見出し画像

卿卿日常〜その哀哀日常のすべて Part 6

牢獄の獣

尹嵩兄さまが失脚したシーンを紹介しながら
暁晨はこうコメントした
"僕には皆さんの拍手喝采が聴こえます"ーーー
ついに消えてくれる!
みな爽やかな興奮で胸を満たし、ハイタッチするやら花火を打ち上げるやら

尹嵩兄さまは流罪と決まった
尹崢の進言によって死罪を免れたのだ
尹崢
ありがとうーーー

嫡長主邸閉府ーーー
"捷園"の扁額が外され
屋敷内には阿宝すらも暇を出されたのか姿がない
独り
客間で書を燃している尹嵩兄さま
ふとーーー
開いた扉に期待をして見やったものの
父親ではなく
弟だったーーー

"お前か
何しに来た?
「私の」戸政司のことで忙しく
こんなところで油を売るヒマなぞないだろ

"そもそも貴方のものじゃない
天下の民らのものです"

"私に対して偉そうな口をきくな
お前は何度も戸政司に干渉し

水面下で私の部下らを手懐けていた
私が知らないとでも?"

"貴方がしていたことはもっと的外れだ
貴方は戸政司を自分の地位を守るものとして私用し私腹を肥やした"

"お前の言葉を信じるのは父上くらいだ
自分が私より優れていると驕っているのだろう?"

"その通りですとも
私に貴方を凌ぐ能力があると判っていて
どうして屈したままでいなくてはならないのです?
ともあれ
責任を度外視し自己の利益のみを貪った貴方の自業自得です"

"その器に非ず"ーーー

またその言葉だなーーー
嫡長主の呼び名を賜ったとき
父上はこう言われた
"嫡長主という地位には責任が伴う"と
母上にもこう言われた
"これからはみんな貴方のものよ"と

それきり父上はその言葉は言わなくなった

私に何か不足がある限り
"その器に非ず"
その言葉が付き纏うのだ

"兄上はずっと父上の寵愛を恣にしてみえたでしょう
兄上がそのように仰るなら
私たち庶子はどうなるのです
立つ瀬がない"

嫡長主として愛して貰ったのは最初だけだ
その名で父上は私を抑圧し監視し

風も通さぬ冷たい籠に閉じ込めた

お前は自分だけが苦労をしてきたと思っているのか?
…生まれたときから嫡長主と呼ばれ
九川を担うのだと言われ
厭で仕方なくとも学ばされ

しかし父上は満足しない
どんなに努力しようとも
永遠に
毎日毎日不安で堪らず
私は
もう何年も満足に眠ったことがない

こんなに兄弟がいて
いつか私よりも優秀な者が出たら?
私を差し置いて父上の賞賛を得たら?

焦り
怖れる
いつ父上を落胆させてしまうかと
いつ見限られてしまうかとーーー
だが私はもう30にもなるのに
毎日毎日父親の顔色ばかり窺い生きてゆくのか⁉︎
父上が私がその地位に相応しくないと考えるなら
なぜ全て私のものだと言ったんだ

この人生のどこに私がいるのだ
自分らしさを圧し殺し
私がどれだけ努力し苦しみそれらを手にしてきたと?
なのに少しでもしくじれば父上は
俄に見つけてきたお前のような奴に与えるために
私から全て奪い去るのだ
いとも簡単に!

ーーーお前に言っておこう
この愉しみなど一片もない冷たい宮殿で永遠の悲哀の中で生きていれば
お前も
いずれ私と同じ境遇になるだろう

ーーー"その地位に居る者ならば
その地位から堕ちた時の心構えもしていなければならぬ"
兄上は堕ちる恐怖だけに怯えしがみついていた
だから堕ちてゆくのです
徳が無かった
"不徳配位"ーーーまさにそういうことなのですよ

溜め込んだ尹嵩兄さまの悲哀の全てをぶち撒けるこのシーンは
やはりこちらも張暁晨名物の長台詞
この間《陳情令》を見た際
このように今までの積年の思いを一気に語るシーンが3つほどあったが
いずれも周りは立ち尽くしたまま一言も挟まず
語り手はただ立ったまま台詞を垂れ流すのみ
同じ場面を暁晨が演じればこうは絶対にならない、そう確信しながら見ていた

