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カメラの向こう側



素直に思ったことを。



昨日、衝撃的なニュースが入ってきて



ひとりの女性が亡くなってしまった。




少しネットサーフィンすればわかることだが、私もこの番組が好きで見ていた(現在の東京ステートは見てない)ので、ネットの誹謗中傷だろうとすぐに思った。




私は、映像業界で働いているので



そういう視点で思ったことを書いていこうと思います。

(賛同も批判もなく、ラジオだと思って読んでみてください)


普段みんなが見ている「映像」という媒体は、その素材をそのまま放映しているのではないですよね。

当たり前ですが、収録映像を受け取り、編集する人がいて、映像を演出する人がいる。映像を調理して、みなさんにお届けしているわけです。

調理する側の人間によって、「意図」が組み込まれていく。味付ということです。

特に、人の内面に迫ったドキュメンタリー系映像や、またはインタビュー映像などは、色濃くそれがパッケージされていきます。


今回の事件、

世の中の大半が憶測している

「ネットの誹謗中傷」によるものだとしたら、犯人は誰なのか?

遺族は、誰を裁判にかけたらいいのか?

わたしは、

先ほども言いましたが映像を作る側の仕事をしている人間なので

「もしこの番組の編集をし、演出をしている人間だとしたら」

と、この事件について考えてみることにしました。





この番組は、いわゆるリアリティー番組と言われるもので、

人気の理由は

「オシャレなシェアハウスをしている若者の日常をのぞき見できる」

というところだと思います。

のぞき見、というのがポイントで、

カメラなどの存在を感じさせることなく、収録が行われています。



昔、「この番組には台本があって、セリフも決まっている」などの話しもありましたが、私がもしこの番組の演出家だとしたら、

・毎日ではなく、曜日を決めて撮影する

(出演者にプレッシャーをかけないため・リフレッシュも含む)

・自由に話していいが、どこが使われるか分からないのでそれを頭に入れて置いてほしい(個人情報など)

・メンバーを決める時に、普段同じコミニュティにいなさそうな住人を組む

など、撮影前にある程度打ち合わせることがあると思うので

そういう話し合いが、「台本がある」という話に発展してしまったのかなと思いました(私の勝手な想像です)。



演出家なら、

この番組がどうやったら面白くなっていくかを考えるのが仕事です。


過去にこの番組を見ていて、

やっぱり楽しいと感じるところは、色々な人間模様・人間関係でした。

「あの人とあの人、仲悪いな〜」とか

「あの人、本当はこの人のこと、好きなんでしょ!」とか。


副音声の設定にすると、スタジオで見ている芸能人の↑こういった会話を同時に聞くことが出来る機能があり、それもまた視聴者に人気の仕様でした。


なので、私は作る側の気持ちも、一般視聴者としても気持ちも味わいながら見ていたので、この番組を完全に「作り物」だと思って見ていました。


矛盾していますが、実際にカメラの向こうで起きている日常は本物なのですが、その状況をお膳立てしている事実がある時点で「作り物」だと思うのです。


わかりますかね。わかりますよね。


演出家・製作陣の妙で、あたかもそれが本当に日常に起きていて(起きているんですが・はぁややこしい)、まるでニュース番組にあーだこーだいうかのように、ネットにこの番組のことが書かれていくのです。


