見出し画像

Dear… 第十一話「愛の二乗」




飛鳥)ただいま〜。


○○)おかえり。


飛鳥)ハァ〜疲れた、もう無理、動けない。


○○)ご飯にする、お風呂にする?それとも
飛鳥)ご飯。


○○)最後まで言わせてよ…


飛鳥)嫌だわ。男からそんなの聞きたくない。


○○)ひどいな〜…



飛鳥)ん。


○○)ん?


飛鳥)おんぶして。


○○)はいはい…ヨイショッ!


飛鳥)ふぅ〜…極楽極楽〜…


飛鳥と同棲してしばらく経った。

特に変わったことはなく、幸せに暮らしている。


強いて言うとすれば、僕が仕事をしなくなったことくらいだ。



別にクビになったわけではない。

いわゆる専業主夫、飛鳥が稼いで僕が家事をする。そゆこと。


飛鳥は家事が全くできない。

それに比べて、僕は少しくらいならできる。

だから僕が家事をすることになった。


まあ、稼ぎでは飛鳥に勝てるとは到底思えないし、適材適所というやつだ。



料理は少しならできたが、おかあさんに教えてもらった。

理由はもちろん、飛鳥に美味しいご飯を食べさせるため。

栄養バランスなども考えられた食事をおかあさんに教えてもらった。


最初に頼んだ時のおかあさんの嬉しそうな顔は、今でも忘れられない。


○○)はい、どうぞ。


飛鳥)いただきま〜す。


小さな口で食べるその姿に、初デートの時を思い出した。


飛鳥)美味しい!


○○)よかった。


飛鳥は子供のようにモグモグと食べ進める。



飛鳥)ねぇ、そんな見ないで笑



僕はいつのまにか、両手に顎を乗せて飛鳥を見ていた。


○○)あ、ごめん笑



おかあさんの気持ちがやっと分かった。







飛鳥)ご馳走様でした。


○○)洗い物は僕がしとくから、飛鳥はお風呂入っておいで?


飛鳥)は〜い!


同棲するようになってから、飛鳥はよく甘えるようになった。

これも変わったことかな?


このお皿洗いも、最初はよく2人でやっていた。

けど、


飛鳥)きゃっ!
パリンッ!

○○)うわっ?!大丈夫?


飛鳥)ごめん…

お皿を割ったり


飛鳥)あっ…
ガシャンッ!

○○)痛っ?!あらら…飛鳥は怪我してない?


飛鳥)うん、ごめん…

コップを割ったり。


それだけで済めばよかったのだが、ある時飛鳥が怪我をしてマネージャーさんに怒られたため、僕1人でやることにした。

そして洗い物が終わると…


飛鳥)○○〜!


○○)今行くよ〜!


今度は飛鳥の髪を乾かす。


○○)熱くない?


飛鳥)大丈夫〜。


これに関しては絶対に自分でやった方がいいと思うが、飛鳥にやれと言われたら逆らえない。

おかげで長い髪を乾かすのが上手くなった。


○○)はい、終わったよ。


飛鳥)ありがと。



そして、1日の終わりはもちろん…


飛鳥)ねぇ?


○○)どうしたの?


飛鳥)興奮してるんでしょ?


○○)え?


飛鳥)気づかないとでも思った?笑、こっち見て?


○○)飛鳥…


ずっと張っていた紐が切れたように、僕は飛鳥にキスをした。


飛鳥も、応えるように僕を求める。


飛鳥)ぷはっ…ねぇ?


○○)はぁ…はぁ…ん?


飛鳥)私、子供が欲しい…。


○○)え…?


飛鳥)赤ちゃんが欲しいの…私と、○○の。


子供、それは夫婦の愛の証。

だが、○○にとっては違う。



飛鳥)分かってる、あなたにとってどれだけ辛いことか、分かってる…でも、だからこそ欲しいの。
親になる幸せ、子供と暮らす楽しさ、成長していく喜び、全部全部知ってほしいの。


飛鳥は○○の目をまっすぐ見つめた。


○○)…僕、いい親になれるのかな?


飛鳥)なれるよ、きっと。痛みを知っているからこそ、優しくなれるから。


○○)…分かった。飛鳥がほしいって言うなら、いいよ。


飛鳥)○○…


今度は飛鳥の方からキスをしてきた。


僕は、ベッドの淵に置いてあった四角い箱をゴミ箱に捨てた。



-----




○○)ただいま〜。


真夏)おかえり!


今日は久しぶりに実家に帰ってきた。

家とは違う安心感がある。


○○)おとうさんは?


真夏)今ちょうど出かけてるところ。


○○)なんかあったの?


真夏)ううん、心配しないで。


○○)分かった。あのさ、聞きたいことがあるんだけど…


真夏)どうしたの?


これこそが、久しぶりに帰ってきた理由。

人生の先輩として、聞きたいこと。


○○)おかあさんは、なんで僕を拾ったの?


真夏)え?


○○)ずっと不思議だったんだ。僕には兄弟とか姉妹がいない。てことは、おかあさんには本当の子供がいないってことでしょ?なんでだろうなって。


真夏)……。


まずいことを聞いちゃったか…。


○○)言いたくなかったら全然大丈夫だよ?


真夏)ううん、いつかは言おうと思ってたから。ふぅ〜…


こんなに真剣なおかあさんを見るのは久しぶり
だ。



真夏)あのね、実は私、




「子供ができないの。」





○○)……え?


真夏)おとうさんと結婚してから分かったことなんだけど、生まれつき卵子の数が少なくて子供を作れないみたいなの。


○○)だから僕を拾った?


真夏)う〜ん、拾ったっていうのは違うかな。


○○)え?だって、捨てられてた僕を拾ったんじゃないの?



真夏)…これはね、○○のお父さんとお母さんに関係することなの。それでも聞く?




○○)…うん、聞きたい。


真夏)分かった。私たちはね、○○くんを拾ったんじゃなくて…

プルルルル…


○○)あ、僕の携帯だ…


真夏)先そっちでていいよ?


○○)ごめんね、おかあさん。


見たことない番号から電話がかかってきた。

一体誰だろう…


○○)もしもし?


「○○さんですね?こちらは△△病院です。」


○○)病院?何か御用ですか?



「あなたの奥様が妊娠されました。」



○○)あ…え、?


「今こちらに来ておりますので旦那様も来ていただければと思いましてお電話したのですが、ただいまお時間よろしいでしょうか?」


○○)す、すぐ行きますっ!!!


真夏)どうしたの?


○○)飛鳥が妊娠したって!!


真夏)え?!


○○)とにかく行ってくる!!


真夏)うん、気をつけて〜!!


○○は持ってきた荷物なども全て忘れ、病院へ向かった。





To be continued……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?