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海上牧雲記〜Part5

第20話

蘭鈺児からまんまと珠を手に入れたものの
中の美女にペンペンにフラれた徳

今日も今日とて九州客桟

配膳された食事そっちのけで
書を広げて何をしているのかというと

愛しい手指のかたち

秘術のお勉強
顰仙に完全にフラれ、悔しくてならないのだ
笙殿下が独学でできるならこの私にできないワケがない、ちょこざいな
とか思ったに違いない

ところがそこへ番頭の秦がやってくる
はっとしてそそくさと卓にあった帳簿を手に取る。
こういう所作がいちいち床しく、眼福。
鉾を振り回す荒々しい武将よりも、やはり高貴な風情が漂う徳や長慶、玄一などを演じる暁晨が私は好き。

秦は食事の終わった食器を下げに来たのだったが

何とほとんど箸をつけていない

"こんなもん食えるか"
との仰せに
都で名高い料亭の仕出し料理であるらしく
秦がやんわりと勿体なや、とこぼす

料理人が腕を奮うあまり凝りすぎ
結果"徳様にはマズい"料理になっているらしい
徳はこの後厨房に大鉈を振るい
九州客桟の料理を"天啓いち"にする
本物を知る徳ならではの舌の確かさを示してみせた。

感心したのち、秘術の書物に気づいた秦
こちらでご機嫌を取ろうとする

❤️❤️❤️

まさか、ただ暇つぶしに見てるだけ。
誤魔化す徳
ーーーこの世界では魔法のような秘術を、勉強したり修行したりすれば使えるようになる、ということが秦の言葉からわかる。
べつにヘンなことでもないのに秘術なんか、と否定する徳。

秦を下がらせ帳簿を元の場所へ戻し

誰もいないのを確かめてから(ここ大好き❤️)

先程貶していた秘術の書に目を落とす。
張暁晨と言えばこの伏目。

今日はどれをやってみようかーーー
そんな風情で開けたページ

碁盤の上に香炉を置き、

精神を集中ーーー
メイクさんにより毛抜きで一本一本整えられた太眉
自慢のびしばしまつ毛
瞼を瞑り眼を開けたその次の瞬間

火をつけていなかった香炉から煙が溢れ碁盤に広がってゆく
つまり徳には秘術の才能があるの?

ビューラー要らず。『好男儿』のころ選手らの羨望を集めた長い睫毛

すると墨の声が。

ハッと振り返る徳
魅に関する書物を探しに行った先生だったが
いつもの如くに強引に押しかけた挙句用件を強要し
結果何もわからないまま貴重な人材を死に至らしめただけという無能ぶり

対して徳は違う

珠のイミテーションを造らせ
文献を漁り河洛とミーティングを重ねて伝國御璽の設計図を描かせ
合戈殿下と密会し
河洛にゴーサインを出し
足繁く笙殿下の庵に通い
蘭鈺児を誑しこんで珠を奪い
珠の中の美女にフラれた
誠によく働いたが

墨先生のこういうええかっこしいなところが嫌い

あれほど激務だった徳は謙虚に"一つ"だけ成果が、と言う
驚きますよ、聞きたい?

何と、実はあの珠は既に我々の手中にあるのです!
どうですすごいでしょう、
私の手にかかればこんなもんです。
嬉しい?

この中にいる女がカギなのでしょう?
さあさあ、もう先生の手の中にこの珠はあって、好き放題できるのです、如何?
手始めに何を?わくわく!

ところが!

"返していらっしゃい"
と墨先生!
これは笙殿下しか扱えないと言ったろう
女が見えても女はお前のことを嫌っていたんだろ
お前には無理なの

ひったくりかた笑

ええー⁉︎
そんなばかな…
自分だって女が見えるし
秘術も頑張って使えるようにするし
…でも返すなんて今更カッコ悪い

…なんてことこの私がするわけないだろ!
"返すんじゃなく壊す!!"
待った!!