もちろん、製作陣もそんなことは想定済みです。


むしろその様に話題にしていくことで、「この番組、面白そう」と見ていない人に向けてのプロモーションとして、私たちは活用されていたのです。


しかし、今回事件は起こってしまった。




わたしは、今回の東京ステートは見ていないので分かりませんが

番組の趣旨である「出演者の日常を盛り上げていく」が、どこまで演出されていたのか。そこがとても気になりました。

過去に見ていた番組内では、女子同士で喧嘩をしていた回の編集は、番組を盛り上げようと、そのように編集されていました。

拗ねている女の子のヨリ(アップのことです)、拗ねている女の子を機嫌悪そうに見ている別の女の子の目配せ、部屋の外でその喧嘩を聞いている男性の後ろ姿。

番組のあり方としては、正しいです。

そういう企画の、番組ですし。


私が思ったのは

作り手の編集や演出で

いくらにでも「悪」に魅せることが出来るということです。


自分が普段仕事をしている中で

「ここのカット切った方が、この人がカッコよく見える」

「ここを字幕でフォローしてあげた方が、この人が助かる」

など、出演者にプラスに働くように考えて作業することがほとんどです。

それは、そういう趣旨の映像だからです。

映画、CM、テレビ番組、など、スポンサーがいて、出演者がいて、出演者の事務所があって、伝えたいことがあって、など、プラスにすることが、どう考えたっていい方向に向かうからです。


しかし、この番組はその逆をあえていくことで、人気になっている側面もあります。

彼らは、しっかり仕事をしているのです。

(語弊が生まれるかもしれませんが、何度も言いますが、映像を一度でも作ったことがある人間が思った一意見です。)


では、先ほども言ったように

「犯人は、誰なのか?」です。


今、ネットフリックスで偶然このドキュメンタリーを見ていました。

「裁判とメディア」

マスコミの報道は果たして裁判の判決に影響を及ぼすのだろうか。
メディアと裁判の関係を描くドキュメンタリーシリーズ。



まさに第一話の内容が、今回の事件に似ていました。

「人気トーク番組で、異性愛者の知人男性に愛を告白した青年が、その数日後に殺害される事件が発生。青年の死に対する番組の責任の有無が取りざたされる」

このトーク番組の人気の理由に、出演者のリアルな反応をみて楽しむというところにありました。



この番組の事件とは、

とある青年に、「あなたに愛の告白をしたい知人がいる。しかし女か男かはスタジオに来ないと分からない。」と電話をし、この番組に来させます。


スタジオには、青年の知人が2人。男と女です。

実は、青年が番組に来る前に司会者と観客席は答えを知っています。

司会者が番組冒頭こう言います。

「片思いの相手に告白するなら、どれを選びますか?

相手に手紙を書く?失恋に備えてこっそり伝える?」

そして最後にこう言います。

「・・それとも ゲイであることも告白もテレビの前で?」

最後の言葉で、観客席は大盛り上がり。

スタジオの男性に話を聞く、という流れになるです。

こうして十分に温められたスタジオに、注目の青年が登場します。


青年は、少々困惑しながらも、司会者からの質問に答え

ようやく自分に告白したい知人が男の方だと知るのです。

青年は「嘘をついたな!」と、まだ余裕のある感じで知人男性にツッコミを入れたり、それを見てまた観客は盛り上がります。

番組では、結論がどうやら出なかったようで

青年は「まだ、よく分からない」という回答で番組は終わりました。

そして数日後に、青年は告白してきた知人男性を殺害してしまうのです。

(詳しい経緯などは、番組を見てみてください)


この事件、当然ながら出演者を煽って見世物にするのが趣旨の番組ですから、司会者・制作番組側が責められ、青年の死を賠償金として支払いましたが、青年は拘置所へ。

なんとなく、今回と似ているなと思いました。

論点はまさに「犯人は誰なのか?」というところが、非常に似ていると思いました。

まさか、今回実際にSNSで誹謗中傷した不特定多数の人がひとりずつ捕まる、なんてことが起こるのでしょうか。

それとも、番組が打ち切られるのか。制作側が賠償金を払うのか。

正直弁護士の戦い方によって、変わってくると思います。





私も、自分が作った映像にどういう反応が来るのかは、かなりビビリなから見ています。「なんか微妙」と書かれれば一週間くらい凹みました。

なのに、今回の言葉の暴力・・・しかも数千・数万かもしれません。

想像しただけで吐きそうです。

書き込んだ側は、本当に片手間かもしれないけど。


と、、、ちょっとよく分からない終わりになってしまいましたが、

今素直に思ったことです。

この事件、どういう結末になるんでしょうか。

まだ22歳だったみたいです。本当に、、、これから楽しいことが沢山まっていたはずなのに。

ご冥福をお祈りいたします。