第1回アーシア杯アフターレポート

先日は第1回アーシア杯にご来場いただき、誠にありがとうございました。
コロナウィルスの影響が少しずつ顕在化し始めていた中での開催でしたが、当日は63人の方に参加していただき、無事に終了することができました。

本記事では、「第1回アーシア杯アフターレポート」として大会の企画~終了までの運営の所感を記していきます。

大会形式について

開催にあたって、運営側では

・不運な敗北が本戦進出に与える影響の軽減
・一日中遊べる大会

の2点を大会のコンセプトとして設定し、これを実現するために

1. 予選7回戦・本戦2本先取マッチ
2. エクストラターンの廃止
3. サイドイベント:条件達成型ランブル

の3点を導入しました。

1. 予選7回戦・本戦2本先取マッチ
昨今のプレイヤー/パートナー・種族・名称デッキの強化をはじめとしたカードプールの充実化により、現在のZ/Xはあらゆるデッキが勝ち得る環境、つまり勝ち切ることが非常に難しい環境であると考えます。

本大会は予選形式として64人によるスイスドローを想定しており、全勝者を出すために必要な対戦回数は6回戦です。仮に本戦進出を8名とした場合、その戦績内訳は

6勝0敗:1名
5勝1敗:6名
4勝2敗:1名(オポ―ネント落ち:14人)

のようになります。
一方で、はじめに書いたように現在のZ/Xは勝ち切ることが非常に難しく、デッキ相性や不運による敗北も考慮すると、実力のあるプレイヤー・強いデッキであっても6戦中2敗する、つまり4-2オポ―ネント落ちで予選敗退という結果に終わる可能性は十分に考えられます。

この2敗を少しでも許容するために、本大会では予選回数を7回戦と設定しました。実際には、予選を7回戦にしても5-2オポ―ネントする可能性は存在するのですが、

・6回戦の場合より2敗ラインの人数が減る
・「エクストラターンなし」による両者敗北により1敗以下の人数が減る可能性がある

の点も考慮し、「5-2オポ―ネント」は本大会のコンセプトの一つである「不運な敗北が本戦進出に与える影響を軽減する」を実現するために十分なラインであると考えました。

また、予選回数を増やすことで本大会のもう一つのコンセプトである「一日中遊べる大会」を実現する狙いもありました。

一方で、他のZ/XのCSと比較すると本戦進出難易度が少し高めとなったことから、上位入賞賞品は予選を突破した時点で1Boxが確定するように設定しました。

本戦2本先取マッチについても考え方は同様で、「せっかく予選を勝ち上がったのに不運により敗北してしまった」という状況を避けるための大会形式です。

2. エクストラターンの廃止
予選7回戦・本戦2本先取マッチを実現するためのルールです。

対案としては「0・1制(現在進行中のプレイヤーの次のターンまで行う)」「5分固定制」などがありましたが、前者は予選7回戦・本戦2本先取マッチを行う以上時間的制約から不可能、後者についても互いのプレイヤーが時間を半分ずつ共有するのはほぼ間違いなく不可能という理由から、エクストラターンは廃止という形になりました。

運営側も「エクストラターンに突入すること自体がゲームとして健全ではない」という認識を持っていたため、この点についてはすんなり決まった記憶があります。

3. サイドイベント:条件達成型ランブル
本大会のコンセプトの一つである「一日中遊べる大会」に対する企画です。とにかく気軽に遊べるようにしたかったので、

・予選7回戦終了後に開始
・参加費無料(予選非参加者を除く)
・途中参加・途中退出自由
・対戦数・勝利数に応じて賞品(3戦で1パック、5勝でプレイマット)

のようなルールを設定しました。

実際どうだったのか

大会終了後に感想をお聞きしたところ、

「予選7回戦は長かったが一日中遊べる点が良かった」
「2-2してもそこから3-0すればワンチャンあるのが良かった」
「エクストラターンがないからかサクサク進むのが良かった」