ーーー危なかった…
間一髪
もし壊してみろ
殺してやる

はあ⁈
ちょっと!!
私と笙殿下とどっちが大事、信頼関係で結ばれたんじゃなかったの

ええ⁈まさか
渋々協力してる徳の立場は⁈
どーゆうこと
それが本音⁉︎
ターンしながら捲し立てる徳

私より嫌われまくり忌みられまくりの第6皇子が大事⁈
あんな偏屈な変わり者で清廉潔白な朴念仁の何がそんなに⁈
顰仙にも墨にも貶められてきー!!
どいつもこいつも!!

"えーよ⁈"
あの笙殿下ぽっちを倒して得られる栄誉が望み⁈

好きすぎるここの徳

だって…

墨先生…まさか泣いてるの?
そんなスゴいことなの?笙殿下を倒すことが?
ビックリしすぎてここでウッカリ先生に近づきすぎた徳

笙殿下は神なの
自分が辰月のリーダーしてるときにその神さまをやっつけるチャンスがやってきた
奇跡的じゃない⁈
神を倒せば私が神よりも上ってことで
何という栄誉
栄誉の極み!!

……わかった
わかったから先生
手を離して頂戴
徳のすてきな顔が変形しちゃうわ

ーーー感動にうち震えている墨先生に
何なの、とためいき
"とにかくこれを返してらっしゃい
奇跡的なタイミングの栄誉のために!!"

……あれだけの芝居をうち布石をうち
時間と労力をかけ手元にゲットしたものを
→女もゲットしたつもりだった
本当に自分に資格はないと?
もしかあるのではないか?
自分が何者かになれば自ずと
でなければなぜ自分にも見えた?

未練たらたらで脱力感と共に珠を見つめるーーー
疲れたよねえ、徳…

蘭鈺児、徳のもとへ💒💒💒

ある朝、笙殿下がまた蘭鈺児を呼び
蘭鈺児はいつもの通りにすっ飛んできて笑顔

徳から受け取った本物の珠にここでうまくすり替える。

着物に予めフックが縫われているの

するとここで急に蘭鈺児は改まったようすで座り込む
よく見たら蘭鈺児はお仕着せではなく他所行きを着ている。
起きたばかりの笙殿下は
突然始まった蘭鈺児の暇乞いに呆然。

女官は二十歳になれば良縁を得て皇宮を出ることができる。
以前徳が揶揄ったときには、蘭鈺児は笙殿下の元を自分が去ることになろうとは、
よもや殿下以外の男に惹かれ、彼に嫁ぐために殿下の元を去ろうとは思いもしなかったろう

しかしこの間に徳が猛アタックを試みたものか
蘭鈺児の気持ちは揺れたのち笙殿下から離れた
その過程をぜひ見てみたかったがーーー

なぜ急に?
盼兮に夢中で、大切な侍女であり友だった蘭鈺児のことは全く気になどかけなかった

彼女は殿下にとって幽閉時代から家族だった
いて当たり前の
しかし蘭鈺児にとって殿下は家族ではない
想い人だったのだ

しかし殿下はどんどん蘭鈺児の知っている殿下とはかけ離れてゆき
その口から出る名は"盼兮"そればかり
どんなに労ろうと聞く耳を持ってくれない
報われない気持ちの隙間に徳が入り込んだのだ

"私のために殿下の元を離れる決心を"
徳が現れる

この間現れたばかりの従弟
…いつのまに
でもこれは殿下にも非がある
"いて当たり前"と思っていた大切なものーーー

"私が幸せにします"ーーー
その心にもない誓いの言葉を口にしたとき
徳は彼女が自分にとって
どんなにかけがえのない幸せと愛を与え
憩いと癒しを教えてくれるか知りもしなかったろう
徳が幸せにするのではなく
彼女が徳を幸せにする存在になるのだとーーー

