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2号選手張暁晨、ラストステージ〜全国決勝大会第五戦"龍的伝人"

2006年4月に全国に告知され、主要6都市で応募を開始するや各地区に数千人が集まり話題を呼んだ上海東方衛視のイケメンオーディション番組『加油!好男儿』。
18歳以上ならプロアマ問わず参加でき、上位入賞者にはスポンサーであるSMGとの契約、芸能界デビューが約束される。
河北省出身で故郷である町からモデル仕事のため北京に通っていた大学生張暁晨も、夢を抱いて武漢の申込み会場のホテルに出向いた。

詰めかけた参加希望者。申し込み用紙が見える。

番組の主旨は"現代に相応しい『好男儿』を選び出す"こと。容姿、心映え、体力、知力、才芸など凡ゆる面で素晴らしい男と呼べる"男児"をーーー

しかし始まってみれば、まずはルックスと才芸、場の処し方と印象でバッサリと30人に絞られ、そこからは本格的なタレントになるための修行のような日々が続いた。

まずはパフォーマーとしてメイクなど造形を整えられ、雑誌の取材を受けたりイベント会場でファンサービスをしたり、舞台で歌ったり踊ったりし、自分が表現者であると自覚しアピールできること。
ルックスが秀でており、その内面も魅力に溢れファンが熱狂的に応援したいと思わせるタレント性を持ち合わせていること。

バラエティ番組での雛壇
手洗い場で配布物にサインを

それらのスキルが自然問われる要素が満載されており、加えて応援団を持たせ、ブログでファンたちと交流させ、ファンらの愛の対象たらんという責任感と義務、アイドルでいる意味を、選手らは知らぬうちにいつしか試合を通して自覚させられてゆくという、何というギミック!

なので蓋を開けてみれば"誠の男児と呼ぶに相応しい"というよりは
"真のタレントになれる"魅力を持った選手らが残っていった。

15強選手ら。

残念ながら"演技や芸ごとのプロまたはそのたまご"はどんどん淘汰されていった。それがなぜかは分からない。
北京、上海、杭州、重慶、瀋陽、そして武漢ーーー
各地区からそれぞれ五人、のちに事情から復活者四人を加えた34人から15、15から10、そして決勝戦では一人ずつと順に減ってゆく選手たちーーー
淘汰ゲームの中で選手らは慣れないことに必死になって食いつきながら無我夢中でここまでやってきた。

上海五強。初戦
15強。イベントにて
ラテンを踊る程顕軍、暁晨、郭帥
10強。ビーチでダンスの練習

5月から気づけばすっかり真夏の7月になっていた。そして今また8人の選手たちは、安吉の竹林にいたーーー

第五戦のロケ先にて

眠気でフラフラの状態で選手らはその日(7月31日)早朝にメイクアップ
実際プロの俳優になったら午前3時に楽屋入りなど日常茶飯事なのだ。

魏斌はいつもあくびをしている笑
八者八様の可愛さでメイクアップしてもらっている中
暁晨は音楽を聴きながら目を瞑り黙して涼しい顔(寝てるだけか?)。

けれども移動バスでは爆睡笑
隣は天宇。

和気藹々と選手たちはいるように見えるが
天宇は前の試合以来、疎外感を隠し得なかった。みなよそよそしく自分がそばに来ると俯いたりして、"避けられている"と感じた。
魏斌は完全に自分を無視している。
天宇は宿で同室の暁晨に訴えた。

この天宇の様子を見ると、この夜だけでなく、試合の夜からずっとそればかり話していたろうな感じ。
天宇は姉が二人いる。女きょうだいの中で育ったためか(天宇自身も自覚がある)まるでこの様子は女の子である。
内向的で頑なな傾向にある彼は、いつも独り離れているような子だった。疎外されていたわけではなく、彼が独りでいることを好むからだが

