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千古玦塵〜千古の愛天上の詩〜Part1

映画『瀧夜曲』の撮影を2020年4月に終えた暁晨。
眼のできものを切除し、暫しひと月のオフで身体を休めたあと、取り組んだ仕事は
自身初の"神仙ファンタジー"もの。
ひらひらした幾重もの淡い色調の衣を纏い、長髪の髪型でふわふわ飛びまくる、何十万年も生きている神さまたちを描く、中国ドラマの有名ジャンルだ。

原題は《千古玦塵》。原作は《千古》という
また随分むかしの写真を…
ベテランと若者の配分は半々くらい

恋愛ものベースが主流で、主役には今をときめく若手スター俳優が就く。
そんな軽〜いキラキラした作品に、
軽〜く特別出演(発表当初は友情出演とされていた)で軽〜くひと月足らずの撮影を終える"はず"だった。

横店での日々〜食べたいときに食べ、眠くなれば眠る、それこそがリラックスの秘訣

撮影は久しぶりの横店(横店影視城という浙江省の"街規模"の巨大オープンセット)。
6月半ば、私たちは彼が現場入りしたのを、この本人の投稿により把握した。この時点ではまだ何の作品かは分からなかった。
程なくして

無造作にのびた自慢の髪はそのままに、髭を剃った姿を披露してくれた。
髭がない、というだけで大ニュースである。
私たちは狂喜した。

暁晨が横店にいるあいだにアップしたもの。
独り、他のキャストがいる定宿の豊景嘉麗大酒店ではなく、離れた龍景雷迪森庄園に泊まっていた(情報提供:茜音さま)。
なぜこんな高級ホテルに独り泊まっていたかも、後で憶測が働いた。
行きも帰りも誰もいぬ、ただマネージャーとだけのスナップ。非常に静かだ。

横店屈指の高級リゾートホテル

部屋のようす(ホテルのHPより)

ただ食べ、ただ眠るーーーそんな営みを、上げ続けていた暁晨。それがなぜだったのかも、後からわかる。

居室からの眺めから、恐らくこの部屋に滞在していたものと思われる

謎の行動

どこかの映画館
Jentle Monster品牌活動
キャプションは"半年ぶりの飛行機搭乗"
後から主演映画の上海国際映画祭用に合わせ撮られたポートレートだと判明した写真
奥様とテレビ通話(7月)
可愛い盛りの愛息子(8月)
奥様の誕生日(9月)

いったいどのぐらいの撮影か
微博でも緑洲、インスタでも
横店でのクランク・アップはいつなのかもはっきりせぬまま、飛行機に搭乗したり
映画館にいたり
北京に戻り家族と過ごしているのか
とりとめがなかった暁晨。

ワイヤーアクション時にしばしば被る擦過傷。
暁晨は10年ほど前まで、激しいワイヤーアクションを日夜こなしていたため、初めてではないはずだ。
それでも、久しぶりの怪我だったに違いない。
と、横店で《千古》を撮影していると思ってみれば

"さよなら未平斉(『海上牧雲記』でよく使用したオープンセット)ーーー
先程の怪我から僅か2日後、ここで《雪中悍刀行》が撮影されたと思われる(2021年末に放映された)。この作品は7月クランク・イン、11月末がクランク・アップだった。
何の告知もないまま、暁晨は特邀出演(特別とはまた違う枠出現…)で参加していた。話数にして3話分ほどの、短い通りすがり要員だ。
ちなみに、ワイヤーアクションはない役だ。
あの怪我はやはり《千古》でのものだろう。

萌え系道士、洪洗象

更に9月末、暁晨が訪れたのは、この《雪中悍刀行》で演じた自身の道場がある設定の武当山。
例によって作品が放映された後に種明かしされた。
舞台になる場所など聖地巡礼したり、下見したりといったことも、暁晨は必ず行う。

そして8月末、漸くーーー
"夏は秘密をたくさん孕みつつ静かに過ぎてゆく"
とこの写真を見せてくれた。
私たちは秘密が何で何個あるのかも知りもせず、古装劇を撮影しているんだわ!
と乱舞した
この3点分けの状態は、髷を結う際の定番の準備だからだ。

この表情がムカつく笑

クランク・アップ

クランク・アップは10月6日。
私はその報を見て非常に驚いた。
なんと、暁晨が記念集合写真にいる!

