立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

立田 順一

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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」  教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった…

立田 順一
3年前
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「教師の自腹」を生むメカニズム(下)

 これまで2回にわたって、『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本の内容を紹介するとともに、「自腹」が生じてしまうメカニズムについ…

立田 順一
12時間前
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「教師の自腹」を生むメカニズム(中)

 前回の記事では、『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本の内容を紹介するとともに、「教師の自腹」が生じてしまうメカニズムについて…

立田 順一
1日前
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「教師の自腹」を生むメカニズム(上)

『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本が話題になっている。  この本では、本来ならば公費で賄われるべき費用を教職員が自己負担して…

立田 順一
2日前
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問題を解決するための近道

 以前、ある研修のなかでこんな紙が配られた。  その紙には、1から50までの数字が不規則に並んでいた。私たちが講師から与えられた課題は、 「このなかから、1、2、…

立田 順一
4日前
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「教員になる」ことだけが教育に関わる道ではない

 全国的に公立学校の教員採用試験の倍率が低下している。文部科学省は、教員志望者が民間企業に流出することを防ごうと、各都道府県や政令市などの教育委員会に対して、採…

立田 順一
5日前
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アジャイル型開発

「アジャイル型開発」とは、システムなどを開発する際の手法の一つである。  アジャイル(Agile)とは、直訳すると「素早い」とか「機敏な」という意味だ。  その名の…

立田 順一
6日前
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「三人寄れば文殊の知恵」って本当?

「三人寄れば文殊の知恵」  という諺がある。  文殊とは知恵をつかさどる菩薩のことで、 「凡人でも三人集まって相談をすれば、すばらしい知恵が出るものだ」  という…

立田 順一
7日前
15

「やりがい」か「働き方」か

 全国的に教員不足が深刻な問題となっている。埼玉県内の公立学校では、本年度の始業日の時点において小学校で45人、中学校で12人、高校で7人、特別支援学校で23人がそれ…

立田 順一
8日前
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文部科学省がNHKに送った“抗議文”を読んでみた

 公立学校教員の長時間労働の是正や給与制度の改正などについて議論してきた中央教育審議会の特別部会が、5月13日に具体案を盛り込んだ「審議のまとめ」を了承した。  …

立田 順一
9日前
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もう一つの人生

 B'zのボーカルである稲葉浩志さんは横浜国立大学教育学部の出身で、教員になることを目指していたそうだ。しかし、「あるきっかけ」があって人生の方向転換をしたのだと…

立田 順一
10日前
25

リベラル系

 先日、元プロ野球選手の桑田真澄氏による言葉を紹介した。  すると数日後、これを読んだという学生から話しかけられた。 学生「やっぱり、野球ってヤバいですよね」 …

立田 順一
10日前
25

もったいない・・・

 岡山市内の市立小学校に勤務する20代の女性講師が、「ツイキャスで自身の歌声を5年間にわたってライブ配信し、地方公務員法に違反する副業収入約162万円を得ていた」と…

立田 順一
12日前
29

同じサイズの靴

 日本人男性の足の平均サイズは26.0cmだという。  では、その平均サイズに合わせて26.0cmの靴だけを大量に生産したらどうなるだろうか?  もちろん、サイズがピッタリ…

立田 順一
13日前
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これで終わりではない

 公立学校教員の長時間労働の是正や給与制度の改正などについて議論してきた中央教育審議会の特別部会が、5月13日に具体案を盛り込んだ「審議のまとめ」を了承した。  …

立田 順一
2週間前
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『失敗の本質』〜急いで口で吸え!〜

 給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が4月19日に開催された。その結果、 「給特法の教職調整額を少なくとも10%以上とす…

立田 順一
2週間前
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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」
 教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった。
 私は大学を卒業後、すぐに横浜市立小学校の教諭として働きはじめた。それから20数年間、何度か市内での異動はあったものの、小学校以外の職場で働いたことはない。私にとって、その連絡は晴天の霹靂だった。
 と言いたいところだが、予感がまったく

