杜江 馬龍

エッセイ・短編小説などを書いています 「もりえ ばりゅう」と読みます 北海道襟裳出…

杜江 馬龍

エッセイ・短編小説などを書いています 「もりえ ばりゅう」と読みます 北海道襟裳出身、東京都在住 2023年9月頃からnoteに投稿しています 1951年生まれ

マガジン

  • 杜江馬龍のつぶやき

    外出した折りとか、日頃感じたことや、なにかを発見した時のことを ショートショート(つぶやき)に投稿しました。 それらの記事を纏めました。

  • 連載小説 私たちは敵ではない(1話~16話)

    人間と動物(狸)の関わりを通じて、希薄になった現在の人間関係に警告を鳴らす物語です。

  • 連載小説 負けない(1話~9話)

    兄の説得で結婚した女性の内面を抉り出した作品です。

  • 連載小説 リセット(1話~12話)

    結婚生活に失敗した一人の男を中心に、失意から立ちあがる模様を描きました。

  • 連載小説 還らざるOB(1話~11話)

    ある会社の同じ部署の仲間が「仲間会」を結成し、唯我独尊の連中が、飲み会と旅行を通じて人生の深さを感じ合う連載です。

最近の記事

ある喫茶店で、アイスコーヒーを頼みました。 ストローの紙袋を開けて出て来た珈琲を飲もうとしましたら、いくら吸っても、飲めません。 ストローをよく見ますと、片方が蓋がっていました! 驚きました! 思わず笑ってしまいました!

    • 【連載】しぶとく生きていますか?⑨

       年も改まり、五月の初旬、加藤茂三はいつものように朝早くから家の前の海岸で、流れ着いた昆布を拾っていた。そしてドンドン岩の岩場で昨夜から釣りをしていた二人の男性を見掛けた。  茂三はその二人に近付いて行った。 「兄さんたち、どうだ、釣れるか?」  釣り人の一人が、 「はい、ここはよく釣れますね」といった。  殆どアブラコ(アイナメ)だ。 「ところで、おたくさん方は、どちらから来たのかね」と茂三が聞いた。  二人は、札幌から来たという。あと小一時間ほどで帰ると言った。  茂三が

      • 【連載】しぶとく生きていますか?⑧

         次の日の朝早く、茂三は自転車を転がせ、庶野に向かった。  口笛を吹きながら茂三は自転車をこいでいた。  なだらかな坂の登り切ったところに見晴台がある。そこで一休みをした。  浜風が包帯を巻いた茂三の頬を撫でた。  目黒方面に目をやると、フンコツの隧道が見えた。その先の海岸線が霞んで右に伸びていた。いつもと変わらぬ景色だ。茂三は小さい時から、ここからの眺めを好んだ。自分もこの自然の雄大さのように、しぶとく生きていこうと思うのだった。  庶野にいる鉄砲撃ちの吉阪と今野の二人

        • 【連載】しぶとく生きていますか?⑦

           我が家に戻った茂三家族は、クジラの肉を食べた。美味しかった。 「母さん、うめえな」と茂三は妻の淑子に、焼酎をぐいと引掛けながら話すのであった。 「あんた、顔の傷にさわるから、あまり飲んだら駄目だべさ」と言いながら、調理したクジラの肉を眺めながら嬉しそうに茂三をたしなめた。 「おれも少しもらっていいか?」と一茂が箸をだす。 「ところであんた、明日は早くに庶野に行くんだべ」淑子がクジラの肉を頬張りながら茂三に聞いた。 「トラックの運転手の話しでは、まだヒグマが見つかっていないと

        ある喫茶店で、アイスコーヒーを頼みました。 ストローの紙袋を開けて出て来た珈琲を飲もうとしましたら、いくら吸っても、飲めません。 ストローをよく見ますと、片方が蓋がっていました! 驚きました! 思わず笑ってしまいました!

