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海上牧雲記〜Part18

仏心 with蘭鈺儿

いつもお天気な天啓の五つ星ホテル"九州客桟"
別名恐怖の館

このホテルには奴隷同士を闘わせ興の肴にする闘技場と、牢を保持しておりまるでコロッセオのよう
当然オーナーが我が物として使用している
現在のオーナーは宛州商会の会長、牧雲徳だ。

愛しい後ろ姿❤️❤️❤️

今日もオーナーが試合を高見の見物しているのだがーーー

あからさまに欠伸を噛み締めているオーナーを
オーナーの愛するパートナーと
オーナーが来る前総支配人だった秦玉豊が気忙しそうにそのご機嫌を伺っている
そう
オーナーは退屈しているわけではない
憂さを晴らすために見物しているだけだ

オーナーはいま至極大変ご機嫌がよろしくない
左の元総支配人がやらかしたからだ
どう落とし前をつけさせるかいろいろ考えているのだ

今回玉豊が犯したのはすみませんでしたで済むようなミスではない
二年の歳月と
注ぎ込んだ途方もない金と手間
オーナーの悲願が掛かった計画は全てパアに

目の前の試合にも難癖を。
何だこりゃ子どもの遊びか?
退屈極まる、との仰せ

ここの"焚き付けろ!"という邦訳が何て言ってるんだろうと調べたら
原語と英語ならこんな感じ
こういう場所に邦訳担当の方のセンスが光る

玉豊は剣とえさを放り投げ
よりサバイバル性を盛り上げる
闘奴たちは殺気を帯び血みどろになりくんずほぐれつ

その様子を冷たく見つめながら

フッと徳が吹き出したので
蘭鈺儿も玉豊もドキッとして固まる
二人ともびくびくしているため、徳の一挙手一投足に過剰反応してしまうのだ。

丁稚からこの恐怖の館で鍛え上げた
只管に目の前の職務に励みついには
奴婢から奴婢の人生を左右できる立場にまで登った

自らの手でこの伏魔殿のような街
天啓で最高の客桟にし、

仕事に対する姿勢と仕事の出来は大したもの
そんなお前だからこそ信頼していたものをーーー

空気を読んでやっとのことで玉豊は謝罪の言葉を口にする
"あんなにぼろぼろに"半死半生で戻るとは思わず
ついーーー

"お前が善人で善人であろうとしたことはよい、ただ私を巻き込むな(原文直訳)"

「どうぞ罰を」

徳がついに罰を言い渡そうとしたその時
蘭鈺儿が庇い立てを

甘い

ここは富貴な者から流れてきたお尋ね者まで有りと凡ゆる情報とモノが行き交う
情報を勝手に流し独断で動いた責任は重い

玉豊は評価と信頼を台無しにしたのだ
罰は免れん

"この客桟の印章全てを蘭鈺儿に渡すこと"
ーーーそれは客桟の掌柜(店主)である玉豊の職を解き蘭鈺儿に権限を譲るということ
同時に印章コレクターの玉豊から、蒐集した宝物を奪うということ
さすが物心ついたころからあの欒パパに有りと凡ゆる厭がらせを受けてきただけあって
目の付け所が最高だ
生きてきたのが厭になるほどショックな罰だ

徳に買いかぶって貰うのは嬉しいが
どんなに烏滸がましいことかよく分かっている蘭鈺儿は恐縮しまくり固辞する
そんなところもまた愛しい

無理を言って困らせるのも楽しい
蘭鈺儿がどんなに自分を愛しており
その愛がどんなに欲しているか知っている

玉豊も蘭鈺儿の気持ちを知っている
彼女にまでとばっちりを受けさせられない

潔く立ち上がった玉豊に
パパ譲りのタイミングで
"待て"
が飛び出す

これは徳の"思いつき"ーーー

当たり前だ
思ってもみないこと
隣のオーナーだって今思いついたくらいなのだ

度胸を見たい
お前が今回しでかしたのは''出来心"で
変わらず私への忠義心とーーー自分の手で育てた客桟に真の思い入れがあるのかどうか
"誰にも渡さない"
その気持ちがあるかどうか

どうする
"逃げる"か?

命を懸けるか?今までの己の人生に?

心配そうに秦を見送る蘭鈺儿
徳はそんな彼女を見遣る

差し出された手
そっと握る
まだ私の掌にその身は委ねられているか
私を愛していると?

