今こそ必要なDX人材
DX(Digital Transformation)というと、アレルギーがある人や大きなことを考えてしまう人が多くいます。さらにはDX人材となると大きなプロジェクトを統括しデジタルインフラを確立する人。なんて思われがちですが、今回はDX人材について少しお話ししていきます。
各地で進むDX人材育成
私も毎年各地でDX人材育成研修にて講演を依頼されています。
依頼をされる方の期待値として「ITを使いこなせる人を育成したい」という直接的なものから「地元企業のDXを進めるための人材を育成したい」という抽象的なものまで様々存在します。
特に前者の「ITを使いこなせる人を育成したい」はDX人材育成ではないと思われるのですが、デジタルに関する理解が進まないなか、ITを使える人が増えればDXできる。というイメージから依頼に繋がっているのでは無いかと感じますが、そもそもDX人材ってどのような人物像なのでしょうか?
多くの人と話をしていて「デジタル技術に精通していて、システムを検討できる人」というイメージが定着している様にも思いますが、このイメージだと「SE・プロマネ」を育成したいという様にも捉えられます。
しかしながら、このイメージではDXを加速することにはつながりません。
DX人材のイメージ
私の理解ではDX人材とはDXを実現できる人材というものです。
デジタルに詳しい人間がDXを実現できるか。というとそうではない。と言わざるをえません。デジタルに詳しいことそのものは必要な要素の一つではあるのですが、そこだけを磨いてもDXは実現できません。
そもそも、DXはDigitalは手段、目的はTransformationです。
つまりは「変革」を先に考え、手段としてのDigitalを検討します。
Digitalの手段をたくさん知っていても、目的が置き去りであれば、DXは進まないのです。
もし、Digitalの手段だけでDXが進むのであれば、手段のカタログだけたくさん用意してそのなかから必要そうなものだけ選べば変革は実現できている筈です。
世の中には手段はたくさん存在しています。
「何を選べば良いかわからないからDX人材が必要なのでは?」
とおっしゃる方も多いですが、そもそも、何がしたいのか目的がはっきりしない中、何を選べば良いか。を的確に答えられる人材は存在しません。
「我が社の売上を倍増させるデジタルを選んでください」
と言われて的確に何が良いか、カタログの中から出せる人はいません。
それは、会社組織や事業が複雑だからです。
その複雑な事情をしっかりと見据え、何を変えるべきなのか。を見極め、弾き出す。
そんなことができるのがDX人材像ではないでしょうか。
デジタルは一番最後、詳しすぎると足枷にも。
DX人材は現場に入り込み、ありたい姿を見つけ出し、ギャップを変革していくことが必要不可欠です。現場を見ずに会社の概況だけ見て変革は行えないからです。つまり、会社や組織、事業など複雑なものを紐解く能力が必要です。ブロックなどで作られた造形物をどのような要素で構築されているのか、部品単位で認識できる様なスキルが重要です。曖昧な認識では変革における再構築も、そもそも何を変えるべきかも曖昧になり、変革を実行するための元が見えないためです。
デジタルに詳し過ぎる人材の場合、どうしてもこのブロック一つひとつをデジタルのツールに置き換えようとしがちですが、この時点でデジタルをそのまま置き換えてしまうとIT導入にしかならずDXが実現できません。
デジタルのことも認識はしている。位の人の方が向いているかもしれません。
全てをデジタルに期待しない人
また、DXは全てをデジタルで実現することは非常に難しいです。
会社組織や事業そのものを全てデジタルに置き換える。ということが困難な様に、それぞれの現場も全てをデジタルに丸ごと置き換えることが難しいからです。
つまりは、デジタルで全てを解決しようと「思わない」人材がDX人材には向いています。
やり方を変えればうまくいく、組み方を変えればうまくいく、目線を変えればうまくいく。デジタルを用いることを前提で複雑なことを考えなくてもX(Transformation)できることはたくさんあります。ただ、今の世の中デジタルを全く使わないはあり得ない時代になってきています。使い所を見極めしっかりと適用していくことができることもDX人材に求められる姿ではないでしょうか?
デジタルを難しく考えない
デジタルというと途端に難しく考えがちな人が多くいます。そんな人でも、スマホや電卓は使えます。コンピュータも結局は計算機が発展したものです。AIなどが登場し難しいことができる様になったことは事実ですが、「特別なもの」「難しいもの」と最初から考えないことがDXを実現するためには必要不可欠です。
簡単なことから変革が進められるDX人材が育成できれば、いずれ大きな変革にもつながります。最初から大きなことを行う人材像を求めないことが重要です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?