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海上牧雲記〜Part4

第19話
伝國御璽

夜陰に紛れて一人の人物がいかにもお忍び、という体で九州客桟を訪ねてくる
総支配人改め番頭となった秦が恭しくお辞儀をしているからにはやんごとない身分の者に違いない
徳がいるスイートルーム"乾の間"へと案内する

客が目深に被っていたフードを徐に取り去る
非常に長身で
態度は尊大で
その髷には皇子ということを示す冠

しかし徳は客を一瞥したものの
一向に何か言う気配なく
殊更ゆったりした風情でチェックしていた帳簿を取りまとめている

冠をつけた人物ーーーこの国の皇子様をほったらかしていてよいのかと秦は困っている
何も言わずに尊大な態度のまま見下ろしている殿下
とにかく尊大なのだ
勿論徳はパパから聞いて知っている
彼は第四皇子、牧雲合戈。

牧雲合戈

合戈殿下は皇帝の第四皇子だ
4番目だが合戈殿下の母は皇后なため、嫡子である
嫡子だが皇太子ではない
そこが問題なのだ

皇子はどこのものでも大抵マザコン

しかも皇后の実家は南枯氏という由緒ある家柄、だから非常に尊大なのだ。
殿下の母である皇后はよくある話で皇帝に全く愛されてはいず、寵愛を恣にする笙殿下の母を呪っていた。
皇帝はそんな皇后を見て更に嫌悪感を抱き、息子である合戈殿下のことも嫌っている。
殿下はそれをヒシヒシと感じているあまり
自分は皇太子になれないのではないかと危ぶんでいる

だから殿下も、母の幸せを奪った女の子で、怪しげな出自を持つ笙殿下を忌み嫌っており、めったに外に出ない笙殿下が参内する際に出会す度に難癖をつけ虐げていた。
自分を差し置き笙殿下が皇太子なぞになったら我慢ならない
許すまじ、である

野心家が服を着ているような合戈殿下だが
殿下が持っているのは野心だけ。
その中身は特に秀でた物もなく、あるのはプライドと出自を笠にきた高飛車な振る舞いだけ、器の小さい殿下のことを心底徳はケーベツしていた
(勿論合戈殿下とも徳は従兄弟同士)
だからこの夜の初対面(恐らく。しかし私の二次小説では12年ぶりの再会とした。なぜ?
それはナイショ)だがからかっているのだ

殿下を無視したまま徳は立ち上がり、帳簿を秦に渡す

"宿泊代を倍にしろ"
それでなくとも都いち高級なホテルである九州客桟であるのに、更にぼったくれと指示。
"訳ありの連中ばかりだ、そんな奴らを気遣う必要などない。全くヘーキだ、やれ"
悪魔のような言種と穿った根拠に基づく決定
これが"やり手"のやり方だと殿下に見せつける

"…下去吧"
ーーーこの、静かに囁くような"しゃーちば"がたまらなくエレガント

さて、やっとこさ殿下に向き合う
実は二人は初対面ではない

この二年前に暁晨と彭冠英は共演している
殿下は皇帝宇文邕、暁晨はその友人香無塵だった。

暁晨は変幻自在の道士
29歳のバースデーも殿下たちに祝ってもらった

70歳のバースデーではない

"…いつぞやは。殿下、どうぞ"
促し踵を返した徳を呼び止める殿下
"皇子に対して礼を取らんのか"

徳は振り返るーー

見返るさい暁晨は必ず1、2、3、4、と呼吸を取る。
その度に私はこのように残すのである。
美しいからである

"殿下。私は大切に取っておこうと思っているのです。殿下に対する最初の礼は、殿下の頭上に皇帝の冠が輝いた時に、と。
最高の敬意を払って盛大に恭しく礼を取って見せましょう"

なんとーーー!
《合戈殿下の妄想タイム》
もし私が皇帝になった暁には…

この優雅で美しい従兄弟が…

私の前で跪き…

恭喜陛下、、万歳万歳万万歳

このように盛大に寿いでくれると?

《合戈殿下の妄想タイムおわり》

↑美しい従兄弟

この徳の言葉はたいへん合戈殿下に気に入ってもらえたらしく

会心の笑顔と
"賢いッ!!❤️❤️❤️"
という最高の賛辞をいただいた
この瞬間中国本土と配信された世界のあちこちで変な輩が湧いた

ーーー但し徳はおぞけと闘うことに
気を取り直して

ここの徳のすがたの美しいこと!✨✨✨
合戈殿下もきっと目を奪われていることでしょう
卓のこちら側から!