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        • 杜江馬龍のつぶやき
          8本
        • 連載小説 私たちは敵ではない(1話~16話)
          16本
        • 連載小説 負けない(1話~9話)
          9本
        • 連載小説 リセット(1話~12話)
          12本
        • 連載小説 還らざるOB(1話~11話)
          5本
        • 連載短編小説 大衆酒場(1話~3話)
          3本

        記事

          【連載】しぶとく生きていますか?⑥

           フンコツの隧道に到着した茂三と佐伯は、あまりの人だかりに驚いた。どこから聞きつけたのか、既に目黒あたりからも人が集まってきていた。  庶野の若い衆が遅れて到着した。トラック三台に分乗して十人ほどが駆け付けた。すぐ打ち合わせに入った。  波打ち際にはクジラが横たわっていた。クジラは沖に流されないように太いロープで岩場に括り付けられていた。  茂三の顔を見た淑子が、 「あんた、どうしたのさ! その包帯」と驚いて茂三に近寄ってきた。 「たいしたことない。ヒグマとじゃれ合っただけ

          【連載】しぶとく生きていますか?⑥

          【連載】しぶとく生きていますか?⑤

           ほっとするまもなく、茂三は駐在所の田所とともに、庶野で一軒しかない神峰診療所にむかった。  診察の結果、左頬の傷口は、ヒグマの爪が意外と深く入り込み、一部肉が抉られていた。  傷口を消毒し軟膏を塗り包帯を巻いた茂三の顔は、痛ましい姿であった。しかし、茂三はこれくらいの傷には動揺した顔を見せず、平然としていた。診療に当たった神峰医師は、茂三の泰然とした態度に内心驚いた。  茂三は顔の怪我よりも、手負いのヒグマを、どんなことをしても仕留めてやると思った。そうしなければ、被害者が

          【連載】しぶとく生きていますか?⑤

          【連載】しぶとく生きていますか?④

           そのヒグマは銃弾を右肩に受け、すぐ方向を変え裏山の茂みの中に消えた。  傷を負ったヒグマのことを『手負い』と謂って、非常に危険なのだ。  茂三の左頬から血が滴り落ちていた。 「茂三さん、大丈夫か?」 「駐在さん、救急箱持ってきてや」と茂三は田所に頼んだ。  田所は、駐在所の中へ走り、救急箱を探し当て、茂三の手当てをした。  ヒグマの爪でやられたと見えて、結構な深さの傷のようだ。 「茂三さん、撃った弾が、ヒグマの肩に当ったようだ」 「駐在さん、厄介なことになってしまった」  

          【連載】しぶとく生きていますか?④

          【連載】しぶとく生きていますか?③

           朝の七時ごろ庶野の駐在所に着いた茂三は、そこの駐在員の田所を起こし、玄関先でクジラとヒグマの事情を報せた。  起き抜けの駐在員の、支度するのを外で待っていた茂三は、なにかの物音に気付き駐在所の裏手を覗いた。  黒い生き物の背中が見えた。茂三は咄嗟に、駐在所と繋がっている自宅から出てきた警官の田所に小声で、 「いま、そこにヒグマのような大きい黒いものがいるぞ」と知らせた。 「まさか。茂三さんの見間違いでないのかい」 「駐在さん、声が大きい。確かにヒグマのようだ」  二人は、建

          【連載】しぶとく生きていますか?③

          【連載】しぶとく生きていますか?②

          「おーい、クジラがトンネルの向こうの岩場に流れ着いているぞ」  家に戻った茂三が、家に入ってくるなり大声で叫んだ。  茂三、妻の淑子と七歳になる息子の一茂の三人が、取る物も取り敢えず十分ほどの隧道に走った。 「クジラのほかに獰猛な動物を見掛けたら、直ぐ家に戻るぞ」と茂三は歩きながら二人に話した。 「父さん、その動物ってなに?」と息子の一茂が聞いた。 「ヒグマのようだ。多分そうだ」幾分緊張した様子で茂三が言った。  妻の淑子は、ヒグマと聞いて不安になった。  隧道に近づくにつれ

          【連載】しぶとく生きていますか?②

          【連載】しぶとく生きていますか?➀

          私が生まれた北海道の襟裳岬周辺を舞台とした小説です。 襟裳の厳しい自然に立ち向かう、主人公の男の生きざまを通して、「生きる」「しぶとく生きる」とは、どういうことか、を問いかける作品です。全29回になる予定です。    --------------------------------------------------------   ここ襟裳は、大自然に恵まれた地である。札幌から襟裳岬までは二三四キロメートルほどもあり、車で約四時間半を要する。この岬は一年中、風が吹いてい

          【連載】しぶとく生きていますか?➀

          最近、クジラ肉(ベーコンなど)食べていないですね。食べたいな-- クジラといえば、いま「白鯨」を読んでます。しんどい! 熊肉は昔食べました。 ゲテモノ喰いの私です。ジビエ料理ですね。 ジビエとはフランス語らしいです。 来週からまた、連載始めます。読んでいただければ、有難いです!