など、ありがたいことに肯定的なご感想を多くいただくことができました。運営側としては「否定的な意見が多くても仕方ない!今回はこれや!」というスタンスでいたため、驚きました。

また、本戦2本先取マッチについても対戦側はプレイし甲斐、視聴側は見ごたえがあったというご感想をいただきました。1戦目で相手のデッキの動きを把握し、最終的に勝利を掴むような試合も発生していたことから、本戦2本先取マッチについても成功したと言えるでしょう。

大会結果について: 運営の予想

ここからは、大会の結果に移ります。
大会開催前、運営側は

・赤単ギガンティック
・ペクティリス

の2種類のデッキを使用するプレイヤーが多いと予想していました。

赤単ギガンティック
本大会では、ルールとしてエクストラターンの廃止を行いました。発表以降多くのプレイヤーの方々から感想をいただいており、その中で「エクストラターン廃止によって速度の早いデッキの使用を検討する」声を多く目にしました。

当時の速度の速いデッキといえばそう、赤単ギガンティックです。直近のCSでも使用プレイヤーが多く、特に長く使用しているプレイヤーともなれば長丁場である本大会でも持ち込んでくると考えていました。

ペクティリス
速いデッキに対する解答として使用するプレイヤーが多いと考えていました。イベントによる受け性能が高いだけでなく、ライフ回復能力によってルール的にも有利に立ち回れる(本大会は制限時間終了時に決着がついていない場合、ライフ差を参照するため)、アドバンテージの獲得が得意であり構築によっては相手のライフを削る力を高めることもできることから、本大会では非常に強力な選択肢となると考えていました。

画像1

また、直近の31弾で登場した「すぷれーあーと!オキザリス」は速いデッキと対戦した際に発生する可能性がある「リソースが1枚足りない状況」を解決し得るカードであり、最序盤に「始まりの出会いペクティリス」や「ブルーミング・チア!ペクティリス」を攻撃する裏目にもなるため、このカードを採用したペクティリスが台頭してくることを期待していました。

また、直前に公開されたイデアライズを使用したデッキですが、当日までの数日間で構築・プレイを磨き、大会に持ち込む決断をできるプレイヤーは少ないと判断し、使用者はそれほど多くないと考えていました。
逆に言えば、今回イデアライズのデッキを持ち込んだプレイヤーは短期間で構築・プレイを磨いてきたと考えられます。

また、予選突破に関しては以下のデッキが予選を突破すると予想していました。

・赤単ギガンティック
・ペクティリス
・青単あづみ
・赤単イデアライズ出雲

「赤単ギガンティック」「ペクティリス」「青単あづみ」に関しては前環境から続投で一定数は突破、「赤単イデアライズ出雲」に関しては使用プレイヤー数は少ないながらも新システム故の非常に高い出力で、予選突破の可能性は十分と判断していました。

また、これらのデッキはレベルギミックへの依存度が低い点、デッキを回すカードを多く採用できる点によりゲームの再現度も高いことから、回戦数の多い今回の大会では安定した勝率を出すことができると考えました。

実際の結果

デッキ分布
5人
黒緑八千代

4人
白黒バラハラ
青白緑ペクティリス

3人
赤単ギガンティック(P世羅)
赤単出雲(イデアライズ)
青緑ユイ
青単あづみ(リユニオン)
緑単きさら
無色単うらら

2人
赤単ミソス(Pほのめ)
赤単ほのめ
赤緑シュリ
白単飛鳥
白単ニーナ
黒単イリューダ
赤青緑タッチ白E☆2

1人
赤緑世羅
赤緑白ミカエルループ(P世羅)
赤青タッチ白黒ヤシギディンギル(P出雲)
赤単メイラル
青単七尾
青黒ES(P七尾)
青単ユイ
赤白緑サンダルフォン(Pさくら)
黒単プレデター(P綾瀬)
黒単ノスフェラトゥ(P大和)
黒単ノスフェラトゥ(Pイリューダ)
黒白ノスフェラトゥ(P春日)
緑単千歳
緑単デ・ジ・キャラット(P相馬)
緑タッチ赤ジャンヌレンジ(Pクシュル)
赤青緑モーエガネット入りペクティリス
白無タッチ黒エア
青緑白タッチ黒E☆2