こんな風に思っている心の内を何でも打ち明けられるのは暁晨が初めてだった。こうして天宇は穏やかで親しみやすい暁晨にすっかり懐いてしまったのだった。

居場所を失った天宇が安心して一緒に居られるのは暁晨だけになってしまった
しかしそれもーーー
ファンの悲鳴が耐えなかった"譲票門事件"

あのとき魏斌の票数が最低だと知った天宇は焦っていた。魏斌が去るなんて耐えられない、第一戦の鍾凱のように、大好きな仲間がまた去るかもしれないーーーそんな"怖れ"と同時に自覚したのは
"こんな戦いはもう厭だ"
という気持ちだった。

歌が思うように歌えず、ダンスも苦手、笑顔をずっと振りまくのも人前で自分を前面に出してアピールすることもファンたちと握手をすることも、ーーー悉くが苦痛だった。しかも、全てが至らない自分ではなく、自分より遥かに前向きに取り組んでいる仲間の方がどんどんいなくなるーーー
魏斌は守る。自分の方が去るべきだーーー
すっかりその思いでいっぱいになってしまったのだ。

しかし天宇のそうした"咄嗟の思いつき"は、矛盾も生み出した。淘汰された向鼎のファンにしてみれば、去りたい天宇ではなく向鼎の方が排除されてしまった訳で、なら交代して欲しいという思いに囚われるのは致し方ないこと、またもや天宇は批判の嵐に見舞われ、ルールを度外視したために仲間からも敬遠され、守ろうとした魏斌はプライドを傷つけられ、すっかり憤ってしまったのである。

自分の話から意識を逸らしたと勘違いし、天宇が暁晨をクッションでナグる笑

"お前は考えすぎなんだ。みんな自分の運命をどうこうしようなんて考えもしないってのにさ。もっと割り切ってこういう機会を持てたことを楽しまなくちゃ。
魏斌だって普通に話しかけてみればいつも通り返してくれるはずさ"と暁晨は諭す。
だって、ぜったい避けられてるもん、ぜったいだ。何て声をかけていいかわかんないとクッションをひねくり回しベッドに寝そべる天宇はもう完全に女子のそれである。

第四戦での魏斌

ところが
魏斌は暁晨が思っているのとは違い
本当に無視を決めこんでいたのである。
意地悪な気持ちからではなく、自分のことを卑下し、尻込みしてばかりの天宇に、子どもじみていたと自覚してほしかったからだった。
あんなことをして自分が残ってもちっとも嬉しくないし、そもそも自分は地区予選のときからぎりぎりの場面ばかりだった。去るときはそのとき。ここまでか、ただそれだけだ。去るからといって終わりじゃない。そもそもずっと一緒に離れずに4人いるなんてことは無理なのだ。8人のうち半分は武漢なのだからーーー

天宇と魏斌は同い年だが、何かにつけ拘る天宇と、天真爛漫な魏斌は対照的。

8人のヒーロー

第五戦では、金庸の小説に登場する武侠ヒーローにそれぞれが扮した。

暁晨は『楚留香伝奇』の楚留香
怡川は『射鵰英雄伝』の郭靖
魏斌は『鹿鼎記』の韋小宝
迪文は『絶代双驕』の花無缺
天宇は『倚天屠龍記』の張無忌
建飛は『笑傲江湖』の令狐冲
暁波は『神鵰剣俠』の楊過

蒲巴甲はこのとき別行動をしていたため安吉にはいない。またこの日は、日頃応援してくれている自身の親衛隊との交流会も行われた。
移動バスのステップに腰掛けたくさんのサインをしていた暁晨は、立ち上がる頃には下着が汗でぐっしょりの状態だったという。

この日は格別の暑さと不快指数だったが、そんななか遠方からわざわざ駆けつけてくれたファンに、ブログに暁晨は感謝の言葉を書いた。
"どんなにみんなが遠くからぼくに会うために大変な思いをし、長い間炎天下で待ってくれたかぼくには分かってる。
ほんとうにありがとう、いつもぼくを応援してくれてありがとう"ーーー