暁晨の演技の素晴らしさは
語っている言葉の重みだ
一言語る度にまざまざとその光景と心情が脳裏に展開し胸を抉る
睫毛の先
指の先
袂の衣擦れ
炭が爆ぜる音ーーー
カメラワークや音楽がなくとも
台詞すらなくとも
精緻極まる表情とリアリティ
尹崢の一言でバッサリと捨てられる
尹嵩兄さまの哀しく惨めな半生
無能なくせ嫡長主として生まれてしまい
その名に縋り父親の威光を嵩に着て
外面は尊大で気取っていても
中身は空っぽな可哀想な人

そんなことは百も承知
それが"尹嵩兄さま"だったのだーーー

帰って行った尹崢と入れ替わりに内侍が現れ、盆に酒を載せ入室して来る。
"川主より嫡長主へ"

それはどう考えても
毒薬入り
父上は私に死ねと?
死罪を免れ流刑となったはずが
やはり赦せぬと気が変わったのだろうかーーー

嫡長主が退場する、と暁晨が宣言してからというもの、このクソ少主がどんな酷い末路を辿るか、手ぐすね引いて待ちきれない人びとはわくわくしながら予想に余念がなかった。
陳錫に殺されるか
パパから賜薬が送られるか
斬首刑か
獄中で頭を強打し自害するか
流刑地に送られる道中で襲われるか
流刑地で死ぬかーーー
さぞ楽しい妄想だったろうと思うが

このときも
誰もが別に尹嵩兄さまが流罪だろうが死罪だろうが
どうでもいいと思っていた
居なくなってくれるなら何でもいいとーーー

"父上のご意向ならば致し方なし"ーーー

何という日々
何と虚しい人生かーーー
父の機嫌と期待と顔色を窺い続け
最期はその父によって毒杯を賜る
何というーーー
溜まった涙が溢れ頬を伝い
滑稽さに自嘲する
このリアリティこそ張暁晨ーーー!

飛んできたのは尹崢の腰の玉牌

ところがーーー!

またもや主人公が!

内侍は陳錫だった!
騙され利用された挙句仲間を全て失った彼の恨みの刃が襲う!

またもや左胸…!

高木も馬超も長慶兄さまも赫連錚も右胸を刺された(死んでないのは馬超だけ)

一番最近に死んだ黄預も同じ場所を刺された
もう常に左胸に亀か何かを入れておいてほしい
ともあれーーー、

主人公のカッコイイシーンがまた一つ
命を二度助けられた尹嵩兄さま
無情にも
"助けなくてよかったのに!"
"本懐を遂げさせてやりたかった"
"陳錫と一緒になって『死に晒せ』と叫んじゃった"
などと…
恨みを我慢しきれない視聴者たちの
フマンがばくはつするのだった

なぜ裏切った、ってそれは尹嵩兄さまだから
貴方と仲間を匿ったりよその川へ逃したり
さっさと殺して口封じするのをスッカリ忘れていたからで(仲間は尹嵩兄さまによって殺された)
これでもし彼が情状酌量で免罪されたら
流刑先の兄さまは確実に暗殺される
罪作りな兄さまーーー

陳錫の呪咀の声を聞きながら
尹嵩兄さまは意識を失った

尹崢は涙さえ流して侍医を呼び兄さまを介抱してくれた
何ていい子なんだと感激すると同時に
反目しあっていても
やはり家族であり兄弟なのだと
二哥もいつか
みんなと同じに笑顔で和気藹々と
団欒する姿が見られるのではと
願ったものだ

白敬亭と暁晨とは
これが2回目の共演だ
ここでも蹴られて吹っ飛んでいる笑

白敬亭はヒロインの護衛
暁晨はヒロインに一目惚れする隣国の王子
そのため一緒のシーンが多数ある

《鳳凰の飛翔》はNetflixのみで視聴できます。全70話、暁晨は28話からの登場。

尹嵩兄さまと違い360°無死角のすてきな役です👑👑👑

女共の逆襲

ブラックアウトののち
出てきたのは介抱される主人公
おおーい!
尹嵩兄さまは⁉︎どーなったの⁉︎
死んだの⁉︎生きてるの⁉︎

全く…あんなクソ兄さま、見殺しにした方が世のため人のためだったでしょうよ
あのクソ兄さまの代わりに貴方が死んじゃったらどうするの、
とヒロインなら迷わず見殺しにしたであろう
このヒロインを尹嵩兄さまの牢に放り込むっていう(尹嵩兄さまへの)拷問にかけたいわ
さぞ兄さまも嫌がるでしょうよ