徳が差し出したのは
徳の実印!!

"徳"と名のみのデカイハンコ
徳名義の口座から引き出し放題
金の動きは徳の帳簿上のみ
だからアシはつかない
大業にはカネが要る
どうぞお使いください
ーーー勿論これは徳ではなく欒パパの差金

《欒パパの計画》
穆如が牛耳る兵権を南枯に奪わせクーデターを起こさせ弟である皇帝を殺し→
甥の合戈を焚き付けて皇帝に成らさしめ→
母親である明儀(皇后)のハートをゲットし→
落ち着いたころ合戈をぶち殺して自分が皇帝に

パパの永遠の恋人、南枯皇后

ーーー"天下の宛州商会の金を自由に遣える
大変に助かるがなぜそこまで?
何を企んで私に協力する?
お前の望みは何だ"

目的を訊かれ

"望み?"
徳は驚きーーー、内心吹き出す

"望み"?
そんなものは徳にはない
自分は父の便利屋
父の指示に従っているだけーーー

"私は一介の商人です
損得ばかりを考えてしまう
つまりは
儲けるのがねらい
目の前の得も大事だが広く遠い目で儲けが出るよう心がけねばなりません
永くわが商会が恩恵に与るには
皇室を頼るのが当然
皇子様がたの中では御血筋、才覚共に合戈殿下が最も次期皇帝に相応しい
殿下に白羽の矢を立てたのです"

徳の剣を見定める殿下
殿下から見えないところでは素の表情

"私を助けることは即ち天下を覆すほどの金とモノをお前は手にしているということ
自身が野望を抱きそれを叶えるつもりなのでは?
手を貸した挙句、最後は自分が笑うーーー私をよもや裏切る、という筋書きはあるのか?この剣は反骨を表すという。この剣を使いその名のとおり刃向かうという可能性は?"

徳は天下など欲しいと思ったことはない
天下とはこの九州の一部にしかすぎず
"この世界"ではない
"もし二心あって裏切ったならーーー、分かっておろうな?"
徳に向かって刃を翳す殿下

"天下"
"天下"ーーー
父が喉から手が出るほど欲するもの
そのために母は父の元に送られ自分が生まれた
天下を手にするための駒
自分の人生は父のもの…

徳は刃を持ち殿下を見つめる
"私は商人
同じ皇室の血が私には流れていますが
皇子という尊い身分ではありません

いつも伏目がちな張暁晨の貴重な上目遣い
188㎝の彭冠英が相手だからこそ

常に損得を考えてしまいます
皇子でもない私が大それた野望を抱くーーーそれはもしかしたら命を喪う、即ち大損害を招くかも知れないということ…

刃を離し
その眼光が強まる
ーーー同時に殿下とは器も劣るため
そのような大それた野望など考えも及びません

金を差し出すくらいは容易いこと
しかしながら命までも差し出すのは…恐ろしいので…"

合戈殿下は己の器がいかにデカいか示してみせる
それが諸刃の剣であることを知っているのかいないのか…、
一か八かの賭けの為所を履き違えているとしか思えぬ

"…その度量、流石は私が見込んだ合戈殿下!
君主の器か否か
私には自分が分かる
殿下こそ皇帝に相応しいお方です"

"臆病な私と剛毅な殿下
お似合いでは?"

"勝負の為所"を熟知し
そう『芝居』を締めくくった徳

お似合い…理想的な身長差❤️

徳を裏切りはしない信頼できる者と認定して下さった殿下は商談の続きを
"頼んだものはできているか?"
"はい。勿論でございます"

いかにも商人然とした立ち居振る舞いが好きすぎる

徳は今度は箪笥の方へゆき
筒を取り出し殿下に渡す

殿下が徳に頼んだ"もの"とは形状が違う
殿下は訝りながら筒を開け中身を見て憤る

殿下が頼んだ"もの"とは、皇位を継承するための印"伝國御璽"だった
出来上がった現物をと思い出向いたものを
未だ設計図のみとは!
どこにあるかわからないなら探すより作ろうと思ったのか
例え殿下がそれでよくとも、そのような杜撰な状態でゴーサインを出すわけにはいかない
宛州商会のコケンに関わる
ましてやクーデターに使用する大切な品だ
半端なものなど渡せない
出来うるかぎりの手を尽くし
徳が用立てたものだ

