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不動産バブルを潰し中華思想が成就するのか

恒大集団が債務不履行寸前だ。中国政府は銀行貸し出しを停止させた。結果恒大グループの急拡大はストップ、いやストップどころか不動産市場の締め付けで倒産しそうだ。
兆候はあった。去年8月中国人民銀行(中央銀行)は不動産業者に対して負債を一定の規模に抑えることを目的とした基準を提示し守れなかった企業に対して借り入れ制限を開始。世界最大の債務を抱える同社は昨年9月この基準に抵触するとして貸し渋り→流動性危機に陥る。すべての商品を3割値引きして販売開始したが10月になっても株価も乱高下。社債の利払い額は年間700億円を超え、投資家(中国恒大の多くの社員を含む7万人余り)が理財商品を現金に代わり不動産資産の大幅値引きという形で返済しようとするも損失や償還遅延に見舞われており大混乱。取引先への未払い分などを含めた負債総額は1兆9665億元(約33兆4000億円)だ。これは中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当する。
10年以上前から理財商品によっての資金調達での不動産建設を推し進める無理な拡大路線を危惧する声が多かった。にもかかわらず負債が積み上っていた。
今回のデフォルトが中国経済の混乱、世界の金融市場が大きく影響するのではないかとの懸念もあるが、中国政府は救済の手を出そうとはまだしていない。中国経済と金融システムが大混乱になるとは思っていないのか気にしていないのか。もはや放置して債務不履行になっても、事業の清算に政府が積極的に救済しないだろう。
銀行や投資家、資材供給業者、購入予定者、他の不動産業者が打撃を受けたとしても中国政府は民間企業救済をしないと思う。民間業者救済の前例を作ることに消極的だし、投資家の救済はしないだろう。
つまり中国政府は内外の投資家の資産が吹っ飛んでも気にないのだ。
当初の目的通り住宅件数は十分整った、これ以上の無駄な建築はやめろ・価格高騰はけしからんということだ。
極端に話せば債務不履行になってもドル社債を持っているのは海外の投資家だから無問題。国内の投資者が損しても無問題。不動産資産価格が低下しても不動産は消滅しない=そこに建っている中低流世帯が住めばいい。
違う話をしよう。9月に中国政府は10兆円規模の国内業界を禁止し葬り去った。
学習塾である。中国政府が打ち出した「学習塾禁止令」で学習塾は閉鎖されている。禁止の理由は過熱する一方の受験戦争を助長し貧富の差が学力差になるのを阻止するためだ。
7月に「小中学生の宿題を軽減し、学外教育の負担を軽減する」という方針を発表し、小中学校が児童・生徒に課す宿題を細かく制限すると同時に、小中学生向け学習塾の新設は認めず、既存の学習塾を無理やり非営利団体として登記させている。
学校の宿題はともかく、営利目的の学習塾は違法になった。最近は闇学習塾の営業もあるそうだ。
この国は一党独裁国家であり社会主義国家だ。
92年社会主義市場経済を導入し国の発展と繁栄を進めてきた。結果GDPは日本を抜き去りアメリカに次いで2位。
習近平は8月17日の中央財経委員会第10回会議で、「共通の繁栄」を確保するために過剰な富の規制を開始する意向を示している。
中国が国内の不平等な富の配分に対して、今後より強い姿勢で臨む。これまで一部の人々や地域が先に金持ちになることを認める緩やかな経済政策を取ってきたが、中流階級を拡大し低所得者の収入を増やし、より平等に富を配分するために「過剰な高所得」の規制も行うぞと言っていた。
今回の不動産バブルの抑制や学習塾廃止は、社会主義市場経済の文脈から外れていないのだ。
世界の工場のイギリスは産業革命によって世界の工業生産額の半分を稼いだ。アメリカも、そして中国もそうなった。輸出によって国を豊かにしてきた。
しかし、人口13億の中国は、国民がある程度豊かになれば輸出に頼らなくても巨大な国内の購買力だけで経済活動を内部完結できると考えているのではと感じる。ある意味イギリスのEU離脱やアメリカの自国第一主義は中華思想と文脈は同じなのだ。
中国国民は自信にみなぎっている。最近の若者は海外留学をしない。英語を話さず中国語でのコミュニケーションが多くなってきている。経済も文化も消費も国内で完結しようとしている。中国は海外からの投資が減少しても平気だと思っている。もはや海外のお手本も資金も自国を発展させる為に必要無いのだ。
そろそろ中華思想の完成かもしれない。

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