【恋愛短編小説】 花弁と共に ”前編”
桜を見ると、否応なく君を思い出す。
君は花弁と共に現れて、花屑が舞い散る頃には閑かに姿を消した。
刹那的で情動的な記憶を僕に植え付け、深く根をはって離れない。
幾度春を重ねようと、満開の桜を見て心動かされ魅入ってしまうように
君への想いは、薄らぐことなく揺蕩い続けている。
高校2年の春休み。
当時、柔道部に所属し学生生活の全てを注いでいた。全国的にも名の知れた強豪校で日々の練習は過酷を極めた。
春休みと言っても部活生にとっては学校がない分、一日中練習という地獄のよう