見出し画像

拾恋アフター 二話「隙間」


眞衣)ふぅ〜。

未央奈)まいちゅん、お昼行こ〜?


眞衣)うん…。

未央奈)もう、また○○くんのこと?

眞衣)まぁ、ね…

未央奈)そんなに気になるなら会いに行けばいいのに。

眞衣)でも、それだと○○が…

未央奈)またそれ…

眞衣)ごめん…。

これで良かったと思ってる。

それでも、やはり後悔はしている。

未央奈)今日も雨か、仕方ないね、いつものところで食べよ?

眞衣)うん…。

??)あ、眞衣さん!お疲れ様です!

未央奈)げっ、出たよ…

眞衣)△△くん。

△△)僕もこれからお昼にしようと思ってたんですよ〜!

未央奈)嘘つけ、あからさますぎでしょ…


△△くんは私の後輩だ。

教育係として教えて以来、こうしてよく話しかけてくれる。

△△)あの、堀先輩!眞衣さんをお借りしてもよろしいでしょうか?

未央奈)はいはいどうぞ〜…

△△)ありがとうございます!眞衣さん、お昼ご一緒にどうですか?

眞衣)いいよ、行こっか…

△△)ありがとうございます!

未央奈)あの子に○○くんの代わりが務まるか…どうだろうね〜…


-----


△△くんが入ってきたのはちょうど○○を拾った時の同じくらい。

当時は今よりも暗くて、ミスをしてばかりだった。

眞衣)△△くん、ここ桁が一桁多いよ?

△△)あ、すみません…

眞衣)ううん、大丈夫。今日までに直して新しいの持ってきな?

△△)はい、失礼します…

同じようなミスを何度も繰り返していて、お世辞にも仕事ができるような人ではなかった。

しかしここ最近、見違えたように仕事をこなしている。

△△)あれ、眞衣さん?ここってもしかして一桁多くないですか?

眞衣)あ、ほんとだ…ごめんね、すぐ新しいの作るから。


△△)いえいえ大丈夫です!多分今は疲れているのでしょうからゆっくり休んでください!僕がやっておきますから!

逆に私がミスを指摘されてしまうくらい。

それに性格も明るくなった。

もともと顔も良かったからか、私の同期や後輩からもかなりモテモテだ。

まぁ、未央奈は嫌っているみたいだけど。

△△)眞衣さんって、いつも手作りなんですか?

眞衣)うん。

△△)すごいですね!僕料理全然できないんで尊敬します!

眞衣)そんなことないよ。

今日みたいに一緒にご飯を食べることもしばしば。

△△)あ、あの、もし良かったらなんですけど…今度の日曜日、お食事に行きませんか?

眞衣)え?

△△)いやあの、嫌なら全然大丈夫なんですけど!その、もしよかったら…

眞衣)うん、いいよ。

△△)え、いいんですか…?

眞衣)うん、特に予定もないしね。

前なら○○とお買い物に行っていた。でも今は…

△△)やった…ありがとうございます!!じゃ、じゃあ詳しいことはまた後日に!

眞衣)うん。

私も早く、○○のことは忘れないと。

彼は今頃、和ちゃんたちと仲良くしているのだろう。


-----


△△)それじゃ、乾杯。

眞衣)か、乾杯…


驚いた、お食事がこんな高級なところだったなんて。

眞衣)いいの?こんなところに連れてってもらって。

△△)いいんですいいんです!今日は眞衣さんと会社以外で会えるから、緊張しますね…笑

眞衣)私はここの雰囲気の方が緊張するけどね…笑

運ばれてくる料理はどれも見たことのないものばかり。もちろん味わったこともない。

△△)眞衣さん、お話があります。

眞衣)どうしたの?

△△)僕、眞衣さんのことが好きです。だから、僕と付き合ってくれませんか?

眞衣)嘘…私のことが?

△△)はい。

彼の言葉を聞いて、1番に思い浮かんだのは○○のことだった。

今頃○○には彼女がいるのだろう。

和ちゃんか美空ちゃん、咲月ちゃん…

○○はモテるから多分色んな人に囲まれてるんだろうな…

私も新しい恋をしないと。彼のことを忘れないと。

眞衣)えぇ…私おばさんだよ?それに、△△くんだったらもっといい相手いるでしょ?

△△)いや、僕は眞衣さんじゃなきゃ嫌なんです。眞衣さんが、誰よりも1番好きなんです。

眞衣)っ…!!


-----
○○)でも、僕は眞衣さんじゃなきゃ嫌だ!!眞衣さんが、誰よりも一番好きなんだ!!
-----


眞衣)…ごめんなさい、私好きな人がいるの。

△△)…それは、どんな人なんですか?

眞衣)純粋でまっすぐで、ちょっと子供っぽいけど、しっかりしてていい子。もう会えないんだけどね…

△△)なら!

眞衣)でも、忘れられないの。ずっと、ずっと…どんな時も彼のことを思い出すの。彼にはもう彼女もいるはずだし、私からサヨナラしたのに、ずっと忘れられないの。


やっぱり私には、彼を忘れて他の誰かと過ごすなんてことできない。

彼への気持ちを捨てきれないまま、△△くんと付き合うことはできない。

それはきっと、いつか△△くんを傷つけることになる。

眞衣)ごめんね、△△くんのことはすごくいい人だと思ってるし、△△くんと付き合えたら幸せだと思う。それでも、私にとって彼が1番なの。

△△)そう、ですか…眞衣さんがそこまで言うのなら、本当に良い人なんですね。くっそ〜、頑張ったのにな〜!眞衣さんに振り向いてもらうために、僕めちゃくちゃ頑張ったんですよ。

眞衣)確かに、初めて見た時よりも全然違う人になってる。

△△)くっそ〜、悔しいな〜!グスッ

眞衣)ごめんなさい…

△△)いいんですいいんです!僕、応援してますから!眞衣さんの幸せが、僕の幸せですから!

眞衣)ありがと。


-----


眞衣)今日はありがと。じゃあ、また明日ね?

△△)はい、ありがとうございました!

眞衣は△△に背中を向けて歩き出す。

未央奈)おつかれ、頑張ったじゃん。

△△)堀先輩!いたんですか?

未央奈)あんたがまいちゅんに変なことしないかずっと監視してた。

△△)そんな人聞き悪いこと言わないでくださいよ…

未央奈)ふふ、かっこよかったよ。


△△)あ〜、悔しいですね〜…グスッ

未央奈)それにしても、ずっとあの調子だと困るな…これじゃまるで、最悪な別れじゃん…。


-----


眞衣)はぁ…。

○○、今は何をしてるの?ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと寝てる?和ちゃんとかと仲良くしてる?私がいなくても、幸せ?

眞衣)嘘ついて、ごめんね…やっぱり私、○○のこと大好き…。


一度空いた隙間は、どんどんと大きくなって眞衣を飲み込む。

孤独の隙間を埋められるのは、ただ1人の、2度と届かない愛だけ。

あの日のように冷たい雨が、眞衣の心を冷やしていた。

To be continued……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?