ファンたちが撮りまくった写真たちが、今でもたくさん残っている。
暁晨は幼い頃『楚留香伝奇』を見て、楚留香はとっても女の人にモテるお兄さんなんだなあと思ったという笑

楚留香まみれ笑
馬天宇と。moon氏は専属カメラマン。ありがとうございました❤️❤️❤️
一葉だけ白黒のものがある
暁晨がブログに載せたものだ
このあたりの"見せ方"への拘りは現在でも健在。それらは必ず加工されており、彼がそのまま載せることはない。
この時小道具だった扇子は、今に至るまで暁晨の現場での必需品となった

酷暑の中のロケでも、みんな初めての古装アクションの撮影にワクワクしているのが感じられる。

巫迪文と宋暁波。上海予選地区出身の二人はいつも一緒。
7人の勇者揃い踏み

宿舎に残っていた向鼎は羨ましがっていた。
コケてしまって大ウケする巫迪文が愛しすぎる。
ジュースを飲んでいる魏斌が可愛い。
アイスを食べながら戯れる建飛と怡川、ファンに揉みくちゃにされながらも嫌な顔ひとつ見せずにサインを書いてあげる暁波、魏斌が目の前にいるのに意識していても話かけられない不器用な天宇ーーーこの『好男儿』を見ているうちに、みんなみんな大好きになってしまった。

第五戦"龍的伝人"試合開始!

後に現在(2022年)までの出演作50本のうち半数を占める古装劇で数々のアクションを熟すようになる俳優張暁晨の、これが初めての古装(時代)、初めてのワイヤーアクション、初めての古装パフォーマンスだ。
やはりその姿は現代ものよりも映える。

帰りのバスでの暁晨の隣は怡川。暁晨がお礼をブログに書いたのは、日付が変わった午前3時半。

楽屋にて

上海に戻り、楽屋にてお互いの扮装でメンバーと写真を撮りまくる。やはり他のパフォーマンスとは違い、時代劇の格好はテンションが上がるものだろうか。
そこには、退陣したはずの陳澤宇と向鼎の姿もあった。
そう、今まで取り上げて来なかったが、これまでの3試合のあいだ、脱落した鍾凱、程顕軍、郭帥、毛方圓も、「応援隊」という名目でエンディングのテーマ曲を歌ったり、ソロでコーナーを司会したりと招ばれていたのだ。

このときは厳竣も呼ばれた

それは、予想外に退陣した選手それぞれの人気が、本戦から落ちても上がっていたからだった。
落ちた江洋、郭帥にはすぐに映画やドラマ撮影のオファーが入った。
"『好男儿』から落ちても、真の別れではない"ーーー
番組の人気が想像以上に高く、選手らはいつのまにか番組に出演しただけで既に芸能界への扉の中へと入っていたのだ。

再び仲間たちと同じ舞台に立てるとは!
喜びの二人、陳澤宇と向鼎
怡川と向鼎、陳澤宇
第一審査直前の暁晨とゲストの陳澤宇
建飛と向鼎
天宇。何かと舌を出すのがこの頃のくせ。
どこまでも可愛い魏斌
暁晨。扇子を気に入っていつも持っている

晨宇王道

ここで『好男儿』が全国決勝戦に入ってから起こったある出来事についてご紹介しようと思う
ご紹介しようかどうかだいぶ迷っていたのだが
やはりこれ抜きにして天宇と暁晨の10年後の感動的なリユニオンは語れぬと思い書かせていただくことにした

○○王道というのは、あちらの国で誰かと誰かをカップリングするさいの呼び方だ。つまり
暁晨×天宇ということなのだが

決勝戦が始まった頃からネットの掲示板で誰かが暁晨と天宇とを扱った二次小説を連載し出したのだった。
当初は非難轟々だったのだが、作者が書くことをやめなかったらしい笑。連載は続けば続くほど支持を増やし固定ファンがつき、その小説はスポンサーはおろか選手らも読んで面白がっていたというのだ。