彼女が殿下と会わせてくれた
同世代の友がいなかった自分に
友をくれた
あの日彼女と初めて会った
初めて会った時から恐らくずっとーーー

ここで殿下が言った"苦痛"とは
隔離され化け物のように変身し傷つけて怖くなってしまったのか、という懸念。
蘭鈺児の恋心には気づいていない。

"殿下といるとき、私はどこまでもただの侍女です。若様の前なら女ーーー愛し愛されることができる存在になれる。
若様は私を大切にしてくれると仰いました
殿下にとって私は侍女
侍女ならば私でなくとも他にたくさん代わりはいます"ーーー

あくま。

ここで蘭鈺児が語る言葉は、恐らく徳が彼女を誑し込…、説得する時に語ったものだろう
"殿下が好きか?けれど殿下はいま盼兮のことしか頭にない。殿下の元にこのままいても報われないどころか、命さえ危ない。
私のところへ来てくれないか
きっと大切にし愛してみせよう
殿下には盼兮がいるし、侍女ならば代わりはいくらでもいる。
私には君だけなんだ"ーーー

殿下が仰った瞬間ハッと顔を上げる徳。
当然殿下ならばご自分の寂しさよりも蘭鈺児の幸せと安全を鑑みるだろう。
しかしこの男ーーー徳は、見てみたかったのだ。
殿下が泣いて縋り、行かないでほしいという情けない姿を見せるところを。
殿下が盼兮を得るなら、自分は蘭鈺児を奪おう。
盼兮とていずれ奪おう。
殿下のものを、残らずーーーそうして奪ってやる、と。

涼しげな顔で澄ましているが
内心歯噛みして悔しがっているに違いない徳。
何だつまらんーーー、、、
それぐらい思っている最低な男。

一方蘭鈺児は去ると決めたものの、まだ一抹の希望を捨てきれないでいる。
"最後に墨擦りをさせていただいても?"

13歳で皇宮に上がったその時からずっと7年間
殿下の側で身の回りの世話をした
朝起きてから眠るまで
決められた時間に決められた仕事をする
墨擦りは一番最初に殿下ご自身が教えて下さった自分だけの仕事

蘭鈺児は精一杯の希望を込めて恐る恐る言ってみる
一言
たった一言"残れ"と仰って下さったなら
今までと変わらぬ"いつも"の仕事を"いつまでも''いたしますーーー

しかし殿下なら
蘭鈺児の幸せのためにご自分の都合は押し付けはしない
側にいればもしか命までも保証できないと分かっていてーーー

傷心のまま戻ってきた蘭鈺児の手を取り

徳は限りなく優しくその指についた墨を拭う
殿下への今までの想いも
思い出も
全て拭い去ってやる
一から自分のものにするのだ…
意趣返しもわすれない

"殿下は大変孤独でいらっしゃる
お可哀想なご身分ですがお許しください
愛する彼女が殿下のお側にいることで
彼女に何かあったらと思うと心配なのです"

手に手を取って二人は去った
後に残された殿下が寂しければ寂しいほど

徳は溜飲が下がる
イベントは終了した

"悲しむことはない
もし君が戻りたかったらいつでも戻れ"
ーーー
つまり
もう蘭鈺児に用などないのだ
蘭鈺児が自分を愛するようになったのならば
余計に用済みである
手に入れる過程が愉しいのであって
手に入れたならお払い箱だ

この珠にも用はない
徳はイミテーションの珠を棄てる

徳…、まだ貴方は分かっていないだろうけど
"戻りたくなったら戻してやる"
と棄てたつもりになっている蘭鈺児は
貴方が
''戻ってもらいたくてもぜったいに貴方のそばから離れない"
ほど貴方のことを愛してくれるのよ
嬉しい?
笙殿下よりも何倍も何倍もよ
仄かな恋心でなく
真の愛情を貴方に抱いてくれるのよ!

ここから更に面白くなりますよー!💕💕💕

"宛州土産 宛州牧雲氏ご夫婦のタペストリー"









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