徳の言葉から
"歴代の皇帝しかその形状は見たことがない"
ことがわかる
考えうる限りの手間をかけ
ムダを省くためにとりあえずまずは設計図を書かせたのだ

丁寧に説明した徳の苦労と手間をまるで分かろうとせずに殿下はほとんど"何でもよい"かのように急かしながら早く印を手に入れようとする
あからさまに偽物だと分かってもよいのか?

実は陛下、今の殿下のパパは笙殿下の魅の力の覚醒時の影響で全身不随になっており言葉が出せない。殿下のママ、皇后が介護しているから確かだ。
バレてもパパ上は何もアクションできぬ。
殿下の大胆さはそのことにもあったのだ。

大業に向けて逸る殿下。
これは徳のパパの野望案件であって徳はカンケイない。
しかし万が一とばっちりを受けないか、徳はよくよく考える。

最終的に、殿下の"バレても大丈夫"という言葉を信じて、徳は決意した。

頸を横に倒して、そのあと柔らかに笑む。
暁晨のくせだ。
アイドル時代から見ると、あのエントリーNo.2番だった暁晨がいま、こんなワクワクしてゾクゾクさせる、心理戦芝居をキレキレにこなしていることが信じられない。わずか10年。
この子は逸材だ、と太鼓判を押した、数々のお世話になり彼を愛でてくれた監督がたの目は確かだったのだ。

オフショット❤️❤️❤️

演技力の面の話だけでなく、高義麟監督をはじめ舞台劇の監督、初主演作であった『西廂記』の路奇監督など、皆挙って暁晨の"人間性"を褒め称えていた。仕事に対する姿勢、仲間に対する態度ーーー徹底した自己に向けた客観的な分析力、真摯で謙虚な性格がここまでの成長を導いたといえる。

牧雲記を撮影していたころ

深夜の狼藉

さて
合戈殿下がお帰りになったあと
またもや客人が。

それは蘭鈺児。
案の定珠の中の美女盼兮の宿題を解かんと不眠不休でがんばる笙殿下、食事も食べて下さらないし何を言っても聞いていただけない。

嘘八百を偽の笑顔を顔に貼り付けてしゃあしゃあと話す徳。この宝石店とは"翠記宮花"のこと

徳世子の仰っていたことはほんとうなんだわ、このままじゃ殿下はミイラになっちゃうわーーー
そう思い詰めてのことだった

そのころ徳は袴を脱ぎリラックスした格好で叩天沢の刀身を手入れしていた

美しい劇中スチル。一流作品(日本に入ってくる一般的な作品。暁晨が以前いた世界はこのようなものがなかった)ならではの美しさ。

先程の合戈殿下に見せていた営業スマイルとのこの異い!
もちろんこちらが素の徳だ。

戸の外に気配。
"誰だ"
可愛い声が応える
"私です、若様"
鴨が葱を背負ってやっと現れたようだ

蘭鈺児が恭しく礼をしたかしないうちに

狼藉をはたらく
抱き竦めるわ腰を引き寄せて密着させるわ
お巡りさーん!!🚨🚨🚨
蘭鈺児が気の毒だ

からの"黙って"
ばかデカイ掌に口を塞がれ
キョーフの極致
お巡りさーん!!🚨🚨🚨

この密着ぶり。悪質

戸を閉めると途端に以前のエレガントな世子に早変わり。
訝る蘭鈺児
騙されちゃだめよ!さっきのが本性なんだから!

"きみの外聞を守ってあげたのさ"
深夜にアブナイ輩の部屋に入るなんて
キケン
信頼しきっているせいでコロリと騙される蘭鈺児

早とちりかどうか
先程の目の前の男が自分に何をしたか思い出してほしい

言ったな?
蘭鈺児、さあ心置きなくやっておしまい

…とはならないか…まあいいや
結婚してから存分に尻にひくから
"こんな夜更けにホテルのスイートに滞在する独身男に何の用かな?"
蘭鈺児はハイ、と巾着を差し出す。

しかし目の前の男は性質(たち)が悪いので
ああ、あのときの珠を持ってきてくれたのかい
とは言わない
意地悪。

貴方への贈り物ではなくて、例の珠を持ってきました。
どうぞお祓いをお願いします

ようやく我が手に
これであの美女は私のものだ…フフフフフ
蘭鈺児!
よく見て!!
これがこの男の本性よ!