つまり、試合中暁晨と天宇は謂わば公認カップルのような扱いで、番組も二人を意識した演出をしたり、試合中司会者までも暁晨に天宇をどう思うか振ったりして揶揄っていた。

当人たちはと言えば、そう思いたければどうぞご自由に、といったようすで、そんな寛大?さが更に盛り上がりを見せ、暁晨の親衛隊橙汁と天宇の親衛隊羽毛が一緒になって互いを応援し合う、という状態すら起こっていた。

これは本戦が終了した後のものだが、このような横断幕を堂々掲げるほどだった

天宇は暁晨を慕い全幅の信頼を寄せ、暁晨は天宇の可愛いルックスとピュアなその性質を愛しーーー勿論恋愛的な意味ではなくーーーこのとき紡がれた友情は、今でも変わらず続いている。

かく言う私も2次創作などを書いていることもあり、初めてそのことを知るきっかけとなった、あるブログを大変興味深く読んだ。

http://allasia.blog74.fc2.com/blog-entry-25.html

今回、この『好男儿』を具にお送りする上でも、大変に参考にさせていただくだけでなく、私は張暁晨が『好男儿』の選手だったことをこのブログ記事から知り、馬天宇も実はこのブログで知ったのが最初だった。
2007年度の第二届(回)『好男儿』は井柏然、李易峰、王伝君、付辛博などのアイドルスター級の選手がいるため多くの資料があるが、第一届の暁晨らのリアルタイムでの記録は、日本語のものはここでしか読めないのだ。
この場を借りて、ブログ主である上海阿姐さまに感謝申し上げます。
全てはこのブログから始まったーーー、そう言っても過言ではない。

私がもしこの『好男儿』で2次小説を書くとしたら、どうだろう、、、
あ、ご興味ない方はここはスルーで結構です

天宇→暁晨、建飛→暁晨
しかし暁晨→鍾凱
サブカプに怡川↔︎魏斌
なんちゃって
すみません
所詮暁晨ファンなので。書きたいな笑

いよいよ試合!

『龍的伝人』のオープニング。
シンプルなメロディを歌い継いでゆくスタイル、最後歌えない暁波はみんなの声をバックに踊りでパフォーマンス。
トップを飾る怡川の堂の入り方は、もう直立不動朴念仁の空軍中尉ではなく、アイドルのそれ。

キャー怡川ー!❤️❤️❤️笑
魏斌も❤️❤️❤️可愛いわー

凛々しい建飛、朗々と危なげなく聴かせる巴甲、一際麗しい暁晨、上品で華がある迪文、可愛らしい天宇、弾けるラップ調の魏斌、みんなみんな大好き!
もう10強全部1グループとしてアイドルで売ればよくない⁈と思ってしまう。

第一次審査

照れまくる楚留香
またまたー、自分だって楚留香ばりに女の子にモテまくってるくせに。


これが、現在放映中のドラマ『風起隴西』にて狂気に満ちたカルト教の教祖を演じ、その演技力を絶賛された俳優張暁晨の最初の時代劇の演技だ。

どの選手も実は似たり寄ったりの出来栄えなのだが、暁晨の場合この演技も、物腰が柔らかすぎるためかイマイチという印象を与えた。

演技の訓練や技術は受けたことがない暁晨。モデル業で学んだ"自分を客観的に見つめ見せる"ことはできても、せりふを喋り役を立てるやり方はまだ知らない。彼はこれより後ゼロから演技というものに、独学に近い方法で真摯に取り組み、演じる喜びを感じてゆく。

ともあれ女優陣よりも優雅な色気を醸しながら、必殺技の柔和な笑顔で締める、暁晨のアピールVTR。
ソロ・パフォーマンスはというと…

第一次審査で暁晨が選曲したのは、中国が80年代初頭に諸外国と国交を回復し、外国へ出かけることが可能になり、その時代背景をきっかけに"どこにいても私の心は祖国にある"という母国愛を謳いあげた『我的中国心』だった。

