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海上牧雲記〜Part12

第43話 息子も甥も兄弟も手のひらの上で転がしまくり

徳と墨先生が外の縁側でそれぞれの野望について心を熱くしているとき
部屋の中では欒パパがそれを嘲笑っていた
合戈殿下はクーデターに乗じて帝位を簒奪しようとして失敗し幽閉
陸殿下は太子である弟の婚約者と逃げようとして失脚
寒殿下は土壇場で弟殺しに怯んでしまい帝位を自ら手放したも同然
その笙殿下はファミリーパーティーのときの乱心騒ぎでこちらも幽閉
何だかんだ
子どもたちは野望やら純愛やらを貫こうともがいているが
老獪な自分からしたら
まことに滑稽でしかない

遠く瀚州から厳霜公主が行方不明です、という報せが天啓の寒殿下ではなく欒パパの手元に
予め取り込んでおいた兵士が持ち込んだのだ
大胆にも封印を断ち切り中身を見ながら欒パパが言うことには

最後に笑うのは自分なのだ
ーーーこれ、最後には若者たちがパパをやっつけてこの言葉を葬るのかと思ったら
全然違った
年寄りを侮ってはならない
考えてみたらまさにその通りだ
自分が年を取るとわかる
"伊達に歳は重ねていない"
若者が何を考えて何をどうやろうと思っているかなど
分かりすぎて面白いほどだ

その息子世代
合戈殿下、笙殿下
そして寒殿下ーーー彼らのポジションを利用させてもらって
欒パパは次の仕事に取り掛かる

厳霜公主はみんなに内緒で碩風和葉に逢いに行ったのだが
寒殿下の名で返信を偽造し
全ての瀚州の部族を集めて結束させる

その偽造は木原さんが請負った
"寒殿下の手磧に似ずもし偽造がバレたときには分かっておろうな?"
木原さんにそんな特技があるなんて

穆如大将軍とその兵権、兵力を陛下から取り上げ壊滅させるーーー
瑞朝始まって以来の現象が起こるーーー

お前のお友達の出番だ

今度はぴーしゃ側の仕込み
折しもぴーしゃは乱ちきパーティーの顛末に違和感と疑問を持たれたところ
あの気弱な弟を何とかして操らなければ

ぴく、と茶を注ぐ息子の動きが止まる

パパの駒のひとつ「息子」。
わざわざ生まれた時から熱いうちに叩きまくりセラミック並に
他の二人の庶子とは違うその絶頂聡明なお頭を最大限に活かす

"私のお友達はパパのお友達です"と言ったろ
"言いましたとも"

淹れた茶をパパに手渡す。"パパに託す"
このような細かい描写にいちいち意図が隠れている、この作品を何回見ても飽きず堪能できるのは、見れば見るほど発見があり、気づいた時の楽しみが増すためだ。

徳が独自にプロデュースした九州客桟オリジナル懐石メニューによってお友達になった方々に進言してもらい
穆如の伯父様に出征願えと(穆如槊は徳の母方の伯父)。

酷い会話だ
その逆だ
今の瑞朝を滅ぼすためにこの20年というもの
愛息の人生もめちゃくちゃに蹂躙して策を練ったのだ

まずはこの国と弟を何としても守る気満々の穆如氏に滅んで貰おう
弟を裸にしてから追い込むのだ

パパが容赦ないのは知りすぎるほど知っている
徳はパパの腹の中を探りながら
どこまでの手並なのかを学ぶ機会でもあるかのように
時折敬うようにパパを見つめる
最も信頼する者を殺し
不安の極地に追い込み更に不安を煽る

そしてまた
時折蔑むようにパパを見下ろす

"もう一つ父上にプレゼントが
墨先生が役に立って下さるよう取り計います"

果たして初めから墨先生をそのように使うつもりだったか否か
"陛下のそばであることないことお耳に入れましょう"

"ワシのためにお友達もお前も
使えるものはみんな使うということを分かっているようだ"

もちろんですとも
私はそのために生きているようなもの
生きたい生き方は許されず
そうしたくとも父上の歓心を買わんとしてしまう

"父上のために"ーーー
己れの野望はひた隠し
巧妙に布石は打ってゆく
貴方とは違う道を

貴方とはーーー

墨先生のお輿入れ

ある朝ーーー(ちなみに九州客桟の門を潜ったすぐ右向かいは笙殿下の住まいだった金寧院)

お輿入れのため身綺麗になった墨先生は何だかべつじんのよう

パパの歓心を買うために差し出す生贄でもあり
去り難い情と自身の野望のためにやはり生贄する気満々という矛盾と複雑性に富んだ徳の胸の内

ここで笙殿下が客桟を訪れた時に続き二つ目のなぞのせりふが徳から飛び出す
この時は生贄になって貰う気で今生の別れと覚悟してのことで後から事情が変わったのか
二人して登場する場面がこの後存在するのだ

墨先生はその言葉に
"⁇"
と思われ

輿に乗り込むも
徳の気持ちを計りかね

振り返り息子のすがたを見つめゆく
エモーショナルな音楽と相まってここは完全に墨先生が嫁にゆくような様相
ここの徳が考えているのは次のうちどれでしょう

①あばよ墨先生、死んじゃっても夢枕には立たないで
②行かないで墨先生、寂しいよ、漸く秘術もステップ6まで来たってのに
③許して墨先生、パパの命には逆らえないんだ、打ち合わせ通りに私のために駒になって

その答えは
徳にしか分からないーーー

クランク・アップの日、墨先生役の魏超さんと

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