珠の女

笙殿下は夢を見た。大事な大事な盼兮が、同じく彼女の姿を見ることができた従弟に取られてしまう夢だ。

殿下の不安
まだ盼兮をしっかりと自分のものとしていない、という焦りでもある。

蘭鈺児、と呼ばれるやすっ飛んでくる蘭鈺児。

お目覚めですか、珠ならここです!
何かバレる前に珠を見せる。これは徳が持たせた偽物。

ここの殿下が可愛い笑

盼兮を繋ぎ止め、父上も救う。
偽物と気付かれないか、どきどきする蘭鈺児
大丈夫、殿下、盼兮は殿下のもの。
邪悪なイトコは、これからこっぴどくフラれます。

昼間の乾の間(貴重)
まんまと自動的にその手に入れた
その珠を透かし

またもや特殊で美しい持ち方

ここでまた脱線
張暁晨の頬は酷く疵があり
膚の状態が良くないように見える
眉間もしかり
私はてっきり思春期の頃のニキビ痕だと思っていた
この肌でモデルをしていたなんてどういうことだろうか、と。

ところが
若い頃の暁晨にはその痕はなく
それどころか化粧品のCMに抜擢するべき←抜擢されていないところがミソ
とまで絶賛された肌を持っていたのだった

話を戻しまして
待つこと数十秒
笙殿下しか呼び出せないんじゃないの、と思ったらーーー

香炉の煙が止まった!
…もしかして…来る⁈

来た!!
本当に来た!!

"顰仙"という自分が名付けた名で呼ぶ徳(笙殿下が盼兮と名付けたことは知らない)

やっぱりだ、私にだって資格があるのだ!!
嬉しくって溢れる笑みを噛み殺しながら近づく徳、こういうところが可愛くて仕方ない。

(笙殿下ではなく)"私といてくれ"
どストレートに言った!!

自分から出てきたくせに仏頂面でしつれいな女だ
なにっ⁈

正面切っての大告白に正面切ってお断りされ
衝撃を受け止める徳…

涙ぐましくも自分に言い聞かせるように宥めながら
めげない
ええッ⁈まだ諦めないの⁈パパに心臓鍛えられすぎたんじゃない⁈
やめようよ
カッコワルイよ…

"私を選べば昼は最高の着物や宝石を身につけ最高の生活をさせよう
夜の方も心配するな、自信がある
笙殿下といれば自由もないぞ
私はしかも殿下よりずっとずっと知能指数も高いのだ"
のだ、と言われても…
多分ね、盼兮は徳が持ってない"ピュアな精神性"が必要なんだと思うよ
だから

"しつこい"

また…😩😩😩

さよなら…みっともない宛州牧雲の世子様

しーん

香炉の煙はたなびいている

忌々しさと落胆と倦怠感と虚しさがよく表された立ち上がりかた
拒むんなら出てくるなと言いたい

ここ忌々しさ寄り

いくら眺め回してみても何もいない

自分にも珠の中の女は見えた
資格はあるだろうになぜ拒まれねばならぬのか
なぜ笙殿下がよくて自分がだめなのか
納得行かずわけもわからずこの挫折感と忌々しさをどうしてくれよう
動揺し居室をウロウロソワソワするらしくない徳をご覧ください
可哀想にーーー

珠を光に透かし
掌に乗せたまま暗闇へ持ってゆくこの演出が秀逸
暁晨の手がいかに大きいか

ーーーよかろう
お前がそういうつもりなら
私も現実を受け入れようではないか

笙殿下にも会わせない作戦
何という狭い了見
悔しさがそうさせたのだ
よくもコケにしてくれたな!
徳は珠を叩天沢のケースにしまう
臭いものにはフタ
盼兮は徳ファンにとって"いけすかない"
17話と19話は心臓に悪い

ショックを受けた瞬間のショット

大丈夫!
徳ファンのみなさま!!
牧雲徳はこんなことではメゲません!!
話は予想と全然違う展開にーーー




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