肩に龍があしらわれたこの衣装は私のお気に入り。

この曲は音楽の教科書にも採用され、子どもから大人まで口ずさむことができる、愛国心高揚歌の代表的なものだった。それだけに、熱く、堂々と歌い上げなければならなかったのだが、暁晨のそれは声質も災いして非常に弱々しかった。

巫迪文。広東出身の彼が歌うと、甲高い声で細川たかしのような感じ。
怡川のパフォーマンスは渋め

しかしここでは、暁晨は審査員により1番に名指しで抜け、"安全チーム"に残ることができた。
同じグループにいる時点で暁晨か怡川か、武漢メンバーのどちらかが落ちる可能性があった。
第2グループには馬天宇と魏斌がいて、武漢の4人はバランスよく分たれていた。

怡川も同じく抜け、フタを開ければ同グループでは巫迪文が最も(この時点では)獲得票数が多かった。
蒲巴甲は最下位となり、保留チームへ遣られる。
正直パフォーマンスの質、歌唱力はこの中で一番なのだが、最下位というところがこの番組のよく分からないところだ。何が基準なのか、解説者の中国語が分からないため、本当に首を傾げる。

第2グループ、呉建飛。この衣装もすてきだった
宋暁波はカンフーを取り入れたものを。毎回新たなダンスを覚えるのは大変に違いない。
長袍が長身に映える
天宇は笛を吹く演技に挑戦。楽器演奏も中国の古装劇には欠かせない要素。
魏斌との関係が元に戻り、嬉しそうな天宇
また無邪気な笑顔が戻った

さて、第2グループの4人の発表が終わったあと、番組がわは前の試合で物議を醸し、拗れていた魏斌と天宇の関係が修復されたことを知らせるため、ちょっとしたコーナーを設けた。
『譲票門事件』以来憤り無視を決め込んだ魏斌に対して、天宇は暁晨の提案を勇気を出して実行した。
何度も魏斌に話しかけ、魏斌が絆されたのである。
暁晨ファンである私は、之全て暁晨のアドバイスのおかげと満足のため息を落とす

天宇の方も話しかけたことで、魏斌がなぜ腹を立て、無視するという方法を取ったか理解した。
二人は『盟友』という曲を一緒に披露し、仲直りをし、これからは何があっても一緒だと誓い合った。
審査では、まず建飛が外され、他の三人は無事安全チームへ。得票数では暁波が最も多かった。

第二次審査

ステージに上がった瞬間、嬉しそうに微笑む向鼎が印象的だった。

選手らが第二次審査に入る前に、スペシャルゲストとして向鼎が歌い、陳澤宇が踊りを披露した。
先程の魏斌と天宇のコーナーのように、選手が減ったため、尺を稼ぐためのイベントが必要になったという事情もあったろう。
『加油!好男儿』という番組は、当初の思惑からどんどん変化しながら進んでいった。
空前の注目を集め、素人だった選手たちを巻き込みながら伝説の番組へとーーー

8人の選手のうち
名指しされた蒲巴甲と獲得票数一位の宋暁波を除く6人で、いつもの"お題でコント"に挑む
モヤるのは第一次審査で名指しで第一グループ1番だった暁晨も参加させられている点だ
だったら先程の一抜けは何だったのかと思ってしまう。

面白いのは、暁晨の相手を務めてくれるおばさん女優がいつも同じだということだ
このおばさんが軽妙かつ巧妙にお相手下されば大丈夫かもという安定感がある

この日のゲスト審査員は呉思遠監督と女優の梅婷。梅婷は『鳳凰の飛翔』で陳坤殿下演ずる主人公の瞼の母役だった。暁晨とは絡まなかったが、この運命の試合でご一緒したことに、縁を感じる。
コントの批評のさい、暁晨の地方予選大会からのキャッチコピーである"電眼美男"に因み、その電圧が弱かったようだと痛烈な言い方をされるが、暁晨は一切の感情を隠し、終始落ち着いた様子だった

