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海上牧雲記〜Part19

第59話

玉豊はあれ以来脚を怪我し
引きずって歩くように
蘭鈺儿が挨拶するが
遠慮がちに
"もう貴女がここの番頭です"

私の願いは
徳は蘭鈺儿と二人三脚でますます宛州商会を発展させ
子どもをわんさかつくり宛州にて平和に暮らす
相変わらず陰でこの世を操りながらーーー
というもの

徳の野望は果てしなく
この九州全土に及ぶ

笙殿下を操り もとい
支えながら末永く愛溢れる日々を蘭鈺儿と幸せに暮らすーーー
なんちゃって

蘭鈺儿はGO戈殿下の情報をユーリに知らせに来たのだった
敵地に捨て駒同然で使者として赴く殿下
何とか労ってもらいたくて
重臣たちを招待し餞別パーティーを自ら企画

"もし殿下が皇帝に就いたら盛大に"
笑ってやるつもりしかない徳

話を聞いて
"おもしろそう!"
とがぜん飛びつき

アワレなGO戈殿下の演出を全力で手助け!

九州客桟の大宴会場を提供!

挨拶は蘭鈺儿が。

賢い蘭鈺儿はそう答えただけで、退出した。

誰もいない大宴会場で辛抱強く待っている哀れな合戈殿下を嘲笑うつもりの徳だったが、ユーリがありったけの金を使い欒パパにおねだりし、何とか重臣たちに参加して貰えたのだった。
徳はガッカリである

第60話

パーティーにみんなが来てしまったために
合戈殿下を利用しようと薛大人が画策を
狸じじいと脳筋GO戈が手を結んで何が困るので?
と徳は強気

徳は合戈殿下が大キライなのだった
姫公主と同じで
単純だからである
耐えられないのだ

いやいや
徳儿よ
このことで別な厄介ごとが生まれたのだ

アホも使いようなのだ
アホにはアホの良さがある
アホだからといって放置していては後々アホみたいな展開もありうるのだ

このまま薛大人を放置していたら
もし皇帝を殺して排除しても
合戈殿下が薛大人の後押しで即位するようなことになりかねない
さすがパパ
慎重さと狡賢さはまだまだ徳の上をゆく

先程の"アホと頭が回り言うことを聞かない輩、という話だけでこれらの事情を悟る徳はお利口

こうなったので瀚州にて合戈殿下には死んでもらいますーーー

この作戦にはもう一つ得になることが
もし合戈が死ねば大将軍ももれなく失脚
願ったり叶ったりーーー
まさにパパが以前言ったとおり
"自分の手を汚すことなく"
邪魔者は次々といなくなる

この親子の会話を
"退屈だし陰険だしで見ていてタイクツ極まる
こんな腹黒親子のターンなんか要らないから
もっと単純で分かりやすい寒江のラブ・シーンを増やして!"
という声がBS放送リアタイ時Twitterに溢れた

何をおっしゃるか
この親子が全て操り
現在の状況を創りだしこれからの出来事も起こしたのである

この腹黒親子の会話がなければ
なぜこんなことになったのかが判らない
いや

"要らない"
そう言う方々には
たとえ判らなくても問題ないのだ
恐らくーーー

この作品の日本での評判が悪いのはそのせいだ
"暗くて何か難しくて判らなかった"
"ラストが酷い。76話も見て損した。時間を返してほしい"
"何も回収されなかった"
など

