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Favorite Music (Now&Then) 【10】BLUEGRASS MUSIC HISTORY 3

 一般的に我々世代までの日本人が、ブルーグラスに興味を持つきっかけとなっているのは、

 ①ビル・モンロー、フラット&スクラッグス等のトラディショナル・ブルーグラスに純粋に魅了された人

 ②フォークリヴァイバル時代に、フォークソングを通じてブルーグラスに出会い惹かれていった人

 ➂ニッティ・グリッティ・ダート・バンドのアルバム「アンクルチャーリーと愛犬テディ」「永遠の絆」やフライング・バリット・ブラザース、イーグルス等のロックグループによるブルーグラス演奏で出会い触発された人

 の3パターンに分かれるような気がします。

 因みに典型的な➂パターンから①②と遡って聴いていった私にとって、70年代のブルーグラスは、リアルタイムで聴いたり演奏したりしていた時期でもあり、思い入れが強いこともありますが、客観的に見ても百花繚乱というか面白い時期にあたると思います。 

 と、言うのも50年代に活躍した第一世代は、成熟期にあたり第一線でバリバリやっていましたし、60年代に頭角を現したアーティストは、フォークソングのみならず、カントリー・ロック、ポップス、アコースティック・スウィング、ジャズ等、様々な音楽を取り入れ、70年代に登場してくる新世代のアーティストと共に「ニューグラス」と呼ばれるジャンルを開拓していきました。又、それと同時に「トラディショナル・ブルーグラス」においても「ニュー・トラディッション」と言われ、伝統的なブルーグラスの良いところを残しつつ若い感性を生かしたブルーグラスを展開していきました。


 4.ブルーグラス新時代(第2期黄金期)の70年代・・・その1

 さて、最初に紹介する代表的グループは「カントリー・ガゼット」です。このグループのオリジナルメンバーは、リーダーでフィドル・マンドリン担当の「バーロン・バーライン」、そしてバンジョーの「アラン・マンディ」、ギターの「ケニー・ワーツ」、ベースの「ロジャー・ブッシュ」ですが、実際には、リードヴォーカルとギターに「ハーブ・ペダーセン」もクレジットされており、このメンバーで2枚アルバムリリースしています。もう一つ特筆すべきことは、2枚目のアルバムでは「クラレンス・ホワイト」が、素晴らしいリードギターで1曲参加していることです。

 こうして書いていくと既に気が付いている方も多いと思いますが、前回の60年代西海岸ブルーグラスグループの「ケンタッキー・カーネルズ」からは、クラレンス・ホワイトとロジャー・ブッシュが、「ディラーズ」周辺からバーロン・バーライン、ハーブ・ペダーセン、「スコッツヴィル・スクウィーレル・バーカーズ」からケニー・ワーツが集結していることです。そして残ったアラン・マンディにしても、オクラホマ大学でバーロン・バーラインと一緒にブルーグラスを演奏していた仲間です。そしてこのグループを知るためのもうひとつ重要なことは、以前のFavorite Music (Now&Then)でも紹介したバーズ、フライング・バリット・ブラザース等の西海岸カントリー・ロックとの関連です。

 少し話が脱線するようですが、バーズのオリジナルメンバーのベーシストのクリス・ヒルマンは、ヒルメン等でブルーグラスをやっていたことは、既に紹介しましたが、ロジャー・マッギン、ジーン・クラークにしても、フォークリヴァイバル世代とは言え、ロジャー・マッギンは、バンジョー奏者でもありますし、ジーン・クラークに至っては、早々にバーズを脱退し、同じくディラーズを脱退したダグ・ディラードと「ディラード&クラーク」を結成し、最初のブルーグラス・ロックとも言うべき「幻想の旅」をリリースし、ダグ・ディラード以外のサポートメンバーもバーニー・リードン、バーロン・バーライン・クリス・ヒルマンというブルーグラス出身者で固めています(因みにディラード&クラーク解散後のソロアルバムも、ヒルメンでギターとベースを担当していたゴスディン・ブラザースとの共作となっておりブルーグラスへの愛着が大きいと感じられますね)。

 その後バーズについては、グラム・パーソンズのカントリーロック路線「ロデオの恋人」でのサポートメンバーである「クラレンス・ホワイト」と盟友のドラマーでありバンジョー奏者でもある「ジーン・パーソンズ」中心のグループになっていったのは周知のとおりですね。

 一方、フライング・バリットについてですが、グラム・パーソンズ脱退の後は、クリス・ヒルマン、バーニー・リードン、リック・ロバーツが中心となりましたが、ここでカントリー・ロック路線と並行してライヴの中で純粋なブルーグラスを演奏し始めます。そしてバーニーは、イーグルス結成のため脱退しましたが、ライヴのブルーグラスセットは好評なためクリス・ヒルマンは、バンジョー奏者にケニー・ワーツを迎え、カントリー・ガゼットの前身?(カントリーガゼットは、既に結成していたようなので兼務かな)メンバーのバーロン・バーライン(この人は、多分クリスに呼ばれてマナサスのサポートメンバーにもなっていますし、ローリング・ストーンズのカントリー・ホンクでフィドルも弾いてます)とロジャー・ブッシュを加えてツアーに出かけます。その後クリス・ヒルマンもスティーヴン・スティルスとマナサス結成のため脱退すると、バンジョーの名手アラン・マンディが加わりカントリー・ガゼット全員が揃うことになりました。

