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拾ってくれませんか? 二話


○○)スゥ…スゥ…

あれからどれほど経っただろう。気づけば○○くんは私の腕の中で眠っていた。

時刻は2時。明日が休みでよかった。

眞衣)よいしょ…え、何この軽さ…ほんとに男の子なの?


○○くんは驚くほど軽かった。

おそらく、ご両親が亡くなってから、あまり食べていなかったのだろう。

身体は痩せこけていて、とても中学生だとは思えないほどだった。

○○くんを自分のベッドに寝かしつけると、○○くんはまた涙を流していた。

この子がどんなに辛い思いをしたのか、それは私の想像を絶するほどのことだろう。

眞衣)大丈夫…大丈夫だから…

○○くんの頭を撫でてるうちに、私も眠ってしまった。



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「母さん、今日のご飯は?」

「今日は生姜焼きよ!」

「ほんとに?!やった〜!」

○○)母さん…母さん…っは!

目が覚めると、暖かいベッドの上にいた。

そっか、僕寝ちゃったんだ。

隣を見ると眞衣さんが座ったまま寝ていた。

ずっと僕から離れずにいてくれたのだろう。

なんで見ず知らずの人にここまでできるのだろう。

僕には理解できなかった。

眞衣)ん…あ、起きた?大丈夫?

○○)すいません、ベッド使っちゃって。

眞衣)ううん、大丈夫だよ。よく眠れた?

○○)はい。

眞衣)そっか、良かった☺️じゃあ、ご飯作るからゆっくりしてて。


○○)僕も手伝います!

眞衣)いいのよ。ゆっくりしてなさい。

○○)はい…すいません。

結局眞衣さんに何も返せていない。

何もできない自分が嫌になった。

○、眞)ごちそうさまでした。

眞衣)ねえ、この後時間ある?

○○)はい、あります。

眞衣)よし、じゃあ買い物行こっか。

○○)いいですけど、なんでですか?

眞衣)なんでって、そりゃ○○くんの服とか揃えないといけないでしょ?

○○)いや、そんな何もかもしてもらうわけには…

眞衣)いいの、私がしたいことだから。それよりも、妹ちゃんは今どこにいるの?

○○)妹はまだ家にいると思います。

眞衣)じゃあ先に妹ちゃん迎えに行こっか。住所教えてくれる?

○○)分かりました…

眞衣)よし!じゃあ準備しよっか!



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家を出発してから3時間ほど経ち、私たちは○○くんの家の近くに着いた。

○○)ここら辺です。

眞衣)そう、じゃあここからは車を降りて行こっか。

車で3時間。果たして歩きでは何時間経つのだろうか。

この距離をこんなに細い体で歩き続けた○○くんは、いったいどれほど辛かったのだろう。

眞衣)妹さんはいくつなの?

○○)まだ小学3年生です。

眞衣)そんなに小さい子が家で1人なんて…

○○)僕が置いていったから…

眞衣)あなたは悪くないわ。自分を責めちゃダメ!

○○)でも…

眞衣)いい?○○くんは悪くない。誰も悪くないのよ。だからそんなに自分を責めちゃダメ。わかった?


○○)はい…あ、ここです。

眞衣)よし、じゃあ私はここで待ってるから、いってきなさい。

○○)ありがとうございます…

そう言うと○○くんは家の中へ入っていった。

○○くんの家は一軒家だった。

車も一台あり、いたって普通の、ありふれた幸せな家族だったのだろう。

そんな家族がたった一ヶ月のうちにバラバラになってしまったのだ。しかも子供2人を残して。

もし私だったらどうしていただろうか。

自分だって平気じゃないのに妹のことまで気にかけることができるだろうか。

そんなことを考えていると、○○くんが家を飛び出してきた。

○○)眞衣さん!彩が、彩がいない!

彩、それが妹の名前だということは、言われなくてもわかった。

眞衣)落ち着いて○○くん!とりあえず状況を把握したいから、私も上がっていいかしら?

○○)はい…

家の中に入ると、物などが荒れている様子はなく、とても綺麗だった。

眞衣)まるで人だけが消えたような感じね…

眞衣)この子が彩ちゃんね…


所々に家族写真がある。本当に仲が良くて幸せな家族だったのだろう。

○○)家の中をちゃんと探しても、どこにもいなくて、ランドセルがなくなってて…

眞衣)なら学校に行ってるかもしれないわ。行こう!
そして私たちは、小学校へ向かった。


to be continued……

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