注目すべきは、非常に多くのデッキタイプが存在しているという点です。

最も使用者数が多かったデッキタイプは「黒緑八千代」ですが、デッキレシピがすべて同じだったためデッキレシピを共有して持ち込んだと考えられます。その「黒緑八千代」でも5人、全体の10%に満たないと考えると、非常に多くのデッキタイプが存在した大会となりました。

運営側が事前に予想していたペクティリスは確かに他のデッキより使用者数が多いですがそれでも5人、赤単ギガンティックにいたっては3人と、予想に反し非常に少ないデッキ数となりました。

理由としては、本大会はチーム戦とは異なりデッキの制約がなく、自分の好きなデッキを使用できるということで、幅広いデッキ分布になったとことが考えられます。実際、チーム戦で使用しているデッキとは違うデッキを選択しているプレイヤーも数多く見られました。

また、新システムであるイデアライズを採用したデッキですが、今回は4デッキのみ、主軸にしたものは3デッキのみという結果となりました。これは予想通り、構築・プレイの準備が間に合ったプレイヤーが少なかったと考えられます。一方で、デッキ圧縮を行いゲートカードのみを採用していたプレイヤーはいた他、イデアライズを中心としたデッキもフリーカードの追加とともに増えていくと思います。

戦績

優勝:キシリトールさん 赤単ギガンティック(P世羅)

画像2

準優勝:まえちゃそさん 白黒バラハラ

画像3

3位:みやびしさん 赤単イデアライズ出雲

画像4

4位:フカヒレさん 白黒ノスフェラトゥ(P春日)

画像5

ベスト8:朱雀さん 赤単ほのめ

画像6

ベスト8:pokitsunesamaさん 赤単イデアライズ出雲

画像7

ベスト8:むうむう。さん 黒単プレデター(P綾瀬)

画像8

ベスト8:ハヤトさん 白黒バラハラ

画像9

注目する点は青、緑をベースとしたデッキが予選を突破していない点です。特にあづみ・ユイは使用者数が多かったことから1人は突破すると予想していたので、この結果は予想外でした。

また、注目していたペクティリスも使用プレイヤー数に対して予選を突破していないのも予想外の結果となりました。
以降では、この点についてデッキレシピから分析していきます。

予選を突破した各デッキは、次の3つの特徴に分類できると考えられます。

・不利な状況になっても相手のライフを4点一気に削り切れる出力がある
 - 白黒バラハラ
 - 赤単ギガンティック

・序盤から相手のライフを削ることで、相手の対応力の上からライフを削り切ることができる
 - 赤単ほのめ
 - 黒単プレデター

・新しい・珍しいデッキであることから、相手が対応することが難しい
 - 赤単イデアライズ出雲
 - 白黒ノスフェラトゥ

本大会の形式とこれらの特徴を考えてみると、確かに勝ち上がっているのが頷けます。

「不利な状況からでも常に4点を一気に削り切ることができる」ということは勝ち筋が多いということなので、試合数の多い本大会でもその特徴が勝利数の多さに直結したと考えられます。

「序盤からライフを削るデッキ」は安定した勝利数には一歩及びませんが、試合時間が短くなりやすいこれらのデッキは長丁場となる本大会において大会中の疲労度を大きく抑えることができることから、常に安定したプレイを行うことができます。

「新しい・珍しいデッキ」は、相手がこちらの動きに対応できない故に自分の動きをしっかりと行え、相手を倒すことができるデッキです。「気づいたら負けた」という経験をしたことがある方は多いと思いますが、まさにこの現象が起こるデッキだと言えます。