そんな獄舎ーーー
なんと主人公は手厚い手当てを受け
尹嵩兄さまはそのまま牢屋に身ぐるみ剥がれ放り込まれた模様
絆創膏くらい貼ってもらったわよね⁉︎

その惨めな姿を冷やかしに来た
かつての嫁たちーーー
細身のからだがまた哀れさを誘い
ああ
こんな姿でもだだ漏れる色気がやばいわ
嬉しそうな風情がまた泣かせる

黒髪についた藁がまた哀れーーー
没想到
お前たちが私をこんなに気にかけてくれるとはーーー

ばかね
何を世迷言言ってるんだか
貴方が私たちにした仕打ちを忘れたの?
誰が心配なんかするものですか
笑いに来たのよ

何で死ななかったのよ
今すぐでも遅くないわ
死になさいよ
貴方が私たち女なんかより大切だったものは全部なくなったの
ざまあ見ろだわ
ーーー仮にも自ら誘惑しておきながら
何という冷たさ
言うなれば郝葭だって自業自得だろうに

次は私の番ね
これにサインしてもらうわよ

ーーー離婚しろと?
"その通り"

10年の夫婦生活を無意味なものにしたのは
貴方よ
完璧に完全に貴方が100%悪いの
芳如に関しては何も文句は言えない
全面的に尹嵩兄さまが悪い

よもや嫁側から離婚届を突きつけられる日が来ようとは…観念して朱肉の蓋を開ける兄さま

私も娘にはどんな人間が父親か話すつもり
最低が服を着て笑ってるだけなのに
嫡長主なんて地位の人だったって
父親がどれだけ酷かったか聞いたら彼女も逃げて正解だったって慰めてくれるわ

手放して初めて自覚する
そうだ
自分もいつしか父だった
父親になっていたのだ
褒められるようなことを一切してこなかった父親ーーー

もう一つ
彼女の姓は尹でなく郝よ

実の娘は最早絶縁

嫁たちはもう微塵も尹嵩兄さまを思い出させるものは捨ててゆくのだ

尹嵩兄さまは文字通り全てを失ったーーー

"事ここに至り、全ては自身が招いたことーーー尹嵩、少しずつ良い心を育ててゆけると信じてるよ"

再出発

尹嵩兄さまが流刑地へ出立する朝、川夫人の宮殿でそわそわと待っている尹岳。

警備の兵と共に朝日の中やってきた尹嵩兄さま。
その見窄らしい姿にため息が出る。
ああーーー、本当に
もう兄弟たちのてっぺんに君臨していた嫡長主ではないのねとーーー

その目を背けんばかりにみじめな姿に
何と声をかければよいか分からない

兄さまの方も
今まで期待を一心に受けて立派な姿だけをママには見せていたので
こんな情けない姿が申し訳ない
最大の親不孝だ

やっとパパのお怒りが収まったの
何とかお金を工面し送るわ
伯父様とも協力して
貴方が都に戻れるようにしてもらうわ
尊敬する兄さまが庶民になり寒さ厳しい流刑地に行くなんて
尹岳は耐えがたい悲しみにずっとべそをかいている

結構でございます
父上はもう私など死んだものとお思いでしょう
何もないところから
自分の手で何かを成す
ずっとやりたかったことです
それもいいーーー
ここの溢れた笑みが
本当に尹嵩兄さまがやりたかったこと
ずっと憧れていたことに触れていて
涙が出た
弟たちのように自分らしく
気ままに自分の向いていることを探しながら生きたかった
全て失うことでそれが叶うかもーーー
だが

戸惑っています
何もすることがない
そんな生活はしたことがなくてーーー
私は
囚われの獣ではなくなった
檻から放たれたのです
もう苦しまなくてもよいのですーーー

30年
厳しく調教された獣は
檻から出たとたんどうすればよいか分からなくなって
自由にも喜びにもまだ慣れぬ
それでも
自由になったのだ
自由に生きることができるのだ

私は尹崢がいつか兄さまを赦免してくれると思うわ
兄さまさえ悔い改めて
本当の自分の生きたい道を見つけ
愛する人を心から慈しむようになれたらーーー

そうして
いつか家族みんなでまた暮らしましょう
笑顔が溢れて
愛が溢れて
そんな楽しい日常を送りましょう

いやだ
二哥
もう会えないの
本当にお別れなのーーー?

