話を続ける事で店長が回復する時間を稼ごうとしたが、電話口にお客様が苦しむような息遣いが響いただけで返答はなかった。

店長が正気を取り戻した後にかけ直そうかと提案したところ
「近くにいるから俺が行くわ……その方がいい……」
と、力なく言い、電話は切れた。

本来の要求は「弁当を食べようとしたら箸が折れたので、ちゃんとした箸を持ってこい」との事であったが、この調子では箸を持ったまま彷徨い続けると思われたのかもしれない。

店長は私が視界に入ると呼吸が乱れる後遺症に苦しんでいる。
倦厭される花粉側の気持ちが少々理解できた気がした。
店長は「客が来たら教えて」と言い残し、精神を落ち着ける為バックヤードに下がっていった。

客が到着した。
私は電話対応した店員は自分では無いという顔をし対応した。
しかし、店長を呼び出す際に
「店長、先程の細切れのお客様です」
と、呼びかけてしまったので、電話対応した者が私であると明るみとなったうえに、店長は再び地獄へ突き落とされた。

そろそろ、ぶん殴られるかもしれぬと思い、恐る恐る客へ視線を向けると、客も下を向き震えていた。

箸が再び折れても問題ないように、残機を3膳ほど渡すと、客は足早に去っていった。
目が一度も合わなかった。

そして、店長は暫くバックヤードから出てこなかった。

【追記はこちら】
最後に、その後についての【追記】があります。








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