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海上牧雲記〜Part10

第34話
破茶滅茶な家族親交パーティー

欒パパが仕組んだ皇位簒奪プログラム第二ラウンド
ナンコ・クーデターが失敗したため
パパは家族パーティーをぴーしゃ(陛下)に提案したが
単なる親睦パーティーはいつしか笙殿下の立太子兼婚約発表も盛り込まれた
その前にと挨拶代わりにパパが徳が苦心して手に入れたお宝を携えて訪れた場所はーーー

星読処"観星閣"。陛下はとにかく星読みを信じており
占星師が言ったことはぜったいで
笙殿下も寒江も蘇語凝もそのせいで運命を翻弄された。
パパも同じ目に遭っている

長子でレッキとした皇太子だったのに
星読みで"ロクな皇帝にならない"なんて言われたために皇位を引きずり下されたのだ

笙殿下が魅である能力に目覚めてからというもの
星読みに使う機械がぶっ壊れて止まってしまい
途方に暮れている占星師たちの所へ出向き
意趣返しをしたのだ。

よくも言ってくれたなーーー

徳が大枚をはたいて手に入れた皇極経典派の教典
これがあれば機械がなくとも星占が可能に
これがほしいか?
ほしければ引き換えにーーー

という取り引きに来たのだ

困り果てていた岺鶴清は藁をも掴む心地で、経典と引き換えに盼兮を倒すことを約束する。
墨先生の秘術ブレンドの酒、笙殿下を護る盼兮への布石を打ち、万全で臨む欒パパの大業第二ラウンドーーー

今日は格別にいい天気な九州客桟

その朝。

客桟はいつもの如く静か。手前渡り廊下先の左の建屋が徳の部屋。

その徳の部屋を眺めるかたちでスイートルームの前のスペースで感慨深げに佇んでいるパパ

側仕えの木原さんにとっても特別な日
秘術入りの酒は例の秦明が笙殿下に勧める手筈になっている

このパパの装いカッコイイ

苦節20年
ついに念願叶うこの日がやってきた
今日よりこの朝廷は自分の思い通り
あの優柔不断で軟弱極まる弟を葬り皇位を我が手にし想い人もゲットするーーーん?

あれは先日口封じの術でこの世から消えているはずの危険物
ピンピンして花嫁衣装など着ているではないか
徳はどうした

はあ
何でもご友人のところだそうで
いつもとてもお忙しそうです
この客桟にジッと座っていたためしがありません
マメですよね本当に

何やらあやしい動き…
言われた宿題はやっていないし…

"聡明すぎる"息子がどんな企みを巡らしているか
楽しみなような不気味なようなーーー

皇宮に到着した鄴王の馬車
パーティーは何時からなのだろう

しかしこのシーンは実は早朝に撮られたのだ
皆の影が西向きにある
ここに集ったみんなは3時に楽屋入り
日中でない
夜中だ

この日パパはクランクアップ
徳に喚かれたカットが最後のシーンだ

これはパパ役王千源が持っていた香盤表
パパと徳は4時にメイクアップに入り5時半出発とあるが
太監や雑役、金瓜衛や黒甲衛のみなさんは3時入りとある。
大変なおしごとだ

パパが馬車から降りるのを介添えし
手を取りながら並歩し
手水舎で手を清めるのを手伝い、と息子らしい甲斐甲斐しさで孝行する徳

皇宮へ行くのになぜ神社のように手を洗うのか不明だが
暁晨の趣味の一つに"日本へ行って神社仏閣めぐり"
というのがあって
暁晨は手慣れているに違いない
美しく優雅な所作で柄杓を持ち手巾を取り出しパパに手渡す
指先までもバレエのように形を整えている

コロナが起こってからは訪れていないし
中国では昨年夏親日狩りが芸能界を吹き荒れた
私は恐々とし気が気ではなかった
彼はある俳優が芸能界を封殺されたと報じられた日のうちに
これらの旅行写真を隠して見られないように対処した
彼が有名でなかったからこそ槍玉に上がらなかったのだ
私を悩ませた事件のひとつだ
有名になってほしいが有名になれば失うものが膨大になるーーー

寒殿下は本当に弟を殺すことができるのだろうか?
徳は訝っているが
パパは周到だ
躊躇った場合とそうでない場合両方に備えがある
実の兄弟で殺し合うなんてムゴい事態に
ぴーしゃ(陛下)は泣くかも
そんなヒドいものは可愛い弟には見せたくないからサッサと侍衛に殺させよう
皇宮は側近の太監から侍衛からパパのスパイがウヨウヨ。

"なんて父上ったら優しい心の持ち主なの"
ーーーまさかね

今日の徳は白白しさまで醸すほど上機嫌
パパが見過ごすはずはない

今朝見ちゃったぞ
消せ、と命じた危険物が紅い服を纏いフラフラ廊下を金魚のように泳いでいるのを。
どうなるか覚悟ができてる、ということだろうかな

このモーメント笑

何のことかサッパリ分かりませんので
帰ります
どうかスペシャルパーティーを存分にお楽しみくださいませ
徳は帰らせていただきます
私もぜひご同席させていただきたかったですが
父上が私がけがなどしないよう心配して下さいまして同席罷りならぬ、と仰せなら
大人しく客桟にて朗報をお待ちしております

逃げるが勝ち
しかしそうは行かない
さあ皆さまご一緒にカウントダウン
3、2、1ーーー

"だんだん"

やっぱりね…

あの夜の宿題は?