第二グループでは建飛が保留チームに遣られ、第二次審査では暁晨と天宇の得票数が較べられる。
CM明け、その数は圧倒的に天宇が勝っていた。
天宇の前の試合の行為は非難を受けた
天宇がどんなに暁晨が去るのを止めようとしても
もうそれは成す術がないーーー

第一次審査で名指しされた蒲巴甲と、第二次審査で名指しされた呉建飛とのPK対決ーーー前回天宇がここで仕掛けようとした、会場のゲスト審査員による多数決ーーー
そして最終的に残されたのは巴甲と暁晨となった。
《風雲対決台》に送られる直前に、程顕軍、郭帥、鍾凱、毛方圓がゲストとなって再び番組の主題歌『若者の戦場』を全員で合唱。
ここで去るのか。残ることができるだろうかーーー。
去来する複雑な感情を表に出さぬよう言い聞かせながら、暁晨は巴甲と手を繋ぎ、お互い見つめ合い笑顔を交わし、決意のハグをする。

評決のとき

対決台に登壇する直前、二人の故郷の家族のようすが流される。
暁晨の郷里は河北省張家口という、小さな小さな町だ。この間の北京冬季五輪のノルディックスキー、ジャンプ競技などの会場になり、高速や鉄道が整備されたが、この頃は北京から電車で8時間もかかる地だった。

2015年、冬季五輪開催地に決定されたときの記事。このとき暁晨は『皇帝の恋』の撮影中だった。
開会式のときの張家口、大境門前のようす。
大境門。ユネスコの世界遺産にも登録されている、万里の長城の北の守りだ。長城の向こうはもう内蒙古の草原が広がる。

寝室の壁に大きく引き伸ばされた7か月の頃の写真、家中に溢れる息子の写真に、彼がどんなに大切に愛されて育てられたかがわかる。同時に、彼がそれほど"苦労をして"生きてきたわけではないことも。暁晨は小中高、きちんと通い大学まで行っている。
『好男儿』では、向鼎は両親が出稼ぎのため伯父の家に預けられっぱなしで育ったこと、馬天宇、呉建飛は極貧のため艱難辛苦の末このオーディションを受けたこと、宋暁波は一歳の頃に受けた注射のせいで耳が不自由になったこと、など視聴者が絶句するほどの不遇な境遇により同情や共感を集めていた。

対して蒲巴甲の郷里と家族。
彼の家は子どもたちを到底全員学校へ通わせるなどという余裕はなく、当初は長兄が学校へ通っていたものの、大哥はその権利を巴甲に譲ってくれた。しかしそれでも巴甲は学校を中退せざるをえず、早くに家を出て町で凡ゆる仕事に就き、この頃には民族音楽を演奏するアマチュア・グループを率いていた。

蒲巴甲の家族。左から兄、父、母。

大変な辺境であることと、貧苦のために家にはテレビはなく、村の人々の口伝てで巴甲が上海のこの番組に出ているらしいということは聞き及んでいたが、スタッフがこのとき持ってきた写真と記事から、それが本当だと知った家族は驚くやら感激するやら。両親はテレビを見るため遠くまで出向き、そこで本当にテレビの画面に映る息子の姿を見て夢かと思った。
どうか皆さま、蒲巴甲に清き一票をよろしくお願いしますーーー

それぞれ映像を見た後コメントを。暁晨は改めて育ててくれた両親、応援してくれる友と恩師とファンに感謝の言葉を。最後まで諦めるものか!
"加油、張暁晨!!"という言葉で締める。

お互いの最後の決意表明の後、まだ終わりではない。
最後の投票を司会者が視聴者に募るのだ。
CMを挟み、投票を締切って開票したときの票数が少ない方の迫が降りる決まりだ。
蒲巴甲の心を掴む民謡ののち暁晨が選んだのは、地区大会で運を掴み、審査員と観客の心を掴んだ"你的眼神"だったーーー

