見出し画像

Dear… 第四話「愛し愛され愛を知る」




美波)今日は私の方が早いみたいね。


○○)そうですね笑


飛鳥さんよりも先に梅澤さんが店に来た。



美波)最近、いい感じじゃん笑

○○)なにがですか?

美波)とぼけないでよ、好きなんでしょ、飛鳥さんのこと。

○○)なっ、ま、まぁ…


美波)やっぱり笑、飛鳥さんといる時のあなた、分かりやすいくらいに明るいもん笑


○○)やめてくださいよ…それに、僕なんかじゃ釣り合わないですって。


美波)そんなこと気にしないの!素直に言ってみれば?好きって。


○○)無理ですよ。相手は恋愛興味ないって言ってますし、国民的大女優ですから。


美波)意気地なし〜!あ、きたきた…笑




飛鳥)よっ。

○○)あ、こんばんは…

飛鳥)なに、なんかよそよそしくない?

○○)いえ、別に…


飛鳥)ふ〜ん、また隠すんだ〜…ま、いいけど。


飛鳥さんはいたずらに微笑んだ。

美波)飛鳥さん、撮影どうですか?


飛鳥)まぁ、順調かな。でもさ、共演相手がなんか嫌なんだよね。明らかに私のこと狙ってるみたいで。

美波)うわぁ〜、やっぱりそういうのあるんですね…飛鳥さんは恋愛とか興味ないですもんね?

飛鳥)う〜ん、まあね〜。



やっぱり、それはそうだ。

映画に出れるようなイケメンがダメなら僕なんでもっとダメじゃないか。当たり前だ。


別にいいんだ。最初から分かっていたから。


いいんだ、別に…





美波)あ、やばい!飛鳥さん隠れて!

飛鳥)へ?

美波)お客さんですよ!バレたらやばいからほら!


梅澤さんが飛鳥さんの手を引いて隠れた。


○○)いらっしゃいませ〜…

男)あれ、お前秋元じゃね?

○○)え?

男)ほら、高校の時の。覚えてねえか笑


その男を僕は全く覚えていなかった。


ただ、なんとなく嫌な予感がした。


○○)すみません…

男)ここでなにしてんの?

○○)見ての通りアルバイトです。

男)バイト?就職じゃなくて?

○○)はい。







男)ふ、ダッサ笑


○○)…!!



男)もうみんな就職してるぞ?なのにこんなとこでバイトとか、ダサすぎ笑、だから親にも捨てられるんじゃねえの?笑




○○)っ…






なにも言い返せない。

なにも間違っていないから。


せっかく僕を育ててくれてるのに、僕はなにも返せていない。

いつまでも逃げ続けてるだけだ。




男)産んだ親も可哀想だけど、育ててる親の方も可哀想だな笑、フリーターとか所詮ニートと変わんねえだろ笑






飛鳥)あいつ…!!


美波)待って!私が行くから。


飛鳥)でもっ!


美波)飛鳥さんが行ったら余計ややこしくなるだけです。ここは私に任せてください。


飛鳥)くっ…!!







男)お前なんて捨てられて当然だわな!笑

美波)ちょっと!

男)あ?

美波)さっきからうるさいんですけど?買い物の邪魔なんで出て行ってくれますか?


男)チッ…お前女に守られるとかもっとだせえな。そのままずっと逃げてろよ。


男は出て行った。


美波)なにあいつ…飛鳥さん、もういいですよ。


飛鳥)大丈夫?○○くん。





○○)…くっ!!


飛鳥)○○くん!!


○○は俯いたまま店を出て行った。


美波)私がお店はどうにかしますから、飛鳥さんは追いかけて!


飛鳥)ありがとう!



どこに行ったの、○○くん…!







-----



○○)……。


僕はなんなんだ。

なんのために生まれてきたんだ。


親に捨てられ、そのことからずっと逃げ続けて。


結局、悪いのは全部僕じゃないか。


僕が生まれてきたからダメなんだ。


僕のせいでみんな…




飛鳥)あなた、隠すのだけじゃなくて隠れるのも上手いのね。


○○)飛鳥さん…


飛鳥)あの話、ほんとうなの?


○○)…本当です。僕は親に捨てられたんです。僕がまだ生まれて間もない頃に。


その頃の記憶はない。


ただ、中学生になった時、真夏さんから初めて聞かされた。



-----


真夏)○○、言わなきゃいけないことがあるの。

○○)どうしたの、母さん。



真夏)実はね、○○は私たちの子供じゃないの。

○○)え…



真夏)私はあなたを産んでいない。あなたは、養子なの。

○○)じゃあ、今までのって…




その時僕は悟った。


僕は捨てられたんだと。


よくある例だ。

産んだはいいものの、育児がめんどくさくなって捨てる。


それが僕なんだ。


○○ちち)でも聞いてくれ!君のお母さんは、すごくすごく
○○)もういいです。


○○ちち)え?


○○)もうその話はいいですよ、おとうさん、おかあさん。

真夏)っ…!



○○)僕は捨てられたんですね、実の母さんと父さんに。

真夏)違うの!話を聞い
○○)もういいってっ!!


○○ちち)……。




○○)これからもよろしくお願いします、おとうさん、おかあさん。

真夏)○○、くん…。



-----



○○)僕は誰からも愛されてない、誰からも必要とされてないんですよ。


飛鳥)そんなことないよ。


○○)なにもわからないくせにそんなこと言わないでくださいよっ!!!


飛鳥)わからないわよっ!!なにも、なんにもわからないわよっ!!あなたがずっと隠してるから、あなたがずっと逃げてるからっ!!



○○)っ…



飛鳥)誰からも愛されてないんじゃない!誰からの愛も受け取ろうとしてないだけ!!
勝手に決めつけて、勝手に壁を作ってるだけ!!


○○)だってそうするしかないからっ!!
怖いんだよ、また捨てられるのが、!!
僕だって、、僕だって愛されたいよ!!でも、結局また捨てられるんだっ、!!なら、それなら、、


飛鳥)私は捨てない!!私は、絶対にあなたを捨てたりしない!!だから、だから…





「私の愛を受け取ってよっ!!」



飛鳥はそう言って、○○を抱きしめた。


○○)っ…!



暖かい。



心からじんわりと拡がる温もり。



抱きしめられたからなのか。



心までもが温まるのか。






○○)飛鳥さん…






飛鳥)あなたは1人じゃない!私がいるから、私に全部ぶつけてよっ…!






○○)うぅ…飛鳥さんっ…!!




そうか。


これか、僕がずっと遠ざけてたものは。



これか、僕がずっと求め続けていたものは。



これなんだな。





これが、愛なんだ。





To be continued……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?