レギュラーや主役が当たり前のファンにとって、集合写真や殺青(クランク・アップをこう言う)写真に混ざっていることは珍しくもないだろうが、暁晨には極めて稀なことだからだ。
見間違いかと何度も確認したほど、私は驚き、喜んだ。
ところがこれさえも、思いがけない経緯があってのことだったのだ。

ここで暁晨の《千古玦塵》での姿が初めて明らかになった。

九幽の魔尊

記念動画と共に、主要キャストの海報が発表される。
そこにあった張暁晨のすがたは、暗灰色の衣を纏い、泰然と座る、上品そうな風情だった。
暁晨はさっそく、いつものようにふざけてみせた。

"吾は日に三回吾を省みる
朝食は食べたか、昼飯は食べたか、晩飯は食べたか"

ーーーしかし、この"おふざけ"にも、暁晨の大切なメッセージが込められていたのだった。

魔尊というのは魔族の大王のような立場を指す。
魔族というと、悪の集団と思いがちだが、中国ファンタジーの世界では単なる種族の名で、似たものに妖族というのもある。
しかし張暁晨が演じる以上、かなり厄介な悪企みをするような役にちがいない。

この眼力、大きく指先まで神経を行き届かせた手、マウスグレーの衣。
今回私が何よりも楽しみだったのは、こういったファンタジーならではのオーガンジーを重ねたふわふわひらひらした衣装だった。
ファンタジーものは、冠も特徴的で、美しい造型の金属のものが定番だが
魔尊のそれは"黒いなにか"だった笑
そしてこの殺青動画で見逃せないものーーー

それは涙ながらに叫びながら、渾身の力で弓を引く許凱だ。
恐らくその視線の先ーーー標的は、暁晨に違いない。
このときは、私はまだ中国ドラマ初心者のようなもので、友情出演というものの性質を知らなかった。
定宿のホテルからゾロゾロと、撮影場所に向かうバンに殆どの俳優が乗り込む、横店に張り付いてレポートする専門の芸能ブロガーの動画に暁晨だけいなくて泣きじゃくったり

そのときの劉学義。このように、首から上だけ完璧な状態で皆現場に向かう

公式にアップされたすてきな美術セットを見ては想像をめぐらし、暁晨の座ったセットはどれかしら…とわくわくしたりしていた。

群海報ーーー大勢の登場人物たちの中に…いた!一番左端にちっこく。
いるだけでも嬉しい瞬間。

張暁晨を共に応援して下さる悦姐姐さまが作ったオリジナル海報。無いものはつくる。ファン魂。
役名は玄一(シュアン・イー)。日本放送では"げんいつ"と。微妙な気分…
"玄"とは深淵なるものを指す。
暁晨はこの名を気に入っていた。

友情出演という触れ込みはいつしか特別出演に変わっていた。
今回、レギュラーのキャストは、みな暁晨と同じくらいのキャリアの持ち主が多かった。

蕪浣役の張嘉倪。彼女は最初から最後まで出ずっぱりで私の羨望をかった。
彼女は暁晨が駆け出しのころ《離愛》という作品で共演しており、結婚式にも招待されていた、旧友だ。残念ながら暁晨との絡みはなかった

《離愛》2011年制作
暁晨の前が張嘉倪
結婚式のときのもの(2019)

雪迎役の劉萌萌。2015年制作の《皇帝の恋》で共演。萌萌は暁晨の直接の上司で、皇帝を殺す指示を当初与える立場だったが、後に利用され死ぬ羽目になる。今回も似たようなシチュエーションになった。

二人は《千古玦塵》の後制作された《卿卿日常》でも共演。ただし絡みはない。
萌萌は暁晨も出演した《風起隴西》で主人公を演じた白宇と婚約中。

暮光役の付辛博は共にデビューしたきっかけであるオーディション番組、《加油!好男儿》の先輩後輩の間柄。
2006年度選手の暁晨は、2007年度の試合中何度も駆り出され(テレビ局の母体である上海メディアグループの事務所契約芸能人だったため)、手伝いをした。

『好男儿』時の辛博。全国大会3位。
全国大会決勝戦のさいの二人

そして付辛博の『好男儿』同期である李易峰が主演したドラマ《盗墓筆記》で、暁晨が共演したのは辛博の妻になる穎儿だった。
穎儿は暁晨の撮影している現場まで労いに来てくれたこともある。

このときは穎儿が後輩と結婚することになるとは、思ってもみなかったろう。報せを聞いて、喜んだに違いない

付辛博とも劉萌萌とも張嘉倪とも、現場ではきっと顔を合わせず終いだったろう。
脚本の読み合わせ作業が中国ではあるかどうか知らないが、あったとしたらそのとき会えただろう。
馴染みの親友たちと現場で現役として会うことの嬉しさを、暁晨は何より感じている。
それだけの努力と苦労を、お互い経てきているからだ。