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「教師の自腹」を生むメカニズム(下)

「教師の自腹」を生むメカニズム(下)

 これまで2回にわたって、『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本の内容を紹介するとともに、「自腹」が生じてしまうメカニズムについて考えてきた。

 前回までに述べてきたように、教師が「自腹」を切ってしまう理由には、主に次の3つがあると思う。

 前々回は①について、前回は②について補足をした。今回は③について述べていくが、

「仕事とプライベートの境界が曖昧なこと」

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「教師の自腹」を生むメカニズム(中)

「教師の自腹」を生むメカニズム(中)

 前回の記事では、『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本の内容を紹介するとともに、「教師の自腹」が生じてしまうメカニズムについて考えてみた。

 私自身の肌感覚でいうと、教師が「自腹」を切ってしまう理由には、主に次の3つがあると思う。

 ①については前回の記事で補足をした。今回は②について書いていきたい。

 公立学校で公費によって物品を購入する場合、基本的に現金

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「教師の自腹」を生むメカニズム(上)

「教師の自腹」を生むメカニズム(上)

『教師の自腹』(福嶋尚子・栁澤靖明・古殿真大著、東洋館出版社)という本が話題になっている。

 この本では、本来ならば公費で賄われるべき費用を教職員が自己負担している例の一部として、「採点用の文房具、授業のための教材、部活動の審判資格取得費用、大会への交通費、家庭訪問時のガソリン代、各家庭の徴収金未納の立て替え、物品破損の弁償」などが紹介されている。

 何年か学校に勤めている教職員であれば、誰し

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問題を解決するための近道

問題を解決するための近道

 以前、ある研修のなかでこんな紙が配られた。

 その紙には、1から50までの数字が不規則に並んでいた。私たちが講師から与えられた課題は、
「このなかから、1、2、3…と順番に数字を探していってください。時間は30秒間です」
 というものだった。

 私を含めた30名ほどの受講者は、講師の合図で一斉に数字を探しはじめた。しかし、多くの数字のなかから順番に目的の数を見つけ出すことは、思ったよりも難し

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「教員になる」ことだけが教育に関わる道ではない

「教員になる」ことだけが教育に関わる道ではない

 全国的に公立学校の教員採用試験の倍率が低下している。文部科学省は、教員志望者が民間企業に流出することを防ごうと、各都道府県や政令市などの教育委員会に対して、採用試験の実施を前倒しするように求めているという。

 今年度、茨城県では文部科学省が示す「標準日」よりも1か月以上早く試験を実施した。しかし、その倍率は過去3番目に低い水準に留まっており、前倒しをしたことによる目立った効果は出ていない。

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アジャイル型開発

アジャイル型開発

「アジャイル型開発」とは、システムなどを開発する際の手法の一つである。

 アジャイル(Agile)とは、直訳すると「素早い」とか「機敏な」という意味だ。

 その名のとおり「アジャイル型開発」は、システムを小単位に分け、それぞれで実装とテストを繰り返しながら、スピード感をもって開発を進めていく手法なのだ。

 従来、システムやソフトウェアの開発では、「ウォーターフォール型」が主流だった。

「ウ

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「三人寄れば文殊の知恵」って本当?

「三人寄れば文殊の知恵」って本当?

「三人寄れば文殊の知恵」
 という諺がある。

 文殊とは知恵をつかさどる菩薩のことで、
「凡人でも三人集まって相談をすれば、すばらしい知恵が出るものだ」
 という意味だ。

 たしかに、三人の人が集まって相談をすることで、一人では思いつかないような斬新なアイデアが出たり、納得解が見つかったりすることはあるだろう。

 けれども、そんなに上手くいくわけではない。

 そもそも、二人だけで話し合うと

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「やりがい」か「働き方」か

「やりがい」か「働き方」か

 全国的に教員不足が深刻な問題となっている。埼玉県内の公立学校では、本年度の始業日の時点において小学校で45人、中学校で12人、高校で7人、特別支援学校で23人がそれぞれ不足していたことが明らかになった。

