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拾ってくれませんか? 三話


○○くんの案内で小学校へ到着した。

職員室へ向かっていると、1人の先生が話しかけてきた。

先生)あら、○○くん!久しぶり〜!

○○)お久しぶりです。

先生)大きくなったわね〜。あ、申し訳遅れました。私、○○くんの元担任の秋元真夏と申します。失礼ですが○○くんとの関係は?


秋元先生、と言う人は私を怪しんでいる。

それもそうだ、可愛がっていた生徒がいきなり見知らぬ人と来たのだから。

眞衣)詳しいことは後でお話しします。それより、彩ちゃんはいますか?

真夏)彩ちゃんですか?いえ、本日はまだ来てませんね。

○○)そんな…彩まで…うぅぅ!

眞衣)○○くん!ギュッ!大丈夫、大丈夫よ!きっとどこかにいるから!

唯一の希望の彩ちゃんさえも失った○○くんは泣き崩れた。

私はただひたすら抱きしめて、安心させるしかなかった。

真夏)○○くん?!あの、何があったんですか?

眞衣)それは後でお話しします。とりあえず○○くんをどうにかしないと!

○○)うわぁぁぁぁぁ!

眞衣)大丈夫、大丈夫よ…



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○○)スゥ…スゥ…

眞衣)寝ちゃったか。すいません、保健室を使わせていただいてもよろしいですか?

真夏)はい…

○○くんをベッドに寝かせて、私は先生と話し始めた。

真夏)あの、○○くんに何があったんですか?それに、あなたは…

眞衣)実は…

私はこれまでのことを話した。

○○くんの両親が亡くなったこと。

○○くんがうちにいること。

彩ちゃんが行方不明であること。

○○くんに関わること全てを話した。

真夏)そんな…○○くんにそんなことが…

眞衣)今○○くんは衰弱してます。身体だってあんなに痩せ細って…○○くんのことは私に任せてください。だから先生は彩ちゃんをお願いします。もしかしたら誘拐なんて可能性も…

真夏)分かりました、できるだけのことはします。
これ、私の電話番号です。もしお互いに何かあったら、連絡しましょう。

眞衣)分かりました。それと、このことはできるだけ私たちだけでどうにかしましょう。

真夏)そうですね。あ、○○くんが目覚めましたよ。

○○)ん…眞衣さん、先生…

眞衣)大丈夫?


○○)はい、でも彩が…

真夏)彩ちゃんのことは私が絶対に見つけるから、○○くんは自分の心配をして。

○○)でも…

眞衣)大丈夫!私たちがあなたたち兄妹を守るから。

○○)すいません…

真夏)○○くん、ズッキュン!

眞衣)え?

真夏)小学生の頃、よくやってたんです。こうやって私がズッキュンってすると、いつも笑ってくれて…でも、今はやっぱり…

○○君は下を向いて黙り込んでいる。

元気そうだった先生も、下唇を噛み締めて、涙を必死に堪えている。


教師というのは冷めた人間だ。

学生たちに教育という名の洗脳を施し、逆らう奴には保護者、進路など弱点を突いて逆らえないようにする、そんな人間だと思っていた。

でもこの人は、たった1人の生徒のために涙を流せるような、温かい人なのだと思えた。

きっとこの人、いや、秋元先生なら必ず彩ちゃんを見つけ出してくれる。

だから、私の役目は○○君を守ること。

この子に降りかかる火の粉を全力で払い落とすこと、沢山の愛をあげることだ。

眞衣)○○くん。彩ちゃんは、きっと見つかるから。秋元先生が絶対に見つけてくれるから。だから、先生を信じよう?


○○)そうだよね、秋元先生なら絶対見つけてくれる!

真夏)○○くん…私、絶対に見つけるから!だから、眞衣お姉さんにいっぱい頼るんだよ?

○○)うん!

眞衣)じゃあ、私たちはそろそろ…

真夏)はい、ありがとうございました。

真夏)またね、○○くん!じゃあ、お願いします。

眞衣)はい、そちらの方もよろしくお願いします。

to be continued……

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