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2024/05/26 雑記「ラバーダックのまばたき」

 水のにおいで目が覚めた。部屋の中は薄青く、窓際は白んでいる。足の裏がすうっとするし、ベランダの手すりからはぷつぷつと音が聞こえる。外では雨が降っていて、それなのに私は窓を閉めていなかったのだった。  おまけに、私はカーテンさえも中途半端に開けたままだった。私の部屋は青い遮光カーテンとレースのカーテンを二重にかけている。眠る前に遮光カーテンを半分くらい開けっぱなしにしていると、今のように青くて白い空間になるというわけだ。  この数日間、引っ越しの荷造りをしている。自分の持

    • 2024/02/26 雑記 「月を好きな人に悪い人はいないよ」

       よく夜に散歩をする。夜の散歩は人通りが少なくて落ち着くし、一日に使いきれなかった体力をいい感じに消費することもできる。「頭はもう休みたがっているが体はまだ動きたい」という時にぴったりだ。散歩をした後でもまだ体が波立つように落ち着かなければシャワーを浴びるし、それで目が冴えてしまったら、諦めて薄めに淹れたコーヒーを飲んで本を読む。悪者のいない人生だなと思う。誰も、何も悪くない。  散歩に出るとまず月を探す。月が出ていたら、見失ってしまわないような真っ直ぐの道を選んで、散歩の

      • 2023/01/10 雑記

         母親の聞いていた曲の歌詞が、何と言っているのか分からなかった。当時乗っていた小さな白い車の中で延々と流れていたいくつかの音楽。メロディーと声は曖昧な感じにほどけ、ひとつの水の流れのようになって、私の記憶に染み込むように残っている。そう、歌詞が分からない。それに加えて、曲の名前すら知らない。当時の私は幼すぎてそれらに関心を向けていなかったのだ。聞きそびれてしまった。あの曲たちを、ただ流れ続ける母親の好きな音として、あるいは車内の酸素、それか車窓の向こうの景色と同じくらい、ある

        • 春に裏切られたかもしれない2022/04/21

          ぼんやりと胸がつっかえる、この春は嘘だったのか?私は春の暖かさと柔らかさを、他人の厚意よりもずっと簡単に信じ込んでしまう。 1ヶ月程前に桜を見てきた。ちょうど満開の週ですごく綺麗だった。そこそこ人がいて賑わっていたり、桜を一緒に見ようと連れて来られたわんちゃんねこちゃん(猫もいるなんて。「なんで僕ここにいるんですか?」みたいな感じで抱っこされていた。犬は人間が楽しそうで、なんだか楽しいね、みたいな感じだった。)も楽しそうだったりして、ほんのり幸せを感じた。私以外の人も、みん

        2024/05/26 雑記「ラバーダックのまばたき」