「白黒ノスフェラトゥ」は盤面制圧をしながら「ジャック・ベイカー」着地によるロック、「赤単イデアライズ出雲」は「手作りチャレンジ ガーンデーヴァ]+「【剣誓】『審判』」のコントロールと受け性能や相手のデッキへの対応力も高かったと考えます。

次に、これを踏まえていくつかのデッキの予選・本選を通しての戦績を確認していきます。

まずは白黒バラハラ、赤単ギガンティック。

・白黒バラハラ
プレイヤー1: 5戦2勝3敗
プレイヤー2: 6戦3勝3敗
プレイヤー3: 9戦7勝2敗
プレイヤー4: 14戦10勝4敗
合計34戦22勝12敗
勝率65%(ミラーは除く)

・赤単ギガンティック
プレイヤー1: 15戦12勝3敗
プレイヤー2: 7戦4勝3敗
プレイヤー3: 6戦3勝3敗
合計28戦19勝9敗
勝率68%(ミラーは除く)

どちらも60%後半と非常に高い勝率を出していますが、プレイヤーによっては約50%、大きく幅もありります。当然、予選を突破したプレイヤーは高い勝率を出しているため、プレイによってワンチャンスをつかめたかどうかが勝率、ならびに予選突破に関わったと考えられます。

続いて、注目していたデッキであるペクティリス、そして予選を突破すると考えていた青単あづみの戦績を見ていきます。

・ペクティリス
プレイヤー1: 6戦2勝4敗
プレイヤー2: 7戦5勝2敗
プレイヤー3: 7戦4勝3敗
プレイヤー4: 7戦3勝4敗
プレイヤー5: 7戦3勝4敗
合計34戦17勝17敗
勝率50%(ミラーは除く)

・青単あづみ
プレイヤー1: 1戦0勝1敗
プレイヤー2: 7戦2勝5敗
プレイヤー3: 7戦4勝3敗
合計15戦6勝9敗
勝率40%(ミラーは除く)

どちらも合計勝率は50%という結果でした。
ペクティリス、あづみは共に自分の動きを押し付けるというよりは相手の動きに対応しながら立ち回るデッキなので、今回のように様々なデッキが存在する環境だと少し戦いにくかったのではと考えています。

また、どちらのデッキも登場して長いことから、対戦相手も戦い方を覚え、結果として一気にライフを削り切りにくいこれらのデッキはこのような戦績になったと考えています。勝率の高かったペクティリスのデッキも「緋色の海鳥グリードガネット」&「軽快笛モーエ」入りの1ターンで相手のライフを削りやすくしたタイプであり、ここから本大会で求められるデッキ傾向が伺えます。

最後、今回最も注目されていた「赤単イデアライズ出雲」の戦績を見ていこうと思います。

・赤単イデアライズ出雲
プレイヤー1: 7戦5勝2敗
プレイヤー2: 8戦5勝3敗
プレイヤー3: 14戦10勝4敗
合計29戦20勝9敗
勝率69%(ミラーは除く)

どのプレイヤーも最低5勝、平均して69%と高い勝率を出しています。非常に新しいデッキであること、受けも非常に強い上に相手のゲームプランを崩しつつ相手に出雲側のゲームプランを悟られないことから、非常に有利なデッキだったといえます。
使用プレイヤーは少ないですが、大きくつ爪痕を残したデッキでした。

総評
このように戦績を見ていくと、本大会では相手の動きに対応するデッキよりも自分の動きを強くできるデッキが勝ち上がりやすかったと考えられます。

今後追加されるカードによってどちらが有利になっていくか、もしくは新しい特徴を持つデッキが現れるか楽しみです。

終わりに

皆様の応援のおかげで、第1回アーシア杯は無事終了することができました。

次回開催は現在未定ですが、もし開催する場合は是非遊びに来ていただければ幸いです。

改めまして、ご参加いただきました皆様、RT等広報にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。


著:ste、立花