"酷いことを"と思っているか?
私の仕打ちに不満があるか
私を愛する気持ちに変化は?
間違えるな

私は与えていたのだ
慈悲と信頼を
それを裏切り蔑ろにしたのは彼らだということを
私が最も嫌うもの
それは"裏切り"ーーー

私からは裏切らん
それを覚えておけ
私を愛しているなら
分かっているはずだ

貴方を愛したのは貴方だから
貴方は赦して下さるはず
蘭鈺儿は
信じていますーーー

ここの手の払うアクション!
✨✨✨✨たー痺れるッ!!
他の誰が可能だろうか
張暁晨だからこそ!

"分かっていないのか"

そう
徳は勿論ーーー

玉豊は腹を括る
見せてやる
見たいというならーーー
ここまで只管努力を惜しまず
働いてきた
使われるだけの使用人の意地を

闘いだしてすぐさま豊玉はやられ放題
蘭鈺儿は辛そうに顔を顰める

このまま酷い死闘が続くのかと思ったそのとき

徳はふいに
"つまらん"
とだけ吐き捨てた

そして微笑み
立ち上がり

さっさと立ち去った
玉豊の意地を確認できたからだ
真から裏切ったのでない
寒江への同情からのことだったのだと
客桟への愛情も然り
己の仕事への矜持も然り

徳が去ったので慌てて部下がもう大丈夫だと知らせる
しかし玉豊はやめようとしない
規定どおり
"香が一本燃え尽きるまで"ーーー

まだ線香はーーー

この場面は徳の仁徳滲み出るシーンだ
罪は償わせねばならない
忠義は守らせねばならない
けれども玉豊の心情も無理からぬもの(寒江を気の毒に思っている)
徳の施した罰、そしてそれを赦した気持ちーーー
それらの意図は台詞ではあからさまには語られない
ここの微笑みは微かすぎて
多くの視聴者は気づかないのか
玉豊を闘奴と戦わせるなどという無茶ぶりと
"つまらん"
と吐き捨てた言葉をそのまま受け取ってしまい
BS(日本初放映はチャンネル銀河)初放映時リアルタイムでツイートしたものには批判が集中した
いかに真意が伝わらぬものか
暁晨はしっかりと表現しているにもかかわらずだ。
私は様々な視聴方法には仕方ないと思ってはいるが、数をこなすことに執着し、ストーリーだけを追うために早送りして見るやりかたは、張暁晨という俳優の佳さを理解してもらえず本当に残念でしかたない。
主人公とは違い、暁晨は悪役が多いためだ。
密かに私は暁晨を"あらすじ俳優"と呼んでいる。
感想や所感を綴るブログやツイート、ムック本などには登場せず、役名のみがあらすじで語られればまだいい方だからだ。

今作も例外ではなく、この腹黒親子の会話のシーンなどに面白みを感じることができず、邪魔なものとし、もっと理解し易い寒江のシーンをもっと見たいなどの意見が多数あった。
寒江は勿論、笙殿下も、和葉も皆この親子が運命を握っているにも関わらず。
私がこのようなレビューや、Twitterで張暁晨について紹介するのは、多くの場合見落とされたり
見過ごされたりする場合が多く
ほとんど取り上げられることがないからだ。

張暁晨は一言せりふを言うだけでも、否、せりふがない場合すらこれほど繊細に精彩に表情や風情が変わる。

これほどの俳優がなぜ評価されぬのか、全く首を傾げすぎて捥げそうなくらいだ。
書かれるもの、人気を獲得するのは主人公ばかり。どうしても納得が行かないのだった。

泣かなくちゃ with蘇語凝

さて、闘技場から自室へ戻ろうかと廊下を徳が歩いているとーーー、

蘇姑娘とばったり。
挨拶するもガン無視され、

"やっほう、寒江はここにいて重体だよー!!"
と呼ばわる

この底意地の悪そうな不審者を不審そうに振り返る蘇語凝ーーー

表情による感情表現
せりふを話す声色に加え
張暁晨ならではの醍醐味は香や茶を立てるシーンなどの優雅で美しい所作、そして貴族的な風情だ
これは他の俳優が持っていないもの
暁晨独自の持ち味だ
この作品はそうした彼をふんだんに見ることができる。
まず徳が持ってきたのは炭。膝を着いていざる動きがすてき。

黙って着いてきた語凝をまず煽る。これも作戦のうち。
商談のノウハウを知り尽くした九州いちの商人だ。

語凝も負けてはいない
やり返してきた彼女に、面白そうに吹き出す徳。

感心しながら徳は炭を五徳に足してゆき
鉄瓶を置き湯を沸かす

鉄瓶を置いたタイミングで語凝を見つめ、どこか揶揄うように語りかける
明らかにいつもの徳とは話し方を明るいものに変えている

語凝と寒江の純愛はこの世界では可笑しいほどに美しい
二人はお互いを守ろうとしているが
事態は裏目に出るばかり
それが合理主義な徳には滑稽でしかたないのだ
(自身の未熟な恋は棚に上げている)

