くるみ

私が井上と出会ったのは私が中学二年の事です。遠く北の大地、北海道でのことでした。もうさすがに第一印象なんかは忘れてしまいましたが、今でも思う所で言えば、彼は食いしん坊だという事がかわいらしい所のひとつでしょうか。そうですよ、あくまでひとつですからね。やはり長く付き合いがあると感謝をしなくなってしまうのが私の悪い癖でして、こういう機会でないと言えないことも多くあります。ええ、彼はとても良い奴です。私と一緒にいてくれるんですから、それが彼が良い奴だという何よりの証拠でしょう。日頃の礼に、今度川にでも連れて行ってやらねばなりませんね、彼は水場が好きなものですから。ね、かわいらしいでしょう。

ああそうです、それから三年後に、私は木下と出会いました。これまた北海道でです。何かの因果か縁故か、帰り際の新千歳空港での出会いを、私はよく覚えています。今度はちゃんと覚えていますよ。彼はきっと井上と相性がいいだろうと、一目見た時に感じました。実際、山本を預かるまでの二年近く、彼らは二人きりでいましたから私の見立ては間違っていなかったのだろうと自負しています。ですが先日、木下とは大変惜しい別れを致しました。旅先での出会いとは感慨深いもので思い入れは井上同様ひとしおにありましたから、今でも望郷に暮れることがしばしばです。彼との写真を撮っていなかったのが心残りでして、より一層私は彼のことを忘れないと心に誓っております。

山本は、私の暮らしが大きく変化した時にやって来たのです。一人暮らしを始め地元から離れた私に対し、両親から譲り受けたのが山本でした。生活が変わっても井上と木下は相変わらず私の傍にいてくれてとても心強かったですから、山本もその一員としてふさわしく、今は井上と二人で私を支えてくれています。山本は芯が強く、私自身労わってやることを忘れてしまうほどしっかりしていて本当に頭が上がりません。井上と一緒に川に行くことにしましょう。しかし彼は、水は苦手だったかもしれないので考えどころです。

他にも家にはたくさん仲間がおりまして、安藤と田島と言います。初めてご紹介するでしょうか、どうぞ以後よろしくお願いいたします。安藤は顔がぽっと赤く、丸っこいフォルムがとっても愛らしいのですよ。気が付くと布団にころんと寝そべっており、田島と仲良くごろごろしている姿をよく見かけます。田島の方は眼鏡が特徴的で、初めて会った時は親近感が湧いたものです。仲間の中では一番大柄で愛嬌があります。じゃれてくるとこちらが耐え切れないこともありますが、それも彼のかわいらしい所です。

最近入ってきたのは、河西と北岡、そして前田のトリオでしょうか。和装の良く似合う、なんともチャーミングな奴らです。東京で出会った彼らには、おしゃれ好き一面もありまして。小柄な割にいたずら好きなものですから、河西はいつもケロリンの中に押し込めています。北岡の方も大きな眼鏡をずらしながらカップの中におり、二人仲良く並んで天井を眺めている様子が、家の日常です。前田は今、ちょうど品川の世話係になっています。木下とは昔馴染みだったようで、もう少しゆっくり話が出来ればよかったのですが。

そうそう、つい先日仲間になった奴がいるのですよ、品川です。私の友人のよしみで家に来てもらったのですが、これがもうかわいらしいこと。白くまあるいフォルムにつぶらな瞳がたまりません。ああすみません、少々親バカが過ぎました。いやあ、家に来てくれて本当に良かったと思っていますよ、私の心を癒してくれる不可欠な存在です。これから末永く一緒に暮らしていく仲間ですから、きっと先輩たちにも可愛がられるでしょう。楽しみで仕方がありません。

うちのくるみたち、でした。

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