拾恋アフター 一話「黄昏」
○○)……。
外は今日も雨。それはあの時を思い出す。
○○)どこにいるんだろう、眞衣さん…。
それと同時に、あなたのことを想い出す。
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○○と眞衣が別れた後、眞衣はすぐ引っ越した
そのことを知らない○○はある日、眞衣の家を訪れた。
○○)いるかな…
……。
……。
いくら待っても、眞衣は出てこない。
○○)寝てるのかな…。
そう思い、もう一度ベルを押そうとすると、
大家)おや、あの時の。
○○)あ、大家さん!
大家)そこに突っ立って、何をしてるんだい?
○○)あの、眞衣さんが出なくて…
大家)あれ、一緒じゃなかったのかい?あの子はちょっと前に引っ越したよ。
○○)え…
大家)一緒だと思ったんだけどね〜…
○○)あの、どこに引っ越したかって言うのは…
大家)う〜ん、わからないねぇ。
○○)そう、ですか…ありがとうございます…。
その時、○○は全て理解した
眞衣さんは本気で離れていったんだと
自分のことが、好きじゃなかったんだと。
その日から、○○は感情を表に出さなくなっていった。
中学を卒業した○○は、乃木高に入学した
そこには○○だけでなく和、咲月、美空、茉央、いろはも入った。
和)○○、今日から高校生だね!
○○)うん。
咲月)また一緒だね!
○○)うん。
美空)今度また彩に会わせて!
○○)うん。
茉央)一人だけ違うような…笑
いろは)なんだか面白い人たちだね〜。
○○)……。
他のみんなが盛り上がる中、○○だけは上の空だった。
そんな○○を見た5人はとあることを思いついた。それは…
和、美空、咲月)今がチャンスじゃん!!
茉央)はぁ…
いろは)なんでそうなるかな…
和)落ち込んでる○○を慰めて〜?
咲月)元気にしてあげれば〜?
美空)私に振り向いてくれるかも〜?
茉央)下心しかない…
いろは)最低だよ普通に?
和)ってことで!
咲月)名付けて「○○を元気にしてワンチャン狙おう作戦」!
美空)決行!!
茉央、いろは)もう知らん。
そして5人は元気をなくした○○を慰めることにした。
和)○○〜!
○○)ん?
和)デート行こ?
○○)ごめん、今日は無理かな。
和)むぅ〜、諦めないもんね!
咲月)○○くん!
○○)ん?
咲月)いいお店あるんだけど、来週行かない?
○○)ごめん、予定があるから。
咲月)ん〜だめか〜…
茉央、いろは)○○くん!
○○)ん?
茉央)テストもう近いじゃん?
いろは)だから一緒にテスト勉強しない?
○○)ごめん、一人で勉強したいから。
茉央)敗北…
いろは)無念…
美空)○○くん!
○○)ん?
美空)彩に会わせて!
○○)いいよ。
美空)ほんと?!
他4人)それはいいんかい…
何をしても、○○が笑顔を取り戻すことはなかった。
咲月)てな訳なんですよ〜…
美空)どうすればいいですか、アルノ先輩。
アルノ)ん〜、どうすればいいと思う、姫奈。
姫奈)さぁ?てかホットケーキミックスって生で食べれる?
瑛紗)愚か者が…
頼れる?先輩たちもみんな首を傾げていた。
和)やっぱり、私たちじゃ眞衣さんには勝てないんだよ。
茉央)そんなにすごい人なの?眞衣さんって。
いろは)噂には聞いたことあるけど。
○○にとってどれだけ眞衣の存在が大きいか、それは噂でしか聞いたことのないいろはですらも納得するほどだった。
咲月)やっぱり眞衣さんに会わせるしかないのかも。
美空)でもどうやって?
咲月)それは…
……。
皆が一斉に口を閉じる。
眞衣は自らの意志で○○と離れた
それを止めることができなかったみんなにとって、再び会わせることなんてもっとできるはずがない。
和)でも、ずっとあの調子だと、ねぇ…
○○)……。
咲月)また昔みたいにみんなで楽しく過ごしたいのに…
○○)……。
美空)またみんな笑顔でいたいのに…
○○)……。
茉央)これじゃまるで、
いろは)最悪な別れだよね…
みんな)はぁ…。
雨空の下、皆が同じようにため息を吐いた。
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○○)はぁ…。
眞衣さん、約束したじゃん、また会いに行ってもいい?って
いつかまた絶対会おうねって
立派な大人になって、眞衣さんに会いに行くって
これじゃあ、どれだけ立派になったって会えないじゃん。
○○)嘘つき…。
黄昏は、○○を黒い陰へと追いやっていく。
あの日のように冷たい雨が、○○の心を冷やしていた。
To be continued……
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