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拾ってくれませんか? 一話


「行かないでよ、ねえ…父さん!母さん!」

○○)うぅぅ…行かないで…。ハッ!

目が覚めるとそこは凍えた外ではなく、暖かい家の中だった。

○○)ここは…

??)あ、目が覚めた!

1人の女性が奥から走って近づいてきた。

??)ねえ、大丈夫?!

○○)え、母さん…?

??)残念ながら私はあなたのお母さんじゃないのよ。それより何があったの?なんで倒れてたの?


その女性は母さんに似ていた。

父さんと共に事故で死んだはずの母さんに。

○○)分からない、何も分からない…

??)とりあえずお風呂使っていいから。私は新内眞衣。落ち着いたら何があったか話して。

○○)はい…

眞衣)じゃあこっちついてきて。

そういってお風呂に案内をされた。

眞衣)ここがお風呂だから。着替えは後で置いとくから、とりあえず入っちゃって。

○○)でも…

眞衣)いいから入りなさい!これはお姉さんからの命令よ。

○○)ありがとうございます…

そういって僕は、冷え切った体を暖めた。


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眞衣)着替え置いとくわよ〜。


女性ものだけど、あの子の体つきを考えると平気そうだ。

それにしても、いったいあの子に何があったのだろう。

そして、寝てるときに言っていたあの言葉、あれはどういう意味なのだろう。

聞きたいことは山ほどあるけど、今はあの子を落ち着かせよう。


-----10分後-----


○○)すいません、お風呂ありがとうございました。

眞衣)ううん、大丈夫だよ。それより、お腹空いたでしょ?今作ってるから待ってて。

○○)いえ、流石にそこまでは…

眞衣)いいの。私が作りたいから作ってるだけ。いいから座ってて。

○○)はい…すいません…

お風呂ってこんなにも暖かったんだ。

毎日めんどくさがってた自分が嘘のように思えた。

いつも母さんに怒られてたっけ。

あぁ、懐かしいな。

母さん、父さん、なんでだよ。

なんで僕より先に死んじゃうんだよ。

眞衣)おーい、聞こえてる?

○○)あ、すいません…

眞衣)はい、できたよ。食べて食べて。

○○)すいません、いただきます…

目の前にはご飯と味噌汁、それから肉じゃががあった。

きっと昔の僕ならつまんない、なんて思ってただろう。

でも今はそんなことは微塵も思わなかった。

眞衣)どう?美味しい?


○○)はい…すごく、美味しいです…😢

眞衣)ちょ、ちょっと?!なんで泣いてんの?

○○)いや、なんか…すいません…うぅぅ

ギュッ!

眞衣)そんなに辛かったんだね。もう、大丈夫だよ。私がいるから。

○○)うぅ…ごめんなさい…

僕は眞衣さんに抱かれたまま、泣いた。


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○○)取り乱してすいませんでした。もう、大丈夫です。

眞衣)そっか、よかった。

それから僕は眞衣さんが作ってくれたご飯を食べ終えた。

○○)ごちそうさまでした。

眞衣)お腹いっぱいになった?

○○)はい、ありがとうございます。

眞衣)そう、なら良かった☺️

眞衣)さて、じゃあ君に何があったのか、教えてくれない?辛かったら、大丈夫だけど。

○○)いや、大丈夫です。教えます。

○○)あ、僕は小川○○って言います。中学2年生です。この前までは普通の中学生だったんです。でも一ヶ月前の飛行機の墜落事故で両親が行方不明になりました。生存者は確認されていないらしいので多分、もう…。
僕の貯金でなんとかやりくりしてたんですけど、やっぱり長くは続かなくて、妹のためになんとか食べるものを見つけてこようと外に出て、それで…

そこまで言ったとこで、ついに耐えられなくなった。

なんで僕だけがこんなにもひどい目に遭わないといけないのか、そんなことだけが頭から離れずに僕を傷つけている。

眞衣)○○くん…大丈夫、大丈夫だから。


眞衣さんはただそれだけ言って僕を抱きしめてくれた。


-----


○○くんの口から告げられた悲しい現実の数々。

それは、目を背けたくなるほど想像を絶するものだった。

でも、今この子を慰められるのは、私しかいない。

だから私は決めた。

眞衣)○○くん、これからは私の家に住んでいいから。何もしなくていい、ただここにいてくれるだけでいいから。今はとにかく、休みなさい。

○○)うぅ…眞衣さん…

この子は私が守る。そう心に誓った。



to be continued……

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