この作品には牧雲徳がいる
張暁晨の絶佳な表現でまるで本当に存在するかのような
哀しく哀れな
それでいて素敵な徳がいるのにーーー

私がその姿を残そうと一年をかけて綴るこの記事も
またほとんど見られぬまま埋もれてゆくのだ
きっとーーー

雨の中
一台の馬車の脇で酒と肴で暇つぶしをしていた従者

にわかに門からの動きに立ち上がり馬車の中の人物を呼ぶ

"出てきた"のは徳。
ああ何て高貴で近寄り難いオーラ…
九州全土にその名を轟かすカリスマ商人、若冠ハタチ。

商人界のアイドルスターを待たせたらたいへん!
馬車から慌てて降りてきたのは…

この佇まいにただただ見惚れる

阿格布。
お久しぶりです(1話で和葉を九州客桟へ連れてきた奴隷商人)
あのときまだ徳は宛州で10歳くらい

それが今やこんなに立派になってーーー
異(民)族(?)の固めの盃も抵抗なく飲み干してみせる
この商談慣れしているようすが嬉しい

呼びつけたのは徳

なんと!
徳との仕事をそんなにも光栄に感じてくれるとは!
何ちゃって
心の中では結構キレる若造としか思ってないんだけど
結果的にもうかる阿格布だったが…

以前塩の価格を引き上げて索達猛を唸らせた徳
そのときは別のルートを使ったのか
今回は阿格布をご指名。

ひそひそ…
急に声を潜めこのようなことをするのでドキドキする
独特だわ
意味深だわ
色っぽいわ
思わせぶりだわ
これらを全て盛り込むのが張暁晨
伝え終わったあと
相手を見つめながらフッと画面から離れて見切れるまでを計算し尽くした演技

このとき徳がオーダーしたのはーーー

合戈殿下の到着を待つ前に赫蘭一族と協力し穆如を倒すこと
ん?
パパのオーダーと違うくないか?
つまりーーー
徳の狙いは穆如の存在を消すこと
寒江を使い皇帝を殺し穆如の立つ瀬を無くし
笙殿下を立てて靖王や欒パパを掃除し
ゆめの六族共栄最強選民王国をつくるーーー

自身の手は汚さず
"この世の全て"を手に入れてみせる

しかし九州全土を見据えているのは徳だけで
他の者が見ているのは自分の目の前のせかいだけ
欲深な索達猛のキモチは揺らいだが
この後鉄朶によって殺されてしまった

サスガの女の子好き徳も
鉄朶にかかればただの口先男
背負い投げされるところを見たかった

索達猛の残した膨大な食糧は阿格布が掠め取った
もっと早くに届けてあげたら戦局は変わったかも。

さようなら、パパ

ついにパパが天啓を去る日がやってきた。
土砂降りとなったこの日、ぎりぎりまでパパは徳に指示を残す。
勝手にことを起こさず、必ずお伺いを立てること。
寒江を刺客に仕立てて本当に皇帝殺しに成功するかどうか。

パパと徳のねらいは一致している
まずは何としても穆如に滅んでもらわねばならない
正統な王位継承でなければたちまち邪魔だてされてしまうからだ

刺客は寒江。
"穆如の者が皇帝を殺す"300年に及ぶ盟約を破り、穆如の権威を失墜させるーーーそれを考えたのはその体の半分に穆如の血が流れている徳だ。

寒江は今客桟の地下牢にいる

今から解放するが、そのことでもしお咎めを受けたら自分が被るーーー、パパは早く宛州で出兵準備を。
ヨーイドンで靖王、越王(みな欒パパの兄弟)と始まる椅子取りゲーム。パパだけは別で
遥か以前、太子の座を失ったときから綿密に準備してきたのはパパだけだ。
パパの半生を懸けた悲願ーーーそのためにどれだけ自分の半生がその野望の被害を被ったことか
愛しているならそうと言えばいいものを!

外枠は同じで

その内訳が全て自分と自分の息がかかった者に変えられると信じているパパ
瀚州人を煽り穆如と戦わせているうちに弟を殺し玉座を掠め取るという漁夫の利を狙っていたが

哀れ、そうことは簡単に行かないであろう
徳はどことなく気の毒そうにパパを見つめる
パパの思惑とは別に徳も動いているのだ

徳が木原さんを呼ぶ
何のことかと思ったら
別れの叩頭礼をするためだった
中国では決まって別れるとき決まってこの3回叩頭する礼をする

土砂降りの下で濡れた砂利に跪き
美しい所作で行われるこの礼ももう見納め

今はもうその言葉を素直な気持ちで聞くことができる
しかしその口から出る言葉は
真実だろうか?

