「ちばしがさが」「コテハン」とSNS

ラーメンズの小林賢太郎が引退した。ラーメンズといえば、僕らの年代には、欠かせないものがある。

「ちば しが さが」

と言えば思い出す人もいるかもしれない。ラーメンズの「日本の都道府県」というコントの音声をもとに作った、モナーと呼ばれる謎キャラクターが動くフラッシュアニメだ。この動画の説明をすると長くなるので割愛するが、気になる人はYouTubeなどで調べてみて欲しい。

あの頃(2004年前後)は、家庭でインターネットが普及し始めた時で、うちの実家にも共有のパソコンがあった。当時のインターネットは、YouTubeも盛んではなかったし、ちょっとアングラな感じでやってる人もコソコソしていた気がする。電車男の元スレッドを徹夜で読んだり、ネットの履歴が残ることを知って絶望したりしていた。

今でこそ、情報を調べたければ、ネットメディアやキュレーションサイトが溢れているが、あの時のスタンダードは個人ホームページだった。筆者は自堕落でアホな中学生だったから興味持つことなんて、ゲームしかなく、ゲームの攻略サイトを漁る毎日だった。

個人HPには、BBSという掲示板機能が付いていて、そこで質問したり、雑談したりが行われていた。
学校の友達以外と喋るスキルがない中学生だったが、かなりハマったゲームの掲示板に参加していた。掲示板はSNSと違って、アカウント認証とかなかったから、本名はバレないし、年齢だって、性別だって自由だ。

掲示板文化の一つにコテハン(固定ハンドルネーム)がある。掲示板に書き込むときには毎回名前を決めるのだが、馴染みの掲示板だとコテハンで誰かというのを特定していた。当時、悪魔退治系のゲームと幕末という二大厨二病コンテンツにハマっていた筆者は、「無銘の闇刀」という今では書くだけで冷や汗が出るくらいのコテハンで参加していた。

コテハンとは言っても、毎回別の名前にしてもいいし、実際2chとかはなりすましたりもあったみたいだけど、筆者がいた掲示板はみんな毎回同じ名前だったし、何なら名前を変えることを律儀に宣言する人も居たくらいだ。だから、匿名でも自分の発言が大丈夫かなって不安だったり、間違ったこと言って怒られたら次の日はずっと凹んでいた。ある意味で村みたいな場所だったと思う。

あの頃のBBSの匿名性と今のSNSの匿名性は繋がってるように見えて、この村感が消えてしまった気がしている。
コテハンは人間性を伴った匿名だから、その発言の責任が明確だったし、変なこと言ってもそこだけの話で終わっていた。(2chへの批判とかもあったが、2chは1000件を超えるとスレッドごとで簡単には見られなくなるという限定さを持っていた)

でもSNSの匿名性において、発言は基本的に世界に公開され、消さない限りは残り続ける。しかも同一のプラットフォームだから、容易に他の人の目に触れてしまう。今のSNSには、関係ない他者に影響を与えうる“無敵の人”が溢れている。

もう戻ることはできない気もするし、戻りたいとも思わないけど「無名の闇刀」(汗)が住んでいた村は今どこにあるのだろうか。

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