暁晨の香盤表を見ると"緑布""空中"などの記述が。CGを駆使した作品ではこんな様子なのだ。

播出

ほぼ撮影から一年経過した2021年6月。
官宣が出て(中国では作品の脚本や内容が共産党の理念に反していないかなど厳しいチェックが入る。許可を経て初めて放映できる)、また新たな海報も。

開播群像海報
同じ特別出演の黄覚と並んで
所属事務所の告知海報

暁晨特有の黒眼がちの光るひとみ、
大反派(悪役)というには憂いを帯びた風情、落ち着いた、高貴で上品なーーー
張暁晨はやはり張暁晨だ。
ビーズが施された衣装もすてき。

全49話を一気にひと月半で放映する、中国式。
年間300本以上のドラマが制作される中国。
許可が下り、放映が決まるやこうして放たれる。
このときはまだ私は経験不足で、特別出演という意味をよくわかっておらず、張暁晨ならばラスボス扱いであろうと、驕っていた。
撮影期間が"本来なら"ひと月で終わるような、短い出番だとは想像もしていなかった。
ましてや"友情出演"なのである。
あの許凱の、血を吐きながらの涙涙の弓引きシーンは、最後の決戦のときのものに違いないーーー
倒されるにしろ、ラストのクライマックスだろうと、決めつけていたのだ。
よもやーーー

暁晨の開播時微博。
"魔とは、神とは?魔になったからといって何が悪いと?"ーーー
この開き直った主張がまさに、玄一の"一念"だった。

魔尊玄一の誕生

物語は妖海、仙界、神界の三つからなる神仙の世。まだ人間はいない。
そこには寿命が何十万年という、気の遠くなるほど長寿な神々たちが暮らしている。

後方中央が玄一。

4人の真神、玄一、白玦、炙陽、天啓。
七万年前のあるとき、祖神擎天から、玄一は"混沌の劫"を受け、混沌主神になるように言われる。
劫というのはこういった神仙ものにつきものの災禍で、雷雲がたちこめ、放たれる稲妻を体に何度も受けることによってレベルアップする禊の儀式のようなもの

玄一と主人公の白玦、事実上神界を統べている炙陽、下界担当の天啓らは、同腹の兄弟のようなもの。
そのうち玄一だけが、混沌の力なるものを持っていたため、"混沌主神"にならねばならないと運命づけられていた。
ところがーーー、

混沌主神になるための儀式の最中、主神令羽という特別な力の源を戴く段になり、"突如"反駁したのだという。

暴れた玄一に対し白玦をはじめ兄弟たちは玄一を攻撃した
そのときに強大な"魔力"を孕む魔尊になったのだとーーー

禍々しさ全開

その魔力に惹かれた下界の邪悪な輩たちが配下となり魔族が生まれた

煉獄の地 九幽
その胸にあるものは、玄一のみぞ知る

祖神は玄一を倒すために命を削り
九幽の地に封じ込めたのち
最後の吐息でヒロイン上古を作ったーーー
上古は生まれて一万年
最年少の真神だ

演じているのは中国の"国民の妹"周冬雨。
数々の映画で主演女優賞に輝く実力を持つ。
この作品は彼女の初時代劇ドラマでもある。
まだ幼い子どものような上古
兄である炙陽、天啓らに甘やかされ、奔放で自由気ままに育った。自らに課された"混沌主神"になるという運命の自覚からは程遠いところでーーー

結界、裂ける

七万年、という節目でどの封印も劣化が起きるのか、他の作品同様、この作品でも七万年めにして祖神が施した九幽の封印に裂け目が見つかり、炙陽が不安を露わにする。

虎視眈々と機会を窺っている玄一がじっとしているはずもないことは想像に難くなく、

二人は現場を見せてまでお籠りしていた白玦を呼び出すものの、白玦は
あっそう、大変だろうけどそれが運命なら仕方ないんじゃない、滅びようと?
などと無責任且つ身勝手な様子で踵を返す。

この白玦はもともと様々なことに億劫で
周囲の自分を見る目に怯え、できるなら関わりたくないという気持ちが強く、七万年前の騒動以来庵で隠遁生活を送っていたほどの偏屈。