意地の悪さを出しすぎたか
語凝は与太話には耳を貸すことなく本題を聞いてきた
そんな彼女の聡明さに苦笑する
"君が泣いたら彼も泣く。ぜったいだ
君たちは純粋すぎるもの"
このあざとい芝居が本当に腹が立つほどだ。

泣くもんですか、と揶揄いに対抗せんと言った語凝に、間髪入れずに
"泣かなくちゃ"
と返す徳。
"だって寒江がこんな重体に陥ったのは君が原因なんだからね。

君が全く関係がないなんて、彼を顧みもしないで消えたら、寒江が可哀想すぎる"

寒江の怪我は自分が原因ーーー
自己犠牲ばかりに囚われる語凝の悪いくせを知り尽くしている徳

傷つけるなんて…、そんなはずない
長い間彼とは離れていた
嘘で騙されはしない、と
まだ徳を警戒している語凝

まさかの肉親が、寒江をそんな半死半生な目に?
関心を持たざるを得ない事実に言葉を失くす語凝。
同時に、兄からそんなにされて寒江はどんなに悲しかったろう、と想像し、早くもその瞳が潤む。

"ね?だから泣いちゃうって言ったのさ"
語凝がショックを受けている間に徳は茶壺を置き茶葉を茶筒から入れている
以前笙殿下に振る舞ったものとは違う茶のようだ

そこまでの酷い折檻をなぜ?
理由によってはまだ作り話かも、と質問を重ねる語凝。
"だから、君のせいなんだってば。
笙殿下との婚約パーティーを台無しにして寒江と駆け落ちしたろ?
あの後は大騒ぎさ。
穆如は牧雲家を守る家なのに
太子の許嫁(未来の皇后)を強奪だなんてーーー、
謀叛じゃないか?"
軽い言葉で責めながらも、徳は茶壺に蓋をし、鉄瓶を持ち

語凝を見つめたのち茶壺に湯を注いでまた鉄瓶を五徳へ戻す

だって…、でも会場に大将軍はおみえでなかったわ
嘘なんでしょ?

"それがなんだよ…、寒江の母親が命を犠牲にして止めたのさ"
言葉を切った徳の表情には哀切がにじむ
母親の寒江への愛の深さ
そんな深い愛を知ったときの寒江の辛さを思う

何てことーーー生まれた直後に殺されるところだった
助かったものの幼い頃から家族と離され孤児のように暮らした
その上兄に殺されかけたどころか
自分を助けるために母親が死んだだなんてーーー!

徳は語りながら茶壺の茶を茶海へ注ぐ
この美しい手捌き!

"寒江だけでない
本来死なずに済んだ穆如の兵なんかも大勢いるんだ"

"あの兄さんは気性が激しい
折檻は容赦なかったはずさ
だけど寒川だって君たちのしょうもない純愛なんかのせいで母親と大切な部下を失ったんだ
無理もなかろうよ"

"花嫁を奪えば実家である穆如に累が及ぶことは確実だし
母親が死んだからって墓参りなんかに行けば半殺しの目に遭うなんてことは予想できたろうに
なぜあんな無茶ばかり…、理解できないよ"
なんて言ってる間に

茶海から茶杯へ注ぎ
茶は語凝に

自分のせいで寒江は母親も亡くし
家族には恨まれることとなった
知らないで会ってしまうところだったわ
貴方に感謝しなきゃねーーー
胡散臭いだなんて思ってしまってごめんなさいね

"一丁上がり"
静かに置かれた茶杯
ここまでの所作、長台詞を話しながらの計算され尽くした素晴らしき芝居!!

牢の悪臭
すまないねこんなところでーーー
大怪我してるのになせこんな不衛生なところで放置状態なの?

"寒江は主人公なんだ
放ったらかしたって2日もかからずにピンピン元通りさ"
何気に危険を冒し寒江を匿っていたかのような物言い
徳だって半分穆如なんだから
しかも穆如なんかよりもっとヤバい謀叛人の息子。

徳のねらいは蘇語凝をして寒江を慰め
また利用すること
語凝は特効薬となるや?

語凝は誰かと違いちゃんと礼を言い
汚く臭う場所に愛しい恋人の元へと歩いて行った

"何って佳い女なんだ"
寒江め(従兄弟)
果報者だーーー

これも名台詞

英語版
原語版

"会う女の子会う女の子
皆魅力的で
本当に目移りしちゃうな"
ーーー
将来九州に君臨する魔王となれば
一大ハーレムを作ってしまいそうな徳
この女好きの性質はまさしくパパの遺伝
未来の正妃蘭鈺儿はたいへんである

君は、要らない with姫公主

徳のパパにカラダを差し出したナンコユーリ
このデカい真珠の指輪はパパからのプレゼント。
息子が息子なら父親もたいへんな色好み

しかしポイしちゃうユーリ
どちらも最低だ

ん…?