 埼玉県教育委員会では、大学生を対象にした「教師塾」を実施し、学校現場で仕事体験をしてもらうことで教職の魅力を伝え、教員の確保に取り組んでいるという。

 しかし、こうした「やりがいアピール」

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文部科学省がNHKに送った“抗議文”を読んでみた

文部科学省がNHKに送った“抗議文”を読んでみた

 公立学校教員の長時間労働の是正や給与制度の改正などについて議論してきた中央教育審議会の特別部会が、5月13日に具体案を盛り込んだ「審議のまとめ」を了承した。

 当日、報道各社がこのニュースを報じたが、4日後の5月17日になって、文部科学省がNHKに対して初等中等教育局長名で”抗議文”を送るという異例の事態になっている。その全文は次のとおりだ。

 文部科学省が問題視している報道の内容は、NHK

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もう一つの人生

もう一つの人生

 B'zのボーカルである稲葉浩志さんは横浜国立大学教育学部の出身で、教員になることを目指していたそうだ。しかし、「あるきっかけ」があって人生の方向転換をしたのだという。

 大学4年生になった稲葉さんは、まず主専攻である小学校教員の免許を取得するために、ある小学校で4週間の教育実習を終えた。

 その後、今度は副免許として中学・高校の数学の教員免許を取るため、中学校で実習をすることになった。ところ

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リベラル系

リベラル系

 先日、元プロ野球選手の桑田真澄氏による言葉を紹介した。

 すると数日後、これを読んだという学生から話しかけられた。

学生「やっぱり、野球ってヤバいですよね」

 彼は中学・高校とハンドボール部に所属していたと聞いている。おそらく、ハンドボール部にもヤバい指導者はいただろうと思うのだが、彼の目は真剣である。

立田「『やっぱり』ってことは、ほかにも野球にはヤバいところがあるの?」

学生「大谷

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もったいない・・・

もったいない・・・

 岡山市内の市立小学校に勤務する20代の女性講師が、「ツイキャスで自身の歌声を5年間にわたってライブ配信し、地方公務員法に違反する副業収入約162万円を得ていた」として同市の教育委員会から戒告の懲戒処分を受けた。この女性講師は依願退職をしたという。

 ・・・勤務時間外の配信だから服務専念義務違反というわけではなく、無許可で副業収入を得ていたことが地方公務員法違反に問われたようだ。

 もともと、

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同じサイズの靴

同じサイズの靴

 日本人男性の足の平均サイズは26.0cmだという。

 では、その平均サイズに合わせて26.0cmの靴だけを大量に生産したらどうなるだろうか?

 もちろん、サイズがピッタリだという人も何割かいるだろう。

 少しキツい、あるいは少し緩いけれども「履けないことはない」という人もいるはずだ。

 だが、キツくて履けない、逆にブカブカで歩けないという人も少なくないに違いない。

 当たり前である。

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これで終わりではない

これで終わりではない

 公立学校教員の長時間労働の是正や給与制度の改正などについて議論してきた中央教育審議会の特別部会が、5月13日に具体案を盛り込んだ「審議のまとめ」を了承した。

 この特別部会における審議の焦点となっていたのは、公立学校の教員に残業代を出さない代わりに、基本給の4%相当の「教職調整額」を一律に上乗せすることを定めた「教員給与特措法」(給特法)の是非についてである。

 結果として「審議のまとめ」に

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『失敗の本質』〜急いで口で吸え!〜

『失敗の本質』〜急いで口で吸え!〜

 給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が4月19日に開催された。その結果、
「給特法の教職調整額を少なくとも10%以上とする」
 という方向で決着をすることが濃厚になっている。

 しかし、これは「教師の長時間労働の是正」を抜本的に図るための方策にはなり得ず、むしろ「定額働かせ放題」と揶揄される働き方を定着させることになってしまう可能性が高い。

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