ファンらの悲鳴と泣き声のなか、努めて笑顔で司会者のもとへ歩く

どこかで、ーーー勿論いつもその覚悟はしていたろうが、やはり自分の迫が降りた瞬間は悔しさを隠しきれずに自嘲気味に俯いたが、すぐに顔を上げ隣の蒲巴甲に手を差し伸べ健闘を讃えるように笑顔で頷く
淡々とした素振りで司会者の元へ行きーーー、

所感を述べる
精一杯やった結果に悔いも未練もない
気がかりなのは
思い込みが激しく独りよがりなくせに甘えん坊で未熟で純粋さゆえ、頑なさゆえに思いがけない行動をする天宇のことーーー

選手らの餞画像にはその選手が地区大会決勝で歌った物が流されるが
暁晨の曲は"Moon River"だったため非常にメランコリックな気持ちにさせる絶妙さが加味された。これは本当に偶然だが、私はとても嬉しい意外さだった。"Moon River"を聴くだけで何とも言えない感情を抱くようになってしまった

去る際に皆と交わすジェスチャーは
"君もがんばれ
ぼくもきっとがんばる。けして諦めたりはしない"とお互い誓い合うかのようだ

蒲巴甲にエールを送ってから別れを
暁晨の残した言葉は
"『好男儿』の舞台に立てば誰もが『好男儿』になれる"
だった
申込書に記入した時
こんなにも得難い体験をし
こんなにも得難いたくさんの兄弟を得
こんなにも素晴らしく成長した自身を見ることができるとは思いもしなかった
これからも自分は『好男儿』なのだ
この初心さえ忘れなければ
きっと真の『好男儿』になれるーーー

暁晨は『好男儿』の胸章を馬天宇に贈りたいと言った
毎晩のように話をした
思い詰めては悩み
すぐに落ち込み殻に閉じこもる
天宇
これからはぼくはいない
ぼくの分まで頑張ってもらわなけりゃあ
そのためには自分を信じるしかないんだ
ぼくが言ったように
自分を勇気づけるのは結局自分なんだとーーー。

06年度屈指の名場面だ

暁晨が去ることが決まった瞬間
画面には映っていないが当時のスチルを見ると
天宇が動揺し号泣するのを隣の暁波が宥めている
心の準備が出来る前に
もうその暁晨が正面に立ち
いつもの仕草で軽く斜めに首を倒して肩を竦めて
"さあ、いいだろう?"とでも言うようにーーー
バッジを胸に留められるあいだの辛いひととき
涙を堪えるために上を向き、暁晨の前では精一杯笑顔を保とうとする天宇
目の前のこの優しい兄が居なくなるとはさっきまで思いもしなかったーーー

天宇だけでなく、魏斌、怡川の二人も動揺していた
迪文も暁波も建飛も
鍾凱が落とされた信じられない衝撃が襲った初戦から幾度もの関門を奇跡的に潜り抜けた無敗の武漢四人のなかで
1番さきに去るのがまさか暁晨だなどと誰が思ったろう
それほど暁晨に皆一目置いていた
地方予選であれほどルックスを絶賛された暁晨だったが、知れば知るほど彼の内面に皆惹かれた
優しく冷静な紳士だった
男も惚れこむ男
ここで去るのか
この男がーーー
この夜のブログで
怡川は"・・・・・暁晨、、、ーーー"
たったこれだけしか書くことができなかった。

拗ねるように暁波のかげで泣いている天宇の腕を強く引っ張り
胸に喝を入れ
しっかりしろ!とばかり
暁晨は潔く笑顔で去った
馬天宇はその夜ブログにこう綴った
"晨哥は僕が知る限り最高に誠実で紳士な男だ。晨哥が去るなんて?視聴者の票数っていったい何なのさ?僕は到底納得できない!"

エントリーNo.2
武漢地区出身張暁晨
彼は第五戦でこの競技大会から去ることに
"Don’t forget to always have a dream,XiaoChen”ーーー

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