宿題とは
厄介なものを拾ってきた息子にその始末を命じたこと
この間のクーデターに関わった大罪人だ
赦すことはパパや徳の身の破滅に繋がる

何と
視聴者が気を揉んだ"あの夜の顛末"
徳はナンコユーリを斬らなかったのだ

ふんふん
なるほど
いい度胸だ
この間あれほど釘を刺したというのに
お前はワシに歯向かうというんだな?
ぴーしゃがワシをここに呼んだは
いつでもしょっぴけるようにするためだ
どういう料簡かな?

父上
私ももう年頃です
愛しい女を手にかけるなど
手が震えてしまい心は今にも潰れそうになり
とてもとても無理
だったのです

"ははははは
冗談だろ"
ひどい会話だ

ひどすぎる
愉しんでいるこの絶妙な表情!!

ここから徳の猛追跡
"父上もおありでしょう?
忘れられないほど愛を一人の女性に注いだご経験が?"

ーーーどうです?

ーーーそうでしょうか?

一旦言葉を止め
父親とは目を合わせずに語る暁晨流

帳簿を毎日処理していて気づいたのです
父上の私の稼いだ金遣い途に
最下層にあたる役人に賄賂代わりに邸を贈っていらした

何を意味しているか知っていますよ

パパカッコイイ❤️❤️❤️

それはパパが忘れ得ぬ想い人の気を引くために
彼女の幽閉された息子を訪ねられるよう特別に計らってあげた痕跡

私には愛しい女を殺せと仰り
しかしなぜご自分は?

理由を尋ねながらも追及するこの瞳
惚れ惚れする芝居。

そう
徳が当日の朝まで"友人に会って"いたのはこの件のウラを取るため奔走していたから
ナンコユーリを斬る前にもう気づいていたことだ

父上のご手腕をぜひ私に見せていただきたいと

パパは認めた
さっきの言葉はウソだということを
"ママには内緒だ"

ーーーこの俯いたときの哀しげなようす
ママには内緒。パパにはママにはない愛を注ぐ女がいる
その女のせいでママは愛してもらえず
自分も愛した女の子ではないため愛してもらえない
噂でしか
憶測でしかなかったその存在を
しっかりと確認したのだ

ーーー女性問題…

"決して忘れてはいけない
お前のママは穆如家から来た陛下の監視役だということを"

忘れたくとも忘れられない
母が穆如
だから自分は愛されない
生まれた時から
生まれる前からーーー
自分が何者であろうと
いくらどれだけあがこうと
パパの愛がそのせいで得られないのだから…

"だけどーーー"
徳は縋るようにこぼす
板挟みの苦悩
そう
徳には父の牧雲母の穆如
両方の血が流れた嫡流
瑞朝ではこれほど由緒ある血筋は無かろう
ぴーしゃのどの皇子たちよりも
徳はサラブレッドなのだ

20年以上も一つ屋根の下で過ごし
手料理など食べているのだから
情は湧いているはずでは…

子どもの徳では計り知れない夫婦の関係
今までお互い探り合い警戒ばかり、その腹を見せ合ったことがない
愛する以前の感情しかーーー

徳にとっては辛い言葉
母への愛を抱くことは父には最早望めないのかーーーならば自分もーーー

その情に訴えることが不可能なら、と
見限ったようなようすでため息混じりに
「一旦大きく外側を向き
相手も手元も見ぬままに懐から何かを取り出す」
それがピストルかハンカチか
はたまたお手製人形か
張暁晨ならどんな展開もあり得るため
覚悟が必要だ

手先が器用なため何でも作れる

徳が取り出したのは"礼単"と書かれた書類
これは"贈答品"という意味で
そこにパパがあのとき役人たちに邸を与えた、ということが書いてある
"証拠品"だ
この特殊な持ち方
張暁晨はまっすぐ指先を伸ばしたままものを持つ
手指が普通の一回り以上大きいからだ
それがまた美しい
癖とはいえ
私が愛する彼のチャームポイントの一つだ

パパの女性問題をママに伏せます。代わりに私の愛する女性もお目こぼしをお願いします

父上は私を何者にしたのです?
私は商人です。脅迫など。
これは取引でございます
如何でしょう

あの女を(人情で)助けるために
パパへの脅しをかける材料を揃えてきたーーー
さすがのパパも折れるしかない

"裾を踏んでおるぞ"


よくも悪くもやってくれたなーーー
ある意味これは誉めてくれたのでは

やった
パパをしてやった
斯くして徳は月璃を守ったわけだが
そんな必要はあったかどうか
後々後悔したのではないだろうか
それでも
人一人命を助けた、と思えば徳は満足だったろうかーーー

さて
このシーン、"ワシの着物を踏みおって"の台詞を以て欒パパ役の王千源さんはクランク・アップ
私は二人のオフショットを血眼になって探し
漸く見つけた
ナゼ墨先生がそこにいらっしゃるの…
(間はカントクの曹盾。墨先生役の魏超さんはよほどこの作品を愛してみえたらしく
ほとんどのキャストのクランクアップのさいの現場で記念撮影をしてみえる)






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