栂井理恵(作家のエージェント)

出版業界唯一の老舗総合エージェント会社で、作家の書籍企画や原稿の出版社等へ売り込みなど…

栂井理恵(作家のエージェント)

出版業界唯一の老舗総合エージェント会社で、作家の書籍企画や原稿の出版社等へ売り込みなどを行っています。ミステリ・サスペンス、歴史時代小説から文芸作品までフィクション全般、新書やノンフィクションを担当。50人以上の作家、400冊以上の書籍を手がけてきました。

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出版社に作品を持ち込むときに「してはいけないこと」

自分の作品を出版社に持ち込むときには、緊張や高揚感で、ふだん通りに考えたりふるまったりが難しいかもしれません。でも、当然のことながら、人と接するときの気遣いや基本的なビジネスマナーを守らないと、敬遠されてしまうことがあります。 原稿を持ち込むときに「してはいけないこと」 具体的に言うと、次のような行為は控えましょう。 突然、出版社を訪問する 電話で断られたのに、出版社を訪問する(または電話で訪問したいと粘る) 電話や面会で、自己紹介せずに一方的に質問だけをする 短

    • 「作家のエージェント」という仕事

      私がエージェントになった経緯、そしてnoteで文章を綴る思いなどを、改めて記事にまとめました。昨今、「エージェント」という存在が話題になっておりますが、初めて「作家のエージェント」という存在を知った方、改めて詳しく知りたい方にご覧いただけましたら幸いです。 作家のエージェントになるまで 私は、弁護士事務所でのアシスタント、地方出版社勤務、ライター経験などを経て、2006年、総合出版エージェントである「アップルシードエージェンシー」に入社しました。 子どもの頃から語学や海

      • 持ち込みの手順について~編集者の探し方

        「持ち込みのプロ」であるエージェントも、持ち込み先の文芸編集者を、さまざまな形で探しています。持ち込みの成功は、編集者と作品との相性が決め手になります。直接の面識があってコミュニケーションができる編集者、仕事をともにしたことがある編集者であれば、関心の範囲や好みを知っているので、自然な形で紹介につなげられます。 しかし、出版業界で働いていない場合は、どのようにして持ち込み先の編集者を探せばいいのでしょうか。本記事では、その方法をご紹介します。 トークイベントに参加する

        • 「作家のエージェント」インタビューを掲載します|有海茉璃さん|入社3年目

          ごぶさたしております。私が働くアップルシード・エージェンシーでは、6年ぶりにエージェントを募集します。そのため、ひさしぶりの更新となる今回は、新型コロナが拡大するなか、大学卒業後に「新卒」でアップルシード・エージェンシーに入社した有海茉璃(ありうみ・まいり)さんのインタビューをお届けします。 現在、有海さんは応募原稿の講評担当や先輩エージェントのアシスタント業務を経て、文芸からノンフィクションまでさまざまな分野の作家のエージェントとして活躍しています。「作家のエージェント」

        出版社に作品を持ち込むときに「してはいけないこと」

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        • 作品を持ち込む方法
          7本

        記事

          持ち込みの手順について〜出版社の選び方

          企画提案書や著者略歴、送付する原稿などが準備できたら、今度は持ち込みの手順②「編集者にコンタクトする」に入りましょう。(ちなみに全体の手順は、こちらからご確認ください) 手順② 編集者にコンタクトする 編集者が自社で作品をプロデュースするイメージを持つことができたら、出版への第一歩です。となると、持ち込みをする以上は、自分の作品と合った出版社や編集者を探す必要があります。 知っておきたい出版社の選び方自分の作品がどのジャンルに当たるのかを見極めて、まずは同じジャンルの本を

          持ち込みの手順について〜出版社の選び方

          持ち込み原稿を見てもらえるかは「送付状」で決まる

          編集者が読みたくなる送付状とは?企画提案書も原稿も大切ですが、原稿を見る前に編集者さんが目にとめるのは「送付状」です。ですから、この送付状がうまく書けていると、編集者さんが原稿を読んでくれる、さらには返事をくれる確率が高くなる、といっても過言ではないでしょう。 出版社名、部署名、名前、敬称の使い方などの基本的なビジネス文章のルールがおさえてあれば、わざわざ使い慣れない挨拶文など使って、長々とした送付状を書く必要はありません。簡単な自己紹介、相手となる編集者と連絡を取ろうと考

          持ち込み原稿を見てもらえるかは「送付状」で決まる

          持ち込みの手順について〜原稿準備

          送付原稿の準備についてワープロ・パソコン原稿で、一枚あたり40字×30行など読みやすい文字組で作成します。枚数は400字詰原稿用紙換算で記しても、現在、原稿用紙レイアウトでの印刷は好まれませんので、注意してください。送りたい出版社が新人賞をやっていれば、その応募要項のフォーマットに合わせていただいてもよいと思います。 印刷して送るときは、マス目のない紙に縦書きで片面印刷をして綴じるのが標準的です。メールに添付するときは、PDFなど上書きできないファイル形式にしましょう。

