『清史稿』「劉藻伝」②

【原文】
尋以高郵諸生求賑而閧、左授宗人府府丞。藻居揚州候代、有呉之黼者、以文求教。藻行、饋糟魚、受之。中途発視、得白金四百、藻畀両淮運使硃続晫還之黼。上聞、諭曰「如此方不愧四知!」旋乞養帰。孝賢皇后及長皇子定安親王喪、藻詣闕入見。会大学士張廷玉乞帰失上指、因奨藻、謂其知君臣休戚相関大義、以媿廷玉、加藻内閣学士銜、賜人葠二斤、命帰養母。母喪終、二十一年、授陝西布政使。

【書き下し】
尋いで高郵の諸生賑を求めるを以て閧し、宗人府の府丞に左授す。藻揚州候代に居りて、呉之黼なる者有りて、文を以て求教す。藻行きて、糟魚を饋えられ、之を受く。中途にして発視し、白金四百を得、藻両淮運使硃続晫に畀え之黼に還す。上聞きて、諭して曰わく「此の方四知を愧じざるに如(あ)たる」と。旋いで養帰を乞う。孝賢皇后及び長皇子安親王の喪を定め、藻詣闕入見す。大学士張廷玉に会いて帰するを乞いて上指するを失う。因りて藻を奨し、其の君臣休戚するを知り相関大義なりを謂いて、以て廷玉を媿ずかしめ、藻を内閣学士銜に加え、人葠二斤を賜い、命じて母を帰養させしむ。母の喪終わり、二十一年、陝西布政使を授く。

【語釈】
・尋 探す。旧交を回復する。ついで
・高郵 江蘇省揚州市に位置する県級市
・閧(鬥に共)多くの人が騒ぐ。
・左授 官位を落とすこと
・宗人府 皇族を監査した清朝の役所
・府丞 正三品。宗人府の長官。
・楊州候代 地名。江蘇省に位置する地級市
・呉之黼 人名
・糟魚 酒粕に付け込んだ魚
・饋 食品や金品をあたえる。
・畀 あたえる
・両淮運使 都転塩運使。従三品。
・硃(朱)続晫 人名。山東省平陰県の人。
・愧 恥じる。辱める
・四知 天・神・相手・自分の四者が知っているので、不正な贈り物を受け取らないたとえ。
・養帰 父母を養うために帰郷する。
・旋 ついで 
・孝賢皇后 乾隆帝の皇后。・長皇子 長男の皇子。
・安親王 乾隆帝の第七子永琮
・詣闕 天子のいる建物まで移動する。
・入見 謁見する。
・上指 天に向かって指す。人が憤って、頭髪が逆立つ形用。
・休戚 喜びと憂い。
・相関大義 不明
・媿(愧)
・内閣学士 従二品。 
・人葠 薬用人参

【現代語訳】
ついで高郵の生員たちは物品を求めて大声で騒いだので、劉藻は宗人府の府丞に降格させられた。劉藻は揚州の候代に居住したが、呉之黼という者がいて、手紙で教えを求めた。劉藻は呉之黼のもとを訪ね、酒粕漬けの魚を与えられ、それを受けとった。帰路、中を見ると、白金四百両が入っていたので、劉藻は両淮運使の硃続晫に魚を与えて呉之黼に返還した。乾隆帝はそれを聞いて、劉藻に上諭して言った「この者は(不正な贈り物を受け取らない)四知を知っている」ついで劉藻は父母を養うために帰郷することを願い出た。孝賢皇后と長皇子は安親王の喪を定めたところ、劉藻は宮殿に移動し乾隆帝に謁見した。大学士張廷玉に会って帰郷することを願い出たので官位が上がる機会を失った。そこで張廷玉は劉藻を奨励し、その君臣が喜び憂いていることを知り相関大義であることを言った。そこで乾隆帝は張廷玉を辱め、劉藻を内閣学士の位に就け、薬用ニンジン1.2kgを与え、命令して母もとに帰らせ養わせた。母の喪が終わり、乾隆二十一年、陝西布政使を授かった。

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