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感情的なマンスリーカプセル滞在譚②

懇親会には遅刻して行った。
残業はないけれど、終業が遅めなのと、職場から新橋は距離がちょっとあったから。
8人中6人が女性。いつも女性が多めだけれど今回は特に、らしかった。大学生からお母さんまで、と幅広い。やっぱりみんな変わってる~!というかつよい!ひとりで立っている人たちだ、とどきどきした。
この懇親会があったおかげで、その後、一緒に銭湯へ行ったりバーへ行ったり、最終日の夜にみんなで集まったり、というイベントが発生した。いい出会いだった。本当に年齢も性別も職業も環境もばらばらなのに、カプセルタワーに今同時期に住んでいる、というだけでみんな共犯者みたいだった。
懇親会が終わったころには、もう近所の銭湯は営業を終了している時間になっていた。
お湯が出ないカプセルで過ごすうえで、お風呂はかなり大問題だ。歩いて10分弱の銀座のど真ん中の銭湯は、日曜が休みだし、夜は22時にしまってしまう。共有部にシャワーブースはあるのだけれど、外付けだし、実際外だし、冬だし、めちゃくちゃキレイ、というわけでもないから、どうしても使う勇気が出なかった。こう見えてもきれい好きなので。

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で、懇親会の日、もう銭湯は閉まっている、そろそろ終電もなくなる、でもシャワーブースは使いたくない。しかも記念すべきカプセル泊初日なのに、お風呂に入らないままベッドにのるのは気が引ける。どうしよう~お風呂みなさんどうするんですか~と懇親会で席が近かったガールふたりにそれとなくごねると「水道橋のラクスパにいっしょに行きます?終電なくなると思うから歩いて帰ってこないといけないけど」と言ってくれた。
会ってまだ3時間ほどの彼女たちと電車に乗り、銭湯へ行った。いきなり裸のつきあいだ。すばらしい。こんなこと人生においてなかなかない。
案の定帰り道は終電時刻を過ぎており、年齢もフルネームも、むしろ苗字だって不確かな3人で敬語でしゃべりながら、カプセルタワーまで1時間かけて歩いて帰った。人生の中で忘れられない夜ランキング、かなり上位に食い込む、と思いながら歩いた。心底楽しかった。

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私のカプセルの使い方としては、仕事が休みの日に泊まりに行く、という週末だけ滞在型だった。贅沢すぎる。本当に。
職場と自宅は近く、わざわざ3倍の時間のかかる新橋から職場の往復を毎日する体力がなかった。それとやっぱり、仕事のある平日にお湯が出ないがために、銭湯へ行かなければならない、というのは大変だったから。
だから特に引っ越しみたいな大荷物は必要なかった。週末泊りに行く際に、日数分の服とタオルとドライヤー等をカバンに詰めてもっていくだけですんだ。毎週小旅行気分だった。

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ホテルとちがって自分でもっていかないと部屋にはなにもないから、ティファールと鏡とティッシュと手洗い用洗剤とウェットシートと本とミッフィーのライトをカプセルには持ち込んでいた。コロコロする掃除道具と箒と塵取りは部屋に備え付けてあった。
ティファール、なによりも必須アイテムだった。めちゃくちゃ活躍した。お湯が出ないからうがいをするときにもティファールで沸かした後、適温に冷ましたものをつかった。すっかり冷え切った水道水は歯にしみる。

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カプセル内は、エアコンをがんがんにつけていてもかなり寒い。寝るときも毛布はないため、ちょっぴり寒い。そしてエアコンをつけて寝ると乾燥する。加湿器ももってこようか迷ったけれど、かさばるのでやめにして、水で濡らしたタオルをハンガーにつるしてエアコンをつけたまま寝ていた。
無印ルームはコンクリートの上に薄い木目のシート?(よくわかんない)が敷いてあるだけで、かなり足元は冷えた。靴なしで歩くには冷たすぎる。それに玄関がないから、脱いだ靴を置いておく場所がない。廊下に出している人たちもいたけれど、それはちょっと怖くてやめた。だってもし万が一、朝出かけようと思って靴がなかったら途方に暮れてしまわない?予備の靴もないし。よって、マイルームは土足おっけー、となった。

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カプセル内も結構寒かったけれど、なにより廊下が外より寒いのではないかってくらい寒くて、びっくりした。12階にあるA棟とB棟をむすぶ屋外の渡り廊下で銀座や汐留新橋を眺めるのが好きだったのだけれど、気軽に着の身着のままいけないくらい道中の廊下が寒かった。いつもコートとマフラーを身にまとって覚悟を決めてからエレベータに乗っていた。
12階の渡りから見る東京は、とてもとても静かで、すばらしかった。

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つづく