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ニコニコしちゃう

土曜日の昼過ぎ。イオンのフードコートの端っこにいるあつこ。

10歳くらいの男の子と、野球帽をかぶったパパらしき人が隣に座った。

パパ「『お母さんありがとう』って書いて」

指さす先に、小さなカード。

男の子「おかーさん、あーりーがーとー」
といいながら、懸命に鉛筆を動かす。

思わずほほえんでしまうあつこ。

ーーー

が、男の子。
足がバタバタ。
激しく動かしながら鉛筆を使っている。

男の子「あー!あー!あー!」
叫び出す。

父親が急いで声をかける。
「お口をんー。」
と言いながら、口を閉じてみせる。

男の子も「んー」と言いながら口を閉じる。

バタバタ。
あーあー。
お口をんー。

バタバタ。
あーあー。
お口をんー。

そして男の子が
「できた」と叫ぶ。

おばさんあつこ、コーヒーを飲むふりをしつつ、様子を伺う。

カードからはみ出さんばかりの大きさの字で。

ありがとう

全体的に斜めだし
「あ」の字はつぶれていて
「う」の字は半分欠けてるけど。

お父さん「おー。よくできた。
花買っていこう」

男の子はイスをガタガタいわせて立ち上がる。
ぴょんぴょん跳ねあがる。
ほめてもらったからだね。

お父さんが手をぎゅっとつかんで、連れて行った。

ーーー

あのカード。
お母さんはあふれんばかりの笑顔で喜んでくれる。
ちょっと泣いちゃうかも。

花もいいけど、カードが良い。
正真正銘世界でひとつ。


そう思うあつこの顔。
ニコニコ。
脇を通り過ぎた若い女性が不思議そうに振り返る。
変なおばさんに見えたことだろう。
でも、ニコニコしちゃうのだ。

いつもありがとう。お母さん。

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