子どもらしい素直さは時に勇気にも変わるものの

冷淡でとっつき悪く、傲慢でお高くとまっている"というのがその評判だ。

鍛錬により神力は誰より優れるものの
距離を置かれていた

白玦の隠遁している庵は暸望山という
冷淡なその気質に似合わぬ温もりに溢れた外観。自邸と同じく美しい花が満開に咲く樹もある。

神界での白玦の宮殿。
こちらも、花樹がある。

のちに上古に強請られ、ブランコもプレゼントした。これらの温かなものは、本来持っていた白玦の"温かさ"なのかもしれない
そんなことはいい
この白玦とやら

萌萌の登場

お気に入りだった花を
勝手に世話していた女が気に食わないというだけで

燃してしまうという超がつくほどのひねくれた短気短慮の持ち主!嫌味でもある

うひょー、冷血漢にもほどがある、とヒロインもドン引き。
もちろん後からの"ギャップ萌え"を狙っての極端なツンぶりを表す場面だが

とにかく何が気に入らないかしらないが
人の話には耳を貸さないわ
情は汲むものではなくひっくり返すもので
厳しいわ融通が利かないわ
やることなすこと"酷い"を通り越して"不愉快"なレベル
堂々と"中身はサイテーだが外見が美しいったらないから"などと言って女神たちがきゃあきゃあ騒ぐという

どつけば涼しい顔でフフンとばかりに受けて流し

常に視線を横か下に回らし
目を瞬かせながら口を噤む
彼を忌み嫌っていたヒロインが急にズッキュンときた最大の理由は
"私の身代わりにキッツイ劫(稲妻)を受けてフラフラになってくれた"
というもの。
知らず知らずのうちにヒロインを好ましく思い
つい余計な世話を焼いてしまうという
あまりにもお決まりのパターン
いつも思うが
デレるのが早すぎる

ごみを見るような目で女という女を嫌っておきながら
ヒロインがちょっとゴーインに手を握るだけで
キュンときているなんて!

彼女の行動にも
自身の恋心にも戸惑いながら
それを知られまいと秘める演技がほしい
あんなに厳しくオニのように振る舞っておいて
肝心の劫のときに代わってあげるなんて!
一貫性がなさすぎて興醒めだった

魔尊からの招待状

そんなあるとき
まだ混沌主神への自覚のない上古に、罅割れた結界から魔尊からの招待状が届いたのだ。

"三月 九幽の畔にて
混沌主神にお会いしたい
神族魔族の和平について話し合いましょう
玄一拝"

オツなお誘いだ
この慇懃な感じがいかにも暁晨の演じるキャラクターだ。
白玦たちは慌てる。
上古本人もやっと襟を糺して学ぶ気になった。

白玦は上古の心脈を開いた。
来る"混沌の劫"までに混沌主神にならないと、神界は壊滅するからだ。

玄一が七万年の間閉じ込められている
九幽の地とはーーー

境界の門には門番がおり、祖神によって結界が張られ、中に閉じ込められた魔族がいる。

荒れ果てた岩石地帯かと思いきや
美しい。
花が咲き滝が落ち、下草の緑も鮮やかだ。

そこに座して修練に余念がない玄一。

ただ七万年を無為に過ごしていたわけではない。こうして"昼夜を問わず"力を蓄え、スキルを上げてきた。

静かに目を伏せたまま語り出す
残念ながら今回は暁晨本人の声ではなく吹き替えだ。
張傑という方で、暁晨の声をあてるのは《皇帝の恋》以来となる。

私が初めて暁晨に夢中になった、長慶と同じ声。大変嬉しい。この作品は全て、張傑氏の声優事務所が担当している。ボス自ら、玄一をあてて下さって光栄極まる。

瞑っていた瞼を開けると、アイドル時代"電眼"と呼ばれた印象的な鋭い黒いひとみが現れる。
すぐには言葉を発しない。言葉を切った後もかなり引っ張る。
余韻こそ、張暁晨の醍醐味だ。

墨羽くん。寂しい魔尊の唯一の話し相手であり、甲斐甲斐しく手足となり耳目となってきびきび働く。

視線をあさっての方向にやりながら
涼しげな声で揶揄するような表情
暁晨しかやらない芝居
"あの"無関心無感動無遠慮無表情不遜不義理、その他諸々の無と不の持ち主が
女一人のために心脈(スキルアップをしやすくするための能力ドア)を開いてやり、神器まで作ってやるとは
面白いーーー

さてどうやって揶揄ってやろうかーーー
楽しそうな魔尊。
"七万年の悲願"は果たして達成できるのか?
乞うご期待。







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