あれは徳世子
花束なぞ持って何処へーーー(この角部屋は徳の居室)

徳が花束を携えて来たのは
訪ね先が地下出身の姫公主だったからである

コンコン
"宛州鄴王世子牧雲徳が参りました"

姫公主は光が差さない場所で暮らしておいでのため
お花が大好き💐💐💐
リサーチ済みの徳、さすが。

だがしかし
受け取ってもらえなかった🥀🥀🥀
徳も要するにネタだったようで
すぐにポイしてしまった
二人は実は顔見知り。

蘇語凝は貴女から私の手に。
逃げ出されましたね

貴女と違い彼女は愛され系
今も相愛の恋人と愛の語らい中です

根掘り葉掘り無遠慮極まる
どこまでも自分本位なーーー

貴女は瑞朝を滅ぼしたいのでしょう
私もそれを目指していますので
それを伝えたかっただけです

瑞朝滅ぼし作戦なら協力しない?

ーーーしたくない徳

ーーーそういうところがイヤなので
考えちゃうんですよね

ぜんぜん嫌味が通用しない横柄さ

人間的にモンダイがあってーーー

もっと貴女に可憐さや
か弱さや
聡明さや
健気さがあればどんなによかったろうと思いますよ

ハッキリ言ってくれなきゃ分からないわ

じゃー言いましょう
"貴女は、私には要らない"

私が要らないだなんて、私にできないことを求めてるのね?殺しが必要なの?誰を殺すの?

貴女には他人の心が解らない。
美貌だけでは…ねえ?

ーーーあんなに女の子が好きなのに、いったいなぜこんなに姫公主を嫌うの
二人の初対面を知りたいわ。

知ってるんだ withユーリ

徳を待ち構えていたのはユーリ。

無視しようと角を曲がろうとしたのに

呼び止められた。

そうなるとこちらの女人も揶揄わなくてはなるまいーーー

張暁晨名物"振り返り"
毎回1、2、3、4で決まる
この呼吸が素晴らしい

君は私が助けたお尋ね者"ナンコユーリ"?それとも
私にとって違う人になったのかな

これは徳がパパとユーリのカンケイを知っており
ユーリを義理のママと呼ぶべきかどうかお伺いを立てたのだ。

嫌味を言ったら言い足りなくなってきた

そんなアバズレには洗練されたマナーなど必要ない
こちらも相手に合わせて下賤にならねば
何とそのまま砂利に下りた徳
エレガントで奥床しい徳には考えられないことだ

そのままゆっくり歩む
躍るように
徳の袴と前立の美しい刺繍と織の模様が分かるシーン

爪先を見ながら歩き
踵からユーリの座る廊下に上がる
訝るユーリ

お前と父のこと
知ってるぞ
汚らわしいったらありゃしない
ゾッとするね

あらそう
何だっての
ちゃんと目的があるんだからーーー
気にしないわ

何て態度で何て女だ
お前の目の前にいるのはお尋ね者のお前を救い
二年も匿って面倒を看た恩人なんだぞ
その私の好意を足蹴にしただけじゃなく
私の父に体を売るとはーーー
反吐が出そうなくらいの汚らわしさだな

そんな天下一最低な女が皇后になりたいだ?

想像を絶する最低女が?

嗤いながらドッカリと腰を下ろす
蘇語凝を最高の作法と最高の茶葉でもてなした時と比較していただきたい
貴公子とチンピラ
どちらも演じられるのが張暁晨だ
万茜相手に!

お前のような最低女が蘇語凝に敵うものか
彼女に会って感動した

あまりの差に

"ここに来ている"

野心の果てに自分がどれほど醜くなったのかよく知るといい
彼女がどんなに清廉で可憐で美しいか

ただ堕ちてゆくだけのお前
なれると思っているのか?
合戈がまだ相手にしてくれるとでも?
力ある者を見誤り
後悔するがいい

私は見誤ったと?貴方には力があった?

私にはお前らの求めているものは下らなすぎて
何の魅力も感じない
お前の願いを叶えることは
どのみちしなかった

見ている"もの"
見えている"もの"が違うのだ

精々滅びゆく王朝の皇后を夢見て足掻いているといい

教えるものか
お前が滑稽で
あの夜お前を助けた自分が
あの晩父に命乞いをした自分が滑稽でーーー

お疲れ様、徳
本当に世の中の女性はさまざま
でも貴方が愛したのは
姫公主でもユーリでも語凝でもなく
蘭鈺儿だったんでしょう?

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