 ガゼットは、この時期と前後してファースト、そしてセカンドアルバムを発表し、ブルーグラス界のCSN&Yとも言われました。今までのブルーグラスバンドにはなかった西海岸特有のハーモニーとポップセンス溢れる選曲(ジーン・クラーク、スティーヴン・スティルス、エルトン・ジョン、ドン・マクリーン、CS&Y等)と演奏(特にバーロン・バーラインのフィドルとアラン・マンディのバンジョー)は、特に評論家やプロミュージシャンから強い支持を受け、70年代のブルーグラス界をリードしていく存在となりました。そして、バーズを脱退したクラレンス・ホワイトの正式参加が噂されましたが、クラレンスが不幸な交通事故で他界したため頓挫、代わりに兄のローランド・ホワイトがギターとリードヴォーカルで参画し3枚目のライヴアルバムをリリースします。その後、リーダーのバーロン・バーラインが抜け、アラン・マンデイとローランド・ホワイトを中心に活動していくことになります。

 次に紹介するのは、「ニューグラスの父」とも呼ばれているサム・ブッシュ率いる「ニュー・グラス・リヴァイバル」です。このグループのオリジナルメンバーは、マンドリン・フィドル・ヴォーカルの「サム・ブッシュ」、バンジョー「コートニー・ジョンソン」、ギター「カーチス・バーチ」、リーダーでベース担当の「イボ・ウォーカー」ですが、本題に入る前に少し付け加えさせていただきます。

 ブルーグラス界でも若くして天才と呼ばれている人が、何人かいますがサム・ブッシュも間違いなくその中の一人で、フラット&スクラッグスの影響でブルーグラスに傾倒し、10代半ばでジュニア・フィドルチャンピオンとなります。まだ10代の1969年には、先ほどガゼットのところで出てきた、これまた若きアラン・マンディと出会い「プアリチャーズ・アルマナック」と言うインストルメントアルバムを制作します(アラン・マンディとサム・ブッシュは、その後77年にサム&アランという名盤で共演することになります)。その後、ニュー・グラス・リヴァイバルの前身となるブルーグラス・アライアンスにマンドリン&フィドルプレイヤーとして参加します。このグループは、プリニューグラスともいうべき先進的なグループでサム・ブッシュに加え、サム・ブッシュに負けず劣らずの天才「トニー・ライス」もギタープレイヤーとして参加していました。

 その後、ブルーグラス・アライアンスのベーシストのイボ・ウォーカーとサム・ブッシュが中心となり、ニュー・グラス・リヴァイバルを結成した訳です。

 やっと本題ですが、1971年ファースト・アルバムをリリース。A面1曲目に白人ロックンローラーのジェリー・リー・ルイスの「火の玉ロック」のブルーグラスバージョンで度肝を抜き、その後もディラード&クラークの名曲「ウィズ・ケア・フロム・サムワン」等、ブルーグラス編成ながら歌、演奏ともにロック的なアプローチを見せてくれました。2枚目からは、ベースに「ジョン・コーワン」を迎え(この人は、エレキベースを弾き完全にロック・フィールドの人で、後にドゥービー・ブラザースのベースプレイヤーとしても活躍します)、「グッド・ウーマンズ・ラブ」でヴォーカルも披露しますが、歌い方も完全にロックですね。そんななので保守的なブルーグラス・ファンからは賛否両論ありましたが、トラッドなブルーグラスもニューグラスもこなせるサム・ブッシュのプレイが素晴らしすぎるので、うるさ型の人達も認めざるを得ないという感じでした。その後も順調にアルバムをリリースしていきますが70年代終わりにバンジョーのコートニー・ジョンソンとギターのカーチス・バーチが抜け、若き天才バンジョー・プレイヤーの「ベラ・フラック」とギターに「パット・フリン」を迎え、演奏面での飛躍的な進歩を遂げ80年代へと続いていきます。

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カントリー・ガゼット1枚目、ウェストコーストサウンド+ブルーグラス

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エルトン・ジョンの「ホンキー・キャット」のブルーグラスカバーは、凄いです。クラレンス・ホワイトも参加

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ローランド・ホワイトを迎えてのライブアルバム

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バーロン・バーラインが脱退し、ケニー・ワーツが戻った4枚目

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ジュニアフィドルチャンピオンのサム・ブッシュとアラン・マンディの初コラボ

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ニューグラス・リヴァイバルのファーストアルバム。当時、長髪・Tシャツのブルーグラスバンドは、皆無

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初期のニューグラス・リヴァイバルの最高傑作だと思います

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このアルバムもバランスが良いですね

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レオン・ラッセルとの共演ライブ

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ベラ・フレックが加入し、サム・ブッシュとの驚異的テクニックが楽しめるフランスでのライブアルバム


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