パパは苦笑しながらそう溢す
これはこの親子の最後の会話

パパはそのむかし
太子だったがパパに嫌われていた
けれどもパパはパパに一番可愛がられているのは自分だと思いこんでいた
弟の勤ーーー今上ぴーしゃはそのことを知っていたけど
本当のことを言ったら欒兄さまがショックを受けかわいそうだと思い言わなかったという
認識違いで酷い目に遭ったことから
徹底的に一番可愛いと思っていた徳には寵愛を嵩に着て増長せぬようにそれを煙に巻いていたのだ

パパが馬車に乗り込むのを手伝いながら
この二年の日々を想う
今度こそ谷で培ったスキルで歓心を買うことができる
今度こそ愛してもらえるのだと期待してこの天啓に降りたったあの日

笙殿下に逢い盼兮に逢い

自分の野望が更に具体化したあの日

再び会ったパパに絶望し

より自分のビジョンへの闘志を燃やした

新たな愛を得

殿下と共に新たな一歩を踏み出した

パパとの日々
パパとの未練と愛惜の一切合切を清算できた

今日までの日々ーーー

さようなら
パパーーー

第64話 では、どうぞご勝手に

徳はパパと別れるや否や寒江を野に放った。
すぐに穆如軍にとっ捕まって墨先生の出番と思っていたら

羽のある王子様っぽい人ーーー羽族の王路然軽に攫われていた…ここどこ?

路然軽役は杜淳さん

何とこの路然軽はかつて助けたいたいけな幼子
あれから12年
あのいたいけな幼子がたった12年でこんなーーー

こんなおじさんに…
信じられないわ
羽族は成長が早いのかしら

ここにきて更に羽族まで天下取りの風雲ゲームに参戦
魅族とのハーフ、笙殿下が生まれたことは九州の六族の間に何千年いらいの歪(ひず)みを生んだ
人族と魅族の間で諍いが起きるであろう
そしてそのニュースを耳にし、変化を決意せざるを得なくなった和葉の碩風が赫蘭と呼応して瀚州の掟破りに挑んだ
その結果速沁が巻きこまれ犠牲になり
つけ込んだ欒パパによって
牧雲と穆如の盟約も破れーーー
寒江は笙殿下の元へ…

一方姫公主も
徳にバカにされまくったとしても
何としても悲願の皇位奪還を果たすために動いていた

客桟の使用人を買収し
朝臣への接触を試みる
ここで使用人を演じているのは俳優ではなく
スタッフ兼エキストラの魯英俊さん。

以前ご紹介した王詩嘉さん同様、魯英俊さんも様々な場面にいる

画面で探してみるのも楽しい。王さんと違い、魯さんは日本ロケも同行していて

魯さんのおかげで、スタッフは彦根のあと北海道まで行ったことが分かったりしたのだ
(尚、少年笙殿下役の鄭好くんのおかげで彦根のクランクアップの晩は京都に泊まったらしいことがわかる)

この同じ晩、徳の部屋には薛大人がいた。
穆如と瀚州の蛮族たちの一騎打ちは間もなくで、兵糧攻めにも拘らず穆如が勝ってしまえば首が危い
早くぴーしゃを殺して下さいよ、と催促に来たのだ

徳はこの晩も香篆を作っている
すぐに寒江が皇宮に来ると思っていたら行方が分からなくなってしまい
どうしようもないのだった

薛大人はのらくら作戦には騙されない
百戦錬磨の古狸だ。

前に欒パパにも言っていたように
裏で徳が動くことを牽制する
欲望には際限がない
嫌ッ!
徳に噛み付くなんて
やめてー!
徳は下地に敷いた白い灰に載せた型に
香を入れている