          持ち込みの手順について〜原稿準備

          持ち込みの手順について〜企画提案書の書き方 その2

          作品の梗概の書き方エンタメ文学における新人賞でも、作品の梗概(あらすじ)が求められますが、多くの場合、「このように書いてください」という内容指定はありません。そのため、自由に書かれている方が多いようですが、梗概は作者の感性や文章力が表れる重要な部分です。 持ち込みの場合に私がお勧めするのは、あらすじは1~2文にまとめることです。ハリウッド映画の脚本術でいうログラインに近いものです。例えば、昔話の「桃太郎」であれば、「桃から生まれた男の子が、犬と猿とキジを仲間にして、鬼退治を

          持ち込みの手順について〜企画提案書の書き方 その2

          持ち込みの手順について〜企画提案書の書き方 その1

          前回の記事で、自信作であれば、小説であっても出版社への持ち込みに挑戦しましょう、基本的なマナーを忘れないでください、と書きました。ただし、文芸書の出版の現場では、暗黙の了解事項がまだまだ多く、何も考えずに突っ走ると地雷を踏むことになりかねません。(かくいう私も、十数年前にエージェントを始めた頃は、編集者さんに怒られたり諫められたりしたことは数知れず……) 今回から、主に作家志望者、新人・若手作家向けを想定した、持ち込みの方法について、ご説明してまいります。数多くの失敗も重ね

          持ち込みの手順について〜企画提案書の書き方 その1

          出版社への小説の「持ち込み」は嫌がられる?

          文芸エージェントの仕事とは?いつもお世話になっております。 今、****さんの「***」という原稿を弊社でお預りしています。 たいへんお忙しいと思いますが、ご興味をお持ちでしたら、 ご検討いただくことは可能ですか?  お返事、お待ちしております。  そんなメールを編集者さんに1本送るところから、私の「持ち込み」は始まります。編集者さんから「ぜひ送ってください」とお返事をいただくと、著者略歴と作品概要をまとめた企画提案書(A4で1枚程度)、サンプル原稿(または完成原稿)をメー

          出版社への小説の「持ち込み」は嫌がられる?

          イタリアで日本文学ブーム、人気はエンタメ小説 背景にあの70年代アニメの存在

          担当作家を海外へ進出させたい――というのは、編集者やエージェントの悲願なのではないかと思います。今回、弊社契約作家の津原泰水さんの『たまさか人形堂物語』がイタリアで出版されたのを機に、翻訳家のマッシモ・スマレさんにインタビューをすることができました。 イタリアでの現代日本文学ブームのご紹介とともに、エンタメ文学の翻訳出版についての貴重なレポートにもなったのではないかと自負しております。お読みいただけると嬉しいです。 日本とイタリアには、文学や漫画・アニメを通じた40年以上

          イタリアで日本文学ブーム、人気はエンタメ小説 背景にあの70年代アニメの存在

          フォロワー数を「盛る」作家志望者、独立する書籍編集者

          書籍編集者がいなくなる?前回の「SNSのフォロワー数が少ない人は、本を出版できない」は本当かという記事で、書籍業界にインフルエンサー本が溢れるようになったら、何が起きるかを考えてみたい、と書いた。しかし、考えるまでもなく、誰もが同じところにたどり着かれると思う。懸念されるのは、書籍編集者の企画力の低下、そして優秀な人材の他業種への流出だ。 著者候補を探し企画を考えるときに、既に流行っているコンテンツばかりを眺めていると、人の心をとらえる「新しさ」に関して鈍感になってしまう。

          フォロワー数を「盛る」作家志望者、独立する書籍編集者

          「SNSのフォロワー数が少ない人は、本を出版できない」は本当か

          先月、「SNSでの活躍」が書籍企画採用の基準となる出版社が増えている、という主旨のツイートをしたら、話題となった。 実際には約3,200リツイートや約9,200いいねという数は「バズった」というほどではないと思うが、私のところには100を超える真面目なコメントが届いた。出版業界内外からの驚きや怒りの声から、現場で働く書籍編集者からの「ほんこれ」「つらい」という嘆き。(きっと「今さら何言ってるの?」という白けた思いを抱いた方も多かったのではないかと思う。)出版業界の未来を憂う

          「SNSのフォロワー数が少ない人は、本を出版できない」は本当か

          アップルシード・エージェンシー文芸部の公式note、作りました! https://note.mu/appleseed_f

          アップルシード・エージェンシー文芸部の公式note、作りました! https://note.mu/appleseed_f

          長く放置してしまいましたが、アップルシード文芸部の開設を目指してコツコツ続けます。引き続き、よろしくお願いします!

          長く放置してしまいましたが、アップルシード文芸部の開設を目指してコツコツ続けます。引き続き、よろしくお願いします!

          書籍企画書の見出しは、結論や答えを具体的に書く!

          前回からずいぶんと時間が経ってしまいましたが、今回は編集者の興味を惹く書籍企画書のポイントのふたつめを書いてみたいと思います。というのは、すぐに効果が出るからです。 ■企画書っぽいけど、何も伝わってこない悪い例 前回、すでに売られている書籍の目次を参考に、企画書の構成案を作っても、あまり参考になりませんよ、と書きました。これは、構成案における目次の章や項目の見出しも同じです。 例えば、こんな目次案を持ってこられる方がいらっしゃいます。商品をたくさん売るためのキャッチコピー

          書籍企画書の見出しは、結論や答えを具体的に書く!