          最近、クジラ肉(ベーコンなど)食べていないですね。食べたいな-- クジラといえば、いま「白鯨」を読んでます。しんどい! 熊肉は昔食べました。 ゲテモノ喰いの私です。ジビエ料理ですね。 ジビエとはフランス語らしいです。 来週からまた、連載始めます。読んでいただければ、有難いです!

          【連載】私たちは敵ではない(16完)

           あくる年の秋も深まった時季、お袋は、体調を崩した。  裏庭の狸の夫婦は、心配と見えて、毎日夕方、実家に訪れて来た。  私の仕事も、会社の需要が増えて忙しくなり、帰りが遅くなることが多くなったので、狸夫婦がお袋の面倒を看てくれて大いに助かった。  狸夫婦はお袋に、早く良くなって欲しいと念じた。  また、もうすぐ冬がやってくるので、冬ごもりの準備に入らなければならなかった。  そういうことは、お袋にも私にも知らせてくれなかった。気遣いだった。  一進一退の病状の中で、お袋は

          【連載】私たちは敵ではない(16完)

          【連載】私たちは敵ではない(15)

           その別れは突然やってきた。  我が家の裏庭の狸の家では、雌の子狸がそろそろ独立する時期になっていた。親元から旅立ち、自分で餌を探し、生きていくのだ。  その年の晩秋、子狸が出立の朝が来た。  夕べは皆で送別会を盛大に催した。お袋は別れたくないと駄々を捏ねた。  子狸はお袋に「おばあさん、立派な家族を引き連れて遊びに来るからね」といって、お袋に抱きつき、肩を震わせていた。  お母さん狸は「これも持っていきなさい、体には気をつけるのよ、旦那は真面目な狸を見つけるのよ・・

          【連載】私たちは敵ではない(15)

          【連載】私たちは敵ではない(14)

           お袋は朝が早いので、夜は早めに床に付く。  両瞼が閉じだしたら既にスリープモードである。  裏庭の狸御殿から狸一家が遊びに来る時刻には、すでにお袋は寝ていることが多いのだ。もっぱら狸の話し相手は私に相場が決まっている。狸と様々なことを話し合う。  例えば、生物はどうして、人間や狸や馬や牛や他の動物、また小さな虫などに差別化されてこの世に生まれてくるのかとか、同じ人間に生まれてきても裕福な家庭に生まれる人など貧富の差がどうしてあるのかとか、日本に生まれたりアメリカに生まれた

          【連載】私たちは敵ではない(14)

          【連載】私たちは敵ではない(13)

           犬を飼っているお宅のご主人は、最近、会社を定年で辞めて毎日犬を連れて散歩していた。  それも多いときで一日六回も散歩するのだ。いい加減飽きがこないものか。  昔から知っているご主人であったので、道端で会うときは、挨拶するのだが、捕まったら長い。  三十分でも一時間でも話すので、適当な区切りを見つけて切り上げないと、そのあとの私の予定が狂ってしまうのだ。  柴犬二匹と秋田犬二匹それに土佐犬二匹飼っていた。グループ分けして散歩に出かけているようだ。  犬六匹の餌代だけでも大変

          【連載】私たちは敵ではない(13)

          【連載】私たちは敵ではない(12)

           台風が去ったある日、今度の土曜日に妹家族が一泊で家族で遊びに来ると、電話があった。  妹家族三人が泊まるスペースはない。  また皆で話し合った。  狸一家は家の裏庭に円形古墳のような住居を建て、そこで暮すことを希望した。私もお袋もその提案に同意した。  早速、準備に取り掛かった。土曜日までにはまだ三日ある。大急ぎで資材の調達やら工具の買い付けやら、裏庭の整備に一日中費やした。なぜか狸一家は大工仕事も上手い。  まず、裏庭に、木材で櫓を組み、札幌の雪まつりの雪像の作り方を参

          【連載】私たちは敵ではない(12)