兄さまの袖をそっと別れ難く握った弟
浅はかでわがままで傲慢でーーー
ああ
兄さまが悪かった
お前を甘やかしてしまった
今はもう分かったろう
威張るばかりで驕り高ぶっていると
兄さまのようになる
慎重に慎重に
息を殺して用心しながら生きるのだ
兄さまのようにはなるなーーー

ああ
ここの抱き寄せかた
暁晨だわ
頼りない弟が気がかりで
精一杯諭してあげる
大切な弟ーーー

去り難く
別れ難くーーー
愛するものに背を向ける

宮殿を出て
ついに外の世界へーーー

"嵩儿!"
母の声
尹嵩
尹嵩
在るのが当然だったもの
全ては自分の手で掴む筈だったものーーー

今まで育てて下さり感謝申し上げます
親不孝をお許しくださいーーー

涙を袂でぐいと拭って
尹嵩兄さまは立ち上がる
その姿は潔く
涙を誘った
この叩頭シーンを見た怒り狂っていた視聴者たちは
"ーーーうっかりクソ少主に同情しちゃった"
"少しかわいそうだと思ってしまった"
とつい情に絆されそうになるも
全力で寸前で耐えた
それもこれも
気高く尊く
どこまでも気品漂う風情で説得力を持って演じた暁晨の力量に拠るものだろう

梁公公がパパから言付かった荷物を渡す
しかし
尹嵩兄さまはもう一切
パパからは何も貰わないと決めていた

欲しがることも
使うことももうあるまい

兄さまはずっとずっと
肌身離さず持っていた三枚の銅銭を空に放る
パパの評価をずっと占っていたものだ
もうパパの顔色を窺わなくていい
この宮廷に
今までの恐れも拘りも全て捨ててゆく

文字通り
身一つで尹嵩兄さまは新川の宮殿を去った
"尹嵩はきっと大丈夫
僕は信じてる
善人になって人生を夢のように塗り替えることができるってね"
暁晨はこう結んだ

張暁晨が演じた尹嵩兄さまのシーンを
全てお送りしました
何と酷い役だったことか
冗談抜きで私は放映の一か月胃腸を壊していました
また
今回はなぜそんな視聴方法になったかと言えば
それは偏に
"暁晨とコンタクトを取りながら、また、暁晨が逐一発信する新たな情報に直様コメントを返し
その返信を暁晨から貰うため"に、情報を常にリアルタイムでゲットせねばならない状況にしぜんなってしまったからである。
これは初めてのことだった

ファンダムチャットを開いていれば
暁晨が微博に何か上げた瞬間に対応できる
これは最初に投稿したものを暁晨がすぐに下のものに差し替えた時のもの。
私は削除前の写真もちゃんと手元に残した。
暁晨ファンの習慣笑
DMを開いたときのもの

正直、これらの事情や他の視聴者のヘイト発言など、知らずに視聴した方がはるかに作品を先入観なしに楽しめたのでは、とも思う。
しかし、初めてながら食いつき、彼に返信を貰えるよう工夫したり、彼がどんな意図でこの役を演じたかを知ることで、彼とDMが可能になったり、暁晨の投稿に反応できたわけで、結果的には良かったと思っている。
どう足掻こうと尹嵩兄さまは最低野郎だった。

暁晨が紹介した尹嵩の最終シーン。私は尹嵩なら再起は可能だと書いた。そのプライドの高さから。それに暁晨が賛同してくれたもの。このコメントにはたくさんのlikesを貰った(右下)

そして、私の本業ーーー私はピアニストだが、その演奏も彼に聴いて貰っている。
これらの得難い体験は、やはりリアルタイムでなければ得られなかった。
そんな舞台裏のあれこれを、続くエピローグでぜひご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?