その作業をしながら
自分を急かしながら
既に靖王、越王を唆し、挙兵を推し進めているくせに、と仄めかす

どう脅されようと
寒江を使い穆如の面目を潰す
強大な兵力と靭い絆で団結している穆如を除かねばどんな野望も挫かれる、そこは欒パパも徳も共通した認識だが、

しかし薛大人は臣下として最早信用を失った君主を早く除いて操りやすい皇帝に挿げ替えたい

皇帝などーーーなりたくて堪らなくて半生を懸けた大業に明け暮れたパパを見下し
嘲笑っている徳は皇帝などに拘らない
挿げ替えたとしても

自らの手を禁じ手で汚したことを
新帝は忘れはしない
瑞朝のような臣下と皇帝との強い絆を育むことは元から不可能

徳は均した香を型で抜き線香で火を点ける
"自ら父(弟)を殺して帝位を簒奪した皇帝と
自ら主を殺して成り上がった重臣の末路"

"精々
暗殺が成功するよう祈って差し上げましょう"

香に蓋をし、目の前に置く
"野心の香り"
紫夜沈香ーーー
以前作った香は火を点けずにパパに渡したのみだった
火を点けるのはパパであり
徳は用意するだけ

しかし今回は徳は香に火を点けた
"止めはしない"ーーー
動乱はもう止めようがない
ならば静観しよう
徳は裏で自分の野望に向けて駒を動かすが
邪魔な腐り切った連中が自滅するのを止める法はない
牧雲記では全てが符牒だ
無意味なものは無い

Go戈殿下の暴走

お前は要らない皇子だ、と骨の髄まで思い知らされ、天啓からポイされた合戈殿下。

それまで殊勝なキモチに陶酔していたのが、鮫族にとっ捕まり、成り行きで
"もし皇帝になったら…"
と再び皇位簒奪せねばならない流れになるという。

索達猛を鉄朶が殺したことが、思わぬ形で徳の回した歯車を狂わせてゆく。

私を怒らせたら…分かってるわね?

喜び勇んで戸を開けたユーリ
しかしながらーーー

女狐ならぬ女魚がくっついてきていた

先程まで蘭鈺儿に分かったような口をきいていたユーリ
たしかに徳自身もそう言っていたが

しかし大丈夫だ
もう徳は大切なものと好きなものの違いは分かっている
分かっていないのはーーー

このおかた。
鮫族と約束してしまったために
何としても皇位に就かなければならなくなって
薛大人に手伝って貰おうと思ったのだ

その薛大人は頼まれずとも
既に助ける気まんまんだった
貴方のために金を用立てましょう
その代わりーーー

なんちゃって
これはお遊び🎡🎡🎡
薛大人のせりふを聞いていたら脳内に私の中で徳が過ぎったのだ
そしたら世界に私と同じ現象を体験した人が湧いたので大笑いした
本当は姫公主だ

姫公主だって馬鹿にされてばかりだが
いっしょうけんめいなのだ
目の前の合戈殿下のヨメになろうとまで決意した
穆如の未来
ぴーしゃのいのち
瀚州の動向
蠢きだした他族たちーーー
物語は収束に向かうどころか
ますますこんがらかり
混乱してゆくーーー

そのころ
合戈殿下の裏切りを知らないナンコユーリは
一つめの裏切りの始末をつけようとしていた

九州客桟のオリジナル菓子
もちろんオーナー手ずから作ったものだ

この作品の撮影の半年前までオーナーは清朝の皇宮の厨房で働く奴婢(本当の身分は貴族)だった
手先の器用さは折り紙つきである

魚を捌くナンコユーリ
恐ろしや

この間の夜
徳が強引に迫っていたら
徳もこのように刺身になっていたに違いない
おお怖!!

この部屋の惨状を見た合戈殿下は戦慄
"この私と競おうなんて
考えのやつらはみんな同じようにしてやるわ"

合戈殿下は礼を言う
やはり君だ
一瞬心変わりしたのは気の迷い

皇位のゆくえと
動乱のゆくえは
徳が準備したとおりに運ぶだろうか?



















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